不動産取引で電子契約の利用が可能に!法改正の影響やメリットを解説!

最終更新日時:2022/12/23

電子契約システム

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本記事では、不動産取引で電子契約の利用が利用が可能になった経緯や具体的な法改正の内容について解説します。また、電子契約のメリット・デメリット、不動産取引におすすめの電子契約サービス3選もご紹介しますので、電子契約の導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

電子契約とは?

電子契約とは、電子文書に電子署名を付与することで契約を締結する方法のことです。

従来の契約では、紙の契約書に「署名・押印」をし、場合によっては印鑑証明書を添付することで本人性を担保し、さらに「契印」や「割印」を行うことで改ざんの防止と非改ざん性の証明をしていました。

電子契約では、電子データ化された契約内容に電子証明書を伴う電子署名を付与することで本人性と非改ざん性を証明し、加えてタイムスタンプと呼ばれる仕組みを利用することで、さらなる非改ざん性の補完と存在の証明を行います。

タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在しており、その後手を加えられていないことを証明する技術のことです。電子契約は、この2つの条件を満たすことで、書面による契約と同等の法的効力と証拠力を持つとされています。

2022年5月施行!不動産取引で電子契約の利用が可能に

2021年9月1日に一連のデジタル改革関連法が制定され、IT基本法が廃止となりました。

このデジタル改革関連法の中には、行政手続きや民間企業における取引において義務化されていた取引内容の書面化や押印を原則廃止とすることを定めた内容も含まれています。つまり、さまざまな分野で法的な意味を持つ文書の電子化ができるようになったのです。

そのため、日常生活におけるデジタル化は、今後さらに勢いを増すことが予想されます。

例えば、不動産取引においては、借地借家法と宅地建物取引業法などの改正法が2022年5月に施行されることがみまっており、この改正法をもって、多くの不動産取引においても、書類の電磁的方法による交付が認められることになっています。

そのため、今後は、不動産取引の発生する多くの企業において、積極的な電子契約の導入が進むと考えられているのです。

電子契約の仕組みと導入方法とは?サービスを選ぶポイントも簡単に解説

不動産業界において電子化できる契約書

もともと、不動産取引における契約の締結にあたっては、多くの書類が書面での交付を義務付けられていました。しかし、今回の法改正により、具体的には以下の取引における書類の電子化が認められることになります。

  • ​​一般定期借地契約書(借地借家法22条)
  • 定期建物賃貸借契約書(借地借家法38条1項)
  • 売買の媒介契約書(宅建業法34条)
  • 賃売の重要事項説明書(宅建業法35条)
  • 賃貸借契約書(宅建業法37条)
  • 売買契約書(宅建業法37条)

これまでも電子契約の利用推進の運用実験については、2017年より国土交通省が実施してはいたものの、重要事項については、宅地建物取引士の資格所有者が対面で説明を行う決まりとなっていたため、各種書類の電子化はあまり現実的ではないと考えられていたのです。

デジタル改革関連法により、2022年5月に改正される借地借家法と宅地建物取引法の改正法が施行された場合はどうなるのでしょうか。

(1)現行の法律で電子化できる不動産取引の契約書

現在の不動産取引では、ほとんどの契約書類に押印や書面化の義務があります。

電子化が可能な書類といえば、主に賃貸物件の契約更新や退去の際の合意書、駐車場の賃貸借契約書など、宅地建物取引業法の範囲外である一部の書類のみに留まっていました。また、不動産取引の書類によっては、宅地建物取引士による押印や対面での説明を義務付けているものもあり、そのため、依然としてデジタル化が進んでいなかったのです。

現在は、有資格者による対面での説明が義務とされていた重要事項の説明については、パソコンやスマホなどを利用した、オンラインでの説明「IT重説」が認められており、すでにオンラインでの運用を開始している企業もあります。しかしながら、現行の法律では重要事項説明書の書面での交付、書類への署名と押印は必要なため、必ず事前の書類送付が求められます。

(2)改正法施行後に電子化できる契約書

先にお伝えした通り、借地借家法と宅地建物取引法の改正法が2022年5月に施行されることで、以下の書類の電子化が可能になります。

  • 一般定期借地契約書(借地借家法22条)
  • 定期建物賃貸借契約書(借地借家法38条)
  • 売買の媒介契約書(宅建業法34条)
  • 賃売の重要事項説明書(宅建業法35条)
  • 賃貸借契約書(宅建業法37条)
  • 売買契約書(宅建業法37条)

ただし、定期借地契約書については、電子化が認められたのは一般のみであり、事業用は現行通り公正証書が必要となるため電子化が認められていない点に注意しなければなりません。

また、契約の電子化には、事前に双方が電子契約の利用に合意することを条件としたものもありますが、多くの書類において電子契約が認められる点は、不動産取引のターニングポイントとなることは確かでしょう。

電子契約できない契約書とできる契約書の違い|できない理由と電子化の秘訣

不動産取引を電子契約で行うメリット

不動産取引に電子契約を導入するための準備やコストを考えると、「従来の紙媒体の契約を継続しよう」と感じてしまう会社も多いかもしれません。

しかし、電子契約の導入は多くのメリットが得られます。ここでは、そのメリットについて、詳しく確認していきましょう。

(1)印刷代や印紙税を削減できる

電子契約の導入に際しては、多くの場合、電子契約サービスを利用することになるかと思います。これらのサービスでは、契約書の確認から締結までの一連の手続きをオンライン上で行います。

もちろん契約内容もデータでのやり取りとなるため、印刷や製本、郵送といった事務作業は発生しません。

さらに、コスト削減効果が高いと言えるのが、電子契約は印紙税の課税対象外である点です。印紙税の課税額は、契約書に書かれた契約金額に応じて決まり、さらに契約書を2部作成した際には、双方の契約書への印紙の貼付が必要となります。

金額の大きな契約も発生する不動産取引においては、そのコストは決して小さくはない負担となっているでしょう。しかし、電子契約では、印紙自体が不要となるため、一切のコスト削減が可能です。

(2)契約締結までの時間を短縮できる

電子契約では、契約のための来社対応や顧客への訪問の必要がなくなるため、時間を生産性のある作業や業務に効率的に使えるようになります

オンライン上でのミーティングであれば、移動時間が不要な分、顧客との日程調整に手こずることもありません。また、交通事情や天候などといった予測できないトラブルの影響を受けることもなくなるのです。

書面送付のタイムラグなども発生しないことから、契約締結までに掛かる時間の大幅な短縮も実現可能になります。

(3)契約書類の管理が容易になる

不動産売買契約書や重要事項説明書などの書類の保管期間については、法律上の規定はありません。しかし、債務不履行による損害賠償請求ができる10年間と、不法行為による損害賠償請求権の存続期間である20年間は、最低でも保管すべきであると考えられます。

そのため、頻繁に不動産取引を行う会社では、契約書類の保管場所の確保や保管書類の整理の手間に労力とコストが掛かっているケースも珍しくありません。

電子契約では、締結後の契約データはクラウドサーバーで管理されるため、大きなスペースを確保する必要はありません。また、保管した契約データは検索機能を使って簡単に探し出すことができるため、閲覧が必要になった際の手間も軽減されるでしょう。

(4)コンプライアンスが強化される

電子契約サービスの多くは、高度なセキュリティ対策のもと提供されています。

そのようなデータベースで保管し、かつアクセス可能な管理者の権限を一定の条件において設定することで、紙の契約書と比べて、契約書の持ち出しや不正な閲覧といったトラブルを高いレベルで防ぐことができます

また、契約締結までのプロセスは、常にシステム上で共有されるため、進行が遅れている案件のフォローが可能になり、契約の締結漏れといったミスを防ぐこともできるでしょう。

さらに、締結後も契約の更新時期が迫っていることを知らせてくれるアラート機能によって、更新のし忘れが防げます。

このような機能の活用により、契約から締結後のあらゆるフローにおけるリスク管理が可能になり、結果としてコンプライアンスを強化することにつながるのです。

(5)契約業務フローにおけるミスを防止できる

日々多数の契約を頻繁に行っている場合、どうしても社内確認(承認)もれ、内容の不備や押印や署名の抜けもれなどが発生するリスクがあります。

しかし、電子契約システムでは、契約種類別の契約書テンプレートやAIが契約内容に潜むリスクを検知し表示してくれる機能の他、必要なフローが完了されていなければ次の作業に進めないような仕組みにすることも可能です。

人の目だけに頼らない、システムの機能を上手に活用した運用を実施することで、契約業務フローにおけるミスを低減することができるでしょう。

電子契約の法的効力とは?担保する仕組みや導入時のよくある疑問を解説

不動産取引を電子契約で行う際の注意点

メリットの多い不動産取引の電子契約化ですが、実際に導入してうまく活用していくためにはいくつかのポイントや注意点があります。

ここでは、不動産取引を電子契約で行う際の注意点を解説します。

(1)導入時に業務フローの見直しが必要になる

電子契約に移行するのであれば、業務フローの見直しは必要不可欠となります。

ただし、社内には既存の方法を大きく変えることに拒否反応を示す社員もいます。まずは、電子契約を導入するメリットを丁寧に説明することから始めましょう。

社員の理解が得られたら、既存の業務フローの棚卸し、新しい業務フローの策定、社内への共有・説明の順に、段階的に進めるようにします。

(2)取引先の理解や協力が必要になる

契約は双方の合意のもとで成立するため、電子契約を導入するのであれば、取引先や契約相手の同意が必要となります。

電子契約の方法によっては、相手方にも同様のサービスを利用してもらう必要があるため、導入期間の設定は、それらの環境を整えることのできる、充分な準備期間を設けた上で進めるようにしてください。

しかし、取引先の中には、セキュリティ面や操作方法に不安を感じて、書面交付を希望する会社もあるかもしれません。その場合は、取引先と自社の契約を書面と電子データで分けて行うことも可能です。そのため、業務フローには、柔軟な対応ができる余地を残しておくようにしましょう。

(3)サイバー攻撃のリスクがある

電子契約は、契約の締結や保管をすべてインターネット上で行うため、残念ながらサイバー攻撃のリスクを100%防ぐことはできません。

そのため、高度なサイバーセキュリティ対策が不可欠です。信頼できるセキュリティ体制のサービスを選ぶことはもとより、使用端末のウイルス対策や脆弱性の対策、社員全員に対するセキュリティ教育を定期的に実施することなどが求められます。

(4)電子契約関連の法律を把握する必要がある

電子契約に関連する法律には、電子帳簿保存法やe-文書法などが挙げられます。

これらの文書の電子化にかかわる法律は、社会の変化やデジタル技術の進化などを背景に、度々、法改正が実施されています。電子契約や文書の電子化にかかわる法律の改正は、今後も続くと考えられ、電子契約で行える範囲がさらに広がる可能性もあるでしょう。

電子契約が、法令の要件を満たしていないために、契約の法的有効性が認められないといったトラブルは是が非でも回避しなければなりません。常に法令にそった電子契約の運用ができるよう、定期的な勉強会を開催するなど、最新の情報に気を配る必要があります。

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不動産取引を電子契約化した事例

2017年から国土交通省が段階的に電子契約の利用推進の運用実験を行ってきたこともあり、不動産業界においても不動産取引の電子契約化の事例や実績が多くなってきました。では、不動産業界での電子契約化の事例にはどのようなものがあるのでしょうか。

クラウドサインを導入した野村不動産株式会社と、電子印鑑GMOサインを導入した株式会社オープンハウス、DocuSign Agreement Cloudの電子署名を導入したプロパティエージェント株式会社の事例をご紹介します。

(1)野村不動産株式会社

野村不動産株式会社は、主にマンションの分譲事業や戸建分譲事業を手がける不動産会社です。

同社では、まず新築分譲マンションと一戸建てで、不動産売買契約時の必要書類の作成やステータス管理、契約書類の署名・捺印などの手続きを電子化し、次に契約手続きをオンライン化しました。

さらに、​​不動産取引時の顧客ごとに異なる必要書類の作成やステータス管理、一連の契約締結に必要な手続きを電子化して管理するシステムと電子契約サービス「クラウドサイン」をAPI連携によってつなぐことで、不動産売買契約時の契約手続きの負担の軽減や業務の効率化を実現したのです。

(2)株式会社オープンハウス

株式会社オープンハウスは、不動産売買の代理・仲介事業の他、新築戸建分譲事業やマンション・ディベロップメント事業を展開する会社です。

同社では、不動産売買の代理・仲介事業などの契約内容を変更する合意書が月50〜60件程発生しており、それらの業務の電子化に「電子印鑑GMOサイン」を導入しています。

その結果、導入前は1~2週間かかっていた郵送での契約手続きをスピーディーに行えるようになりました。

(3)プロパティエージェント株式会社

プロパティエージェントは、IT、都心、不動産をコンセプトにした4つのオウンドメディアを運営しつつ、投資向け不動産や居住用コンパクトマンションを提供することで急成長を遂げた会社です。

プロパティエージェントでは、ドキュサイン社のクラウド型電子署名サービス「DocuSign Agreement Cloud」を導入し、投資用マンションの売買取引契約を電子化しました。

その結果、オンラインでの契約締結による利便性の高さは顧客満足度の向上につながり、契約書類の取り扱いや保管が簡素化されたことで、作業効率が改善したという成果とメリットを得ています。

地方自治体で電子契約を導入が進んでいる背景とは?法改正の影響や導入事例

不動産会社におすすめの電子契約サービス3選

ここからは不動産業界でも使いやすい電子契約サービス2つと、特に不動産会社におすすめしたい電子契約サービスについてご紹介します。

(1)GMOサイン

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社の「電子印鑑GMOサイン」は、導入企業50万社以上の実績あるクラウド型電子契約システムです。

企業の規模や業種を問わず利用することができ、取引先や契約相手、契約の種類に合わせた柔軟な契約方法を選べる点が特徴です。また、電子帳簿保存法やe-文書法といった文書の電子化にかかわる法令にも対応しているため、安心して利用することができるでしょう。

料金のかからないお試しフリープランもありますが、契約印&実印プランでも月額9,680円(税込)で、電子契約サービスを利用することができます。

(2)いえらぶCLOUD

株式会社いえらぶGROUPの「いえらぶCLOUD」は不動産業界に特化した電子契約システムで、すでに多くの不動産業者が導入しています。

賃貸借契約や更新契約をWeb上で完結させ、これまで多くの書類作成とやり取りに時間と労力を要した契約業務を効率化できます。

さらには、業界特化型だけあって、契約者との直接契約だけでなく、家主と契約者における契約や仲介会社を挟んだ契約など、不動産取引特有の契約形態にも対応している点は大きなポイントといえるでしょう。

このような実務に精通した設計の他、業種や会社規模に合わせたプランの提案を受けられる点も特徴です。

(3)Cloud Sign(クラウドサイン)

弁護士ドットコム株式会社の「Cloud Sign(クラウドサイン)」は、弁護士監修のもと開発されたクラウド型の電子契約システムです。日本の法律に特化している点やさまざまな外部サービスとの連携が可能な汎用性の高さが特徴であり、導入実績30万社以上の企業や自治体にて導入されています。

料金プランは、シンプルな機能のみに絞ったLightプラン月額11,000円(税込)の他、書類管理・システム連携の機能を備えたCorporateプラン30,800円(税込)などが用意され、さらには、複数の部署で利用できる高度な内部統制機能を搭載したプランもあります。

電子契約を導入して新たな変化に対応しよう

借地借家法と宅地建物取引法の改正法の施行は、不動産取引における、電子契約の普及を次のステージへと押し上げる変化といえます。

この法改正を機に、不動産取引における電子契約の導入は、急速に拡がっていくと考えられ、いずれは電子契約がニューノーマルな不動産取引の方法として定着することも予想されるでしょう。

そのような変化に対応できるよう、今から電子契約システムの導入を検討し、他社の成功事例を参考にしながら、ぜひ自社に合った電子契約システムを導入してください。

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