【図解あり】ドラッカーのマネジメントとは?5つの要素や要約・名言をわかりやすく解説

最終更新日時:2024/04/18

組織・マネジメント

ドラッカーのマネジメント

マネジメントの父・ドラッカーは、マネジメントを「組織の成果を上げさせるための道具、機能、機関」と提唱しました。本記事では、ドラッカーのマネジメント論の要約から見る5つの考え方や必要な能力を解説します。図解付きでドラッカーの思想や名言も紹介するので、参考にしてみてください。

マネジメントの父「ピーター F. ドラッカー」とは

ピーター F. ドラッカー(ピーター・ファーディナンド・ドラッカー)は、「マネジメントの父」と呼ばれる経営学者です。

経済記者や論説委員、アナリストや大学教授などをつとめ、政治や経済、哲学や教育などさまざまな分野で大きな影響を及ぼしています。

また、分権化や目標管理、ベンチマーキングやコア・コンピタンスなど、ビジネスの世界では今や当たり前とされる手法・理念を生み出した人物です。

ドラッカーの生い立ち

ピーター F. ドラッカーは、1909年11月19日にオーストラリアにて経済省に勤める高級官僚で経済学者の父・アドルフと、オーストリアで初めて医学を専攻した女性である母・カロリーネの元に生まれました。

18歳でハンブルク大学法学部に入学したドラッカーですが、一度も講義には出席せず期末試験のみを受けて単位を取得していました。20歳でドイツのフランクフルト大学に移籍し、22歳の時には国際法・国際関係論の博士号を取得しました。

24歳になったドラッカーは、ドイツの保守政治哲学者をテーマに自作した論文がナチスの怒りを買うと確信し、ナチスから逃れるため、イギリス・ロンドンへ移住したのです。

ロンドンでは証券アナリストやエコノミストをつとめましたが長続きせず、1937年にアメリカへ移住します。大学教授・執筆活動・コンサルティング活動などを行いながら、1943年にアメリカ国籍を取得しました。

1954年に出版した「現代の経営」により「マネジメント」という概念が誕生し、広まっていくこととなります。1959年に講演のため初来日して以降、たびたび日本にて講ずる機会がありました。

亡くなる2005年まで数々の論文を残し、「マネジメントの父」「20世紀の知の巨人」などとして歴史に名を残したのです。

ドラッカーが持つ思想

ドラッカーが持つ思想の根底には、「人を幸せにすること」という考えがあります。

ドラッカーが生きた時代の組織は個人の自由を認めず、「個人の利益よりも組織全体の利益を優先すべきである」という考え(全体主義)が定着していました。

しかし、上の図からもわかるように組織は社会に貢献することで存続でき、労働力となる個人に対する社会貢献の手段の提供によって、人々は自己実現による幸福を得られます。

そのため、人々の​幸不幸​には組織のマネジメントの良し悪しが影響し、個人を幸せにするマネジメントこそが、組織の利益を生み出せると考えたのです。

人間の幸福と人間が作り出した環境に焦点を当てた思想から、ドラッカーは自身を「社会生態学者」と呼んでいます。

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ドラッカーのマネジメントとは?

一般的に、マネジメントとは「ヒト・モノ・カネの3つの資源を適切に管理すること」を指し、組織の管理や運営を意味します。

ドラッカーは、マネジメントを以下の通り定義しています。

「組織として成果を上げさせるための道具、機能、機関」

[引用:ピーター F. ドラッカー「明日を支配するもの 21世紀のマネジメント革命」より]

つまり、「成果を上げるためにはマネジメントが重要である」と考えられているのです。

「成果」とは企業における「利益」であり、ドラッカーの考える利益とは「顧客の創造」です。顧客を生み出すには、成果を上げるための道具・機能・機関が重要という意味になります。ドラッカーのマネジメント論は、規模・業種・職種などを問わず、成果を上げたい多くの企業で活用されています。

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ドラッカーのマネジメント理論について

ドラッカーが提唱するマネジメント理論を効果的に取り入れるには、いくつかの手順を踏む必要があります。ここからは、適切なマネジメントの手順を詳しく紹介します。

定義を定める

第一に、自社の事業は何であるかを定義しましょう。

顧客は誰であるか、何を提供するのかなどが定まっていなければ、事業の目標や方向性を決定することはできません。まずは顧客が誰かを明確にして、すべての顧客が求めるものから事業を定義するようにしましょう。

なお、ドラッカーのマネジメントにおける顧客とは、消費者や取引先以外にも従業員や従業員の家族、組織に関わるメンバーなど幅広いステークホルダーのことを指します。

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組織の目標を定める

次に、組織としての目標を定めます。目標は、先ほど定めた事業の定義と紐づくものを設定するようにしましょう。

例えば、クリーニング業を営む企業が「全国の顧客の衣服を守り綺麗にする」ことを事業の定義とした場合、目標を「全国に店舗を出店すること」に設定すると、定義と紐づいているといえます。

このように、組織の目標は明確なものになるよう定めましょう。また、市場の開拓のために短期目標・中期目標・長期目標に分けてそれぞれ設定することも大切です。

マーケティングを行う

目標の設定後は、顧客が求めるものをさらに深掘りするため、マーケティングを行いましょう。企業は、顧客が求めるものを常に提供できなければ事業を発展させられず、存続が難しくなります。

そのため、顧客は何に価値を感じていて何を求めているのか、一方で現状の商品・サービスに何が足りていないのかを分析して、商品開発を行いましょう。

ドラッカーは、著書の中で「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」と述べていることからも、マーケティングは特に重要視されていると理解できます。

[出典:ピーター F. ドラッカー「マネジメント【エッセンシャル版】 基本と原則」より]

改善に取り組む

次に、マーケティングの結果に基づきながら改善に取り組みます。

PDCAサイクルを回して理想とのズレを発見しながら改善を行い、さらなる成果を求めましょう。企業が成長と発展を続けるには、改善が不可欠です。

また、現場の従業員の声も参考にしながら改善することで、現場の肌感覚を取り入れたこれまでにない新しい価値を提供できる場合もあります。

イノベーションを起こす

企業のさらなる成長のために、イノベーションを起こして新たな価値を創造しましょう。

ここでのイノベーションとは、前述した現場の従業員の声を参考にすることや、社外からのアドバイスを受けることなどがあげられます。

ほかにも、競合を参考にした新しい商品開発や新規顧客の開拓などもイノベーションに含まれます。さらなる成長を促す変革として、イノベーションを起こすことを意識しましょう。

ドラッカーのマネジメント論の要約から見るマネジメントに必要な6つの能力

ドラッカーは、マネジメントには6つの能力が必要であると述べています。特に、マネジメントにおいて重要な役割を担うマネージャーには、この6つの能力が必要であるといえるでしょう。

ここからは、マネジメントに必要な6つの能力を解説します。

コミュニケーション能力

成果を上げさせるためのマネジメントには、高いコミュニケーション能力が必要です。一方的な指導や指示は単なる情報伝達であり、コミュニケーションとはいえません。

コミュニケーションとは、相手の欲求・期待をくみ取り、相手が理解・納得できるまで向き合うことで、また、自分の意見を正しく相手に伝えることも大切です。マネージャーは身勝手に意見を述べるのではなく、相手の話に耳を傾ける姿勢が求められます。

目標設定能力

マネージャーには、組織の向上を目的とした目標の設定能力が必要です。チーム全体の目標を設定することはもちろん、メンバーの強み・弱みを考慮したメンバー単位での目標設定も求められます。

目標を設定するだけではなく、決めた目標をメンバーへ共有したり達成までのプロセスを検討したりするなど、メンバーを導くことが大切です。

適切な目標を設定できれば、メンバーは目標達成に向けてどのような行動が必要かが明確になります。適切な目標設定は、モチベーションの維持においても重要なポイントとなるでしょう。

評価測定能力

マネジメントでは、メンバーを的確に評価・測定する能力が求められます。明確な基準を設けたうえで評価を行えば、メンバーは自分の位置付けや役割を理解できるでしょう。具体的な方法としては、昇格・昇給・インセンティブの付与などがあげられます。

評価に対して適切なフィードバックを行うことも重要であり、フィードバックをその後の行動に役立てられるため、パフォーマンスの向上も期待できます。

正当でない評価をくだせば、メンバーのモチベーションを低下させかねません。マネージャーはメンバーの欲求やニーズを理解し、適切な評価を行うことが大切です。適切な評価によって、メンバーのモチベーションやエンゲージメントの向上が期待できます。

人材開発能力

企業にとって、最も重要な経営資源は人材です。マネジメント次第で人材の能力を活かせるか活かせないかが決まり、同じ人間がいたとしてもマネジメント次第で生み出す成果が異なります。

人材開発の具体的な方法としては、個人の長所や目標達成に不足するスキルを見つけ、育成方法や補い方を指導することがあげられます。正しいマネジメントで人材開発を行い、成果を最大化させましょう。

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組織化能力

個人の能力だけで上げられる成果には限界があるため、成果を上げるには組織づくりが重要です。

個々の強みをチーム・組織全体として活かすことができれば、達成できる目標・上げられる成果は大きくなります。組織づくりを行うにあたっては、業務ごとに個人の強み・弱みを考慮したメンバー選びが重要です。

強みを最大限に活かし、弱みは最小限に留めてカバーすることを意識して、強固な組織を構築しましょう。

組織マネジメントとは?事例や必要な能力・参考にすべきフレームワークを紹介

問題解決能力

マネジメントにおいて、問題についての理解や原因の観察・分析を行う問題解決能力は欠かせません。

問題が発生した際には、マネージャーが主体となって問題の原因を探り、明確な意思決定を行うことが重要です。まずは問題の本質を明らかにして意思決定を行動に移し、問題解決に臨みましょう。

また、今すぐ解決すべき緊急性が高い問題と、将来的に解決すべき問題に分けて、喫緊の問題から順に解決していくことが大切です。

ドラッカーが提唱するマネジメントに対する5つの考え方

ドラッカーが提唱するマネジメントでは、5つの考え方を知っておくべきであると述べられています。ここからは、ドラッカーが提唱するマネジメントに対する5つの考え方を紹介します。

生理的次元

生理的次元から労働を見た時、人を機械のように扱うべきではありません。

「長時間にわたって同じ作業を繰り返させる」「働き方に選択肢を与えない」といった状況では、人は疲弊してしまい満足度の高い働き方ができません。

そのため、自分らしい働き方ができるような、個々の多様性を尊重した労働環境が必要です。多様性を持った働き方によって生産性の向上が期待でき、従業員の満足度も高められるでしょう。

心理的次元

労働を心理的次元からみると、嬉しいこと・つらいことの表と裏があり、心の動きに影響する場であると考えられます。労働とは人格の延長線上にありながら、自己実現を叶える場所でもあるのです。

労働の中で自身の「価値」「成長性」「人間性」と向き合い高めていくには、心理的な視点が欠かせません。自らの強み・弱みが理解できた労働者は、強みを伸ばし弱みを改善することで成長につなげられます。モチベーションや生産性を上げるうえでも、大切な要素でしょう。

社会的次元

「人と社会をつなぐもの」という表現は、労働を社会的次元で捉えた時の考え方です。人が1日の多くの時間を労働に割いていることからもわかるように、労働は社会とのつながりを提供する場として役立っています。

マネジメントするという視点からみると、労働は単に労働者が働く場所・利益を生み出す場所ではなく、もっと社会的なものとして捉えなければなりません。

人は社会とのつながりを感じることで、「人と関わりたい」「集団に属したい」といった社会的欲求が満たされます。欲求が満たされれば、労働者のモチベーション向上にも役立つのです。

経済的次元

経済的次元から見た労働は、金銭を得るための手段であり、労働で得た収入はやがて支出に変わります。その支出は誰かの収入になるというように、つながりを生み出しているのです。お金を稼ぐ方法であり、お金を循環させる方法でもあるのが労働だといえるでしょう。

企業は労働者に対して、正当な額の報酬を支払うことが大切です。労働に対して報酬が少ないと、生活やモチベーションの維持が困難になります。

最悪の場合、労働を継続できなくなる可能性もあるでしょう。収入・支出の循環悪化を招く結果となり、企業にとっても無視できない問題になります。

政治的次元

労働における政治的次元は、上下関係や権力関係を意味します。

組織では、上司・部下などの上下関係が必ず存在しますが、関係性は適切に保たれなくてはなりません。関係を崩さないよう、企業は労働者に対して政治的な側面での配慮が必要です。

関係構築ができていないと、上司が指導を怠る、部下が指示を無視するといった状況に陥るでしょう。労働者が企業に不信感や不満を抱く原因にもつながります。

上下関係や権力関係は、企業にとってつきものです。労働者のモチベーションを維持するために、政治的次元について配慮しなければなりません。

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ドラッカーのマネジメントに関する名言

マネジメントの父として有名なドラッカーは、経営に関する以下のような名言を多く残しています。

  • マネジメントとは人のことである
  • 強みは当然とできるもので気づかない
  • 人が成果を出すのは強みによってのみである
  • 凡人が非凡な働きをできる組織が目指すべき組織である
  • 組織の目的は、人の強みを爆発させ、弱みを無くすこと
  • 他社との比較で自社の強みを見つけ出す
  • 人こそが最大の資源である

人を幸せにすることが思想の根底にあったドラッカーは、「ヒト」に焦点を当てた考え方が多く見受けられます。マネジメントによって「人の強みを引き出せる」「成長させられる」と説かれている点も特徴でしょう。

環境次第では、凡人の集まりであっても非凡な能力を発揮できるとも述べており、組織づくりがいかに重要であるかが説かれています。

時には他社と比較することも大事であると説明しています。自社の強みを再確認し、自社の弱みを分析するうえでも他社との比較は重要なプロセスといえるでしょう。

組織構築にドラッカーのマネジメントを活かそう

ドラッカーが提唱したマネジメント理論では、成果を上げさせるための道具・機能・機関の適正化が説かれています。企業が成果を上げるためには、マネジメントをおろそかにはできないのです。

ドラッカーの残した多くの名言は、企業規模・業種・職種を問わず活用できます。企業を真の成功に導くため、ドラッカーのマネジメント理論を組織づくりに役立てていきましょう。

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