マーケティング業務をRPA導入で効率化する方法!事例からわかる活用事例
マーケティング業務は、情報収集や分析、広告効果の測定などさまざまなデータをもとに新たな販売戦略を立てる仕事ですが、戦略立案前の定型作業に多くの時間をさかれてしまうことが課題となっています。この課題を解決するのが定型作業を自動化できるRPAです。この記事ではRPAとマーケティングの関係性や導入するメリットについて紹介していきます。
目次
RPAとマーケティング業務について
まず、RPAとはどのようなシステムなのか、マーケティング業務とどのような親和性があるのか見ていきましょう。
RPAとは
RPAとは「Robotic Process Automation」(ロボティックプロセスオートメーション)の頭文字を取った略語で、パソコン上に設定したソフトウェアロボットにより、業務を自動化するシステムです。
RPAが得意とするのは、データ入力やファイル複製などの単純な定型作業です。定型作業を自動化できれば、社内リソースは、コア業務に注力できます。
そういった理由もあり、大企業だけでなく中小企業でもRPAを導入するケースが増えてきました。
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RPAはマーケティング業務に適している
マーケティング業務では、戦略を立てる上で競合他社の価格調査や顧客へのアンケート調査、広告の効果測定など非常に多くのデータを扱います。
しかし、具体的なマーケティングに生かすためには、ひとつひとつのデータを入力し、使いやすい状態に加工しなければなりません。この単純作業にマーケティング担当者が膨大な時間をさかれ、コア業務の時間を圧迫されていることが、多くの企業の課題となっています。
しかし、単純な定型作業を得意とするRPAを導入して自動化すれば、担当者の負担が大幅に軽減できます。そのため、RPAはマーケティング業務に適したシステムであるといってよいでしょう。
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マーケティングでのRPAの使い方
では、マーケティングのどのような業務をRPAに任せることができるのでしょうか。おもな業務をピックアップしました。
- 価格調査に導入する
- アンケート集計に導入する
- レポート作成に導入する
- 顧客情報の取りまとめに導入する
それぞれについて、掘り下げます。
価格調査に導入する
競合他社の製品やサービスに関する価格調査は、マーケティングにおいては外せない業務です。この業務は、調査する製品やサービスが多ければ多いほど時間がかかってしまいます。価格調査の担当要員として、アルバイトや派遣スタッフを雇う企業もあるほどです。
しかし、RPAを導入して調査対象や収集内容をソフトウェアロボットに指示すれば、正確に素早く情報を集めることができます。業務効率化が図れるだけでなく、調査要員として雇っていた人件費の削減も可能です。
アンケート集計に導入する
顧客の声に触れられるアンケート調査は、新たな製品開発やサービス改善のために欠かせない要素です。しかし顧客が多くなればなるほど、アンケート項目が細かくなればなるほど作業量は膨大になり、手作業入力ではミスも生じやすくなります。
しかし、RPAで自動化すれば、作業時間が大幅に短縮できるだけでなく、人的ミスを防ぐことも可能です。
集計データを用途に応じたフォルダに分類するといった作業もできます。入力、集計、データの整理まで一気に自動化できればデータ管理も容易になり、マーケティング担当者の負担は大きく軽減されるでしょう。
レポート作成に導入する
マーケティングでは、データをもとにレポートを作成することも重要な業務です。しかし、レポート作成に必要なデータは複数のシステムにまたがっていることも多く、収集や整理に思わぬ時間がかかることが、マーケティング担当者を悩ませていました。
そこで役立つのがRPAで、システムにまたがる情報収集と整理をRPAで自動化すれば、担当者は別の業務に時間を使えます。ほかのツールと連携させればレポートの自動作成も可能で、担当者は最終的なチェックをするだけ。レポート作成でもRPAは、担当者をしっかりとバックアップしてくれます。
顧客情報の取りまとめに導入する
規模の大きな企業では、マーケティングに必要な顧客情報を各部署がばらばらに持っているということが起こりがちです。また、既存の顧客だけでなく、新規顧客や見込み客も含めた顧客情報を得ることは、マーケティング戦略を練るうえで必要不可欠のため、マーケティング担当者は顧客情報の取りまとめ作業に追われることになります。
しかし、このような単純作業こそRPAの得意とするところです。情報の取りこぼしもなく、担当者にとって作業しやすい環境をRPAがスピーディーに整えてくれます。
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RPAをマーケティング業務に導入するメリット
マーケティング業務へのRPAの使い方がイメージできたところで、もう少し具体的に導入のメリットを見ていきましょう。
- マーケティング能力が向上する
- データ集計が容易になる
- 人的ミスを防げる
- 別の業務にリソースを充てられる
マーケティング能力が向上する
マーケティング担当者の使命は、製品やサービスを売るための仕組み作りです。しかし、その前段階の単純作業が担当者に負担をかけていました。
RPAでは単純作業の自動化が可能なので、実現すれば担当者は本来の知的業務に集中できるようになります。本人はもちろん、ひいては社内全体のマーケティング能力向上につながるといえるでしょう。
データ集計が容易になる
精度の高いマーケティング施策には、データ集計が欠かせませんが、膨大なデータを扱うため工数が増えがちで、心身ともに担当者に負担がかかります。
しかし、データ集計のような単純作業はRPAの得意ジャンルで、複数のデータを集計したり、必要なデータを正確に抽出したりということも短時間でできます。複雑なデータの集計が容易になることは、マーケティング担当者にとってかなりのメリットがあるといってよいでしょう。
人的ミスを防げる
データ集計にも関連しますが、多岐に渡る膨大なデータを扱う場合、どうしても人的なミスが起きがちです。ひとつのミスが大きな損失につながる可能性があり、修正に大きな労力がかかることもあるでしょう。
しかし、RPAならミスのない正確な作業が可能です。人的ミス防止は、業務効率の向上につながります。
別の業務にリソースを充てられる
RPA導入によって業務の一部を自動化できれば、その業務を担当していたリソースを、社運を握るようなコア業務に充てることができます。
結果的に仕事の質が高まり、企業全体の生産性が向上することは大きなメリットといえるでしょう。
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RPAをマーケティング業務に導入するデメリット
メリットのあるRPA導入ですが、やはりデメリットもあります。おもなデメリットを確認しておきましょう。
- 導入や運用に時間とコストがかかる
- セキュリティ面のリスクがある
- トラブル時の対応が難しい
- 業務がブラックボックス化する懸念がある
それぞれについて、見ていきます。
導入や運用に時間とコストがかかる
RPAは、導入したらすぐに稼働できるというわけではありません。自社が自動化したい業務を洗い出し、その作業に合ったロボットを作成するという手順を踏むため、運用までには時間が必要です。この後で紹介する第一生命保険株式会社も、導入の検討から運用までには1年近くの時間をかけています。
時間だけでなく、相応のコストもかかります。費用はRPAツールを提供するベンダーによって異なりますが、長期的に運用するとなると、決して安い金額とはいえません。導入を検討するにあたっては、費用対効果をしっかり試算する必要があります。導入したいが資金繰りが厳しいという場合は、「IT補助金」などの補助金制度の利用も検討してみましょう。
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セキュリティ面のリスクがある
RPAは不正アクセスや情報漏洩のリスクがあるため、対策は必須です。
具体的には、IDやパスワードの暗号化、アクセス権限の設定をはじめとしたセキュリティ強化のほか、独自のシステムを構築しなければならないこともあります。
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トラブル時の対応が難しい
プログラミングしたとおりに作業をするRPAですが、想定外のトラブルを生じることがあります。場合によっては、社内全体の業務に影響することもあるでしょう。
トラブルが生じた場合は、速やかに原因を解明し、修正に取り組まなければなりません。しかし、社内に知識のある人材がいない場合は対応が難しく、RPAのデメリットのひとつとなっています。
業務がブラックボックス化する懸念がある
業務効率化につながるRPAですが、特定の業務がブラックボックス化してしまうという懸念もあります。
たとえば、RPAで自動化した業務を熟知している担当者が異動したり退職したりした場合、業務に対応できる人がいないということにもなりかねません。
RPA導入にあたっては、運用マニュアルの作成、業務内容を共有するなどして、ブラックボックス化しない仕組み作りが大切です。
▷RPAが中小企業で進まない理由|事例からわかる取り組むべき理由
マーケティング業務効率化のヒントになるRPA活用事例
メリットもあればデメリットもあるRPAですが、導入により着実に成果を上げている企業・自治体もあります。マーケティング業務でも活用のヒントとなる事例をご紹介しましょう。
第一生命保険株式会社の事例
第一生命保険株式会社では、保険加入後の事務処理をする部署で、1,600名ほどの従業員が業務にあたっていました。企業にとっては直接的な利益に関与しない間接的業務という事情もあり、ITなど効率化に向けた費用がかけにくく、手作業での処理が続いていたといいます。
しかし、定型業務を自動化するRPAが登場したことを受けて導入の検討を開始、2017年に正式稼働するに至りました。2018年には39部署、460業務にまでRPAの導入を拡大、累計で13万2,000時間もの作業時間削減、人に換算すると約80人分の作業自動化に成功したといいます。それにより社内リソースを成長分野に配置できるようになったことも、大きな成果です。
株式会社JTBの事例
株式会社JTBでRPAの運用を推進したのは、国内旅行の商品化を担当する事業部です。具体的な業務は、宿泊施設、交通手段、現地でのアクティビティなど、商品素材となるあらゆる情報を収集し、すべてについて条件交渉をした後、商品価格決定をすること。しかし、情報収集に社内リソースをさかれると、その後の交渉や企画など、コア業務にしわ寄せがくることが課題でした。
そこで、注目したのがRPAです。2017年に導入に向けた情報収集をスタートし、2018年には自動化できる業務にRPAを本格導入しました。その結果、2020年にはKPIとして定めていたRPA稼働時間4,000時間を達成、現在は6,000時間稼働に向けて取り組みを進めています。
株式会社ベニヤの事例
株式会社ベニヤは、自社で運営するオンラインショップでインテリア雑貨などを販売し、快適な生活を提案している企業です。このサイト運営で課題だったのが、オンラインでの受注業務や在庫管理など定型業務に人手を割かれることでした。そこで検討されたのが、RPAです。ただ「人間の仕事がロボットに奪われるのでないか」といった社員の不安も強く、導入は難航したといいます。
しかし、会社全体でRPAについて知識を深めながらメリットを共有し、最終的には「やってみよう」と決断するに至りました。
結果、社員は定型業務から解放され、生産性を高める業務に専念できるようになったといいます。人的ミスもなくなり、経営力強化につながっている点は、RPA導入の大きな成果です。
鹿児島県奄美市の事例
鹿児島県奄美市では、寄附情報の集約、返礼品の出荷依頼、お礼状の作成など「ふるさと納税」の定型業務にRPAを導入しています。
これまでも、寄附データのダウンロード、お礼メール送信、返礼品の受領書管理など、業務の中にはデジタル化された部分もありました。しかし、システム連携ができていなかったため、手作業での補完が欠かせなかったといいます。
この課題を解決したのが一連の業務を自動化したRPAで、年間140時間もの時間削減につながりました。
その結果、職員が別業務を担当できるようになったほか、人的ミスがなくなったこと、RPAのシナリオによって職員が異動する際の引き継ぎが効率化したことなど、数々のメリットを享受しています。
▷RPAの活用事例一覧!業界・職種別の業務効率化事例を理解しよう
マーケティング業務におすすめのPRAツール
マーケティング業務におけるRPAの活用法、メリットやデメリット、導入事例がわかったところで、おすすめのPRAツールを紹介します。導入を検討する場合の参考にしてください。
UiPath Platform
UiPath Platform(ユーアイパスプラットフォーム)は、アメリカに本部を構えるUiPath社が提供するPRAツールで、導入実績では世界トップクラスを誇ります。
効率化できる業務を発見して自動化、運用までを一環してできるほか、業務パフォーマンスの効果測定、NLPやAIとの連携など、豊富な機能を搭載していることが特徴です。2017年に日本法人が設立され、日本語でのサポートも万全、国内でも多くの企業が導入しています。
提供元 | UiPath株式会社(日本法人) |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | Free:無料(個人向け) Pro:$420~/月 Enterprise:要問い合わせ |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
RoboTANGO
RoboTANGO(ロボタンゴ)は、スターティアレイズ株式会社が提供するRPAツールで、1ライセンスを複数のパソコンで利用可能です。
アンケート収集後のレポート作成や給与計算など、デスクワークの単純作業を自動化し、業務効率の改善に貢献してくれます。24時間365日フル稼働、しかも処理は正確でスピーディ。ベンダーとして目指すのは「新しく頼もしい仕事の相棒」として中小企業に貢献することとあり、費用も導入しやすい設定になっています。
提供元 | スターティアレイズ株式会社 |
初期費用 | 基本プラン:100,000円(税別) リモレクライト:150,000円(税別) リモレクスタンダード:150,000円(税別) リモレクアドバンス:200,000円(税別) |
料金プラン | 基本プラン:50,000円(税別)/月 リモレクライト:80,000円(税別)/月 リモレクスタンダード:100,000円(税別)/月 リモレクアドバンス:150,000円(税別)/月 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
WinActor®
WinActor®(ウィンアクター)は、NTTグループが研究開発し、NTTアドバンステクノロジー株式会社が提供する日本製のRPAツールです。プログラミングせずに自動化ができるという使い勝手のよさもあり、国内でも多くの企業が導入しています。
強みは、Windowsに特化し、Windowsで操作可能なアプリケーションならすべてに対応できることです。パートナー企業が全国にあり、ツーツの導入から運用までのサポートもしてくれます。
なお、Macでは使用できないので、その点はご注意ください。
提供元 | NTTアドバンステクノロジー株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | ノードロックライセンス
※いずれも1年間の期間ライセンス フローティングライセンス
※複数のパソコンにインストール可能 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
RPAの導入はマーケティング業務を効率化する
RPAを活用すれば、マーケティング業務における定型作業を自動化でき、業務効率の向上が期待できます。導入する企業も増え、着実な成果を上げている企業があることもお伝えしたとおりです。
RPAは、マーケティング担当者の負担を軽減し、本来の業務に集中する時間を作ってくれるでしょう。ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
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