リーダーシップとは?種類やリーダーに求められるスキル・具体例を簡単解説
組織を成功へと導き、プロジェクトで成果を出すには、リーダーシップが欠かせません。企業の発展のために、リーダーシップについて理解を深めておきましょう。今回は、リーダーシップとはどのような能力なのか、重要なスキルや具体例などと合わせて紹介します。
目次
リーダーシップとは?
リーダーシップは、和訳すると統率力や指導力といった意味を持つ言葉です。実際にビジネスの場で利用される際には、目標を設定してチームの結束力を高め、成果の獲得へ導く能力を意味します。
組織で成果をあげるためには、メンバー一人ひとりが自身に課せられた役割を果たすことが求められます。メンバーの能力を最大限引き出すには、リーダーシップが重要です。メンバーを統率・けん引するには、リーダーは模範となる行動を取り、周囲に示すことが大切です。
リーダーシップは、学習や経験の積み重ねによって習得できます。
マネジメントとの違いは役割
リーダーシップとマネジメントは、組織の目標の達成に向けて取り組む点で共通していますが、それぞれが果たす役割は異なります。
リーダーシップには、メンバーが持つ潜在能力を開花させたり、チームの結束力を強化したりして、チーム全体を目標に導くという役割があります。
一方マネジメントは戦略や計画を設定し、利用可能な経営資源を適切に調整するなど、チームを管理してプロジェクトがうまく進むように整えるのが役割です。
リーダーシップは長期的な視点に基づき物事を検討する一方、マネジメントは短期的で現実的な視点から判断を下します。両者は相互に補完する関係といえるでしょう。
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リーダーシップの目的
リーダーシップの目的をおさえることで、発揮するべきシーンやとるべき行動への理解が深まるでしょう。ここではリーダーシップ論の世界的権威であるジョン・アデアの理論に基づいた「リーダーシップの目的」3つを紹介します。
目標を達成するため
リーダーシップの目的の一つには、組織の掲げる目標を達成することがあげられます。
組織に属するすべての従業員が日々高いモチベーションを持ち、業務に取り組んでいるとは限りません。
目標達成に向けて組織一丸となって業務に取り組むには、リーダーシップを発揮し、従業員の自発性や積極性を引き出す必要があります。
チームの結束を深めるため
チームメンバーの結束を深めるのもリーダーシップが果たす重要な目的の一つです。
従業員によって、仕事の進め方や価値観、モチベーションは異なります。チームの信頼関係が希薄のまま仕事を進めた場合、トラブルや衝突が起きても不思議ではありません。
リーダーシップを行使することで、メンバーが互いに気持ちよく仕事を進められるようチームの結束を促し、士気を高められるでしょう。
個人の能力を成長させるため
リーダーシップは、メンバー個人の成長を促す目的においても行使するものです。従業員一人ひとりの能力が高まれば、組織力強化や収益拡大、生産性向上など、多大なメリットが得られます。
潜在能力を引き出すには、個々の適性や課題を正確に把握したうえで、目標設定やタスクの振り分けを実施するとよいでしょう。定期的に目標の進捗状況を評価することも有効です。
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代表的なリーダーシップ理論
過去にさまざまな学者が提唱したリーダーシップ理論を参考にする場面も少なくないでしょう。ここでは代表的な4つのリーダーシップ理論について紹介します。
PM理論によるリーダーシップの種類
PM理論とは、「集団を発展させるために必要なリーダーシップの機能にはどのようなものがあるか」を考察した結果得られたものであり、リーダーシップ理論の1つとして有名です。1966年に社会心理学者・三隅二不二(みすみ じゅうじ)によって提唱されました。
PM理論では、リーダーシップで重要な指標は目標達成機能(Performance function:P機能)と集団維持機能(Maintenance function:M機能)であるとしています。
P機能とは「成果を高めるために行使するリーダーシップ」を意味し、目標設定・計画立案・指揮監督などにより生産性を向上させる機能を表します。対してM機能の意味は「集団の結束のためのリーダーシップ」であり、チームワークを強化し、人間関係を良好にする機能です。
PM理論ではPとMの大文字と小文字を使い、リーダーシップのタイプを分類します。以下4種類の組み合わせが考えられます。
- PM=P機能とM機能がどちらも高く、成果の獲得にも人間関係にも力を入れている状態
- Pm=成果の獲得を重視する一方、人間関係には気を配らないタイプ
- pM=人間関係を重視する一方、成果の獲得への意欲がやや不足している状態
- pm=目標達成能力と組織力がどちらも低く、リーダーの存在意義が問われる状態
PM理論では、リーダーシップはP機能とM機能を高く持ち合わせた人材がとるべきとしています。
SL理論によるリーダーシップの種類
SL(Situational Leadership)理論とは、1977年に、アメリカのポール・ハーシーとケネス・ブランチャードによって提唱されました。リーダーシップに普遍的なスタイルというものはなく、部下が置かれている状況によって異なる対応を取るべきとする理論です。
SL理論では、リーダーシップを以下の4つのスタイルに分けており、部下の状況に合わせてこれらのスタイルを柔軟に使い分けるものとしています。
- 指示型=信頼関係よりも仕事の達成状況を優先するタイプ
- 説得型=相手の言い分も聞きつつ説得し、同意を得たうえで目標達成を目指すタイプ
- 参加型=仕事の達成状況より人間関係を重視するタイプ
- 委任型=仕事の進め方から意思決定までを部下に任せるタイプ
クルト・レヴィンによるリーダーシップの種類
ドイツの社会心理学者クルト・レヴィンは、リーダーシップを以下3つの種類に分類しています。
- 専制型リーダーシップ=意思決定や状況判断などをすべてリーダーがおこなうタイプ
- 民主型リーダーシップ=リーダーとメンバーが話し合いながら、意思決定をおこなうタイプ
- 放任型リーダーシップ=意思決定や業務遂行の方法などに関して、すべてを個々に委ねるタイプ
ダニエル・ゴールマンによるリーダーシップの種類
アメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンによる理論では、リーダーシップは以下6種類に分類されています。
- ビジョン型リーダーシップ=メンバーに目標を提示しつつ、成果獲得に必要な課題や業務の遂行方法はメンバーに委ねるタイプ。
- コーチ型リーダーシップ=個々の考え方や価値観を尊重しつつ、一人ひとりに合った方法を見出すタイプ。
- 関係重視型リーダーシップ=メンバー間で強固な信頼関係を構築することで、仕事を進めやすい環境を整備するタイプ。
- 民主型リーダーシップ=メンバーの意見を積極的に取り入れ、チームの方針に反映するタイプ。
- ペースセッター型リーダーシップ=リーダーがプレイングマネージャーとして動き、チームを引っ張るタイプ。
- 強制型リーダーシップ=意思決定や業務の遂行方法など、あらゆる内容をすべてリーダーが決定するタイプ。
リーダーシップに求められるスキル
リーダーシップをとるには、どのようなスキルが必要でしょうか。ここではリーダーシップの発揮に必要な5つのスキルを詳しく見ていきましょう。
目標設定に必要なスキル
チームのプロジェクト目標を設定するために必要なスキルとしてまずあげられるのは、上位の組織が目的・目標とすることを咀嚼する力です。
たとえばチームの上の組織が経営陣であれば、経営陣の示す基本方針や経営戦略に沿った、チーム目標を立てる必要があります。この際どのような目標を立てれば、上の組織の方針や戦略に貢献できるのか咀嚼して考える力が必要になるのです。これには物事を判断する力や洞察力も含まれるでしょう。
コミュニケーションスキルや傾聴力も必要になります。目標設定の際には、普段からのコミュニケーションのほか、面談などを通してメンバーの希望や意見を聞き出す必要があるのです。このために用いるのがコミュニケーションスキルや傾聴力です。
これらのスキルを高めることでより適切な目標の設定が叶うでしょう。
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目標達成に必要なスキル
目標を達成するためには、目標に向けて計画を立案するスキル、計画の進捗を管理するスキル、そして問題解決力が必要です。
目標を達成するにはまず計画を立てる必要があります。予算、人員、資産など経営資源をどのように配分すれば期日までにプロジェクトを完了できるかを考え、落とし込むのには計画立案スキルを活用します。
そして計画を進行中には進捗管理スキルを発揮して、予定通りに進んでいるかを監視し、ときには経営資源を調整することが必要です。トラブルが発生すれば、問題解決力を行使して原因を究明し、解決に向けた施策をとる場面も出てくるでしょう。
チームビルディングに必要なスキル
チームビルディングとは、メンバー一人ひとりが能力を最大限発揮できるよう、環境整備に努めることです。
チームビルディングにおいて、リーダーが行うべきことは主に4つあります。
- チームに目標や意図を明確に説明し、メンバーが自発的に目標に向かえるように促す。
- メンバーの特徴や長所を把握し、それを活かせる状況を作り出し、育成を図る。
- 円滑なコミュニケーションによりメンバー間の信頼関係構築を促す。
- チームが共通の目標に向かって協力し、一丸となって進むよう導く。
リーダーがこれらをスムーズに進めるには、コミュニケーション能力や傾聴力、コーチングスキルが必要です。
自身や他者の成長に必要なスキル
リーダー自身や他のメンバーの成長は、リーダーシップの目的のひとつです。
リーダー自らが成長するためには情報収集力が欠かせません。情報収集力を身につけることで、以下の好循環が生まれるため、リーダーとしてさまざまなスキルの成長につながるでしょう。
- 自分やチームにとって有益な良質の情報を速やかにインプットできる
- インプットを活用して仕事にアウトプットし、成果の効率化・高品質化が図れる
- インプットとアウトプットを繰り返すことで知識の蓄積が増え、アイデアが生まれやすくなる
また、リーダーが他者、すなわちメンバーの成長を促すには、課題発見力・コミュニケーションスキル・ロジカルシンキング(論理的思考力)・クリティカルシンキング(批判的思考力)などが必要です。
クリティカルシンキングというと、メンバーのあら捜しをするようにとらえられかねませんが、そうではありません。クリティカルシンキングは本来、物事の本質を見極め、現状の改善やリスク回避を進めるための考え方で、人材育成において大切なスキルです。
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リーダーシップのスキルを養う方法
リーダーシップは簡単に身に付くものではありません。さまざまな経験を積み、少しずつスキルを高めていくものです。ここではより効果的にリーダーシップを養うための3つの方法を紹介します。1つに限らず複数の方法を組み合わせて実践すると、スキルを高めやすくなるでしょう。
人脈を広げる
人脈を広げることは、リーダーシップの発揮に欠かせないコミュニケーションスキルの向上につながります。
社内外のいろいろな立場の人と関わるためには、相手の話をよく聞き、共感することが必要です。このことを意識しながらいろいろな立場の人と接する機会を増やせば、おのずとコミュニケーションスキルが高まるでしょう。
また、自分の考えを伝えて相手からの意見やフィードバックを受けることで、新しい視点やこれまで知らなかったノウハウを得る機会も増やせます。
社内の上下関係にあたる人のみならず、関係部門のリーダーや、お客様、取引先の営業担当者などと接してみることから始めるとよいでしょう。
日常生活に取り入れる
日常生活でスキルを意識して活用することも、リーダーシップを養うのに役立ちます。
たとえば、意思決定をスピーディにおこなうスキルは、リーダーシップを発揮し、チームの業務を円滑に進めるために大切です。意思決定は、勘や経験だけに頼らず、情報収集する力や最適解を見極める能力も活用して、迅速に行う必要があります。
また、段取り力を高めると、業務の効率化や生産性向上が期待できます。仕事の優先順位を付けたり、ムダな作業を洗い出して削減したりすることで、時間を効果的に活用できるようになります。
これらのスキルは日常生活の中でも、意識して活用すれば高められるものです。日常的に訓練して習慣づけるとよいでしょう。
研修や勉強会に参加する
リーダーシップに関する研修や勉強会へ参加するのも有効な方法です。専門知識を豊富に持つプロの講師からリーダーシップに関する内容を学習することで、体系的に知識を習得できます。ノウハウやスキルを素早く習得できるメリットもあります。
リーダーシップにはさまざまな種類があるため、組織体制に合った理論を学びましょう。また、ロールプレイングを交えた研修を受講すると、理論の内容を具体的にイメージでき、実践しやすくなります。
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リーダーが取るべき具体的な行動
リーダーとしてどのような行動を取るべきか、わからない方もいるでしょう。ここではリーダーシップ論の世界的権威であるイギリスのジョン・アデアの理論を参考に、リーダーに求められる8つの行動について紹介していきます。
明確な目標を設定する
まずは、チームと個人に対してこれから行うべき仕事の方向性を示すために、目標を明確にすることが必要です。目標を設定する際は、SMARTを利用しましょう。SMARTとは、以下の5つの言葉の頭文字をとったものです。
- Specific:具体的な
- Measurable:測定可能な
- Achievable:達成可能な
- Realistic:実現可能な
- Time-bound:期限
各工程の作業内容を把握して計画を立てる
目標を定めたら、リーダーは目標達成に向けて必要な作業をタスクに細分化し、計画を立てます。
このとき、作業手順やタスクをおこなう意味、タスクの担う役割といった作業内容を理解して計画に反映することが大切です。作業内容への理解を深めることで、各タスクに必要な時間の見積りの精度が高まります。
また、計画立案時には代替案も用意して不測の事態に備えましょう。
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メンバーの役割をしっかりと説明する
計画を立てたらそれを進める前に、リーダーはメンバー一人ひとりにそれぞれが担当するタスクの内容や目的をしっかりと説明することが重要です。
各メンバーの役割がはっきりすると、生産性向上やチーム内の結束力強化につなげられます。互いにコミュニケーションを交わす頻度も増え、業務を進めやすい環境を整備できます。
また、作業遅延や成果物の品質低下を防ぐため、業務の優先順位も伝えておきましょう。
スケジュールやタスクの管理を徹底する
期限までに目標を達成できるよう、スケジュールやタスク管理を徹底します。必要に応じてメンバーに指示出しや規制をし、メンバーの作業が1つの目標に向かってスムーズに進むよう監督しましょう。
その際、すべてをリーダーが監督して統制を図ろうとするには無理が生じます。任せても問題ない部分はメンバーに委ね、成長を促すことも大切です。
また、プロジェクト単位でスケジュールやタスク管理をおこなうには、タスク管理ツールの活用がおすすめです。
メンバーへの適切な評価と支援を行う
プロジェクトの工程の区切りごとに評価の場を設けましょう。チームの現状の成果から目標に向けた過程の進行状況を評価します。
工程の都度成果を振り返っておけば、失敗した部分を検証し、次の仕事で同じミスをする可能性を減らせるでしょう。成功した部分については次の仕事でも高いパフォーマンスが期待できます。
また、メンバー個人についても都度評価をし、仕事を振り返る場を持ちましょう。他のメンバーの意見を聞き、仕事の進め方に取り入れることで、スキルアップにつなげられます。
工程ごとの評価は、困っているメンバーを見つける機会になります。担当業務に困っているメンバーを支援しましょう。
支援する際はメンバーの仕事を代行するのではなく、助言や簡単な指示にとどめましょう。そうすることでメンバーに考える余地を残し、成長を促せます。
リーダー自身が手本となって動く
リーダー自身が意欲的に働いて成果を出し、組織に貢献することも重要です。同じチームに所属するメンバーは、リーダーの振舞いや仕事への取り組み方を常に注目しています。不適切な言動を繰り返すリーダーに、メンバーからの尊敬は集まりません。
リーダーシップを発揮して周囲を動かすには、組織の模範となる行動をリーダー自身が見せることが必要です。
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メンバーのモチベーションを維持する
リーダーの行動として、メンバーのモチベーションを維持し、生産性の向上を目指すことも必要です。
メンバーのモチベーションを高く維持する方法には、外発的動機付けと内発的動機付け、2種類が挙げられます。
外発的動機付けとは、目標を達成した際にインセンティブや昇進など、特定の報酬を付与してモチベーションを維持する方法です。
報酬が明確であるため、短期的に効果が表れやすい点が特徴です。
一方、内発的動機付けとは仕事への興味や達成感、やりがいなど、人間の内面的な要因を活用する方法です。行動自体に価値を見出しているため、高い集中力や積極性を維持できます。
リーダーシップを取る場合、内発的動機付けが重要です。
「いつも頑張っている」「後輩の面倒を見てくれてありがとう」など、行動を評価することで、メンバーのモチベーションを維持できます。
メンバーとの交流を深めてチームをまとめる
日々コミュニケーションを取り、メンバーとの信頼関係を築きます。話しやすい雰囲気を作ることで、メンバーがリーダーに相談や報告をしやすくなります。進捗の遅れや課題を素早く把握でき、トラブルを未然に防げる点がメリットです。
また、メンバー同士のコミュニケーションの活性化が望める点もプラスです。仕事を進めやすい環境整備に努めることで、チームの結束力が高まります。
▷タイムマネジメントとは?具体例ややり方・優先順位の付け方を解説
リーダーシップとは組織の発展において重要性の高い能力
リーダーシップを発揮するには、目標設定やチームビルディング、マネジメントなど、さまざまなスキルの習得が必要です。職場の業務だけでスキルを高めるのは難しく、日常生活での実践や外部研修への積極的な参加が必要となります。
また、はじめてチームのリーダー役に抜擢された場合、どのような行動を取るべきか、わからない方もいるでしょう。今回の記事であげたリーダーシップ理論や取るべき行動を参考に、自身に適したリーダー像を構築してください。
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