ERPの国内外シェア・市場規模|クラウドERPがシェアを伸ばしている理由とは?
企業を経営していく上で欠かせない「ERP」。ERPが世界や国内でどれくらいのシェアを獲得しているのか、気になる方も多いでしょう。本記事では、国内外におけるERPの市場規模について解説します。近年シェアを拡大している「クラウドERP」についての説明のほか、ERP選びのポイントも見ていきましょう。
目次
ERPの世界でのシェア・市場規模
株式会社アイ・ティ・アールの調査データによると、2019年におけるERP市場の売上は1,128億円になり、前年より12.4%増えています。
ベンダー企業がERPの拡張や再構築を頻繁に行っていることが、ERPが普及している大きな理由です。
ここからは、数あるERPの中でも市場シェアを拡大している「SAP社」「Oracle社」「Intuit社」について、2021年の情報を元に紹介します。
[出典:株式会社アイ・ティ・アール「ITR Market View:ERP市場2021」]
▷ERPとは?意味や基幹システムとの違いを簡単にわかりやすく解説
ERP市場シェア1位:SAP社
SAP社はERP市場のシェア率1位を占める企業で、6.5%%近いシェア率を誇り、世界各国にERPを提供しています。
SAP社で取り扱っているERPは、下記の4つです。
- ERP Central Component(ECC)
- SAP S/4HANA
- SAP Business ByDesign
- SAP Business One
中小企業から大企業まで、幅広い規模に対応するERPを提供しています。なお、ERP Central Component(ECC)は2027年末でサービスが終了する予定です。
ERP市場シェア2位:Intuit社
ERP市場世界シェア2位の企業がIntuit社です。アメリカや中国、インドといった主要国を中心に利用されており、中小企業をターゲットとしたERPを展開しています。
Intuit社のERPは、安価で実装できるのが大きなメリットです。ERPの導入や運営には莫大なコストがかかるケースがありますが、Intuit社が提供する「Quick Books」は年間3万円ほどしかかかりません。
機能性に優れたERPを低コストで使いたいのは、どの企業も同じです。日本での利用数は少ないメーカーですが、コストをできるだけ削減したい企業にとっては候補に入るでしょう。
ERP市場シェア3位:Oracle社
世界で3番目にERP市場のシェアを握っているのがOracle社です。29,000社以上の企業が導入しており、19言語と190種類以上の通貨に対応しています。
Oracle社で扱っている主力ERPは、下記の2つです。
- Oracle NetSuite
- Oracle Fusion Cloud ERP
財務会計や在庫状況など、数値や情報の変化がリアルタイムで反映されます。
ERPメーカーの中でも、早々にクラウドERPの取り扱いを始めました。現在では世界中の企業で、Oracle社のクラウドERPが使用されています。
SAP社同様に、高い信頼を得ている企業と言えるでしょう。
▷ERPパッケージとは?特徴や導入するメリット・おすすめを一覧で紹介
ERPの国内でのシェア・市場規模
ERP開発には、多くの日本企業が参入しています。
国内においてERP市場シェアを取っている「株式会社大塚商会」「富士通株式会社」「SAPジャパン株式会社」について見ていきましょう。2021年のデータに基づいて紹介します。
ERP市場シェア1位:株式会社大塚商会
国内メーカーでERP市場シェア1位を誇るのが、株式会社大塚商会です。販売管理システムや生産管理システムなど、ERP以外にも優れたITプロダクトをを取り扱っています。
ERP製品「SMILEシリーズ」は、同社の英知が集約された約40年もの歴史があるERPです。
製品販売のほかにも、ERPソリューション情報サイト「ERPナビ」を運営しており、ERPや業務システムなど幅広い情報提供を行っています。
ERP市場シェア2位:富士通株式会社
電子デバイスメーカーとしても有名な富士通株式会社は、国内のERP市場で2番目のシェア率を誇ります。
同社の「GLOVIAシリーズ」は、40年以上さまざまな企業で利用されている国産ERPです。
生産管理や販売管理、財務会計など多彩なシステムを提供しており、20,000サイト以上の導入実績があります。なお、企業の業種や規模にあったシステムを提供している点が特徴です。
ERP市場シェア3位:SAPジャパン株式会社
SAPジャパン株式会社は、世界ERP市場シェア率ナンバーワンを誇るSAP社の日本支部です。国内シェア率は3位と高い水準をマークしました。
SAPジャパン株式会社では、SAP社のERP製品を国内企業向けに提供しており、パッケージ製品を多く取り扱うため、1からシステムを作るよりも簡単かつ短期間で導入可能です。
SAPジャパン株式会社の代表取締役社長である鈴木洋史氏は、ERPの標準機能の利用促進に向けてさらに注力すると公表しました。より一層のシェア拡大が期待されるERP企業と言えます。
▷【2023年最新】おすすめのERP徹底比較!大企業・中小企業向けで紹介!
クラウドERPのシェア率が上がっている3つの理由
ERP市場において、従来は「オンプレミス型」が主流でしたが、近年では新たに「クラウド型」のシェア率が増えています。
クラウド型ERPのシェア率が上がっている主な理由は下記の3つです。
- 運用コストの低さ
- テレワークの普及
- 電子帳簿保存法の改正
1つずつ解説します。
1.運用コストの低さ
クラウド型ERPは、オンプレミス型ERPに比べて運用コストが低い傾向にあります。
必要な機能がパッケージ化されたクラウド型ERPは、1からシステムを構築するオンプレミス型より短期間で導入可能です。
ベンダー側がERPの保守やセキュリティ対策を行うため、運用や導入にかかるコストを抑えつつ利用できます。
2.テレワークの普及
新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、テレワークが普及しました。
インターネットを使用してアクセスするクラウド型ERPは、場所を選ばすに利用できます。オンプレミス型は社内ネットワークを通して利用する必要があり、外出先でのアクセスに制限がかかるのです。
働き方改革によってテレワークを導入する企業も増えており、相性の良いクラウド型ERPが選ばれやすくなっています。
3.電子帳簿保存法の改正
電子帳簿保存法の改正によって、電子取引に関わる書類はすべて電子での保存が必要となりました。
帳簿を電子化して管理すれば、紙を使用するより経費を削減できるメリットも得られます。
加えて、インボイス制度により企業の請求書や領収書の管理が複雑化したこともあり、ERPを導入すれば、請求書や領収書の管理が簡単になります。この2つの影響により、全国的にクラウドERPが普及したと言えるでしょう。
▷SCMとは?ERPとの違いや特徴・導入するメリットとデメリットを紹介
ERPを自社に導入する際の選び方・比較ポイント
ERPを導入する際には、選ぶ際のポイントを理解しておく必要があります。
既存業務との適合性
ERPは製品によって機能が異なるため、既存業務との適合性を確認して導入後の不具合を防ぐために取り組むことが大切です。
ERP機能と既存業務・商習慣とが合わない場合、カスタマイズが必要になります。カスタマイズのために機能開発・追加を行うと、大きなコストがかかってしまうのです。できるだけコストを削減するためにも、自社に合った製品を選びましょう。
カスタマイズ性
中長期的に利用する場合、カスタマイズ性の高いERPにこだわってください。長期運用の中で業務プロセスに変更があっても、柔軟に対応できるためです。カスタマイズ性が低いと変更後の業務プロセスに対応できず、業務効率が下がる恐れがあります。
導入後の運用を考慮すると、カスタマイズ性の高い製品を選べば管理しやすくなるでしょう。
ベンダーのサポート体制
ERPを提供するベンダーが、どのようなサポートをしてくれるかも確認すべきポイントです。
導入後にトラブルや不明点が生じる場合も多く、サポート体制が充実していれば安心して利用できます。
初めて利用する方向けのセミナーを実施しているベンダーもあるので、事前に確認しておきましょう。セミナー受講やリサーチを重ねて、サポート内容をしっかりとチェックしてください。
▷ERPコンサルタントとは?役割や必要なスキル・年収を紹介
ERPを自社に導入する際の注意点
最後に、ERP導入時における注意点を紹介します。
対象となる業務を明確にする
ERP導入の対象となる業務を洗い出しておきましょう。特定の業務や業界に特化したERPも多く、相性が異なります。
すべての業務にERPを取り入れるのは、現実的ではありません。導入する範囲を決め、ERP導入による成果や目標を明確化しましょう。導入する目的を整理すれば、必要な業務に絞ってERPを取り入れられます。
現状の業務への理解を深める
ERPを導入すると、既存業務のプロセスが大きく変わる可能性があります。
現状の業務を正しく理解・把握しなければ、ERP導入による変化点がわかりません。
変化に対応するためにも、現状の業務への理解を深めることが大切です。ERPによって、業務工程の何が削減・変更されるのかを認識しておきましょう。
社内への周知を徹底する
ERPを導入する業務と、変更・削減となる作業が整理できたら社内へ周知しましょう。ERPの採用で業務プロセスが大きく変わると、現場担当者に混乱や不満を招く恐れがあります。
導入することにより、既存業務がどう変わるのか、どんな成果を得られるのかを周知してください。システム管理者だけでなく、現場担当者にも伝えることが大切です。
ERPの国内外のシェアを押さえておこう
国内外におけるERPのシェア率やクラウド型が普及している理由、導入時のポイント・注意点を解説しました。
オンプレミス型に比べると、クラウド型は導入・運用にかかるコストを削減できます。テレワークを始めとする、近年の働き方にも柔軟に対応可能です。
世界中で利用されているERPのシェア率を把握し、市場拡大の理由を正しく理解しておきましょう。
ERPを選ぶ際は、既存業務への適合性とカスタマイズ性、サポート内容にも目を向けてください。導入時の注意点も参考に、自社に向いているERP製品を取り入れましょう。
ERP(基幹システム)の記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら