単純な事務作業はRPAの導入で自動化!導入事例や活用方法
定型作業を自動化し、業務の効率化に役立つRPA。事務作業で時間の大半を占めるデータ入力や転記などの単純作業を任せることで、リソースの負担軽減も可能です。本記事では、RPAの活用方法や導入事例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
RPAとは?
RPAは「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」を略した言葉で、人間がパソコンでしていた作業をロボットにより自動化するシステムをいいます。そのためのツールが「RPAツール」です。
RPAが得意とするのは、データ入力、書類や帳簿の作成・整理、経理処理をはじめとした定型的な単純作業です。そのため、時間がかかりがちな事務処理の向上に貢献するとして、導入する企業が増えています。
人がしていた作業をRPAで自動化できれば、作業時間が短縮できるだけでなく、社内リソースに、より生産性の高い業務を任せることも可能です。
RPAは、サーバー内にインストールする「サーバー型」、パソコンにインストールする「デスクトップ型」、インターネットを通じてクラウド上のツールを利用する「クラウド型」の3種類に分けられます。
サーバー型とクラウド型は複数のパソコン作業を自動化できますが、デスクトップ型の場合、自動化できるのはインストールしたパソコンのみです。
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Excelマクロとの違い
作業を自動化するシステムとしては、Excelマクロも広く知られています。ただ、RPAとはいくつかの違いがあります。
たとえば作業範囲です。Excelマクロが自動化できるのは、Excelでの作業に限られており、ほかのソフトウェアと連携することもできません。一方のRPAは、ほぼすべてのソフトウェア、CRM、会計ソフトなど、パソコンで処理することであれば自動化できるといって差し支えないでしょう。
また、Excelマクロは、作業しているパソコンだけでしか自動化できませんが、RPAは、複数のパソコンにまたがる自動化、ほかのシステムとの連携も可能です。
さらに、Excelマクロを使うには「VBA」という専門性の高いプログラミング言語が必要となっています。RPAもプログラミングは必須ですが、簡単な操作で設定できるように工夫も施され、それほどの専門知識がなくても使うことができます。
このように見てくると、PRAのほうが汎用性が高いといえるのではないでしょうか。
▷RPAとExcelマクロ(VBA)の違いとは?特徴や使い方を徹底比較!
RPAが注目されている理由
Excelマクロをはじめ、作業を効率化、自動化できるソフトウェアやシステムは、これまでにもありました。しかしなぜ、RPAが注目されるようになったのでしょうか。おもな理由として挙げられるのは、2点があげられます。
働き方改革の推進
働き方改革とは、ひと言でまとめると「一人ひとりが多様な働き方のできる社会を実現しよう」という政府主導の取り組みです。
その具体例として挙げられるひとつに、長時間労働の是正があります。
長時間労働の是正には、業務内容や人員配置の見直しが必要不可欠です。その一環として、業務の効率化が模索されるようになりました。それを可能にするのが、RPAだったのです。
ルーチンワークや手順の決まった作業をRPAで自動化できれば、人が行うよりも正確かつスピーディーで、効率もよくなります。ミスも減り、リソースをより生産性の高い業務に充てることも可能です。
働き方改革と同時に、業務効率の改善、生産性の向上が実現できるといってよいでしょう。
▷RPAの費用対効果は良い?悪い?測定方法や効率化を進める秘訣
人手不足の深刻化
RPAが注目されているもうひとつの理由は、人手不足が深刻化していることです。
少子高齢化が進む日本では、労働人口が減少の一途をたどっています。すでに人手不足に陥っている業界も少なくなく、何も手を打たないでは乗り切れない状況といっても過言ではありません。
そこで、注目されるようになったのがRPAであり、人の代わりに作業をしてくれる存在があれば、人手不足解消の有力な手段となることは間違いありません。
事務作業でのRPAの活用方法
では、「働き方改革推進」「人手不足解消」のために、どのようにRPAが活用できるのでしょうか。RPAの特性を生かしたおもな活用法として、次の4点が挙げられます。
- データの入力や転記
- データの取得、分析、加工
- データの照合
- 問い合わせ対応
データの入力や転記
作業ボリュームにもよりますが、データの入力や転記には人手と時間が必要です。繁忙期には、残業による長時間労働になるケースも少なくありません。単純作業を繰り返していると集中力が低下し、ミスを起こしやすくなるという弊害もあります。
そんな定型的な業務にRPAを導入することにより、作業時間が大幅に短縮できるだけでなく、不足しがちな人材をほかの重要な業務に回すことができるでしょう。
データの取得、分析、加工
たとえばマーケティングでは、競合他社の情報を収集し、分析する作業が必要不可欠です。しかし多くの企業では、情報収集に時間がかかりすぎ、リソースのコア業務を圧迫することが問題視されています。
しかし、Webサイトから必要とする情報を抽出して集め、加工する技術「スクレイピング」を使えば、RPAでの自動化が可能です。レポートを作成することもできます。
データの取得に関する一連の業務をRPAにまかせれば、リソースは、マーケティング本来のコア業務に専念できるようになるということです。
▷RPAの導入後・運用での課題点|原因や課題を解決する秘訣
データの照合
銀行の与信業務などで欠かせないデータ照合は、非常に神経を使う作業です。人手の作業は時間もかかり、疲労感も増します。しかし、業務自動化ロボットのRPAを導入すれば、素早い正確な処理が可能です。
データ照合では、郵便番号や住所情報と照らし合わせての郵便物仕分け、領収書との照合が必要な経費精算なども、RPAでの自動化が可能です。
問い合わせ対応
RPAは、これまで人がしていた問い合わせに対応することもできます。
たとえばメールなら、キーワードに従って「注文メール」「問い合わせメール」などに自動的に分類、用意しておいた文書の自動返信が可能です。
そのほか、問い合わせ内容の分類、必要部署への連絡や共有など、事後処理にもRPAは活用できます。
▷RPA促進のための業務フローとは?目的や手順を詳しく解説!
RPA導入による効果
ここではRPAの導入によって得られる効果について紹介していきます。
業務効率と生産性のアップ
ここまで説明してきたように、RPAは人手と時間が割かれていた単純作業や定型業務を自動化します。正確に素早い処理ができるだけでなく、人的ミスも起こしません。作業工数や時間を大幅に削減し、業務効率が格段にアップすることは、大きな効果といえるでしょう。
また、人手が担っていた単純作業をRPAで自動化すれば、そのリソースを頭脳的な業務に充てることができます。人材の有効活用につながるだけでなく、生産性の向上にもつながるでしょう。
人的ミスの防止
人的ミスが防止できることも、RPA導入による効果のひとつです。
人が行う作業では、どうしてもミスをゼロにすることができません。ミスのために、余計な業務が発生してしまうこともあるでしょう。
しかし、RPAではプログラムされたとおりに正確に処理を実行してくれるため、些細なミスを発生するリスクを防ぐことができます。ミスなく処理できれば、余計な業務が発生することもありません。
人件費等費用の削減
RPAを導入すれば、人件費等費用が削減できるという効果も得られます。
たとえばデータ入力要員として人を雇っていたのであれば、その人件費カットが可能です。データを出力して人がチェックしていたとすれば、その用紙やインクなども削減できます。
RPAは、さまざまな費用の削減にも貢献できるということです。費用削減は、経営力の強化に欠かせない要素でもあります。
対応力の向上
先ほどお伝えしたように、RPAは問い合わせ対応ができます。人がいない状況でも24時間365日、休みなく稼働できることは、大幅な対応力向上といって差し支えないでしょう。
クレーム対応などのスピーディーな対応が求められることにも、RPAは力を発揮してくれます。
これは、顧客満足度を上げるうえでも大切なことです。
▷RPAは使えない?役に立たない?導入での問題点や失敗してしまう理由
RPAの事務作業導入事例
企業や自治体の中には、すでにRPAを導入し、実績や成果を上げているところもあります。その具体事例を紹介します。
株式会社イーエムネットジャパン
オンライン広告代理店事業を手がける株式会社イーエムネットジャパンは、複数の部署で同じ内容の転記作業やチェックリスト作成作業が発生するという課題を抱えていました。
そこで導入したのが、定型作業を自動化できるRPAツール「Robo-Pat」です。結果、チェックリスト作成にかかる時間が、大幅に短縮されました。さらに、30分かかっていたレポート作成業務を完全自動化したことで作業時間が0分にになり、営業部門では1日合計100時間分の業務時間削減を達成しています。
エイレント株式会社
レンタル業を営むエイレント株式会社は、生産性向上を目指し、全社を挙げて業務改革に着手しました。当初は、IT活用やマーケティング強化による経理業務の改善を計画していましたが、RPAの存在を知り、RPAツール「Robo-Pat」の導入することに。
約20のロボットを作成し、Excelと基幹システムの連携や売上見込み報告の確認など、多数のシナリオを作りました。その結果、トータル400~450時間分の業務時間削減を達成したということです。
ポート株式会社
インターネットメディアで、就職やリフォーム、ファイナンスに関する情報を発信しているポート株式会社には、手作業による反社チェックの業務逼迫、対応ミスなどの人的エラーが課題となっていました。
そこで業務の外注化も視野に入れて検討した結果、RPAツール「AUTORO」の導入を決断します。結果、1日に7~8割を占めていた担当者の反社チェック業務の比率が大幅に減り、月50時間もの残業時間削減を実現しました。さらに、リソースをほかの業務に充てることもできるようになり、生産性の向上を実現しています。
株式会社Wantedly
株式会社Wantedlyは、ビジネスSNS事業を手がけるスタートアップ企業で、サービス拡大に付随するオペレーション業務に対応するため、クラウド型のRPAツール「AUTORO」を導入、運用してきました。
手作業の事務処理を自動化した結果、業務量が1/3にまで削減され、空いた時間をマニュアル作成、オペレーション改善の調査など、生産的な業務に回せるようになりました。ツールの活用はほかの部署にまで広がり、サービスを拡大しながら、コスト削減も実現しています。
株式会社ワンスター
株式会社ワンスターは、デジタルDRM事業や海外事業、Tech事業などを手がける企業です。もともと同社は、生産性の向上を目的として、デスクトップ型のRPAツールを導入していました。しかし、作業量の多いWebページには対応しきれず、頻繁にエラーが発生、その対処に時間をさかれていたといいます。
そこで、柔軟な対応ができるクラウド型の「AUTORO」を導入し、1日に3時間もかかっていたエラー対応が、5分以下に削減されました。運営側のコストも以前を100としたら、5まで減ったという感触を得るなどの成果を出しています。
福岡県宗像市
福岡県宗像市が抱えていた課題は、農地情報公開システム(全国農地ナビ)に、農耕地の賃貸借権設定状況や利用状況のデータ入力をどう行うかということでした。人手の作業では、約1,450時間かかると想定されていたからです。
そこで、定型作業を得意とするRPAの導入を検討、結果として作業時間を約40時間まで短縮することに成功したといいます。ロボットの作業により、入力ミスがゼロだったことも、大きな成果です。
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事務作業でRPAを活用する際の注意点
事務作業を自動化することで、働き方改革の推進、人手不足の解消、業務効率や生産性アップなど、さまざまな効果を生むRPAですが、活用にあたっては、注意したいこともあります。
小規模でのスモールスタートを心がける
自動化したい業務は多々あるのが実情であっても、RPAを導入するときは小規模でスタートすることが大切です。
大規模で導入すると、関係各所の業務の流れを変更しなければならず、混乱が生じます。しかし、小規模であれば混乱も少なく、トラブルが起きても迅速な対応が可能です。RPA導入の効果も検証しやすくなるでしょう。
もしくは、効果の規模は小さいものを複数導入して、少しずつ拡大を進めることも方法です。
いずれにしても、最初から大規模な成功を狙わないことが成功の秘訣ともいえます。
システム部門など他部署との連携する
RPAは、ツールをインストールして稼働させます。専門的な知識は必要ないとされているものの、シナリオの作成をしなければ動いてはくれません。場合によっては、システム環境を整備しなければならないこともあり、想定外のエラーが起きて対応しなければならないこともあります。
そのようなとき、システム部門のサポートは必要不可欠となるため、RPAの管理や構築も含めて連携をはかりましょう。
セキュリティ対策の実施する
ネットワーク上で情報を扱うというRPAの性質上、情報漏洩のリスクは避けられません。もちろんRPAにも対策は施されていますが、情報漏洩は企業生命を奪う可能性もあります。
さまざまな状況を想定し、自社でもできる限りのセキュリティ対策を施すことは、RPA導入では欠かせないポイントです。
修正しながら運用する
RPAへの指示をする上ではプログラミングした内容が最初から想定通りに動くとは限りません。運用していく上で思わぬエラーが出ることもありますし、非効率な作業をしてしまう可能性もあります。
そのため、RPAを最大限に活用して運用していく上でも定期的に修正を加えつつ、運用していく必要があることを理解しておきましょう。
▷RPAの運用ルールはどう決めるべき?運用方法と失敗しないポイント
RPAで事務作業を自動化し業務負担を軽減しよう
単純な定型業務の多い事務作業では、RPAの活用に多くの効果が期待できます。働き方改革の推進、人手不足の解消に対応できることはもちろん、業務効率や生産性の向上、人的ミスの防止など、企業にとってのメリットも多々あります。
RPAの導入の目的がリソースの業務負担軽減であっても、それがさまざまな効果を生み、ひいては経営力の強化や向上につながるはずです。
この機会に、事務作業の課題を洗い出し、RPAの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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