資格なしでの記帳代行は税理士法違反になる?違反にならないための注意点
記帳作業の委託サービスには、税理士が在籍していない場合があります。そこで生まれるのが、記帳行為が違反にならないかという疑問です。資格のない経理代行による記帳は、税理士法違反になるのでしょうか。違反にならないための注意点と合わせて解説します。
目次
記帳代行とは
記帳代行とは、会計帳簿に記帳する作業を代わりに行うサービスです。
依頼主は領収書、請求書の控え、通帳のコピーなどの必要書類を提出。代行先は受け取った書類をもとに仕訳を行い、試算表や総勘定元帳などの帳簿を作成する流れが一般的です。
▷経理代行と記帳代行の違いとは?メリット・デメリットや料金相場を解説
資格なしの記帳代行は税理士法違反にならない
税理士資格を持たない者が記帳代行を行っても、税理士法違反にはなりません。記帳作業は、税理士しかできない「税理士業務」にはあたらないためです。
税理士事務所が代行する場合でも、記帳作業は税理士以外のスタッフが行うケースが多くあります。繁忙期には記帳代行のパート募集も散見されるほどです。
税理士法とは税理士制度を定めるための法律
税理士法とは、税理士の概要・権利・義務をはじめとする税理士制度を定めた法律です。
税理士法によると「税務の代理、税務書類の作成、税務相談などを行うには税理士資格が必要である」と定められています。
税理士の資格が必要になる経理代行に関する業務範囲
経理代行において、税理士資格が必要な業務範囲を3つ解説します。
税務の代理
税務の代理とは、本来は納税者本人が行うべき税務上の手続きを代理・代行することです。具体的には以下のような業務が該当します。
- 税金の計算
- 各種書類の作成
- 申告・申請・不服申し立て
- 過払い金の払い戻し請求
- 税務調査時の立会い
広義では、税金に関するさまざまなコンサルティングサービスも税務の代理に含まれるといえるでしょう。
税務書類の作成
税務書類の作成とは、本来は納税者本人が作成する書類を本人に代わって作成することです。具体的には以下のような書類が該当します。
- 法人・個人の決算書
- 確定申告書
- 試算表
- 総勘定元帳
- 源泉所得税納付書
税務相談
税務相談とは、税金に関する悩みの相談に応じることです。
税金にはさまざまな種類があり、計算方法も複雑で納税者の状況によって控除額も変わるうえ、税制度は頻繁に改正されています。
複雑な税金の仕組みに対応するには、税理士の知識や経験が必要な場面もあるでしょう。
▷経理事務とはどのような仕事?仕事内容や必要なスキル・他の事務との違いを解説
記帳代行業務が税理士法違反になる場合の事例
記帳代行そのものは資格を必要としませんが、内容によっては税理士法違反になるケースがあります。ここでは具体的に4つの事例を見ていきましょう。
脱税の相談を先方にした場合
税理士法36条に「脱税相談等の禁止」が定められており、脱税に関する相談はいかなる内容でも税理士法違反です。
たとえば、関与先が脱税を目的としていることを認識していながら相談を受ける、脱税の方法を具体的に指示するなどです。税理士法45条第1項に該当すると認められた場合、2年以内の税理士業務の停止・禁止または戒告となる可能性があります。
税理士自らが不真正の申告書を作成した場合
税理士自らが事実を改ざん・隠蔽するなどして、事実と異なる申告書を作成した場合も税理士法違反となります。
存在しない取引をあたかも実在するかのように仮装する、架空のものと知りながらなんらかの費用を計上して申告書を作成するなどの行為です。
当該行為が認められれば、税理士法45条第1項「故意に真正の事実に反して税務書類の作成をした場合」に該当し、2年以内の税理士業務の停止・禁止または戒告となる可能性があります。
真正の事実に反することを知りながら申告書を作成した場合
関与先が架空の経費を計上していると知りながら、事実と異なる申告書を作成した場合も税理士法違反となる可能性が高いです。
税理士法45条第1項「故意に真正の事実に反して税務書類の作成をした場合」への該当が認められると、2年以内の税理士業務の停止・禁止または戒告となる可能性があります。
関与先からの依頼で申告書を作成した場合
関与先からの依頼を受けて、事実と異なる内容の申告書を作成すると税理士法違反となります。依頼がなくても、事実とは違うと認識して作成すれば違反です。
当該行為が認められた場合は、税理士法45条第1項「故意に真正の事実に反して税務書類の作成をした場合」に該当し、2年以内の税理士業務の停止・禁止または戒告となる可能性があります。
▷経理代行とは?依頼できる業務内容や失敗しない依頼先の選び方
▷クラウド型経理代行とは?委託できる業務内容やメリット・デメリット
記帳代行で税理士法違反にならないための注意点
意図せず税理士法違反にならないために、記帳代行業者を利用する時の注意点を2つ紹介します。
税理士の所属しているサービスを利用する
税理士法違反にならない最も確実な方法は、税理士が所属している記帳代行サービスを利用することです。
単に記帳代行を依頼するだけであれば、税理士資格を持たないスタッフが記帳代行を行っても問題ありません。税務申告・年末調整・税務書類の作成が発生する場合は、税理士資格保有者が必要です。
税理士でないと扱えない業務を依頼するなら、、税理士所属の有無を必ず確認しましょう。
▷経理アウトソーシングとは?メリット・デメリットと外注先を選ぶコツ
▷経理アウトソーシングの大手会社を比較!選び方や大手に依頼するメリット
必要書類の準備を徹底する
記帳代行を依頼する際は、必要な書類を代行業者に提出しなくてはなりません。具体的には以下のような書類です。
- 支払明細表
- 現金出納帳
- 取引の詳細がわかる資料
- 通帳のコピー
- 給与データ
これらの書類を速やかに提出できるよう、日頃から書類の整理をしておくと良いでしょう。
記帳代行の依頼におすすめの経理代行サービス
記帳代行を依頼できる、おすすめの経理代行サービスを5つ紹介します。
チャットワークアシスタント
チャットワークアシスタントは、月に10時間から業務を依頼できるアウトソーシングサービスです。
初期費用はかからず、利用した月の月額費用のみで使用可能。無料でのお試しも提供しています。経理以外の業務も依頼できるため、ほかの領域と合わせて代行を検討している場合にもおすすめです。
提供元 | 株式会社Kubell |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
|
機能・特徴 | 依頼できる作業内容 経理、総務、労務、営業、Web制作、秘書、採用、その他 ※複数業務を自由に組み合わせ可能など |
URL | 公式サイト |
NOC経理アウトソーシング
NOC経理アウトソーシングは、30年以上の歴史がある業界最大規模のアウトソーシングサービスです。
企業の課題に応じてサービスを組み合わせ、業務を代行しながらも根本的な問題解決を目指すスタンスが特徴。1,000名以上のスタッフが在籍しており、企業規模を問わずおすすめのサービスといえます。
提供元 | NOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 | 経理アウトソーシング、財務コンサルティング、業務コンサルティング、経理・請求書トータルソリューション、経理プロフェッショナル人材の派遣・紹介など |
URL | 公式サイト |
NTTファイナンス
NTTファイナンスといえば、税理士業務を含む経理業務全体の代行依頼ができるアウトソーシングサービス。
NTTグループの経理シェアードサービスセンターで培ったノウハウと多くの企業の受託実績があります。シンプルながらも、信頼できるサービスといえるでしょう。
提供元 | NTTファイナンス株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 | 伝票審査業務、記帳業務、債権債務残高管理業務、現金出納管理業務、月次決算業務、四半期・期末決算業務(単体・連結)、税務決算業務など |
URL | 公式サイト |
SUPPORT+iA
継続率98%、満足度90%をうたっているオンラインアシスタントサービス、SUPPORT+iA(サポーティア)。は、税理士法人が母体となっており、30名以上の有資格者が在籍しています。
500時間にも及ぶ研修を経た3〜6名のスタッフが担当につき、業務を推進していくのが大きな特徴です。高品質なアウトソーシングサービスを探している場合、選択肢に加えて損はありません。
提供元 | グランサーズ株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 82,500円(税込)~/月 |
導入実績 | 約1,500社(※2023年06月現在) |
機能・特徴 | 経理業務、財務業務、総務業務、人事・労務業務、補助金・助成金業務、庶務など |
URL | 公式サイト |
i-Staff Accounting
i-Staff Accountingは、中小企業向けのオンラインアシスタントサービスです。
条件を満たした300名のスタッフが全国に在籍し、自社の顧問税理士とのやり取りも代行してくれます。契約時間が余った場合、経理以外のパソコン業務を代行してくれるため費用の無駄がありません。経理スタッフを採用する余裕がない、育成の手間をショートカットしたいときなどにおすすめのサービスといえるでしょう。
提供元 | ファイブスターネット株式会社 |
初期費用 | なし |
料金プラン | 【スキャンデータ化・記帳サービス】
【経理特化型オンラインアシスタント】
|
機能・特徴 | 記帳サポート、給与計算、支払い予定表の作成、売掛金・買掛金管理、請求書発行管理、入出金管理、ネットバンキングでの支払い業務、銀行口座残高管理など |
URL | 公式サイト |
税理士法違反にならないように資格が必要な業務範囲を把握しよう
企業規模の大小に関わらず、低コストで煩雑な作業を代行してくれる記帳代行・経理代行。
無資格での税理士業務に該当すると税理士法に違反する可能性があるため、記帳業務の延長で税理士業務が発生する場合には、注意が必要です。
依頼する業務内容を明確化し、税理士法に抵触する可能性があるか確認を。資格を要する業務があれば、税理士が所属するサービスを選びましょう。
おすすめのお役立ち資料
経理アウトソーシングの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら