経理マニュアルを作成するコツ|作り方やマニュアルの重要性を紹介
業務遂行に欠かせないマニュアル。さまざまな分野でマニュアル導入が進み、経理業務においても、マニュアルを作成しようという動きが加速しています。本記事では、経理におけるマニュアルの重要性について、経理が抱える課題、マニュアルの作成方法やポイントとともに紹介します。
目次
経理が抱える課題
経理業務において、さまざまな課題を抱える企業も多いでしょう。中でもよく見られるのが、次のような課題です。
業務がブラックボックス化しやすい
経理の課題として、業務がブラックボックス化しやすいことが挙げられます。
日常的に行われる経費精算、仕訳作業などは若手の社員も担当しますが、決算や開示書類関連の業務は、経験を積んだ社員の担当となることが多いでしょう。
決算関連業務は年に一度ということもあり、若手社員に引き継ぐ機会を逃しがちです。その結果、経験のある社員しか対応できない業務となり、その社員が退職や異動したときに、現場の混乱を招くことになります。
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担当者1人当たりの業務量が多い
経理の業務は、決算関連業務、給与関連業務、取引先への請求・入金業務など多岐に渡りますが、新たな人員が配置されにくく、1人当たりの負担が大きいというのが実情です。特に月末・月初や年度末などの繁忙期には、残業続きになることも珍しくありません。
少ない人数で多くの業務をこなさなければならず、担当者1人当たりの業務量が多くなってしまうことは、経理の課題といってよいでしょう。
非定型的な業務が多い
経理に関する基準や税法は頻繁に改正されるため、変更が生じるたびに対応する必要があります。変更があったにもかかわらず、以前の基準で作成してしまった書類は、修正しなければなりません。定型的と思われがちな経理業務ですが、実際は非定型的な業務も多いのです。
また、経費精算や年末調整など他部署の社員の協力が必要な業務も多々あります。しかし、社員に経理の知識がないためにスムーズに処理が進まないことも、起こりがちです。その結果、修正対応などのイレギュターな業務が発生し、対応に時間を割かれることも経理の課題といえます。
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正確性が求められるため処理に時間がかかる
経理は、企業全体で動くお金を管理する部署ということもあり、正確性が求められる業務です。金額チェックなどは入念に行う必要があり、業務処理に時間がかかります。
例えば、企業の口座にある資金を操作するとき、金額を1桁間違えただけで、大きな損害にもつながりかねません。1桁のミス、1円の誤差が企業経営に影響を及ぼすため、どうしても慎重にならざるを得えず、業務に時間がかかりがちです。この点も経理の課題といえます。
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経理におけるマニュアルの重要性
経理業務の課題を解決し、正確性や効率性を上げる方法のひとつが、マニュアルの作成です。その重要性について解説します。
経理業務のブラックボックス化を解決できる
業務の流れや方法を明示した経理マニュアルがあれば、業務のブラックボックス化の解決につながります。担当者が退職、異動する場合も慌てずにすみますし、業務の引継ぎもスムーズにできるでしょう。
マニュアルを作成すれば、業務が標準化できることもポイントです。属人化せず、誰が担当しても同じ手順で業務を進められるようになれば、業務のクオリティも一定に保てます。
処理速度の改善・業務効率化が期待できる
マニュアルを見て業務を進められるようになれば、ひとつひとつ教える手間が省けます。教える側、教わる側双方にとって時間の効率化ができるということです。担当者が交代する際にも、引き継ぎにかかる時間を短縮できるでしょう。
マニュアルを作成することによって、経理の様々な業務の効率化というメリットがあります。
また、マニュアルに各業務のコツやミスの発生しやすいポイントを記載すれば、起こりがちなミスを未然に防げます。結果、業務のスピードアップにもつながるでしょう。
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経理の知識・情報を共有できる
社員一人ひとりが持つノウハウや知見を蓄積できる経理マニュアルがあれば、経理に関する知識や情報の共有ができます。若手社員の教育に活用できるだけでなく、トラブル発生時やイレギュラー時の対応にも役立つでしょう。
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経理に起こりがちなマニュアルの失敗例
業務に役立つはずのマニュアルですが、実際に運用を始めると、うまくいかないこともあります。経理に起こりがちな失敗例を確認しておきましょう。
マニュアルの更新・活用がされていない
よくある失敗例として、経理マニュアルを作成したものの、その後の更新をしていないため、結局は活用されていないことが挙げられます。経理は1人当たりの業務量が多く、税金関係の処理方法も頻繁に変わるため、マニュアルの更新作業にまで手が回らないこともあるでしょう。
また、他部署や取引先とも関わる経理は、業務フローが複雑になりがちです。どうしたらわかりやすくノウハウの共有ができるかを考えているうちに、時間が過ぎてしまうこともあるでしょう。更新されないマニュアルは、結局は役に立たないため、活用されなくなってしまいます。
マニュアルの書き方が担当者によって異なる
社外とのお金のやり取り、社内でのお金のやり取り、伝票作成や帳簿記載など、経理にはさまざまな業務があります。この業務の担当者ごとにマニュアルを作成した場合、書き方が統一されず、担当者次第になりがちです。内容のバラついたマニュアルを渡されても、すぐには活用できません。元のマニュアルに書き足す形で更新が行われていると、さらに読みにくくなることもあるでしょう。
その結果、「聞いたほうが早い」とマニュアルが活用されなくなったり、活用はしたものの業務効率が落ちたりミスが発生したりということになってしまいます。
このようなマニュアルでは、決して成功とはいえないでしょう。
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経理マニュアルの作り方
経理業務において重要なマニュアルを失敗なく作成するには、どのようにすればよいのでしょうか。経理マニュアルの作り方について、基本的な流れを解説します。
1.作業担当表を作成する
まず、経理業務の一覧と各業務の担当者を記載した作業担当表を作成しましょう。作業担当表を作成することで、どのような業務があるのか、その業務について確認したいときに誰に聞けばよいのかが明確になります。
作業担当表では、縦に業務の一覧を書き出し、業務ごとに横軸に担当者を記載しましょう。担当者のほかに承認者や確認者がいる場合も、まとめて記載します。さらに、前担当者の氏名もわかるようにしておくと、疑問点が出たときに役立つでしょう。
業務の一覧は、日次業務、月次業務、年次業務に分けると見やすくなります。
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2.テンプレートを作成する
フォーマットを統一することで、誰が読んでも見やすい経理マニュアルになります。よって、必要な項目を設けたテンプレートを事前に準備しておきましょう。
必要最低限の項目で構成したシンプルなテンプレートにすれば、さまざまな業務で柔軟に使い回すことができます。
基本的に設定しておきたい項目は、次のとおりです。
- 管理コード
- 公開日
- 作成者
- 改訂日
- 業務の目的
- 業務の具体的な手順
- 改訂履歴と担当者
3.テンプレートにそって記載する
テンプレートが完成したら、項目にそって記載していきます。
管理コード
管理コードは、マニュアルを管理しやすくするためのものです。必須というわけではありませんが、業務が多岐に渡る経理では作成しておくとよいでしょう。例えば、以下のような形態があります。
管理コードの例:〇〇-△△-◇◇-▲▲
〇〇…社内における部門コード
△△…業務分類コード(業務発生の時期や業務内容など)
◇◇…詳細な業務ごとのコード
▲▲…改訂履歴(改訂するごとに1を足す)
公開日
マニュアル作成後、全体に公開した日付を記載します。
改訂日
最後にマニュアルを改訂した日付を記載します。
作成者
マニュアルを最初に作成した担当者の名前を記載します。
業務の目的・手順
該当業務を行う目的、必要性を記載します。「なぜ」「いつ」「誰が」「何を」行うかを明確に、わかりやすく記すことを心がけましょう。
また、具体的な業務手順を時系列にそって記載します。実際に該当業務を進めながら手順を書き出すと、抜け漏れをなくせるでしょう。必要に応じて箇条書きにすると、誰にとってもわかりやすくなります。
些細と思われることも省略せず、すべての手順を網羅的に書くことが大切です。実施頻度や実施日、注意点なども合わせて記載すると、ミス防止にもつながるでしょう。
改訂履歴と担当者
マニュアルを改訂したときに記録を残します。改訂の時期、改訂の背景や経緯を簡潔に記載するとともに、改訂担当者が明らかにできるようにしておきましょう。
4.運用しながら修正し改訂する
経理マニュアルが完成したら、全体に共有し、運用を開始しましょう。運用するなかで不備や手順の変更が発生したら、適宜修正し改訂を行います。
作成者はわかりやすく手順を記載したつもりでも、業務に慣れていない若手社員や初めて該当業務を行う社員には、理解できないポイントがあるかもしれません。マニュアルに従ったのに間違った手順を踏んだり、ミスが発生したりした場合は、マニュアルに不備がないか確認し、活用できるマニュアルにしていきましょう。
経理マニュアルを作成する4つのポイント
経理マニュアルの作成について大枠がつかめたところで、活用されるマニュアルにするための4つのポイントを押さえておきましょう。
図や帳票を活用し見やすくする
マニュアルを作成する際は、図や実際の帳票なども活用することにより、文章では伝えきれない部分が具体的でわかりやすくなります。
例えば、システムの利用手順を記載する際には、実際の操作画面のキャプチャーを用いると効果的です。視覚的に手順を理解できるため、スムーズに業務を進められます。
専門用語や略語は避ける
専門用語、略語などの使用を避けることも大切です。マニュアルにわからない言葉が出てきて理解できないとミスやトラブルの原因となり、なによりも読み手への意欲も削がれてしまいます。
そのため、専門用語はできる限り一般的な言葉にかみ砕くいて、初めて業務に取り組む人でも理解できる内容にすることが重要です。どうしても使用しなければならない場合は、脚注をつけるなど、読み手への配慮を忘れないようにしましょう。
ミスが多い業務に対して注意喚起をする
ミスの出やすい業務には、マニュアルで注意喚起しておくことも大切です。マニュアルに記載されていればミスを未然に防げます。
あわせて業務に取り組む上でのコツやポイントも記載すれば、慣れていない社員でも業務をスムーズに進められるでしょう。
例えば、過去に起きたイレギュラー対応について記載してあれば、同様の事態が発生したときにも落ち着いて対応できます。ベテラン社員の知見を若手社員に共有できるようにすることも、経理マニュアル作成のポイントのひとつです。
「注意」「ポイント」などのアイコンを添えて、視覚的に訴えるようにしてもよいでしょう。
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文章での説明が難しい場合は動画を活用する
文章だけでは説明が難しい業務には、動画マニュアルを作成することもおすすめです。
例えば、会計ソフトの操作など、実際の様子を見たほうが早く理解できる業務もあります。動画を見ながら同じ操作をすればよいので、わかりやすいマニュアルになるでしょう。
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質の高いマニュアルを作成し経理業務に活かそう
業務量が多く、ブラックボックス化しやすい経理業務において、マニュアルの作成は必要不可欠ともいえます。マニュアルを作成することで、ノウハウの共有ができ、業務の効率化も図れるでしょう。
ただし、作成して終わりではなく、必要に応じて改訂をかけることも大切です。今回の記事を参考に、質の高い経理マニュアルを作成し、業務に活かしていきましょう。
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