手書きのタイムカードはもうNG?問題点や最新の勤怠管理方法を解説
勤怠管理を、手書きのタイムカードで行うことは、必ずしも違法ではありません。しかし、労働安全衛生法に定めのある労働時間の客観的な把握としては、適切な管理方法であると認められない可能性もあります。 この記事では、手書きの勤怠管理で起こりがちな「改ざんリスク」や「保管の困難さ」などの問題を解説し、おすすめの最新勤怠管理方法を紹介しています。
目次
手書きのタイムカード・出勤簿での勤怠管理は違法ではない
2019年に順次施行された働き方改革関連法によって労働安全衛生法が改正され、企業に対し、従業員の労働時間を客観的な方法で把握することが義務付けられました。
また、その方法については、厚生労働省令により、原則として下記の方法が示されています。
その2 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として
次のいずれかの方法によること。
(ア) 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
(イ) タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的
な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
[出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」]
タイムカードも方法の1つとして示されていますが、これはタイムレコーダーなどで打刻したものを想定していると考えられます。
そのため、手書きのタイムカードは客観的な方法とは認められず、従業員の自己申告による勤怠管理と判断される可能性が高いです。また、出勤簿も同様だと考えられるでしょう。
ただし、自己申告による労働時間の把握も条件付きではありますが、例外として認められています。そのため、手書きのタイムカードによる管理を行っていても、すぐさま違法とはなりません。
しかし、実際には手書きの出勤簿やタイムカードでの勤怠管理にはさまざまな問題があるので注意が必要です。
手書きで勤怠管理する問題点とは?
ここでは、手書きのタイムカードや出勤簿で勤怠管理をする具体的な問題点を確認していきます。
(1)労働時間の客観的な記録とは認められない
手書きのタイムカードや出勤簿での労働時間の記録は自己申告にあたり、厚生労働省令によって定められた「原則的な記録の方法」としては認められていません。
自己申告による勤怠管理は違法ではないものの、厚生労働省が定める原則的な方法ではないことを理解しておきましょう。
(2)簡単に改ざんできてしまう
手書きによる勤怠管理の問題点の1つに、改ざんが容易にできてしまうことがあげられます。
遅刻したのにも関わらず、定時の出社時間を記載する、残業を水増しして申告するなど、従業員による不正のリスクがあるのです。
反対に、企業側が残業代の削減や長時間労働の隠蔽のために、従業員の勤怠情報を改ざんしてしまう可能性もあります。
(3)人事・労務の集計の際に業務効率が悪い
手書きのタイムカードや出勤簿で勤怠情報を管理していると、集計業務がすべて手作業になってしまいます。すべての従業員の出退勤時間を確認し、集計していく作業はかなりの労力が必要です。
また、記入漏れや書き間違いなどがあれば、各従業員へ確認を取った上で修正をしなくてはなりませんし、給与計算時には、労働時間の集計ミスといったトラブルも起こり得ます。
人事・労務のコストを考えると、決して業務効率が良いとはいえないでしょう。
(4)書類の保管と管理で負荷がかかる
手書きのタイムカードや出勤簿は、紙ベースの管理になるため書類がかさばります。労働基準法では、タイムカードや出勤簿など、労働関係に関する重要な書類を5年間保管することを定めています。
5年分の書類となれば膨大な量になるため、保管スペースの確保と、場合によっては保管コストも掛かることになるでしょう。
また、確認が必要な際にすぐに取り出せるように整理したり、紛失しないように管理担当をつけたりと、大きな負荷がかかります。
(5)読み間違えて給与計算ミスにつながる
勤怠情報が手書きで記載されていると、集計時に読み間違いが起こる可能性があります。雑な記載やクセのある字など、判別が難しいケースも少なくないはずです。
数字を読み間違えて集計してしまうと、給与計算にも誤りが出てしまいます。正確な給与が支給されないという大きな問題につながるリスクもあるのです。
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やむを得ず手書きで勤怠管理をする場合の注意点
上記でお伝えしたように、手書きでの勤怠管理にはさまざまな問題点があります。そのため、厚生労働省が原則として示す客観的な方法への切り替えが理想です。
しかし、企業によっては費用などの問題で、手書きでの勤怠管理を続けざるを得ないこともあるでしょう。その場合には、下記でお伝えする5つの注意点を守ってください。
(1)記入ルールを明確に決める
タイムカードや出勤簿は、従業員の勤怠管理における基本情報の役割を担います。そのため、記入ルールを明確にしておかなくてはなりません。例えば、出勤簿などには、次のようなルールを定めておくと良いでしょう。
<記入する項目>
- 出勤日/労働日数
- 出退勤の時刻と日別の労働時間
- 時間外労働を行った日付/時刻/時間数
- 深夜労働を行った日付/時刻/時間数
- 休日労働を行った日付/時刻/時間数
<禁止事項の例>
- 鉛筆は容易に改ざんできるため、使用しない
<記入ミス時の対応の例>
- 記入ミスをした本人に、ミスした理由や実際の勤務状況などを速やかに確認。その際、労基署の監査において、勤務実績を修正した場合の「不正でないこと」の証拠となる「始末書」も提出してもらう。
上記のようなルールを作っておけば、手書きであっても重要な情報を正確に記録できるはずです。
(2)書類は5年間保管する
従業員の勤怠情報が記録されたタイムカードや出勤簿は、労働関係に関する重要な書類に該当するため、5年間の保管が義務付けられています。紙ベースでの管理は、書類の量が多く、保管が煩雑になりがちです。
紛失しないよう注意するのはもちろんのこと、のちに確認が必要となった際にもスムーズな閲覧ができるよう、「年月ごとにまとめる」「従業員ごとにまとめる」など、保管方法を工夫してください。
また、保管場所には特定の従業員しか立ち入れないなどのルールを作り、盗難や改ざんへの対策を行いましょう。
(3)提出遅れ・修正には上長の許可を得る
タイムカードや出勤簿の修正は、上長の許可を得てから従業員が行えるようになるフローを構築しましょう。
従業員が自由に修正を行えると、改ざんによる不正が起こる可能性が高くなるからです。事前にルールをしっかりと決めておくようにしてください。
(4)上長によるタイムカード・出勤簿のチェックを行う
厚生労働省のガイドラインでは、自己申告で労働時間を把握する際には、企業に以下のことを求めています。
自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること[出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」]
つまり企業は、必要に応じて、従業員が自己申告した労働時間が本当に正しいかを確認する義務があるのです。
タイムカードや出勤簿に記載された勤怠情報と、入退室の記録やパソコンの使用時間などが一致しているかが確認できるチェック体制を整えておきましょう。
(5)改ざん防止・発見時の対応を決めておく
タイムカードや出勤簿の改ざんは、従業員・使用者のどちらが行っても違法です。刑事責任を問われ罰則を受ける可能性がありますし、場合によっては民事訴訟に発展することもあるでしょう。
そのため、改ざんを防止するためのルールを、あらかじめ決めておくことをおすすめします。たとえば次のようなものです。
▼防止ルール
従業員におけるルール |
|
---|---|
使用者におけるルール |
|
▼改ざん発見時の対処法
従業員による改ざん | 減給や降格 賃金を支払った場合は返還を求める |
---|---|
使用者による改ざん | 未払い賃金の支払いを求める |
従業員への罰則は就業規則に定めておけますが、行き過ぎた懲罰や不当解雇はトラブルの原因になるので注意が必要です。
最新の勤怠管理方法について
次に、最新の勤怠管理方法について紹介します。手書きでの勤怠管理から脱却したいと考えている企業は、ぜひ参考にしてください。
勤怠管理システムの導入が進んでいる
勤怠管理の方法として主流になっているのが、勤怠管理システムです。勤怠管理システムは、従業員の出退勤時刻を記録し自動で集計までしてくれます。
正確な勤怠管理が効率的に行えることから、多くの企業で導入が進んでいるのです。ここでは、主な勤怠管理システムをご紹介します。
1. クラウド型勤怠管理システム
クラウド型勤怠管理システムとは、オンライン上のサーバーで勤怠情報を管理するものです。
インターネット環境があれば、パソコンはもちろん、スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスでの利用もできます。
そのため、テレワークや外回りの営業など、オフィス外の勤務が多い従業員の勤怠管理も可能です。また、不正打刻やデータ改ざんの防止もできるので、正確な勤怠管理が実現します。
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2. ICカード式勤怠管理システム
ICカード式勤怠管理システムは、IC社員証や交通系ICカードで出退勤の打刻を行うシステムです。
ICカードをカードリーダーにかざすだけという操作性のシンプルさが特徴といえます。また、すでに従業員が持っている交通系ICカードが利用できるものもあるため、導入コストも抑えられるでしょう。
本人が持つICカードでの打刻が必要なため、代理での打刻といった不正打刻のリスクが軽減できるメリットもあります。
ただし、打刻には専用のカードリーダーを要するため、テレワークや直行直帰の業務には対応できない点がデメリットです。
3. 生体認証式勤怠管理システム
生体認証式勤怠管理システムは、従業員の指や顔など、体の一部を利用して出退勤の打刻を行うシステムです。主な方法に、静脈認証(手のひら)、指紋認証、顔認証などがあります。
生体認証式システムは、本人しか打刻できないため、代理打刻などの不正リスクがありません。タイムカードやICカードなどが不要なため、持参忘れや紛失の心配がないのもメリットです。
4. タブレット式勤怠管理システム
タブレット式勤怠管理システムは、iPadをはじめとするタブレット端末にアプリをインストールして利用します。無料で利用できるサービスもあるため、導入ハードルが低いことが特徴です。
タッチパネルによる打刻や生体認証での打刻など、さまざまな打刻方法に対応しています。自社の就業規則に合わせて自動集計ができるなど機能も豊富です。
勤怠管理は手書きよりシステム管理がおすすめな理由
次に、勤怠管理システムの利用をおすすめする7つの理由を具体的にお伝えしていきます。
(1)法の定めによる「客観的な記録」が手間なく行える
勤怠管理システムは、厚生労働省令の定めによる「客観的な記録」を効率的に行えます。
手書きのように、各従業員がタイムカードや出勤簿に出退勤時間を記入する必要もないため、記入ミスを起因としたトラブルも回避することができます。
(2)長時間労働等の防止につながる
手書きでの勤怠管理では、多くの場合、集計時にしか従業員の労働時間が把握できませんでした。そのため、長時間労働が起こるリスクも高かったのです。
勤怠管理システムは、従業員の残業時間などの勤務状況をリアルタイムで確認できます。
労働時間を逐一把握できるため、長時間労働を未然に防げるのです。また、残業が多い従業員に労働時間の超過が起こらないように知らせるアラート機能もあります。
(3)人事の業務効率を上げることができる
手書きでの勤怠管理では、集計作業はすべて手作業で行う必要がありました。業務フローによっては、タイムカードから何らかの書式やファイルに転記や入力が発生するケースもあるでしょう。
手作業の工程が増えれば増えるほど、どうしてもヒューマンエラーは起きやすくなります。それに伴う抜けや漏れのチェック作業も発生し、決して効率的な業務ではなかったのです。
勤怠管理システムは、自動で勤怠情報が集計されます。これまでのような手作業での集計が不要になるため、人事の業務効率を上げることができるのです。
(4)テレワークやパートなど勤務形態が多様化しても対応できる
テレワークやフレックス制度など、多種多様な勤務スタイルに、比較的容易に対応できるのも勤怠管理のシステム化をおすすめするポイントです。
テレワークやフレックスタイム制は、従業員にとってはメリットの多い制度ですが、管理する側にとっては、労働時間の正確な把握がより難しくなるというデメリットもあります。
その点、勤怠管理システムを利用することで、パートやアルバイトなど雇用形態を選ばず、さらには、場所を選ぶことなく出退勤を記録することができるようになります。さまざまな勤務形態の勤怠管理が効率的に行えるようになるのです。
(5)書類の保管の手間がない
勤怠管理システムは従業員の勤怠情報をデータとして保存でき、必要に応じて出力することができます。
もちろんタイムカードや出勤簿と同様に、データも5年間保管する義務がありますが、データであれば、保管スペースも保管書類を整理する手間も不要です。紛失や盗難のリスクが低いのもメリットといえるでしょう。
(6)法改正時も自動的にアップデートしてもらえる
労働基準法や労働安全衛生法など、勤怠管理に関する法律が改正された場合、管理も法律に則した方法に変えなくてはなりません。
そのためには、法律の変更点を十分に理解する必要があり、社内で使用している書式やファイルの変更作業など、大きな手間と時間がかかります。
勤怠管理システムは、多くの場合、法改正があると、改正後の法律に合うようにアップデートが行われます。自社で対応する必要がなく、すぐに法律に沿った勤怠管理が可能になるのです。
(7)ログが残るので不正を抑止できる
勤怠管理システムには、データの修正履歴が残るシステムもあります。誰が、いつ、何を修正したかがわかるため、不正の抑止になるのです。
勤怠管理システムの選び方について
最後に、勤怠管理システムを選ぶ際に気をつけるべきポイントを紹介します。
(1)自社の勤務形態に合っているか
自社の勤務形態に合わせて勤怠管理を選ぶ必要があります。例えば、リモートワークを採用している、または、外回りの営業が多いという会社の場合は、スマホやタブレットなど事業所外からの打刻が可能なクラウド型が最適です。
また、勤務システムによっては、生体認証式の打刻や時間とともに打刻した位置も記録するGPS打刻機能を備えたものもあります。
このような勤怠管理システムを選んでおくと不正の防止がより期待できるでしょう。
(2)コストはどの程度か
勤怠管理システムはサービスによって、初期費用や運用費用が異なります。また、同じサービスであっても利用する機能によって料金プランが変わるものもあります。
そのため、自社で必要な機能を洗い出し、それを利用するにはどの程度のコストが必要かを確認しておきましょう。会社の規模や予算に合わせたシステムの選択が重要です。
(3)既存システムとの連携が可能か
すでに給与計算システムや経費精算システムを導入している企業は、これらのシステムとの連携が可能かを確認しておきましょう。
連携が可能であれば、勤怠管理と給与計算や経費精算を一元化できます。業務の大幅な効率化が図れるでしょう。
(4)多様な働き方に適合しているか
先ほどもお伝えしたように、勤怠管理は多様な勤務形態に対応しています。今の段階で自社がテレワークやフレックス制度を導入していなくても、今後を見据えて多様な働き方に適合したシステムを選んでください。
もし、自社で働き方が変わっても、システムを変更せずに利用できるので便利です。
(5)法改正時の対応はしてもらえるか
労働基準法など、勤怠管理に関わる法律が改正された際、勤怠管理システムがアップデート対応してくれるかの確認が重要です。法律が改正されれば、管理するポイントも変わります。
法改正に対応できないシステムであれば、自社で改正内容を詳しく確認し、管理方法を整備しなくてはなりません。システム側が対応してくれれば、自社で慌てて対応する必要がないのです。
手書きを脱却してシステムで勤怠管理を効率化しましょう
手書きのタイムカードや出勤簿による勤怠管理は、違法ではないもののさまざまな問題点があります。そのため、手書きでの勤怠管理を続けるのであれば、問題点を理解した上で、適切な方法で行う必要があるでしょう。
そして、より正確に効率的に勤怠管理を行うには、勤怠管理システムの導入がおすすめです。手書きでの勤怠管理の問題点を解決し、業務を効率化しましょう。
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