ストレスチェックで高ストレス者への面談内容とは?流れやメリット・デメリット
労働安全衛生法に基づき義務化された、ストレスチェック。メンタルヘルスの不調を防止するために実施されており、高ストレス者と判断された場合には面談の実施が推奨されています。本記事では、ストレスチェック高ストレス者面談の内容やメリット・デメリットを紹介します。
目次
ストレスチェックでの高ストレス者面談とは?
ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を目的に、50名以上の労働者を抱えるすべての事業場に実施が義務づけられた制度です。
国が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」などを用いて労働者に定期的なヒアリングを行い、労働者に自身のストレス状態を把握してもらうほか、労働環境の改善に役立てます。
ストレスチェック調査の結果、高ストレス者として判定された労働者に対しては、医師による面接指導を経て必要な対策を講じることが求められます。
[出典:厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」]
▷ストレスチェックとは?義務化された背景や目的・実施方法を簡単に解説
「高ストレス者」はどのような基準で決まる?
高ストレス者の判定基準は、主に2種類あります。
1つ目は、厚生労働省が定めた基準を用いるケースです。職業性ストレス簡易調査票でヒアリングを行い、質問のカテゴリごとに合計点数を算出した結果、基準点を超えた人が高ストレス者として判定されます。
2つ目は、衛生委員会での調査審議で高ストレス者を決めるケースです。産業医の意見を参考にしつつ、ストレス値の高い労働者がいるかを判別していきます。
▷ストレスチェックで高ストレス者が出た場合の対応|放置するリスクや判定基準について
高ストレス者面談の目的
ストレスチェックで高ストレス者と判定された労働者は、ストレスを原因とする心身の不調のリスクが高いため、医師による個別面談が求められます。
医師が面談を行うことで高ストレス者のストレス要因を明らかにし、適切な対策を講じて不調を未然に防ぐことが面談の目的です。
また、専門知識を持つ医師からアドバイスを受けることで、労働者は自身の状況を整理しながらストレスの対処法を学び、セルフケアにもつなげられます。
高ストレスの労働者を放置した場合のリスク
労働者のストレスを放置すると、メンタルヘルス不調や生産性の低下を招き、最悪の場合は離職や訴訟にまでつながるリスクがあります。
面談を通じて早期に対策を講じることで、労働者が安心して働ける環境となり、企業全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。
ストレスチェック高ストレス者への具体的な面談内容
高ストレス者から面接指導の申し出があった場合、申し出からおよそ1か月以内での面談の実施が推奨されています。
医師との面談では、主に以下の内容を高ストレス者に質問し、その回答結果をもとに医師が報告書・意見書を作成します。
- 勤務状況
- 心身の健康状況
- 生活状況
- ストレス要因
それぞれの内容と目的を解説していきます。
勤務状況
まずは以下のような勤怠実績を基に、業務の内容や職場の環境が高ストレス者にどのような影響を与えているのかを確認します。
- 労働時間・残業時間
- 業務量
- 職場の人間関係
- 他の従業員からの支援の有無
- 前回の検査以降の業務・役割の変化
これらの情報をふまえて労働者の勤務状況を把握し、ストレスの原因を探っていきます。
心身の健康状況
次にストレスチェック結果を基に、抑うつ症状等の確認を行います。精神症状の有無や身体症状に関してヒアリングし、労働者の健康状態に異常がないかを把握するのが目的です。
生活状況
高ストレス者の場合、ストレスによる過食や不眠など、生活習慣に変化が起きている可能性があります。
- 食生活に変化はないか
- 睡眠時間は適切に確保できているか
- 飲酒や喫煙の量が増えていないか
- 運動量に変化は見られるか
これらの情報を過去の健診結果と比較しながら、高ストレス者の生活に変化が起きているのか、起きている場合はどの程度の変化なのかを確認します。
ストレス要因
状況から推察した第三者の見解と、高ストレス者が実際に感じているストレス要因は異なる可能性があります。
そのため、職場の心理的な負担をどのように感じているのか、プライベートから生まれているストレスはあるのかなど、高ストレス者自身の意見もヒアリングします。
ストレスチェック・高ストレス者面談の流れ
事業者側が高ストレス者に面談を実施する際は、主に6つのステップがあります。
- 労働者へストレスチェックを行う
- ストレスチェックの結果を通知する
- 本人からの申し出後「1か月以内」に医師による面談・指導を行う
- 面談を実施した医師から意見を聞く
- 就業上の措置を実施する
- 労働基準監督署へ報告する
ここからは、それぞれのステップの詳細や具体的な内容について解説します。
1.労働者へストレスチェックを行う
まずは高ストレス者の判別を行うために、紙媒体あるいはWeb上のアンケートフォームなどを用いて、労働者に対してストレスチェックを実施します。ストレスチェック調査票には、「職業性ストレス簡易調査票」あるいは「新職業性ストレス簡易調査票」を活用するのが一般的です。
職業性ストレス簡易調査票は57項目の設問を通じて、仕事のストレス要因やストレスの反応、周囲のサポート状況を把握します。対して新職業性ストレス簡易調査票は、職業性ストレス簡易調査票の57項目に23項目の設問が追加されたもので、計80項目で構成されています。
ストレスチェック実施後は、実施者が回収した質問票を基にストレスの程度を評価し、高ストレス者を選定します。なお、職業性ストレス簡易調査票を活用する場合、高ストレス者の判定基準としては主に以下の内容が挙げられます。
- 心身のストレス反応に関する設問項目の合計点数が高い
- 心身のストレス反応に関する設問項目および仕事のストレス要因・周囲のサポートに関する設問項目の合計点数が高い
2.ストレスチェックの結果を通知する
ストレスチェックの結果を通知する際に、高ストレス者に判定された労働者には面談の対象者であることを伝え、面談の希望を申し出るよう勧めます。
通知には面接指導の要否が記載されているため、プライバシーへの配慮が必要です。実施者は封書あるいは電子メール等を活用し、労働者に対して結果を個別に通知しなければなりません。
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3.本人からの申し出後「1か月以内」に医師による面談・指導を行う
高ストレス者から面談の申し出があった場合、おおよそ1か月以内に医師による面談・指導が必要です。面談・指導は、事業所の産業医あるいは産業保健活動に従事する医師が担当することが推奨されています。
面談にはプライバシーの確保が重視されるため、周囲に面談内容が漏れ聞こえない場所での実施が求められます。近年はWeb会議ツールを使ってオンラインで実施するケースもありますが、インターネット接続が不安定になる可能性もあるため、緊急連絡先を確保することが大切です。
4.面談を実施した医師から意見を聞く
面談実施後、事業者は担当医師から労働時間や職場環境など就業上の改善点についてアドバイスを受けます。
この際、高ストレス者に就業制限あるいは療養等による休業が必要な状態なのか、医師の意見を聞くことが大切です。
5.就業上の措置を実施する
医師の意見を基に、就業場所の変更や労働時間の短縮など、具体的な就業上の措置を決定・実施します。
ただし、労働者の不利益にならないよう注意しなければなりません。労働者の意見にも耳を傾けながら慎重に措置を実行しましょう。
6.労働基準監督署へ報告する
事業者には、労働基準監督署に対してストレスチェックと面接指導の実施状況の報告が義務付けられています。
厚生労働省が規定する様式に基づいて書類を作成する必要があるため、開示が求められる情報を事前に確認しておきましょう。
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ストレスチェック・高ストレス者面談のメリット
ストレスチェックを実施し高ストレス者に面談を行うことは、企業にとってもメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのか、高ストレス者の特徴やストレスによる企業への影響も含めて解説します。
ストレス状態の自覚・対策を促せる
高ストレス者は、自分自身のストレス状態に気づいていない場合が多くあります。この場合、高ストレス者はストレスをコントロールできず、業務だけでなく私生活にも影響が生じるリスクがあるでしょう。
だからこそ、高ストレス者が自分自身のストレス状態を認識し、適切な対策を講じるきっかけとして、ストレスチェックと面談が有効です。
適切な就業上の措置を取れる
メンタルヘルスに関する専門知識がない状態では、業務内容の調整や休養の促進などの必要性は理解できたとしても、どのレベルで実施すべきかを適切に判断できません。
そのため、高ストレス者の心理状態やストレス要因をふまえて、医師から職場環境の改善に対する具体的なアドバイスをもらうことで、企業はより効果的な措置を取りやすくなります。
職場環境の早期改善が期待できる
定期的なストレスチェックや面談の実施によって、少しずつ部署や業務ごとの特徴や傾向も見えてくるでしょう。
高ストレス者の部署や業務において健康リスクとなるストレスの要因を特定できれば、企業はより早期に職場環境の改善策を実行できます。
離職率の低下につながる
メンタルヘルスの不調はパフォーマンスにも影響を及ぼすため、高ストレス者は仕事に対してマイナスな感情を抱きやすくなります。
この点においてストレスチェックにおける面談は、高ストレス者の悩みを理解し、負担を軽減するなど適切なサポートを提供する絶好の機会です。
面談を実施することで、従業員の職場に対する信頼感を高め、仕事への満足度が好転する可能性が高まります。結果として離職率の低下が期待でき、企業は人材を確保しやすくなるでしょう。
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ストレスチェック・高ストレス者面談のデメリット
ストレスチェックにおける高ストレス者の面談は、企業にとって複数のメリットがありますが、一方で運用上のリスクもあります。以下のデメリットがあることも念頭に置きましょう。
面談の実施がストレス増加につながる可能性がある
面談は心理的安全性が適切に確保されている状況でなければ、期待した効果を発揮できません。
高ストレス者が情報の流出を疑っている場合、面談で本質的な回答を得ることが難しく、結果として企業も十分な対策を行えないリスクがあります。また、診断結果による仕事への影響を懸念し、それがストレス増加につながることもあるでしょう。
そのため、情報の取り扱いには細心の注意を払い、面談が仕事にマイナスな影響を与えないことを丁寧に説明することが大切です。
面談時間や回数に制限がある
面談では高ストレス者と医師が初対面であることも多く、問題の核心に到達するまでに時間を要してしまうこともあるでしょう。
しかし、面談の時間と回数は限られているため、制限の中で必要な情報を適切に集められるかが運用における大きなポイントになります。
面談を受けない従業員への対応を考慮しなければならない
高ストレス者は、以下のような理由で面談を拒むケースがあります。
- 面談の時間を取ることが難しい
- 情報が周囲のメンバーに漏れることを疑っている
- プライバシー領域に踏み込まれることを嫌がっている
- 医師に相談することで解決するイメージが湧いていない
- 企業からマイナス評価を受けるのではないかと誤解している
面談の目的やプロセスを明確に説明し、面談を受けることが従業員にとってどのようなメリットになるのかを理解してもらうことが大切です。
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高ストレス者面談を行う際の注意点
高ストレス者面談には、運用面でいくつかの注意点があります。代表的な4つの注意点について解説します。
面談は強制できない
ストレスチェックで高ストレス者と判定されたとしても、面談の実施は本人の申し出が必須となります。
そのため、企業側が職場改善を理由に面談を強制することはできません。
高ストレス者が面談を申し出ることには一定のハードルがあるため、相談しやすい環境作りやメンタルヘルスと向き合う機会を設けていくことが大切です。
▷ストレスチェックで高ストレス者が出た場合の対応|放置するリスクや判定基準について
面談の申し出には迅速に対応する
高ストレス者は、仕事や私生活等ですでに何かしらの問題が起きている可能性が高く、速やかな対応が求められます。
そのため、面談の申し出があった場合は1か月以内を目安に、医師との面談を実施するように日程調整を行いましょう。
面談の結果は5年間保管する
ストレスチェックや面談の結果・記録は、5年間の保管が義務付けられています。
書面やデータを取り扱う際は、第三者が閲覧できないように保管体制を厳重にすることが大切です。
▷ストレスチェックの結果の保管方法とは?保存期間や保存場所を紹介
要件を満たせばオンライン面談も可能
高ストレス者との面談は、原則として対面での実施が推奨されていますが、厚生労働省が定める以下の要件を満たせばオンラインでの面談実施も可能です。
- 事業場の産業医が面談を行う場合
- 事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当する医師が面談を行う場合(過去1年間以上)
- 過去1年以内に労働者が所属する事業場の巡視経験のある医師が面談を行う場合
- 過去1年以内に該当労働者に対面での指導等を実施した医師が面談を行う場合
[出典:厚生労働省「情報通信機器を用いた面接指導の実施について」]
ストレスチェック面談を受けやすい環境を整えよう
ストレスチェック面談は、高ストレス者のメンタルヘルス不調を予防・解消し、就業上の措置や職場改善を行ううえで重要な施策です。
一方で、衛生委員会での審議や医師との連携、労働者からの理解が欠かせないため、運用には適切な準備が求められます。本記事を参考にストレスチェック面談の運用について理解し、労働者が面談を受けやすい環境を整えていきましょう。
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