ピラミッド型組織とは?特徴やメリット・デメリット、フラット型組織との違い
マネジメントの中でも重要な要素である組織のカタチ。ピラミッド型組織はその組織のカタチの一つとして多くの企業が採用していますが、果たしてそのメリットとは一体何なのでしょうか。本記事では、そんなピラミッド型組織のメリットやデメリット、フラット型組織やアメーバ型組織との違いを詳しく解説していきます。
目次
ピラミッド型組織とは?
ピラミッド型組織とは、組織の管理や意思決定が上位から下位に段階的に伝わっていく組織形態のことです。この形式は上層部が最高権力を握り、下層部は上層部の指示に従うという階層的な組織構造をとります。
この形態の組織図では、組織の上位にいる役員や管理職が組織のトップです。その下には部門長や現場責任者、最下層には一般社員や作業員が存在します。このように、階層構造が上下に階層化されていることから「階層型組織」や「ヒエラルキー型組織」とも呼ばれています。
ピラミッド型組織の特徴として、責任範囲や業務範囲が明確に定まっているため、業務の進行がスムーズになるという点が挙げられます。また統制が取りやすいため、大規模な組織に向いているでしょう。
ただし、情報伝達に時間がかかることや、上位の指示が現場に十分に反映されないという課題もあります。
このように、ピラミッド型組織は企業規模が大きい場合に有効な組織形態です。とはいえ、近年は情報化社会やグローバル化の進展に伴い、柔軟でフラットな組織形態が求められる傾向があります。
ピラミッド型組織は日本に多い傾向
ピラミッド型組織は海外の各国と比べて特に日本に多い傾向のある組織形態であり、特に設立から数十年以上が経過している企業に多く見られます。
日本に多く見られるのには、モノを大量に生産する企業に適した組織形態であり、高度経済成長期に多くの企業がピラミッド型の組織形態を採用したためです。
しかし、近年においては様々な組織形態が生まれてきており、ピラミッド型からの組織の移行がされつつあります。
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ピラミッド型組織とフラット型組織の違い
ピラミッド型組織と対照的な組織形態が、フラット型組織です。ピラミッド型組織とフラット型組織では、組織の階層構造が大きく異なります。
ピラミッド型組織は、上位から下位に向かって明確な階層構造を持ちます。トップマネジメントや役員、管理職や現場責任者、一般社員などが存在しているのが特徴です。このような組織は、情報の伝達や意思決定が上下関係を経由するために遅れることがある反面、責任範囲が明確であり、組織の方向性を統制しやすいという特徴があります。
一方フラット型組織は階層構造がフラットであり、従業員の意見や提案が経営陣に直接伝えられ、意思決定がスピーディーであることが特徴です。このような組織では、経験やスキルに基づく役職や肩書きよりも、プロジェクトにおける役割や業務内容に基づいて、従業員同士が協力し合います。
そのため、部署を横断してさまざまな業務をこなせるようになる、従業員の自主性や自律的な行動が促進されるといった効果が期待できるでしょう。また、フラット型組織ではそれぞれが対等な立場で意見を出し合えるため、意見交換が盛んになり、クリエイティブなアイデアが生まれやすいというメリットもあります。
一方で業務範囲が曖昧で責任の所在がはっきりしない、進捗管理が難しいといった課題もあることから、従業員には高い自己管理能力が求められます。また、規模が大きくなると組織の統制がとりづらくなり、意思決定を行う経営者の負担が増大する点もデメリットです。
どちらにもメリット・デメリットがあり、業種や経営方針、人材配置などによって最適な組織形態は異なるといえるでしょう。
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ピラミッド型組織とアメーバ型組織の違い
アメーバ型組織とは、京セラ創業者である故稲盛和夫氏の「会社経営とは一部の経営トップのみで行うものではなく、全社員が関わって行うものだ」という考えに基づく組織形態です。
ピラミッド型組織とアメーバ型組織では、組織の運営方法が大きく異なります。
ピラミッド型組織は上から下へ命令が下り、下から上へ報告が行われる、いわゆる従来の階層型の組織形態です。組織の上位に位置する人物が方針を決め、決定事項を下位に伝えて業務が進められます。決定権や情報が上位に集中するため情報が偏りやすく、決定の速度や正確性に課題が生じる可能性も否めません。
一方アメーバ型組織は、企業を「アメーバ」と呼ばれる5~10人の小集団に細分化し、各アメーバをそれぞれ一つの企業とみなして独立採算制で運営します。各アメーバは目標を設定し、自らがその目標を達成するために必要な業務を自己裁量で行います。
アメーバ型組織には年齢や役職などの階層が存在せず、実力主義で各個人が独立しており、それぞれのスキルが高いのが特徴です。また、決定権や情報が各アメーバに分散されることから、迅速な決定が可能となり、市場変化に素早く対応できるというメリットがあります。
ただし、各アメーバが独立して活動するため企業全体としての統制がとりづらい、つながりが薄れてしまう可能性があるといった点はデメリットといえるでしょう。また、年次や経験にとらわれないため、従業員には常に相手を尊重する姿勢が求められます。
このようにピラミッド型組織とアメーバ型組織は、運営方法において大きく異なります。企業が採用する組織形態は、業種や事業内容、経営理念などによって最適なものが異なるため、よく検討して採用する必要があります。
ピラミッド型組織のメリット
ピラミッド型組織のメリットは主に2つあります。
- マネジメントがしやすい
- 経営者の意思が反映されるスピードが速い
各メリットについて、くわしく見ていきましょう。
マネジメントがしやすい
ピラミッド型組織の最大のメリットは、マネジメントがしやすいことです。ピラミッド型組織は、各階層の上司が下層の部下を指揮することで統制が取りやすい構造になっています。
上司は部下の業務内容や進捗状況を的確に把握できるため、部下に対して適切な指導や評価を行えます。さらに部下の能力に応じた人事異動や教育研修などを実施することで、組織全体のパフォーマンス向上にもつなげられるでしょう。
またピラミッド型組織では、各部署に明確な役割分担があり、業務プロセスも明確です。そのため、業務の進行状況や問題点などを素早く把握でき、適切な対応を行えます。
ピラミッド型組織はマネジメントがしやすい構造であるため、大規模な企業や安定的な経営を目指す企業にとっては有効な組織形態といえるでしょう。
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経営者の意思が反映されるスピードが速い
ピラミッド型組織は、経営者の意思が反映されるスピードが速いというメリットがあります。
たとえば、経営者が新しい製品の開発やサービスの提供を決定した場合、上層部がその情報を下層部に伝達し、各部署が必要な対応を行います。このときピラミッド型組織では、上層部から下層部に向けて一方的に指示を出すことが可能です。
そのため、情報の伝達や意思決定がスピーディーに行えて、新しい製品やサービスが早く市場に投入され、競争力の維持・向上が期待できるでしょう。
また、ピラミッド型組織では、各階層の上司が下層の部下を管理し、業務に対する指導や評価を行うことが可能です。経営者が定めた方針や目標を各階層が迅速に共有できるため、各部署の業務が効率的に進められる点もメリットといえるでしょう。
以上のように、ピラミッド型組織は、経営者の意思が素早く反映される構造です。そのため、迅速な意思決定や効率的な業務進行が可能となります。一方で情報や意見が上層部に伝わりにくく、下層部の意見が反映されにくいといった問題もあるため、その点には注意が必要です。
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ピラミッド型組織のデメリット
ピラミッド型組織のデメリットは2つあります。
- 従業員が自立して行動できなくなるリスクがある
- ポジションによって責任が重くなり負担が大きくなる
各デメリットについて、くわしく見ていきましょう。
従業員が自律的に行動できなくなるリスクがある
ピラミッド型組織では上位の管理職が決定を下し、下位の従業員がその指示に従う形で業務が進められます。このため、従業員は自分自身で判断して行動することが少なく、上層部の指示に忠実に従わなければなりません。
その結果、従業員の能力やスキル、アイデアを活かすことができなくなり、自律的な行動が封じられるリスクがあります。また、従業員が自分で考えて行動することが少なくなるため、企業全体が新しいアイデアや改善点を見つけにくくなり、組織の革新性が低下する可能性もあるでしょう。
従業員が自律的に考えて行動することができるフラット型組織などと比べると、ピラミッド型組織は従業員の成長やスキルアップの機会が制限される、環境の変化に迅速かつ柔軟に対応することが難しいといった懸念があるといえます。
ポジションによって責任が重くなり負担が大きくなる
ピラミッド型組織では、上に位置する人間ほど責任や業務量が重くなる傾向があります。ポジションによっては、役割や責任の重さに押しつぶされてしまう場合もあるでしょう。
とくに中間管理職の場合は、上層部からのプレッシャーや部下からの不満、チーム内や部署間の調整などで板挟みになることも少なくありません。また上位の管理職になるほど、業務内容が統括的で広範囲にわたります。そのため、複数のタスクを同時に進める必要があり、時間的・精神的な負担が大きくなる事態も考えられます。
このように、管理職に大きな負荷がかかりやすい点も、ピラミッド型組織のデメリットといえるでしょう。
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ピラミッド型組織で失敗しないためのポイント
ピラミッド型組織で失敗しないためのポイントは2つあります。
- 管理職の育成を強化する
- 責任の所在を明確にする
それぞれのポイントをくわしく見ていきましょう。
管理職の育成を強化する
ピラミッド型組織の形成に失敗しないためには、管理職層への教育を強化し、マネジメント能力の高い管理職を育成することが重要です。
企業の規模が大きくなり従業員が増えてくると、自律的に行動できる従業員だけで組織を構成・維持することは困難になります。また、管理職による適切な指導や評価によって成長が促進され、能力を発揮できる人材もいるでしょう。
そのため、ピラミッド型組織においては、従業員への教育以上に管理職の育成やマネジメント能力の強化が重要なポイントとなります。管理職に権限を委譲し、従業員に対して的確なマネジメントを行うことにより、従業員の成長や組織力の強化が実現できます。
管理職層のマネジメント能力を高めるためには、管理職向けの教育・研修プログラムや定期的なフィードバックを実施し、計画的な育成を行うことが大切です。また、経営者や上層部から従業員に対して何か指導したいことがある場合、直接伝えるのではなく、必ず管理職を通して伝えるというプロセスを守ることも必要といえるでしょう。
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責任の所在を明確にする
業務上の役割分担を行い、責任の所在を明確にすることも、ピラミッド型組織を形成するうえで重要なポイントです。
ピラミッド型組織では上司が複数の部下に業務を割り振り、部下は上司からの指示に従って業務を遂行します。しかし具体的な役割分担や責任の所在、権限などが曖昧だと、ミスやトラブルが発生した場合に迅速な対応がとれず、部署内での人間関係がギクシャクすることにもなりかねません。
従業員が責任感を持って業務を遂行し、組織全体として効率的かつ円滑な運営を実現するには、各自の役割や責任の所在を明確化する必要があります。
また経営者が管理職に権限を委譲し、運営上の責任と権限を明確にすることは、部下からの信頼獲得につながります。部下である従業員も安心して業務に取り組めるようになるため、パフォーマンスが上がり、組織力の強化やエンゲージメントの向上も期待できるでしょう。
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ピラミッド型組織のメリットやデメリットを押さえておこう
ピラミッド型組織は、日本を含め世界中の企業で広く採用されている組織形態です。
メリットとしては、トップダウンで物事が進められるため、経営者の意思が反映されるスピードが速く、組織を統制しやすいという点があげられます。一方で、従業員の自律的行動が抑制される、ポジションによって責任が重くなるといったデメリットも忘れてはいけません。
ピラミッド型組織を形成するうえで、管理職の育成強化や責任の所在の明確化は重要なポイントになります。ピラミッド型組織のメリット・デメリットを把握し、発生し得る課題を解決するためのアプローチを事前に取ることが大切です。
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