注目される休み方改革とは?働き方改革との違いや取り組み事例を解説

最終更新日時:2023/07/26

働き方改革

休み方改革とは

休み方改革を実施する企業が増え、従業員の休暇への意識が変わりつつあります。これから休み方改革を推進する場合は、まずは企業における休日についての理解を深めて、意識改革や仕組み作りを進めることが大切です。本記事では、国が進める取り組みや、企業における具体的な実施内容についても紹介します。

休み方改革とは?

休み方改革とは「働いている人が休みやすい環境を作るための施策」です。

休み方改革の推進により、休暇をほどよく取得することで仕事に対する社員のモチベーションを高めると共に、業務効率を向上させる効果があると期待されています。

働き方改革と、どのような違いがあるのか以下の項目で解説していきます。

そもそも働き方改革とは?

働き方改革とは、首相官邸の公式サイトでは以下のように記載されています。

働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。

[引用:首相官邸「働き方改革の実現」より]

また、厚生労働省では次のように定義しています。

働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じます。

[引用:厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」より]

多様な働き方を選択できることに加えて、長時間労働の是正など、労働環境の整備の重要性も指摘しています。働き方改革に関連した法令は、2018年6月に成立し、2019年4月から順次施行されています。

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働き方改革と休み方改革の違い

働き方改革と休み方改革は以下の違いがあります。

項目働き方改革休み方改革
取り組み内容環境の整備により多様な働き方を可能とする休暇や労働時間短縮によりプライベートの時間を充実させる

働き方改革は、社会の変化に合わせて従業員の働き方の選択肢を広げる取り組みです。例えば「在宅勤務」「テレワーク」などの働き方の整備が当てはまります。

休み方改革は、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得により従業員の「社会参加」や「消費活動の推進」に繋げることを目標としている改革です。

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企業の休日は大きく分けて2種類

労働基準法において、休日について下記の通り明記されています。

使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

[引用:e-Gov 労働基準法 第三十五条]

休日には2つの種類があります。以下の項目で2つの休日について見ていきましょう。

法定休日

1つ目は、法律で定められた休日です。企業では法定休日とも呼ばれており、「毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日」を設ける必要があります。

法定休日に違反すると「6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金」が命じられます。法律で定められた休日は、曜日や日付に関して制約はありません。

ただし、休日労働をした場合、割増賃金が発生します。そのため休日が不明確な場合、賃金の計算が正しく行えないという問題が発生します。

厚生労働省の通達にも、法定休日と法定外休日の区別は明確にし就業規則に記載することが望ましいと記載されているため、割増賃金におけるトラブルが発生しないよう休日を設定しておくと良いでしょう。

[出典:厚生労働省「労働時間・休日」]

[出典:厚生労働省「労働基準法の一部を改正する法律の施行について」]

法定外休日

法定外休日とは、名前の通り、法律で定められていない休日のことを指します。企業によっては「所定休日」と呼んでいます。従業員側と企業側の取り決めで、法定休日を上回る数の休日を労働者に与えることが可能です。

企業は、法定外休日を必ず定める必要はありません。ただし、前述の通り、企業は「少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日」を与えなければなりません。

また労働基準法によって、労働時間は原則「1週間40時間、1日8時間」と定められています。このことから、1日8時間労働のケースで週7日のうち5日間働くと、原則的には残り2日は休日を設ける必要があります。

例えば土日休みの会社の場合、1日が法定休日で、もう1日が法定外休日(所定休日)ということになります。

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内閣府が休み方改革を推進する背景

ここでは、内閣府が休み方改革を推進している2つの背景についてみていきましょう。

長時間労働・過重労働

長時間労働や過重労働を防ぐために休み方改革が推進されています。長時間労働や過重労働が増えることで、健康障害のリスクが少しずつ上昇するというデータが発表されています。

例えば、月100時間超の勤務または2ヶ月〜6ヶ月平均で月80時間を超えると、脳・心臓疾患等の健康障害のリスクが上昇するため、健康障害を引き起こさないためにも、企業は適正な労働時間を守らなければなりません。

[出典:厚生労働省「過重労働による健康障害を防ぐために過重労働による健康障害を防ぐために」]

また、日本は諸外国と比べると長時間労働の割合が多くなっています。

国名長時間労働の割合(男女合計値)
日本15.0%
アメリカ14.2%
イギリス11.4%
フランス9.1%
ドイツ5.9%

[出典:厚生労働省「諸外国における週労働時間が49時間以上の者の割合」]

1週間の労働時間が49時間以上を超えている日本人労働者の割合は、15.0%(男性21.5%・女性6.9%)となっており、アメリカやイギリスなどの先進国と比較して最も多い割合です。この調査によれば、日本人男性の5人に1人は働きすぎている計算です。

このような長時間労働・過重労働を軽減するためにも、休み方改革の推進が求められているのです。

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日本人の有給取得率

旅行予約サイトの「エクスペディア」が発表した有給休暇の国際比較調査(2021年)によると、日本で働く人の有給休暇取得率は6割となっており、6年ぶりに改善されています。

国名有給休暇の取得率割合
日本60%
アメリカ80%
イギリス84%
フランス83%
ドイツ93%

[出典:エクスペディア「世界16地域 有給休暇・国際比較 2021」]

先進国と比較すると、依然として日本人の有給取得割合は低い水準です。職場によっては「休むのは悪」という考え方がまだ残っており、上司に有給休暇の申請を出すのが気が引けるという人もいるでしょう。

こうした慣習を変えるためにも、政府主導による休み方改革の必要性が増しているのです。

一方、同調査によると「以前にも増して、休暇を大切にするようになったか」という問いに、「はい」と答えた人が77%にのぼるなど意識の変化も見られています。

休み方改革の推進など、社会の変化や個人の余暇に対する意識の変化などによって徐々に効果が出始めていると言えます。

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日本企業が有給休暇が取得しにくい理由

有給休暇の取得率は改善傾向にあるものの諸外国に比べれば低い水準のままです。なぜ日本企業では有給休暇が取得しにくいのかについて、3つの要因を解説していきます。

雇用制度がメンバーシップ型

日本の雇用制度がメンバーシップ型であるため、有給休暇の取得がしにくいとされています。メンバーシップ型の雇用制度とは、新卒一括採用や終身雇用に代表される雇用制度で、採用時には特定の職務やタスク、役割が定まっていません。

これに対して、多くの欧米企業で導入されているジョブ型の雇用制度は職務や役割、業務範囲が明確に規定されています。

メンバーシップ型の場合、会社に指示されるまま、さまざま業務に従事することになります。その場合、例えば自身のタスクが完了した後に別の従業員の仕事を補助するケースなども考えられます。

そうなると、従業員ごとの業務や責任の線引きが不明瞭になり、ジョブ型のように「タスクが終わっているから休暇を取る」「スケジュール通りに進行しているから休む」といったことが難しくなります。

日本企業独特のこのような慣習が定着していることが、有給休暇の取得率が伸び悩んでいる原因のひとつと考えられます。

上司などの管理職が有給を取得していない

日本人は同調意識が高い傾向があるとされ、「周りが有給申請を出していないから自分も出せない」と考えがちです。

また、有給休暇を申請する際に、上司から「理由は?」と聞かれるのが嫌で申請しないなどのケースも考えられます。

有給休暇は労働者に与えられた休む権利なので、休めない職場の雰囲気を変えるためにも、上司が積極的に有給休暇を取得する必要があります。

休まない管理職はチーム全体の生産性を低下させる原因となり有給取得率の低下だけでなく、従業員の離職率増加にも繋がるでしょう。

上司が有給休暇を申請できない職場では、まず職場環境の改善を行い積極的に取得する仕組みを作れば、部下も気にすることなく休暇を申請できるはずです。

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有給を正しく取得できる制度や知識が整っていない

上司や経営層が有給休暇に関する正しい知識を持っていなかったり、制度が整っていないと、有給取得率の低下に繋がります。年次有給休暇は労働者に与えられた休暇制度で、取得を促す関連法もすでに施行されています。

働き方改革関連法の施行によって、使用者は「法定の年次有給休暇が10日以上のすべての労働者に、年間5日、年次有給休暇を確実に取得させることが必要」と定められました。

企業は従業員に、「その日は、人手がいないから有給は取れない」「みんな取得していないんだから使わせることはできない」などと伝えても意味はありません。

企業が労働者に年次有給休暇を取得させるのは義務であるため、取得できるように制度の整備と正しい知識を身に付ける必要があります。

逆に言えば、こうした年次有給休暇に関する知識や制度が不足していることが、有給休暇の取得率低下を招く原因になっています。

[出典:厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト」]

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休み方改革の代表的な取り組み事例

ここからは、休み方改革の代表的な事例を4つ紹介していきます。

プラスワン休暇

プラスワン休暇とは、通常よりも長い連休を確保するためのキャンペーンです。働き方・休み方を変える第一歩として、厚生労働省が推進しています。

例えば、土日にプラスして平日の月曜日にプラスワン休暇を当てはめることで、3連休を実現できます。2日〜3日の連休日にプラス1日、年次有給休暇を当てはめることで大型連休を実現させプライベートの時間を充実させる狙いがあります。

[出典:厚生労働省「プラスワン休暇」で、休み方を変えよう。働き方を変えよう。]

キッズウィーク

「キッズウィーク」は、地域ごとに学校の夏休みなどの長期休業日を分散化する取り組みです。大人と子どもが一緒にまとまった休日を過ごす機会を創出しやすくするための取組で、平成30年度から始まっています。

[引用:厚生労働省「キッズウィークについて」より]

内閣官房、総務省、文部科学省、厚生労働省などが連携して平成30年度(2018年度)からスタートした取り組みです。

キッズウィークでは、大人が子供と一緒に趣味に打ち込んだり、友人や知人との絆を強めたり、観光需要の拡大や地域活性化を狙うのが目的とされています。

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仕事休もっ化計画

仕事休もっ化計画も厚生労働省による取り組みのひとつで、「年次有給休暇の取得」「プラスワン休暇による連続休暇」「年次有給休暇を取りやすい会社」を推進するための計画です。

自治体によっては、該当月を年次有給休暇取得促進期間と設定し、従業員や経営者に休むことを促します。

また、年次有給休暇の取得をためらわないよう、従業員と企業側で取得状況の確認や取得率を向上させるためにどのような取り組みをしたら良いのか、話し合う機会をつくり取得しやすい環境づくりに向けて取り組む期間でもあります。

プレミアムフライデー

経済産業省や経団連などが推進するプレミアムフライデーは、毎月の月末金曜日に仕事を普段より早めに終え、普段よりも少し贅沢な週末にする取り組みです。

個人が幸せや楽しさなどを感じられる時間を創出して、「生活スタイルの変革」や「個人消費の活性化」を狙うのが目的とされています。

プレミアムフライデーは2017年2月24日からスタートして、年々賛同している企業が増えている傾向です。

しかし、「時給で働く人への対策」や「職種によって帰れない人もいる」など問題点もあり、なかなか普及が進んでいないという現状もあります。

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企業で推進すべき休み方改革の取り組み

休み方改革は、従業員が休めるようにまず企業側で環境を用意する必要があります。以下で、休み方改革を導入した企業の取り組み内容を紹介します。

休暇取得への意識改革

東京都に本社を置くIT企業では、従業員が休暇を取得できるように社長自らが休暇取得のメッセージを発信することで、部下の意識改革を進めました。

また、休暇取得管理表を導入して休暇の取得予定を可視化することにより、人員が不足する日を前もって把握できるような仕組み作りを進めています。

年次有給休暇の取得率の低い社員に対する個別の休暇取得を促し、従業員ごとに有給取得にバラツキがあれば、管理職に働きかけることで改善を図れたのです。

年次有給休暇の取得を推進

東京都に本社を構えるあるメーカーでは、年次有給休暇の取得を推進するために、祝日がない6月などに年次有給休暇を取得するキャンペーンを実施しました。

業務フォローアップの体制を整え、顧客・取引先情報の共有などを行い、休暇中に問題が発生しても解決できる体制の構築を進めたのです。

年次有給休暇の取得促進を目的とした業務プロセスの見直しを行い、管理職や従業員に対して年次有給休暇を取得させるよう「教育」「研修」を行い啓発することで、意識改革に取り組んでいます。

記念日休暇の導入

愛知県にある商社では、企業独自の記念日休暇を導入しました。定時に退勤させる「ノー残業デー」のように月1回の年次有給休暇の取得を徹底させ、誕生日や結婚記念日に休みが取れるような制度を用意して休み方改革を推進しています。

部署ごとの閑散期や繁忙期を把握して、閑散期に休暇を設定する取り組みも行っています。部署ごとに休暇の設定が困難であれば、輪番で休暇を取得させることで記念日の休暇がスムーズに導入できます。

働き方改革における3つの柱とは?推進する狙いや企業への影響について

休み方改革はまず休日への理解を深めて進めよう

休み方改革を推進するうえでは、まず企業や従業員が休日について正しい知識を深めることが大切です。日本は、先進国と比べて有給休暇の取得率が低い水準にあります。

休暇を取得しにくい原因や背景を知り、企業側は従業員が有給休暇の申請がしやすい環境や仕組みを作ることが大切です。

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