従業員退職時に会社側がすべき手続きとは?流れや用意すべき書類

最終更新日時:2023/11/24

労務管理システム

退職時の労務管理

従業員が退職する際、会社側では様々な手続きが必要となります。用意すべき書類や手続きは複数あり、スムーズに対応していくことが必要です。そこで本記事では、そんな従業員の退職時に必要な会社側の手続きについて、流れや労務管理システムの活用方法などを詳しく解説していきます。

この記事の要約

・退職時には社会保険、雇用保険、所得税、住民税などの手続きが必要
・従業員の退職前、退職後で手続きが異なる
・退職手続きを効率化する上では、e-Gov、労務管理システムの利用がおすすめ

従業員の退職時に必要になる会社側の手続き

従業員が退職する際、会社側では以下の手続きを行う必要があります。

  • 社会保険関連の手続き
  • 雇用保険関連の手続き
  • 所得税・住民税関連の手続き

各手続きの詳細を詳しく解説します。

社会保険関連の手続き

従業員は企業を退職すると社会保険資格を喪失します。そのため、資格喪失後5日以内に、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を管轄の年金事務所へ提出しなければなりません。提出の際は添付書類として、本人および被扶養者分の健康保険被保険者証が必要です。提出方法は、郵送や窓口持参のほか、電子申請も可能です。

退職の場合、社会保険資格が喪失するのは、退職日の翌日です。したがって3月31日に従業員が退職する際は、4月1日に資格喪失となるため、5日後の4月5日までに手続きを完了させます。

社会保険料の支払いは、社会保険資格喪失日が属する月の前月まで発生します。3月31日に退職する場合、資格喪失日は4月1日であり、前月である3月分までの保険料を控除しなければなりません。もし3月30日に退職する場合は、資格喪失日が3月31日となるため、保険料を控除するのは2月分までとなります。従業員の退職日によって、控除する保険料の金額が変化するため注意しましょう。

また社会保険のうち、健康保険は退職後も任意で最長2年間継続できます。したがって企業側は従業員に継続の希望について聞かなければなりません。継続を希望する場合、資格喪失日から20日以内に、退職者本人が「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出する必要があるため、その旨を説明しましょう。

[出典:日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」]

[出典:全国健康保険協会「健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について」]

雇用保険関連の手続き

退職日の翌々日から10日以内に、「雇用保険被保険者資格喪失届」を管轄の公共職業安定所へ提出します。添付書類として、雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)が必要です。従業員が3月31日に退職する場合には、4月2日の10日後である4月11日までに手続きを行います。

資格喪失届および離職証明書の内容によって、失業金給付の受給資格や給付日額、所定給付日数、給付制限の有無などが決まります。内容に誤りのないよう、正確に記載しましょう。

離職証明書は公共職業安定所にて入手可能です。従業員本人による自署が必要となるため、退職前に内容確認および自署を行う必要があります。ただし、従業員による自署が難しい場合には、理由を記載したうえで事業主の自署も認められています。

なお、従業員が離職票の交付を希望しない場合には、離職証明書の提出は必要ありません。ただし、後に離職証明書の交付請求を受けた場合には、離職証明書を作成・交付します。

[出典:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」]

所得税・住民税関連の手続き

所得税および住民税に関する手続きも必要です。

まず、住民税の納付方法が特別徴収の場合、退職日の翌月10日までに「給与支払報告に係る給与所得異動届書」を管轄の役所へ提出しなければなりません。

住民税は前年の所得額を基に算出されており、翌年6月から1年間かけて徴収されます。企業務めの場合は、給与から住民税が差し引かれる特別徴収によって納付するのが一般的です。したがって従業員が退職する際、住民税の残額を一括で徴収するか、納付方法を変更しなければなりません。

従業員が退職した時期によって、住民税の納付方法は異なります。

  • 1~5月に退職:最終給与から一括天引き
  • 6~12月に退職:普通徴収に切り替えもしくは一括徴収

もし次の職場が決まっている場合には、転職先で特別徴収を継続することも可能です。

さらに、退職日から1ヶ月以内に、従業員へ源泉徴収票を送ります。源泉徴収票は転職先の年末調整や確定申告で必要となる書類です。期限内に送付しなければ、所得税法242条により罰金が課されるため、気を付けましょう。

[出典:e-Gov 「所得税法 第二百四十二条五項」]

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従業員退職時の流れ|会社側で行うべきこと

従業員が退職する際、会社側で行うべきことは多数あります。退職前と退職後に分けて、やるべきことの流れを紹介します。

退職前にやるべきこと

退職前は以下のことを行います。

  • 退職願の受理および退職日の決定
  • 有給休暇消化の対応
  • 退職手続きの説明
  • 貸与物や健康保険証の回収
  • 各種書類の準備
  • 退職金の準備

退職前は、社内での調整や退職手続きの準備がメインです。退職までにどのような準備が必要か、退職後にどのような手続きを行う必要があるのか、従業員に対してしっかり説明しましょう。また、雇用保険被保険者証や年金手帳は、「退職時」に必ず返却するようにしてください。

退職後にやるべきこと

退職後は以下のことを行います。

  • 社会保険資格喪失手続き
  • 雇用保険喪失手続き
  • 所得税、住民税関連の手続き
  • 源泉徴収票の発行
  • 退職証明書の発行
  • 離職票の発行
  • 健康保険被保険者資格喪失確認通知書

退職後は、公的な手続きが中心となります。会社側での手続きが遅れると、退職者に迷惑がかかるだけでなく、罰金が課される場合もあるため、迅速な対応が必要です。

従業員退職時に会社側が回収するもの

退職日を迎えるまでに、従業員から以下の物を必ず回収しましょう。

  • 健康保険証(本人および扶養家族分)
  • 貸与品(社員証や名刺、制服、携帯電話、パソコンなど)
  • 社内データや資料

健康保険証は社会保険資格喪失手続きを行う際に必要です。本人の分だけでなく、扶養家族分も忘れずに回収しましょう。

また、会社からの貸与品および社内データも全て返却してもらいます。回収を忘れると、機密情報の流出や悪用されるリスクが高まるため、確実に回収しましょう。

従業員退職時に会社側が渡すもの・用意すべき書類

会社側では以下の書類を用意する必要があります。

  • 源泉徴収票
  • 退職証明書
  • 雇用保険被保険者証
  • 離職票
  • 健康保険資格喪失証明書

それぞれについて詳しく解説します。

源泉徴収票

源泉徴収票とは、1年間の給与総額や控除額、所得税額などが明記された書類です。転職先での年末調整や確定申告を行う際に必要となります。

源泉徴収票は基本的に1月1日から12月31日までの情報が記載されるものですが、必要に応じていつでも発行が可能です。3月31日付で退職する場合、その年の1月1日〜3月31日までの情報が記載されます。

源泉徴収票の発行は、所得税法第226条において、退職から1ヶ月以内に行わなければならないと定められているため、期限内に行いましょう。

[出典:e-Gov 「所得税法 第二百二十六条一項」]

退職証明書

退職証明書とは、当該従業員が退職したことを証明するための書類です。就業期間や業務内容、地位、賃金、退職理由などを明記します。転職先において事実確認等に用いられたり、各種手続きにおいて離職を証明する際に利用できます。

退職証明書は私文書であり、発行が義務付けられているわけではありません。しかしながら、労働基準法第22条において、従業員から発行を請求された際は必ず発行しなければならないと規定されています。発行を拒んだり延期したりした場合には、労働基準法違反により30万円以下の罰金が課されます。退職証明書の作成方法については、厚生労働省が見本を提示しているため、参考にするとよいでしょう。

[出典:e-Gov 「労働基準法 第二十二条」]

雇用保険被保険者証

雇用保険被保険者証は、従業員が雇用保険に加入していることを証明する書類です。雇用保険被保険者番号が明記されており、転職先においても同じ番号が引き継がれます。転職先へ提出するほか、教育訓練給付金に申請する際も必要です。

雇用保険被保険者証は基本的に従業員個人で保管するものですが、場合によっては会社側で保管している場合もあります。退職日までに忘れずに返却しましょう。

離職票

離職票とは、会社を離職したことを証明する書類です。退職証明書が私文書であるのに対し、離職票は公文書であり、失業給付を受給するときや健康保険等の手続きを行うために必要となります。離職票は、退職者本人が希望したとき、および、退職者が59歳以上の場合は必ず発行しなければなりません。

離職票は、会社側が「被保険者資格喪失届」と「被保険者離職証明書」を公共職業安定所に提出することで発行されます。離職票は公共職業安定所から会社に送られるため、会社が退職者へ渡します。

退職者へ送付する離職票は、離職票-1、離職票-2の2枚です。離職票-1には退職者の基本情報、離職票-2には退職理由などが記載されています。2枚セットで退職者に送付しましょう。

健康保険資格喪失証明書

健康保険資格喪失証明書は、健康保険資格を喪失したことを証明する書類です。従業員が退職後、国民健康保険に加入する際に必要となります。

健康保険資格喪失証明書の発行は義務ではなく、退職者からの希望があった際に発行します。年金事務所でも発行可能ではあるものの、時間がかかる場合もあるようです。円滑に手続きを行えるよう、退職者からの希望があった場合には会社で対応しましょう。

労務管理とは?どんな仕事?具体的な仕事内容や重要性を詳しく解説!

従業員退職時の手続きを効率化する方法

従業員が退職する際の手続きは工数が多く煩雑です。そのなかで迅速に手続きを行うためには、システムを活用して効率化することが有効です。

退職手続きを効率化する方法として、以下の手段があります。

  • 労務管理システムを活用する
  • e-Gov(イーガブ)を利用する

それぞれ解説します。

労務管理システムを活用する

労務管理システムとは、会社の労務に関する業務を効率化できるシステムです。労務管理システムには、主に以下の機能があります。

  • 入退社手続き管理
  • 社会保険等の管理
  • 各書類作成
  • 給与管理・明細書発行
  • 勤怠管理
  • マイナンバー管理
  • 雇用契約管理

労務管理システムを活用することで、各証明書などをシステム上で簡単に作成できます。作業負担を大幅に削減し、書類作成ミス防止などのメリットも期待できるでしょう。

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e-Gov(イーガブ)を利用する

e-Govとは、デジタル庁が運営する、行政情報の発信や手続きなどを行えるポータルサイトです。e-Govには、主に以下の3つの機能があります。

  • 法令や行政情報などの検索
  • 行政機関への申請・届出の手続き
  • 意見・要望の投稿

オンライン上での申請・届出は24時間365日いつでも対応しています。e-Govを利用することで、書類送付の手間を省き、スピーディ―な申請が実現できるでしょう。

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労務管理システムを導入して退職時の手続きを効率化しよう

本記事では、従業員が退職する際に必要となる手続きや、会社側が注意すべきポイントなどを説明しました。従業員が退職する際には、迅速に手続きを完了させる必要があります。スムーズに手続きを進められるよう、労務管理システムなどを活用し、業務の効率化を目指しましょう。

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