人材育成における課題|解決策や事例・取り組む際の秘訣を紹介

最終更新日時:2023/10/04

組織・マネジメント

人材育成の課題

重要な経営資源である「ヒト」に関わる人材育成は、その多くが中長期的な取り組みとなるため、成果を得るまでには数々の課題も発生します。ここでは人材育成における課題とその解決策を、事例や取り組む際の秘訣と併せてご紹介します。

人材育成の目的とは?

人材育成の目的は、個々の社員の能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させることです。

人材育成による生産性や業務品質の向上は、組織が企業戦略を達成するための重要な手段となるのはもちろん、社員一人ひとりが、成長を実感しながら自己実現を遂げることで、モチベーションの維持やエンゲージメントを高める結果にもつながります。

人材育成は、社員のスキルと知識を向上させるだけでなく、仕事や会社により主体的に関われるようになるマインドを育てるうえでも、効果が期待できる取り組みなのです。

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人材開発との違い

人材開発と人材育成は、しばしば同義語として使用されますが、実際には微妙な違いがあります。

人材育成は、社員のスキルと知識を向上させることに重点を置くことが特徴です。一方、人材開発は社員のキャリアパスを計画し、彼らが組織内で成長し続けることを可能にするための戦略的なアプローチを指します。個々のスキルや特性、課題を把握して細かな学習の機会を設けて、一人一人のスキルや組織力を向上させていくのです。

人材開発は、社員の可能性を含めた能力を最大限に引き出すだけでなく、将来的に会社の中核を担うリーダーシップを発揮するための人材プールの構築も目指しています。

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人材育成における主な課題

人材育成は、組織の成長と発展に不可欠な要素ですが、多くの課題が存在します。ここからは、人材育成における主な課題をいくつか紹介します。

育成の目標が明確に定まっていない

人材育成の目標が明確でないと、どのようなスキルや知識を育成すべきか、どのような結果を期待すべきかが不明確になります。

さらに目標が不明確な育成プログラムを実施した場合、その後の、効果測定も適切に行えず、改善を図ることもできないなど、多くの問題に派生してしまいます。

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教育者のスキルや人材が不足している

教育者のスキルや人材が不足していると、育成プログラムの質が低下し、社員の学習効果が低くなる可能性があります。

また、教育者が不足していると、一人ひとりの社員に対する教育の時間や質が十分に確保できない場合があります。

人材教育に割ける予算や時間が少ない

人材育成に必要な予算や時間が不足していると、育成プログラムの質や範囲が制限され、十分な成果が得られない可能性があります。また、予算や時間の不足は、新しい学習方法やツールの導入を阻害する恐れもあるでしょう。

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人材育成に対する社員の意識が低い

どんなに質のいい育成プログラムを用意していても、対象となる社員自身が自己成長やスキルアップの必要性を感じていなければ、効果は発揮されません。

また、このような意識の低さは、参加する側だけでなく、教える側の意欲にも関わることであり、ただ単に、育成プログラムをスタートさせるのではなく、人材育成の重要性を十分に組織に浸透させたうえでの実行が求められます。

人材育成で生じる課題の解決策

人材育成における課題は多岐にわたりますが、それぞれに対する解決策も存在します。ここからは、人材育成で生じる課題の解決策をみていきましょう。

現状の教育体制を見直す

教育体制が不適切である場合、体制を見直すことが必要です。教育の目標を明確に設定し、それに基づいて育成プログラムを設計しましょう。

また、体制のほか、育成プログラム自体が適切かどうかも含めた効果測定の指標を設定し、定期的な評価を行うことも大切です。プログラムの実施と併せて、評価と改善のフローを実行することで教育体制の最適化を目指します。

人材育成計画書を作成する

人材育成の目的とスケジュールをまとめた人材育成計画書を作成しましょう。計画書には、主に以下の項目を記載します。

  • 目標と達成度合いの評価基準
  • 育成プログラムの内容と日程
  • 現状と課題
  • フィードバック

計画書があることで、的確な振り返りが可能となり、個人の目標が可視化されるため、モチベーションも保ちやすくなります。

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就業時間内に教育を行う

教育は、教える側、教えてもらう側、双方の負担を考慮し、就業時間内に行うようにしましょう。

通常業務に+αで教育の時間を確保する場合、現実的に難しく、スケジュールが予定通りに進まなくなってしまうこともあります。また、このような状況では、育成に対する意識が低下するだけでなく、モチベーションも維持しにくくなってしまうものです。

通常業務により、就業時間内の研修や勉強会などの実施が困難なのであれば、OJT(On the Job Training)を中心としたプログラムを構成するなど、プログラム自体を見直す必要があります。

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教育担当の育成を実施する

教育担当者自身も教育のスキルと知識を持つことが重要です。たとえ教育担当者の業務経験が豊富であっても、業務に関するスキルや知識を教えることが得意とは限りません。

教育担当者の育成を行い、学習者の能力や気力を引き出して、自己成長を促せるような教育を提供することが重要です。

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普段からコミュニケーションを取る

教育は一方通行のものではなく、コミュニケーションを通じて行われます。教育者と学習者が互いに意見やフィードバックを交換し、学習の進行状況を共有することが重要です。これにより、学習者の理解度を把握し、必要に応じて教育の内容や方法を調整することが可能になります。

また、普段からコミュニケーションを取って信頼関係を構築することで、教育実施中や実施後のフォローも行いやすくなります。

人材育成に役立つ階級別の育成手法

人材育成は、新入社員、中堅社員、管理職など、階級に応じて異なるアプローチが必要です。ここからは、各階級別の育成手法を紹介します。

新入社員や若手社員向け

新入社員や若手社員向けの育成では、主に基本的なビジネススキル向上や組織文化を理解するための教育が行われます。また、自己啓発を促すための環境を提供し、自発的に学習する意識を高めることも、長期的な人材育成の素養を身につけるうえで効果的でしょう。

具体的には、OJTやメンターシッププログラム、eラーニングなどを活用します。

育成手法内容
OJT(On the Job Training)主にマンツーマンで、実務を通して行う手法です。まずは教育者が実際に業務を行い、続いて学習者が教育を受けながら実践します。反復して行うことで、学習者が1人で該当の業務を行えるように導きます。
メンターシッププログラム新入社員などの若手社員(メンティ)を実務経験が豊富な先輩社員(メンター)が支援するプログラムです。OJTと同じくマンツーマンで行い、メンティのメンタル面の支援やキャリア開発など幅広いサポートをします。
eラーニングパソコンやスマートフォンとインターネットを利用して教育を行う方法です。ネット環境があればどこでも教育を実施でき、空き時間を活用できることがメリットです。

中堅社員やチームリーダー向け

中堅社員やチームリーダー向けの育成では、リーダーシップやマネジメントスキルの向上が求められます。また、専門知識を深め、戦略的な思考力を養うことも重要です。

中堅社員やチームリーダーの教育には、ロールプレイングやケーススタディ、外部の専門講師を招いた研修などが有効です。

育成手法内容
ロールプレイング実際の現場を想定し、部下育成のための技術を学ぶ方法です。それぞれが役割を演じてコミュニケーション能力の向上を狙います。
ケーススタディ実例や想定される事例から、問題解決のための方法や法則を導き出します。具体例をもとに教育を行うため、実践力が身につきます。
外部研修外部の企業に委託して研修を行う方法です。専門知識を有したプロの指導を受けられることがメリットです。

管理職向け

管理職向けの育成では、組織全体を見渡し、戦略的な意思決定を行う能力が求められます。部下の育成のほか、組織としての生産性を高めるためチームビルディングのスキルも不可欠となるでしょう。

具体的には、エグゼクティブコーチングやリーダーシップ研修、MBAプログラムなどが用いられています。

育成手法内容
エグゼクティブコーチング管理職に向けたコーチング手法です。リーダーシップスキルやパフォーマンスの向上を目指します。
リーダーシップ研修リーダーとしてのスキル・知識の習得を目指す研修です。部下の育成などリーダーに必要なスキルを身につけます。

人材育成に取り組む際の秘訣

人材育成は、一定の時間・費用・労力などのコストが発生する取り組みです。

その多くは効果測定によるPDCAサイクルの実施などにより徐々に最適化されていくものですが、最初から効果の高いプログラムの実行ができるに越したことはありません。

ここからは、人材育成に取り組む際の秘訣をみていきましょう。

組織全体で実践する必要がある

人材育成は組織全体の取り組みであり、全社での重要性を理解した主体的な関わりや参加が求められます。

たとえば、多忙のあまり人材教育の時間が確保できない社員がいる場合は、業務量を調整して余裕を持たせるなど環境の改善を行いましょう。

人材育成の重要性を強調するメッセージを発信し続けるだけでなく、計画を実行できる環境を整えていきます。

担当による指導格差を減らす

育成基準や手法を統一し、教育担当者による育成の格差が生じないようにしましょう。

たとえば、指導チェックリストを作成し、各項目の指導内容や目的のほか、育成が達成された状態を言語化して明確にします。目標とする姿が可視化されていることで指導の質を一定に保つことが可能です。

教育担当者が不足している場合は、eラーニングなどを活用して同じ動画で教育を受けることで情報格差を回避することができます。ただし、同じ動画を見ても理解度は、人それぞれで異なることから、振り返りやフィードバックの機会を必ず設けましょう。

研修効果の法則を意識する

研修には「4:2:4の法則」があり、研修効果を出すには「研修前の動機付け(4):研修中(2):研修後のフォロー(4)」が大切とされています。法則からもわかる通り、研修効果を最大限発揮するには研修中ではなく研修前の動機付けや、研修後のフォローをしっかりと行うことが重要です。

研修前に研修の目的と重要性をしっかりと伝えて、研修後に実践の機会を設けたりアフターフォローをしたりして組織全体で教育環境を整えましょう。研修の効果を最大化するためには、学習の法則に基づいて研修を設計しなければなりません。

社員のモチベーションを保つ

教育のターゲットとなる社員のモチベーションは、学習の効果に大きく影響します。モチベーションを保つためには、学習の目標を明確にし、学習の進行状況を定期的にフィードバックすることが有効です。

また、上司は1on1などで部下の良かった点やスキルアップしている部分を褒めることを意識しましょう。他者から褒められることで成長が実感でき、会社からの期待も感じることで、モチベーションのアップが期待できます。

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常に模範的な行動を取るようにする

管理職の育成担当者には、ある程度、自分の裁量をもったポジションの立場にある社員が抜擢されることがほとんどです。

そのような立場にある人間が、たとえばルールを守らない情報の取り扱いをしたり、本来の目的とは違った社内制度の使い方していたりなど、「これくらいなら大丈夫」と、コンプライアンスを遵守しない行動を取ってしまうとそのような意識が組織に蔓延してしまいます。

当然ですが、育成担当者には、手本となる模範的な行動が求められます。改めて規則を確認し、規則違反になる行動をしないように注意しましょう。

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人材育成に成功した参考事例

最後に、人材育成の成功事例として3社の事例を紹介します。

豊田合成株式会社の事例

合成樹脂・ゴムを中心とする自動車部品などの製造・販売を行う豊田合成株式会社では、人材育成において、社員との関わりを重視しています。

具体的な取り組みとしては、人事制度と人材育成の一環として、社員のスキルアップを図るための研修や教育プログラムを実施しています。これにより、基礎能力や問題解決スキルの向上、自らのキャリアへの意識向上などの効果が得られました。また、人材育成大会を開催するなど、人材育成に対する取り組みを組織全体で行っています。

スターバックスコーヒージャパンの事例

コーヒーストアの経営やコーヒー及び関連商品の販売を行うスターバックスコーヒージャパンでは、正社員やアルバイトなどの雇用形態にかかわらず一律で80時間のOJTを実施しています。

同社の研修は、企業理念やサービス精神を学び、実際の業務を通じてスキルを習得するものです。2日間程度が一般的な飲食店の研修に、80時間(約2ヶ月)もの時間をかけることにより、企業ミッションを理解し、実行できる人材を育成。ブランドイメージの維持・向上に成功しています。

サントリーホールディングスの事例

清涼飲料水やビールなどの製造・販売を行うサントリーホールディングスでは、社員の能力開発と成果を重視して人材育成を行っています。

具体的には階層別研修を実施し、スキルやマネジメント能力、リーダーシップなどを階層別に効率よく学びます。さらに社員のキャリア開発をサポートし、各世代に対応したキャリアワークショップを実施。ほかにもeラーニングや応募型研修などさまざまな教育プログラムを用意し、主体的に努力できる環境を整えています。

人材育成における課題を把握して適切な教育を実践しよう

人材育成は、組織の成長と発展に不可欠な要素です。しかし、その過程では、さまざまな課題が生じることも少なくありません。

そのため、想定される課題を未然に防ぐための対策を講じておくこと、また、状況に応じて柔軟な改善を繰り返し、常に体制やプログラムの最適化を図ることが、適切な教育の実践につながります。

ここでご紹介した課題や解決策を参考に、ぜひ自社の組織力や競争力を高められる人材育成体制を構築していきましょう。

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