タイムカードで15分単位の計算は違法?正しい勤怠管理と計算方法を解説
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毎月の給与計算に大きく影響する勤怠管理。特に労働時間は何分単位で計算すれば良いのか、正しく理解していない人も多いのではないでしょうか。本記事では、タイムカードで15分単位での計算は違法なのか?正しい勤怠管理と計算方法をあわせて詳しく解説します。
目次
タイムカードで15分単位の計算は違法?
タイムカードに記載された労働時間を15分単位で計算するのは違法です。1分単位で管理する方法以外は、原則で認められていません。1分単位以外での勤怠管理は、労働基準法の賃金全額払いの原則に違反するためです。
ただし、時間外労働を1ヶ月単位で算出している場合、1時間未満の端数処理に関しては、打刻まるめが認められています。
勤怠管理は1分単位が原則
勤怠管理は1分単位で計算して残業代を支給しない限り、労働基準法違反とみなされてしまいます。1分単位以外の勤怠管理は、賃金全額払いの原則に反するためです。
賃金全額払いの原則とは、「労働の対価としての報酬を従業員本人へ現金で支給しなければならない」と定める原則です。1分単位で勤怠管理が行われていない状態は、労働の対価として従業員に支払う賃金を全額支給していないとみなされてしまいます。
従業員は労働した分の賃金が指定給与日に支払われると見込んで、日々の生活設計を立てています。賃金の支払い漏れが起きると従業員の生活が不安定になるだけでなく、信頼関係が大きく悪化し離職率が増加する可能性が高くなります。
また、労働基準法違反になると、30万円以下の罰金または6ヶ月以下の懲役が科されます。
従業員との信頼関係維持やコンプライアンス違反を回避するためにも、勤怠管理は1分単位で行いましょう。
[出典:e-Gov 労働基準法 第二十四条]▷勤怠管理とは?目的や重要性・管理項目や方法をわかりやすく解説!
1ヶ月単位での算出は例外
時間外労働・深夜労働・休日労働の時間数を1ヶ月単位で算出している場合、1時間未満の端数に関してまるめ処理が認められています。まるめ処理は30分以上を1時間に切り上げ、29分以下を切り捨てる方法です。
まるめ処理が認められているのは、給与計算業務を効率化するためです。ただし、1日単位で労働時間を算出している場合、まるめ処理は認められません。例えば、1週間単位の変形労働時間制を採用している場合、まるめ処理は適用できません。
1週間単位の変形労働時間制は、労働時間が1日10時間・週40時間以内に抑えることを条件に、1日単位で労働時間を調整できる働き方です。まるめ処理を適用すると、規定時間以上の労働が発生する形になるため適用できません。▷勤怠管理をしていない会社は違法なのか?リスクや問題点・対処法を解説
ノーワーク・ノーペイの原則
ノーワーク・ノーペイの原則は、給与支払いの基本原則として認識されている概念で、労働が提供された時間のみに賃金の支払い義務が発生する考え方です。
つまり、労働が発生していない分の賃金まで支払う必要はないと提唱されています。遅刻・早退・欠勤が発生した場合、労働が提供されていない時間数の賃金を差し引いて支給します。賃金を控除する場合も1分単位で計算してください。
ノーワーク・ノーペイの原則は、雇用形態や給与形態を問わず適用されます。ノーワーク・ノーペイの原則を適用する基準は、労働者都合または不可抗力によって労働していない時間が発生したケースです。
以下に該当するケースをまとめました。企業側の都合によって労働できない時間が発生した場合は、平均賃金×60%の休業補償を支払わなければなりません。
表:ノーワークノーペイの適用基準
適用される主なケース | 適用外のケース |
|
|
正しい勤怠管理とは?
正しい勤怠管理とは、従業員一人ひとりの勤怠データを正確に把握することです。過重労働防止・正しい給与計算・コンプライアンス遵守などの目的を達成するために必要です。特にコンプライアンス違反に対する世間の目は、年々厳しくなっているのが現状です。
2019年からは働き方改革関連法の施行に伴い、残業時間の上限規制と有給休暇の取得義務が企業に課せられました。前者は36協定の上限である月45時間・年360時間以内に、時間外労働を抑えるのが原則的なルールです。
36協定を超える時間外労働を命じるには特別条項の締結が必要ですが、複数の規定をすべて満たさなければなりません。一方、有給休暇の取得義務は年10日以上有給休暇を付与される従業員を対象に、5日以上の有給休暇取得が義務化されました。
対象者が5日以上有給休暇を取得できなかった場合、未達成者1人につき30万円の罰金が科されます。法令遵守の観点からも、正確な勤怠管理が求められています。
[出典:e-Gov 労働基準法 第三十九条七項]▷【重要】勤怠管理で知っておくべき労働基準法の基本ポイントを解説
パートやフレックスなどでも勤怠管理は明確に
パートやアルバイトとして働く方の多くは、扶養控除内での働き方を希望しています。扶養控除内での働き方は、所得税が発生する103万円が一つの基準になります。扶養控除内に収まるよう、年単位で労働日数と労働時間を調整しないといけません。
労働時間を正確に管理するためにも、正確な勤怠管理が必要です。また、フレックスタイム制や裁量労働制など、通常と異なる勤務形態を導入する場合、時間外労働に対する理解を深めておかければなりません。
フレックスタイム制の場合、1〜3ヶ月単位の清算期間に応じて、法定労働時間の枠組みが異なります。法定時間の枠組みを実労働時間が超えた場合、時間外労働として換算します。
例えば、清算期間を1ヶ月と設定します。法定労働時間の総枠は、1ヶ月の暦日数によって変化します。31日あった月の法定労働時間の総枠は、177.1時間です。実労働時間が177.1時間を超えた場合、超過した時間数を時間外労働として換算します。
一方、裁量労働制は実労働時間数にかかわらず、事前に決めたみなし時間を働いたとみなす制度です。みなし労働時間を8時間と設定しておけば、実労働時間が5時間でも10時間でも、8時間働いたと換算されます。
みなし労働時間を労働時間として換算するため、基本的には時間外労働の概念は発生しません。ただし、1日のみなし労働時間が8時間を超えた場合、時間外労働が毎日発生する形になるため、注意してください。
表:フレックスタイム制で清算期間を1ヶ月とした場合
暦日数 | 法定労働時間の総枠 |
31日 | 177.1時間 |
30日 | 171.4時間 |
29日 | 165.7時間 |
28日 | 160時間 |
正しい残業代の計算方法
法定労働時間である1日8時間・週40時間を超える労働を従業員に命じた場合、企業側は割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金の算出方法は、基礎賃金×割増率×労働時間数です。基礎賃金は、基本給に手当を含んだ賃金を所定労働時間で割った金額です。
ただし、通勤手当・住宅手当・別居手当などは、労働基準法に従い賃金には含まないでください。月給制の場合、1ヶ月の賃金を1ヶ月の所定労働時間数で割ると、算出できます。
例えば、基本給を30万円、各種手当が2万円、所定労働時間を160時間と仮定します。計算式は、(300,000+20,000)÷160=2,000となり、基礎賃金は2,000円です。そこから算出した基礎賃金を活用して割増賃金を算出してください。例えば、法定労働時間を超える時間外労働の場合、割増率は25%です。
1ヶ月の時間外労働が30時間だった場合、割増賃金は2,000×1.25×30=75,000円となります。労働の種類によって割増率は異なるため、間違えないように計算しましょう。
表:割増率
労働の種類 | 定義 | 割増率 |
時間外労働(法定内残業) |
| 0% |
時間外労働(法定外残業) | 1日8時間、週40時間を超える労働 | 25% |
1ヶ月に60時間以上 | 月60時間を超える時間外労働 | 50% |
法定休日労働 | 法定休日での労働 | 35% |
深夜労働 | 22時~5時の労働時間 | 25% |
時間外労働+深夜労働 | 時間外労働をこなしつつ、深夜労働も発生した場合 | 50% |
休日労働+深夜労働 | 休日労働を命じた日に、深夜労働も発生した場合 | 60% |
深夜時間帯はさらに割増
22時〜5時の時間帯に1時間でも労働を行うと、深夜労働とみなされます。時間外労働や休日労働を命じた日に深夜労働も発生した場合は、割増率を合算して手当を計算してください。
時間外労働の場合は基礎賃金×50%×時間数、休日労働の場合は基礎賃金×60%×時間数で、手当の額を算出します。
また、2023年4月からは中小企業にも割増率引き上げが適用されます。1ヶ月で60時間を超える時間外労働を命じた場合、基礎賃金×50%の割増賃金を超える時間数を支払わなければなりません。
今までと同じ時間数の残業を命じると倍の残業手当を支払うので、人件費が高騰します。企業経営への圧迫を避けるためにも、業務体制の再整備や勤怠管理システムの活用など、残業時間削減に向けての取り組みが必要です。
勤怠管理システムの活用
客観的な方法で正確な労働時間を把握するためには、勤怠管理システムの導入が有効で、従業員の勤怠データを正確かつ効率的に管理できる点がメリットです。勤怠管理システムを導入すると、労働時間・時間外労働・休日労働の時間数抽出から反映まで自動化できます。
リアルタイムの勤怠データが反映され、従業員一人ひとりの勤怠状況を素早く把握できます。労務担当者は、管理職と勤怠状況に関するやりとりを何度も重ねる必要はありません。
残業過多な従業員がいた場合はアラートを発し、過重労働を未然に防げます。また、GPS・チャット・Webブラウザなど、多彩な打刻方法も搭載しており、自社の就業形態に合わせて選択できます。
生体認証を搭載したシステムを選択すれば、盗難や紛失の心配もありません。また、クラウド型の勤怠管理システムはベンダーが自動でアップデートを行うため法改正へのスムーズな対応も望めます。
タイムカードやExcelでの勤怠管理を続けていると、正確な時間の把握と客観的な確認が困難です。タイムカードは誰でも簡単に利用できる点が魅力ですが、不正打刻も発生しやすい点がデメリットです。
仮に遅刻をしても同僚や後輩に出退勤時刻の打刻を頼めば、記録上には遅刻の事実は残りません。一方、Excelは自己申告制なので、不正打刻のリスクが勤怠管理システムと比べると高いです。不正打刻をしないかどうかは、従業員のモラルによります。
また、双方ともテレワークでの勤怠管理では利用できません。正確な勤怠管理を行うためにも、勤怠管理システムの導入を検討しましょう。▷【最新】無料で使える勤怠管理システム15選!完全無料やトライアル付きなど▷【最新比較】おすすめ勤怠管理システム15選!失敗しない選び方も解説!
不適切な勤怠管理による企業リスク
賃金台帳には時間外労働・深夜労働・休日労働の時間数など、給与計算に必要な項目を正確に記録しなければならないと、労働基準法第108条に定められています。賃金台帳は労働者名簿や出勤簿など、労働関連の書類と共に5年間の保存が義務付けられています。
勤怠管理の正確な記録や保存が行われていない場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため、注意しましょう。また、ずさんな勤怠管理が原因で、違法労働や賃金の未払いを従業員から訴えられると、世間にブラック企業のイメージが定着してしまいます。
企業イメージが落ちてしまうと取引先や顧客からの信頼を失うため、勤怠管理は正確に行いましょう。
[出典:e-Gov 労働基準法 第百八条・第百九条]▷勤怠の改ざん・不正打刻は違法!勤怠管理での防止法や対処法まで解説
社員の労働時間を把握し勤怠管理を徹底しよう
勤怠管理は1分単位が原則的なルールです。時間外労働・深夜労働・休日労働を1ヶ月単位で算出する場合のみ、端数処理が認められています。正しい給与計算・従業員の健康保護・コンプライアンス遵守のためにも、正確な勤怠管理が求められています。
従業員一人ひとりの勤怠データを正確に把握するためには、勤怠管理システムの導入が有効です。勤怠データの自動集計から反映まで、システムで一括管理できます。フレックスタイム制・裁量労働制・シフト制など、さまざまな就業形態にも対応可能な勤怠管理システムもあります。
また、GPSや生体認証など、データ改ざんが困難な打刻方法も多数搭載されており、不正打刻のリスクも低減可能です。近年は、低コストでハイスペックな機能を搭載したクラウド型の勤怠管理システムが、多数登場しています。
予算に制限がある企業でも導入しやすい状況なので、勤怠管理の工数増大にお悩みの場合は、勤怠管理システムの導入をご検討ください。▷勤怠管理と給与計算のシステム連携によるメリットとは?選び方も解説
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