ステークホルダーマネジメントとは?実施方法や事例、コミュニケーションマネジメントとの違い

2023/08/04 2024/05/20

組織・マネジメント

ステークホルダーマネジメントとは

プロジェクトの進行を左右する「ステークホルダーマネジメント」。ステークホルダーは「利害関係者」を指す言葉ですが、なぜマネジメントが重要視されているのでしょうか。本記事では、ステークホルダーマネジメントの重要性や分析方法などを紹介します。

ステークホルダーマネジメントとは?

ステークホルダーマネジメントとは、ステークホルダーを管理することです。ステークホルダーは、もともと株主を表す用語でしたが、現在は主にプロジェクトの進行に影響を与える利害関係者を指す意味で使われます。

顧客や経営層をはじめ、従業員やパートナー企業、地域社会などもステークホルダーにあたります。

ステークホルダーは、良くも悪くもプロジェクトに影響を与えるため、マネジメントを行い、エンゲージメントの監視・管理を行うことが重要です。

コミュニケーションマネジメントとの違い

コミュニケーションマネジメントとは、必要な情報の把握や正確な情報伝達について管理することを指します。

業務を進めるうえで、コミュニケーションは重要な役割を持つ行為です。しかし、ただ情報を伝えるだけでよいというわけではありません。どのようなタイミングで情報を提供するのか、相手が正確に理解できたかというところまで確認することが大切です。

ステークホルダーマネジメントは、プロジェクトに関わるステークホルダーとの良好な関係を築くために行われます。そのため、情報伝達についての管理を行うコミュニケーションマネジメントとは趣旨が異なるものです。

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ステークホルダーマネジメントが重要な理由とは?

ここでは、ステークホルダーマネジメントが重要とされる理由について解説します。

ステークホルダーが煩雑化しているため

近年、ビジネスのグローバル化や多様化が進むと同時に、ステークホルダーも煩雑化しています。それにより、個々の関係も複雑になっていて、利害関係の判断が容易ではありません。

さらに、リモートワークなどの新しい働き方が普及したことで、ステークホルダーの全体像の把握も困難を極めています。そのため、途中で予期せぬ利害関係者が現れ、トラブルが発生したりプロジェクトを中断せざるを得ない場合があるでしょう。

このようなリスクを回避するために、ステークホルダーマネジメントは重要と考えられています。

PMBOK®のプロジェクトマネジメントの1つとして評価されているため

PMBOK®(Project Management Body of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントの知識を体系的にまとめたガイドブックのことです。ステークホルダーマネジメントは、PMBOK®のマネジメント領域の1つとして2012年12月に新設されました。

1996年以降、マネジメント領域の新設はなかったこともあり、ステークホルダーマネジメントは世界的にも注目を集めています。

なお、PMBOK®のマネジメント領域には以下の10種類が登録されています。

  • 統合マネジメント
  • スコープマネジメント
  • スケジュールマネジメント
  • コストマネジメント
  • 品質マネジメント
  • 資源マネジメント
  • コミュニケーションマネジメント
  • リスクマネジメント
  • 調達マネジメント
  • ステークホルダーマネジメント

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プロジェクトがステークホルダーによって大きく左右されるため

プロジェクトの成功や円滑な進行には、ステークホルダーと良好な関係を築く必要があります。信頼関係が構築できず、否定的な意見を持つステークホルダーが増えれば、プロジェクトの進行が滞る可能性があるからです。

このようにプロジェクトの出来は、ステークホルダーによって大きく左右されることがあるため、利害関係者の管理を行うステークホルダーマネジメントが重要視されています。

適切な管理によって良好な関係を構築することで、ステークホルダーからの支援を強化したり、抵抗を最小限にとどめたりする効果が期待できるでしょう。

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ステークホルダーマネジメントの実施方法

ステークホルダーマネジメントの実施方法について、以下の4つのプロセスに分けて解説します。

  1. ステークホルダーの特定・分析をする
  2. マネジメントの計画策定をする
  3. ステークホルダーのエンゲージメント管理をする
  4. マネジメント計画のチェックをする

1.ステークホルダーの特定・分析をする

まずは、誰がステークホルダーに該当するのかをリストアップすることから始めましょう。あらゆる方面からステークホルダーを洗い出し、特定したら対象ごとにプロジェクトへのスタンスや影響力を分析します。

ステークホルダーのスタンスが、前向きか後ろ向きかでプロジェクトの進み具合が変わってくるため、見極めが重要です。また、ステークホルダーの影響力の正確な把握は、マネジメントの手間のかけ方や優先度合いの決定に必要な情報となります。

したがって、徹底的にステークホルダーの分析を行いましょう。なお、ステークホルダーには、以下の2種類があります。

  • 直接的ステークホルダー
  • 間接的ステークホルダー

それぞれについて簡潔に説明するので、正確な振り分けを行ってください。

直接的ステークホルダー

直接的ステークホルダーとは、企業に直接影響を与える個人や組織を指します。具体例は、以下のとおりです。

  • 従業員
  • 商品やサービスの購入者や利用者といった顧客
  • 取引先や販売代理店
  • 自社の株を保有する株主や投資家
  • 自社が融資を受けている金融機関

間接的ステークホルダー

間接的ステークホルダーとは、企業に間接的な影響を与える個人や組織を指します。具体例は以下のとおりです。

  • 従業員の家族
  • 地域住民や地域社会
  • 政府や行政機関
  • 労働組合

2.マネジメントの計画策定をする

ステークホルダーの特定と分析が完了したら、それぞれどのようにプロジェクトへ関わってもらうかを計画します。プロジェクトへの影響力や関心度合い、重要度をみながらステークホルダーと関わるタイミングを検討してください。

たとえば、プロジェクトへの影響力が高く、後押ししてくれるようなステークホルダーとはマメにコミュニケーションを取るほうがよいでしょう。接触頻度が高いほど信頼関係を築きやすく、プロジェクトを円滑に進められる可能性が高まります。

定期的にステークホルダーと関わるために、事前にミーティングの日程を計画しておくのがおすすめです。

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3.ステークホルダーのエンゲージメント管理をする

ステークホルダーマネジメントでは、ステークホルダーのエンゲージメント管理が重要です。プロジェクトへの期待値をステークホルダーごとに管理し、コミュニケーションをとりながら調整します。

コミュニケーションをとらずにいると、ステークホルダーの期待から外れたり、自社への信頼が失墜したりする可能性があります。したがって、ステークホルダーとはこまめにコミュニケーションを図り、プロジェクトへの関与を強化するよう心がけてください。

4.マネジメント計画のチェックをする

マネジメント計画の進行状況を定期的にチェックし、必要に応じて調整を行いましょう。計画から大きく外れている場合は、責任者への報告を行い改善に努めます。また、プロジェクトの進行とともにステークホルダーとの関係性が変化した場合は、計画のアップデートを行ってください。

エンゲージメント管理のために計画の変更を行う場合にも、都度ログを残します。ステークホルダーとの良好な関係を維持し、プロジェクトを成功に導くためにも、進行状況の正確な把握と計画の見直しが重要です。

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ステークホルダーマネジメントのコツ

ステークホルダーマネジメントでは、関係者とのコミュニケーションが重要です。戦略的にコミュニケーションを進めるのはもちろんのこと、日ごろから積極的にステークホルダーとの関わりを持つ姿勢も求められます。

ステークホルダーのなかには、プロジェクトに積極的な人もいれば消極的な人もいます。また、その人の立場によってプロジェクトへの影響度は異なるでしょう。

日々ステークホルダーとの関わりを積み重ねることで、相手の立場や考え方を把握でき、円滑なコミュニケーションが行えるようになります。

ステークホルダーマネジメントの取り組み事例

ステークホルダーマネジメントの取り組み事例を4つ紹介します。事例を参考にしながら、自社での取り組み方法を検討してください。

伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事株式会社では、ステークホルダーとの対話を重視しながらマネジメントに取り組んでいます。具体的な取り組みは、以下のとおりです。

ステークホルダー取り組み内容(対話方法)
顧客
  • 公式ウェブサイトやレポートを通じた情報提供
  • お問い合わせ窓口の設置
  • 品質管理やサプライヤー·サステナビリティ調査
株主・投資家
  • 公式ウェブサイトやレポートを通じた情報提供
  • 株主総会
  • 各種説明会の実施
  • ESG投資家からの調査や格付けの対応
従業員
  • 社内イントラネットや機関誌での情報提供
  • 研修やセミナーなど能力開発の機会提供
  • キャリアカウンセリングの実施
  • 社員相談窓口の設置
地域社会
  • 社会貢献活動
  • 地域住民との対話や定期的なコミュニケーション
  • 情報発信支援
政府機関政府各省庁関連委員会や協議会への参加

[参照元:伊藤忠商事株式会社「イニシアティブへの参加」]

株式会社日清製粉グループ

株式会社日清製粉グループは、ステークホルダーに対して以下の基本姿勢で臨んでいます。取り組み内容は以下のとおりです。

ステークホルダー取り組み内容
顧客 生活者や事業者のニーズとウオンツを把握し、安全性や品質の高い製品・サービスを提供することで、顧客が最大の満足が得られるように努める。
株主
  • 長期的な企業価値の極大化を基本方針に掲げ、グループ経営をする。
  • 高い収益力と着実な成長を保つことで、効率的な資産活用を図る。また、安定的で適正な配当を行う。
社員
  • 社員一人ひとりが能力と個性を最大限に活かし、安全で健康的に働ける環境づくりをする。
  • 社員が個人として成長することを期待し、援助する。
取引先信頼関係をベースに相手を尊重し、成果を分かち合って共存・共栄を図る。
社会
  • 健全な事業活動を行い、社会の発展に貢献する。
  • 信頼性の高い企業としての地位を確立すべく、製品の安全性の追求や地球環境の保全に努め、同時に社会規範の遵守を徹底する。
  • 積極的な社会貢献活動で社会との調和を図る。
  • 世界中の国情にあう形で使命・役割を果たし、国際社会との調和にも注力する。

[参照元:株式会社日清製粉グループ「ステークホルダーに対する基本姿勢」]

株式会社大和証券グループ本社

株式会社大和証券グループでは、ステークホルダーを4つのグループに分けているのが特徴です。各々のグループの中で、対象のステークホルダーごとにエンゲージメント方法を細分化しています。具体的な取り組みは以下のとおりです。

ステークホルダー取り組み内容
顧客(投資家・発行体)
  • 投資家:投資家のニーズ・リスク許容度にあった商品やサービスの提供に努め、顧客満足度を向上させる。
  • 発行体:株式や債券などを発行する企業や公共団体などへ、資金調達手法の提案や計画策定、執行を全面的にサポートする。
株主等
  • 透明性の高い情報開示に努める。
  • 持続的な企業価値の向上で期待に応えられるよう努める。
社員(社員と社員の家族)働きがいの実感と能力・意欲を発揮できる環境づくりを進め、従業員満足度の向上に努める。
社会(投資先・取引先・政府など)
  • 投資先:積極的なコミュニケーションに努める。
  • 取引先:公正な関係を保ち、協働する。
  • 政府:納税義務を果たし、納税額を国ごとに開示する。また、政策提言などを行う。
  • NGO/NPO:復興支援などで協働、対話をし、経営戦略に社会課題解決の視点を反映させる。
  • 地域社会:地域に根ざした取り組みを進める。

[参照元:株式会社大和証券グループ「ステークホルダーに対する基本姿勢」]

TOTO株式会社

TOTOグループでは、コミュニケーションを通してステークホルダーの満足向上に努めています。具体的な取り組み内容は、以下のとおりです。

ステークホルダー取り組み内容
顧客顧客の期待を超える商品やサービスを継続的に提供し、満足の確保や維持、向上に努める。
株主透明性と公平性を期する目的で、投資家への情報開示はIRポリシーに基づいたコミュニケーションを実行する。
社員想像力が豊かな自律した人材の輩出を継続し、なおかつ社員満足の向上と顧客の生活文化創造に貢献する。
取引先サプライヤーとともに、顧客からみて価値のある商品やサービスの提供に努める。
社会経営資源を有効活用しながら社会貢献・地域共生活動を行い、社会的課題の解決を目指す。

[参照元:TOTO株式会社「ステークホルダー・エンゲージメント」]

ステークホルダーマネジメントを学べる本

ステークホルダーマネジメントについて書かれている本を読むことで、さらに理解を深めることができます。ここでは、おすすめの書籍を2つ紹介します。

CSRマネジメント: ステークホルダーとの共生と企業の社会的責任

画像出典元:「Amazon」

駿河台大学経済学部・同大学院経済学研究科教授の水尾 順一氏と、立教大学大学院経済学研究科教授の田中宏司氏が共同でCSRマネジメントについて書いた書籍です。CSRとは、企業が活動を行うにあたって果たすべき社会的責任を指し、ステークホルダーマネジメントを行う際に重要な考え方でもあります。

この本では、多様なステークホルダーとの共生をもとに、CSRの実践を通じて企業の持続可能な成長を目指す経営のあり方について学ぶことができます。

ビジネスと倫理

画像出典元:「Amazon」

埼玉大学経済学部准教授である水村典弘氏が、経営におけるビジネスと倫理をテーマに書いた書籍です。経営者は果たして利他の心を持って経営活動を行っているのか、誰の何を目的に事業を行っていくべきかなど、よい経営者の条件とは何かを追及しています。

ステークホルダーマネジメントの重要性を理解し適切に取り組もう

ステークホルダーとの良好な関係構築は、プロジェクトの成功に欠かせない要素です。うまく関係が築けないとプロジェクトの進行に影響を与え、最悪の場合は中断を余儀なくされる可能性があります。

そのため、ステークホルダーマネジメントでステークホルダーとの関係性を管理し、適切なコミュニケーションを図ることが重要です。本記事で紹介した実施方法や事例、書籍なども参考にしながら、ステークホルダーマネジメントを導入してみてください。

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