労働時間の自己申告は禁止?正しい勤怠管理の方法や注意点を解説

2022/02/13 2024/09/02

勤怠管理システム

労働時間の自己申告

2019年4月から働き方改革関連法が施行されたことに伴い、労働時間の自己申告に関する条件が厳格化されました。さらに近年はテレワークを導入する企業も多く、勤務実態を正しく把握するのがより難しくなっています。 そこで本記事では、自己申告制の勤怠管理方法や注意点、メリット・デメリットを詳しく紹介します。

法改正でハードルが上がった自己申告の勤怠管理

「働き方改革関連法」の施行、および「労働安全衛生法」の改正により、以下の通り企業による労働時間の把握が義務化されました。

第六十六条の八の三 事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

[出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法 第六十六条の八の三」]

また、労働時間の把握の方法についても、厚生労働省令により以下の通りの定めが記載されています。

使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。

(ア) 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。

(イ) タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

[出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」]

上記のとおり、労働時間の把握は使用者や管理者の視認、もしくは機械を使った打刻など、客観的な記録である必要性が示されています。ただし、自己申告による勤怠管理についても例外的に認められています。

では、企業はどのような勤怠管理をしなければならないのかについて詳しく確認していきましょう。

労働安全衛生法で”客観的な記録”の勤怠管理を原則とする理由

先ほどもお伝えしたとおり、改正された労働安全衛生法によって「企業は労働者の労働時間を客観的に把握すること」が義務化されました。

これは、客観的な記録のない自己申告を基にした勤怠管理によって発生する、申告した労働時間と実労働時間の乖離を防ぐ目的があります。

実労働時間との乖離が起きる原因としては、本人が実労働時間よりも少なく申告せざるを得ないようなことも考えられます。具体的には次のようなケースです。

  • 残業を報告できない職場環境
  • ミスによる残業のため申告したくなかった
  • 残業時間が一定時間を超すと認められない
  • 休日出勤が把握されていない

以上のような理由で、管理者や職場の環境が自己申告の正確性を阻害していることがあるのです。そのため、原則として客観的な記録による確認と適正な記録が求められています。

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自己申告での勤怠管理を可能にするには?

労働時間の「客観的な記録」の原則がある勤怠管理ですが、自己申告による労働時間の管理が一切認められていないというわけではありません。例外として認められるケースもあります。

ここでは、自己申告で勤怠管理を行うために実施すべき対策についてご紹介します。

自己申告制について事前に説明する

労働時間の管理に自己申告制を導入する前に、対象となる従業員に対して、勤怠管理の重要性や労働時間の正確な把握が必要な意味などを必ず説明しましょう。

企業側は、労働者が正確な労働時間を申告できるよう環境を整えることも忘れてはいけません。そのうえで、適正な自己申告を行ったことにより、労働者の待遇に悪い影響を与えることや、不利益な取り扱いを受けることはないことを納得してもらうようにします。

また、従業員側に対しても申告忘れや申告漏れ、不正がないように求める必要もあります。事前の遅刻や早退、残業についてなど、細かなルールを定めたうえで合意を得てください。

必要に応じた実態調査の実施

労働時間の定期的な実態調査は、正確な勤怠管理には欠かせません。そのため、管理者が従業員から申告された勤務時間と実際の労働時間との間に、大きな差異がないかを定期的に確認することも重要です。

特に、職場に出入りした記録やパソコンを使用した時間の記録など、社内にいた時間の分かるデータがある場合には、自己申告された時間と会社内にいた時間をすり合わせて確認するとよいでしょう。

大きな開きがある際には、労働時間の補正をしたうえで、再発防止策を実施する必要があります。このような実態調査は、企業が主体となって進めるほか、労働者や労働組合から求められた場合も行わなければなりません。

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申告方法の整備をする

申告方法の整備も自己申告制による勤怠管理の重要なポイントです。あいまいな管理にならないように、何を使って、どのように申告するのかを決めておく必要があります。

申告方法は、主に次の3つが考えられます。

  • エクセルへの入力
  • 所定の書類の提出
  • メールでの報告

従業員にとって分かりやすく、使いやすい方法であれば、申告漏れも起こりにくくなります。また、管理しやすいかどうかという視点も忘れずに選びましょう。

実際に自己申告制の勤怠管理が認められるケースとは?

いくつかの条件を満たしたうえで、適正な勤怠管理として認められる自己申告制ですが、テレワークの導入などにより、自己申告制の導入がやむを得ない場合も増えてきました。

ここでは、実際に自己申告制での勤怠管理が認められるケースについて具体例を挙げてご紹介します。

社員が書類申請・上長が承認をするシステムが運用されている場合

事務所外での業務や残業などが発生した際に、社員が申請し、上長が承認をするシステムが適切に運用されている場合には、自己申告が認められます。

適切な運用とは、「事業所外の業務や残業などを行う場合の所要時間・始業と終業の時間を事前に申告し、上長が内容を確認する」「上司が不要な業務であると判断した場合には否決・訂正を指示する」など、一定のルールを設けているものです。

さらに、事前申告だけでなく、実際に外出業務・残業にかかった時間を上長に申告することも必要になっています。

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直行・直帰でやむを得ず労働時間の把握ができない場合

直行・直帰の業務で企業側がやむを得ず労働時間の把握ができない場合にも、自己申告による勤怠管理が認められます。外回りが多い営業職などが該当するでしょう。

ただし、この場合にも「直行・直帰の予定を事前に上長に申請する」「仕事内容や移動時間などを上長と共有している」など、一定のルールを設けて適切に運用されている必要があります。

テレワークを実施している場合

テレワークを実施する場合にも、自己申告での勤怠管理が可能です。厚生労働省のガイドラインでは、テレワークを「労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務」と定義しています。

ただし、事業所外からパソコンやスマートフォンなどを使って、社内システムや勤怠システムにアクセス可能な場合は注意が必要です。「客観的な方法により労働状況を把握できる」と判断され、客観的ではない方法での勤怠管理は、適切と認められない可能性もあります。

参考:厚生労働省 「情報通信技術を利用した事業場外勤務の 適切な導入及び実施のためのガイドライン

テレワーク時の勤怠管理の重要性と課題とは?原因や解決方法も解説!

勤怠管理に自己申告制度を取り入れる具体的な方法

お伝えしてきたように、企業側が労働時間の客観的な把握ができない場合に限り、自己申告による勤怠管理が認められることがわかりました。

そこでここからは、自己申告制度を勤怠管理に取り入れる具体的な方法を紹介していきます。

エクセルで出勤簿を作って提出してもらう

エクセルシートによる出勤簿や会社所定の書式の活用も、自己申告制度を勤怠管理に取り入れる方法の1つです。

エクセルは、数値データを扱う表計算ソフトです。出勤簿を作成しておけば、始業時間と終業時間の入力のみで、労働時間を自動で計算してくれます。

遅刻や早退、残業があっても自動で反映されるため便利です。表作成や入力の手間はかかりますが、管理側も確認しやすいことから、勤怠管理の自己申告に向いています。

エクセルで勤怠管理する方法!無料テンプレートや運用の注意点を紹介

メールで始業・就業を報告してもらう

2つ目の方法は、メールでの報告です。メールはパソコンやスマートフォンから簡単に送信でき、誰でも使い慣れていることから、最も取り入れやすい方法といえるでしょう。

運用方法はシンプルで、メールで仕事開始時間や仕事終了時間を都度連絡するものです。「今から仕事を開始します」など、オンタイムで送信できるところが利点といえるでしょう。

また、CC機能を使うことで、上長だけでなくチームメンバーにも記録が共有されます。チームメンバーの状況が見えるようになるほか、複数の目で確認ができるため、自己申告であっても適切な勤怠管理が行えるでしょう。

自己申告で勤怠管理を行うメリット

自己申告での勤怠管理には、企業側にとってのメリットもあります。ここでは、自己申告による勤怠管理のメリットをお伝えします。

会社外での勤務時間の把握ができる

自己申告で勤怠管理を行うと、外出や出張、直行直帰など、会社外で業務を行うことの多い従業員に対して、労働時間の把握ができるようになります。

外回りなどの業務が多い職種においては、所定の就業時間後にもパソコンで仕事をしていたけれど労働時間としては報告せず、いわゆる「サービス残業」になっていた、というケースが少なくありません。

しかし、実際はこれらの時間も労働時間として記録し、企業が把握しておくべき時間です。このようなケースでは、自己申告制を導入することで、実際の労働時間を把握できるようになるでしょう。

職場環境の改善ができる

従業員が正確に申告することが前提ですが、自己申告は実際に働いた分だけ、つまり正味の労働時間の記録が可能です。

正確な労働時間が明らかになると、長時間労働が常態化している部署とそうでない部署が見える化されることもあります。その場合は、早急に業務や人員配置の見直しができるようになるでしょう。

また、従業員自身も残業時間への意識が高くなるため、自発的に業務の見直しや生産性が上がる工夫をするようになります。そのため、結果的に残業代や人件費の削減も期待できます。

自己申告で勤怠管理を行うデメリット

自己申告での勤怠管理は、メリットだけではありません。自己申告による勤怠管理を正しく行うためにも、事前にデメリットも確認しておきましょう。

申告フローが煩雑になる可能性がある

自己申告で勤怠管理を行う場合、事前に厳密なルール作りと使いやすい運用方法の十分な検討がされていないと、フローが煩雑になってしまいます。

申告や承認に抜けや漏れがあっては、正確な勤怠管理とはいえません。申告から承認、管理までのフローが煩雑にならないためにも、事前にきっちりとしたルールを定めておきましょう。

また、申告方法は従業員と管理者の双方にとって、大きな負担とならない方法を取り入れるなどの配慮も必要です。

労働時間が正しく申請されない可能性がある

労働時間が正しく申請されない可能性があることも、自己申告で勤怠管理を行うデメリットです。

申告制度の場合、従業員による申請内容での管理となります。現場の上長の指示により、申告した時間よりも長く働いていた場合でも、把握が難しくなってしまうのです。また、残業代をもらうために過大に申告する可能性も考えられます。

定期的な実態調査やチェック体制を整えるなど、正しく勤怠管理ができるような労務環境作りと対策が必要です。

労働時間の適正な管理と見做されないリスクがある

自己申告制度ですが、あくまで例外的に認められている管理方法なので、労働基準局の調査で適正な管理ができていないと判断されるリスクがあります。

労働時間の「客観的な把握」ができていないことに対する直接的な罰則はありませんが、企業としての信用問題に関わることであるのは確かでしょう。

適正な勤怠管理に向けて、企業が環境を整備することはもちろんですが、労働時間に関係する法令を分かりやすく従業員へ説明するなど、個々の意識を高くすることも重要です。

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自己申告制は注意点が必要!勤怠管理はシステム化がオススメ

前述の通り、自己申告による勤怠管理は、あくまで例外的に認められている方法です。注意点も多く、最悪の場合、適切な管理方法ではないと判断される場合もあるでしょう。

そのため、事業所外での業務を行う従業員の勤怠管理にお悩みであれば、ツールを利用することで正確に効率的に行えます。ここでは、オススメのツールを紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

Chatwork 勤怠管理

Chatwork 勤怠管理は、打刻や労働時間の集計、各種申請機能などを備え、勤務実績を自動的に可視化・把握できるクラウド型勤怠管理ツールです。

打刻方法にはweb打刻やICカード打刻、ログオン/ログオフ打刻やスマホ打刻などさまざまな方法があり、働き方に合わせて自由に選択できます。ほかにも、有給休暇取得チェッカーや36協定チェッカー、打刻改ざん防止機能などを備えており、労務リスクをゼロにすることが可能です。

独自の就業ルールにも柔軟に対応可能なため、他社のシステムでは対応できない部分も自動化して作業工数の大幅な削減が実現できます。

提供元株式会社kubell
初期費用無料
料金プラン33,000円(税込)/月~<br>※31名以上の場合は月額従量課金制
機能・特徴タイムカード、打刻、出勤予定(勤務表)の作成、残業申請、有給(休暇)申請、給与ソフト連携、PCログ取得、36協定チェッカー、有給(休暇)取得チェッカーなど
URL公式サイト

\資料請求は完全無料!/

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ジンジャー勤怠

ジンジャー勤怠は、人事や給与などのバックオフィスツールと連携して、業務の効率化ができるクラウド型勤怠管理ツールです。

シンプルな見た目と使い勝手の良い操作性が特徴であり、コストもリーズナブルなので導入ハードルが低い点が特徴といえます。承認業務から有給、残業時間の管理までリアルタイムで一括管理ができ、スマホでの打刻も可能です。

サポート体制も充実しており、企業ごとの最適な初期設定の提案や、法改正や社内規定の改定などによる運用中の不明点への対応など親身なサポートが受けられます。

提供元jinjer株式会社
初期費用要問い合わせ
料金プラン希望サービスの利用料:330円(税込)/月~×利用者数
導入実績18,000社以上
機能・特徴出退勤管理、自動集計、各種申請・承認、シフト管理、有休管理、予実管理、アラート機能、システム連携など
URL公式サイト

\資料請求は完全無料!/

ジンジャー勤怠の資料請求はこちら>>

MiTERAS仕事可視化

MiTERAS仕事可視化は、人材サービス提供企業のパーソルグループが手掛ける勤怠管理システムです。機能を必要最低限まで絞り込んでいるため、シンプルで誰にでも扱いやすい点が特徴です。

独自のタイムレポートにより、労働時間の乖離を把握できます。パソコンやタブレットなど、情報端末の稼働時間を把握し、申告時間との比較により隠れ残業や非効率的な業務が見抜けます。1カ月間の無料トライアルもあるため、実際の使用感を確認して導入を検討してみましょう。

提供元パーソルホールディングス株式会社
初期費用要問い合わせ
料金プラン要問い合わせ
機能・特徴PC利用時間の詳細把握、PCログと勤怠の乖離チェック、アラート通知、PC利用状況の詳細把握、CSVでのPCログ出力、ダッシュボード表示(集計機能)など
URL公式サイト

勤怠管理システムを選ぶ際のポイント

勤怠管理システムを選ぶ際は、使いやすさやコスト、法改正への対応などさまざまなチェックポイントがあります。ここからは、勤怠管理システムを選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。

従業員が使いやすいか

勤怠管理システムは、すべての従業員が使用するため使いやすさは重要なポイントです。操作性が悪く使いづらいシステムであれば、ITツールの操作に慣れていない従業員はうまく使いこなせず、作業効率が悪くなる可能性があります。

まずは従業員に使用感を確認してもらうためにも、無料トライアルの活用がおすすめです。システムによっては1カ月程度の無料トライアル期間を設けている場合もあるため、期間中は全従業員に操作してもらい、誰でも使いやすいかを確認しましょう。

運用コストが自社に合っているか

勤怠管理システムは、導入時だけではなく運用時にもコストがかかります。

従量課金制や月額制などさまざまな料金体系があるため、長期間利用することを想定して運用コストが自社に合っているシステムを採用することが大切です。まずは導入・運用にかかるコストをしっかりと検討したうえで、予算に合わせて導入するシステムを選びましょう。

【最新】無料で使える勤怠管理システム15選!完全無料やトライアル付きなど

法改正に対応できるか

労働に関する法令は、時代の変化や状況に合わせてたびたび改正されます。

企業は常に最新の法令に対応することが求められますが、クラウド型勤怠管理ツールであれば基本的に法改正に合わせて自動アップデートされるため、企業側で特別な対応は必要ありません。対応漏れを防ぐためにも、勤怠管理システムは法改正に対応できるものを選びましょう。

自己申告を取り入れる場合も正しく勤怠管理をしましょう

働き方改革関連法の施行や労働安全衛生法の改正により、企業に対して「労働時間を客観的に把握すること」が義務化されたため、自己申告による勤怠管理は必然的にハードルが上がったともいえます。

しかし、テレワークの導入などにより、やむを得ず自己申告制度を取り入れる企業も少なくありません。自己申告による勤怠管理は、気をつけるべき点が多くあります。ここでお伝えした運用方法や注意点を参考に、正しい勤怠管理を行ってください。

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