【重要】勤怠管理で知っておくべき労働基準法の基本ポイントを解説

最終更新日時:2022/11/24

勤怠管理システム

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労働基準法において勤怠管理は使用者の義務であり、近年の法改正により勤怠管理の正確性が求められています。万が一違反と認められれば、罰則規定もあるので注意しましょう。今回は勤怠管理を行う上で理解しておくべき労働基準法の重要なポイントを解説します。

労働基準法の概要と関連法の改正

労働基準法は、労働者の生存権の保証を基本理念として、労働における条件の最低基準を定めています。また、労働基準を具体的に定めるにあたっては、日本国憲法第27条第2項が基本条項となっています。

2019年4月に施行された、通称「働き方改革関連法」により、労働基準法をはじめとする労働関連の法改正が行われました。

2023年4月以降は、時間外労働に対する割増賃金の引き上げが中小企業にも適用されるなど、今もなお働き方の改革は推進されています。

また、労働基準法には強行法規性があり、法律に反している場合は、たとえ使用者と労働者間で合意があったとしても、その合意自体が無効となります。

そのため、労働基準法に違反した場合は、合意の有無に関わらず、企業側が罰則を受けることになります。

労働者を守るため

労働基準法をはじめとする労働に関する法律には「労働者を守る」という大きな役割があります。

しかし、近年は「長時間労働の慢性化」「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差」「有給休暇取得率の低さ」など、労働環境の悪化ともいえる多くの課題に直面しています。

それだけでなく、子育てや介護との両立などの家庭の事情や、ワークライフバランス重視といった個人の意向に応じられる労働環境を望む声も年々高まっていました。

働き方改革関連法は、これらの課題解決と、多様な働き方のニーズに応じられる社会を実現することで、「労働者にとっての働きやすい環境整備」と「柔軟な働き方の受け入れによる労働力の確保」を目的としているのです。

労使トラブルから企業を守るため

労働基準法は、労働者だけでなく使用者側である企業を守る意味でも大切な法律です。

労使トラブルには、解雇・退職に関するものや残業代の請求、または長時間労働による過労死などが挙げられ、中には、刑事責任が問われる場合もあります。

これらのトラブルへの対応や解決には、多大な経済的コストや人的コストが必要です。また、会社の名誉や社会的な信用が低下するというリスクもあります。

労働基準法や関連法を遵守することは、労使トラブルを防ぐためにも重要です。

労働時間の把握は使用者の義務!労働基準法を遵守した勤怠管理とは?

労働安全衛生法の改正で労働時間の把握が義務化された

労働基準法の第109条では、労働者名簿、賃金台帳などの労働関係の重要書類の保管について、また第108条では賃金台帳に記載すべき内容を定め、賃金の支払いごとに遅延なく記入することを定めています。

労働関連法が改正される以前も、厚生労働省のガイドラインによって、労働者の労働時間の把握は求められていました。ただし、これらは適正な賃金の支払いを目的とする意味合いが大きかったのです。

そのため、働き方改革関連法により、長時間労働の是正といった労働者の健康と安全な労働環境の実現を目的として、労働安全衛生法第66条8の3において、従業員の労働時間の把握が義務化されたのです。

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勤怠管理を行う上で理解すべき労働基準法のポイント

適正な勤怠管理を行うには、労働基準法を正しく理解しておく必要があります。ここでは、特に押さえておくべきポイントを6つ解説します。

労働時間の把握は使用者の義務である

労働安全衛生法の改正により、従業員の労働時間の客観的な把握が使用者の義務となりました。把握に際した具体的な方法なども厚生労働省令によって定められ、さらには、時間外労働の上限についても新たに規定されたのです。

また、管理監督者や裁量労働者など、これまで労働時間の把握が義務ではなかった労働者に対しても、法改正により労働時間の把握が義務化されています。

勤怠管理の方法は客観的な方法で行われなければならない

企業の義務となった労働時間の把握は、厚生労働省が定めた方法で客観的に行わなくてはなりません。

原則として従業員の自己申告による記録は認められていないのです。厚生労働省が定める客観的な方法は次のとおりです。

  • タイムカードによる記録
  • パソコンなどの使用時間の記録

また、労働時間の記録に関しても、法改正により3年間の保存から5年間の保存へと延長されています。3年で破棄してしまっていないか、また、法令で定められた客観性を満たしているかを確認しましょう。

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自己申告はやむを得ない場合のみ

先ほどもお伝えしたように、労働時間の把握は客観的に記録する必要があり、従業員の自己申告による管理は、やむを得ないと判断される場合にのみ認めるとされています。

これは、自己申告での勤怠管理は客観性がないため、申告した時間と実労働時間に差が生じる可能性があるからです。

自己申告が認められるケースとしては、直行・直帰の業務やテレワークなどが挙げられます。ただし、これらの場合もパソコンやスマートフォンを常に携帯し、客観的な記録が可能だと判断される場合は、自己申告による管理の妥当性が認められないこともあります。

また、いずれの場合も申告時間と実労働時間に差が生じないように、ルールを設けて適切に運用されなくてはなりません。

労働時間の自己申告は禁止?正しい勤怠管理の方法や注意点を解説

年次有給休暇の年5日取得義務化

企業は従業員に年5日以上の年次有給休暇を取得させることが義務付けられました。これは、正社員だけでなく、有給休暇が年10日以上付与されているパートタイマーやアルバイトも同様です。

また、この年5日以上の有給休暇の取得は、有給休暇を付与した日から1年以内に取得させる、時期指定の義務があります。そのため、企業側は従業員の有給休暇の取得日数を適切に管理しておく必要があるのです。

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残業時間の上限規制

長時間労働の改善には、慢性化している残業時間の見直しと削減が必要です。そこで、働き方改革に関する法改正では残業時間の上限の原則について、次のように明確に規定されました。

  • 月45時間
  • 年360時間

やむを得ない理由がある場合のみ、例外として以下の上限が設けられています。

  • 年720時間以内
  • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
  • 月100時間未満(休日労働を含む)
  • 原則である月45時間の残業を超えられるのは年6ヶ月間のみ

例外となる上限を超える労働は、たとえ労使間で合意があったとしても認められません。日頃から不要な残業が発生しないよう、業務の見直しや効率化、従業員への働きかけも大切です。

2023年4月より中小企業に対する割増賃金引き上げが適用

2023年4月より、労働基準法第37条において定められた、月60時間を超える時間外労働の法定割増賃金率の引き上げが、中小企業に対しても適用されることになります。

これにより月60時間を超える時間外労働の割増率は、25%から50%へと引き上げられます。

これまで月60時間を超える時間外労働に対する法定割増賃金率は、2010年4月の法改正により、大企業が25%から50%へと引き上げられたのに対し、中小企業は25%と据え置かれていました。

それが、今回の法改正により、中小企業においても50%の割増賃金率が定められることになったのです。

しかし、中小企業においては、経営体力の違いなどで、必ずしもすぐに対応するのは困難であるとの判断から猶予期間が設けられていました。

その猶予期間が2023年3月で終了するため、4月からは中小企業に対して、この引き上げが適用されることになります。

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労働基準法違反による罰則について

労働基準法に違反した企業には、罰則が与えられます。ここでは、労働基準法に違反した場合の罰則について解説します。

前提として、これらの罰則は、一般的には企業の経営者もしくは代表者に対して科されることになり、長時間労働をした従業員本人などに科されることはありません。

ただし、直接指揮命令をしていた上司や責任者に関しては、場合によっては刑事責任を負うことがあります。

長時間労働に関する罰則

労働時間に関する違反には、下記の罰則が科せられる恐れがあります。

  • 6か月以上の懲役または30万円以下の罰金

ただし、労働時間に関する違反は36協定の締結の有無によって、次のように異なります。

  • 36協定が締結されていない:1日8時間・1週間に40時間を超える労働は違反
  • 36協定が締結されている:残業時間が月45時間・年360時間を超える労働は違法

さらに、残業の上限が延長できる特別条項付き36協定が締結されている場合では、下記に該当する労働が違反となります。

  • 年の残業が720時間を超える労働
  • 複数月平均の残業が80時間を超える労働
  • 月の残業が100時間以上の労働
  • 月45時間を超える残業が年7ヶ月以上

36協定の締結の有無を踏まえて、過度な長時間労働を避けるようにしましょう。

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残業代・割増賃金の未払いに対する罰則

残業代・割増賃金の未払いに対する罰則は次のとおりです。

  • 6か月以上の懲役または30万円以下の罰金

使用者は、残業、深夜労働、休日労働の事実があれば、労働者に適正な時間外労働や休日労働などの割増賃金を支払う義務があります。

違反が認められた場合は、一般的には行政機関からの指導を受けることになるでしょう。悪質なケースでは刑事事件として立件され、上記の罰則を受ける可能性が発生します。

そうならないためにも、適切に従業員の勤怠を管理しておかなくてはなりません。

休憩時間に関する違反の罰則

労働基準法で定められた休憩時間が与えられていないと違反になり、下記の罰則が科せられます。

  • 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金

休憩時間は、6時間を超える労働では45分以上、8時間を超える労働では60分以上が付与されます(労働基準法第34条)。

従業員が定められた休憩時間を無理なく取れるように、労働環境を整えておく必要があります。

勤怠管理での正しい休憩時間のルールとは?注意点や管理方法まで解説

労働基準法に基づいた勤怠管理を行う方法

次に、労働基準法に基づいた適切な勤怠管理を行う方法を紹介します。

勤怠管理システムの導入がおすすめ

勤怠管理システムは、従業員の出退勤時間や欠勤などが正確に管理できるシステムです。手入力や目視で行う業務が多いエクセルなどの管理表では、ミスが起こりやすく正確な勤怠管理が行えません。

勤怠管理システムは、ICカードやパソコンにより打刻時間が自動で記録されるため、入力ミスが防げます。モバイルデバイスからの利用も可能なため、テレワークへの対応も可能です。

また、時間外労働や有給休暇管理が行える機能が備わっているなど、働き方改革関連法に対応したシステムも多くあります。

労働基準法に基づいた勤怠管理を効率的に行うには、システムの導入が必要不可欠と言っても過言ではないでしょう

勤怠管理システムを導入する目的と効率化によるメリット8選

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システムにより勤務形態を問わず客観的な把握が可能に

自己申告による勤怠管理は、企業側がやむを得ず労働時間の客観的な把握ができない場合にのみ、例外として認められています。

これは営業職や訪問医療など、主に、事業所外での業務が多く発生し、勤怠管理が困難となる職種が対象であると考えられます。

しかし、勤怠システムには、マルチデバイス対応の打刻機能を備えているものもあり、直行・直帰だけでなく、テレワークなども含め、場所を問わない勤怠管理が可能になります。

そのため、勤務スタイルを問わずに客観的な労働時間の把握ができるようになるのです。

とはいえ、実働と申告時間に乖離がないかの定期的な調査は、必要に応じて行うようにしましょう。勤怠システムを使用した自己申告でも、正確な労働時間の把握ができる管理体制を整えてください。

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従業員に対して勤怠管理の重要性を説明する

従業員に勤怠管理の重要性を理解してもらうことも、適切な勤怠管理には不可欠です。どれだけ企業側が管理を徹底していても、従業員の意識が低ければミスや漏れ、不正などが起こる可能性は高くなります

勤怠管理の義務化は、労働者の保護が大きな目的であり、過度な残業や有給休暇が取れないなど、従業員の健康や安全、権利が脅かされる状況を改善するための法改正となっています。

その旨を従業員に説明し、勤怠管理への理解を深めてください。重要性が理解できれば、従業員も協力的になり、労働基準法や労働安全衛生法などの労働関連法に基づいた勤怠管理が行えるはずです。

おすすめ勤怠管理システム4選を厳選して紹介

最後に、勤怠管理が効率的に行えるおすすめのシステム4選を紹介します。

1.ジンジャー勤怠

ジンジャー勤怠は、シンプルな画面が特徴なため、機械操作が苦手な人でも簡単に利用できます。打刻方法もパソコン、スマートフォン、タブレットなどがあり、自社の業種や就業形態に合わせた選択が可能です。

法改正にも対応しているので、労務リスクの回避も期待できるでしょう。また、導入時には担当者が設定の支援をしてくれるので安心です。

機能自動集計、ワークフロー、シフト管理、有給管理、予実管理、アラート機能など
打刻方法パソコン、スマートフォン、タブレット、ICカード
無料トライアル
料金1ユーザー:月額400円〜

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2.ジョブカン勤怠管理

ジョブカン勤怠管理は、変形労働・フレックス制・裁量労働などの勤務形態や、所属・雇用形態など、細かい設定ができます。このため、勤務形態が多様で複雑な医療機関などにおいても運用可能です。

また、有給取得や36協定超過に対するアラートなど、働き方改革関連法に対応した機能も充実。

利用したい機能を自由に組み合わせて使うことができ、機能によって料金が変動するので、必要なものだけカスタマイズすればコストを最小限に抑えられます。

機能各種アラートメール機能、リアルタイム管理、出勤簿機能、打刻申請・承認機、残業設定など
打刻方法パソコン、指静脈認証機器、顔認証打刻機器、ICカード、Web打刻など
無料トライアル
料金1ユーザー:月額200円~

3.KING OF TIME

KING OF TIMEは従来のタイムカードに代わるタイムレコーダーシステムとして、多彩な打刻手段が準備されています。

生体認証、ICカード、パソコン、スマートフォン、そして顔認証と、コストや業務形態によって最適な方法が選択できます。

申請承認機能では、休暇や残業などの申請を一元管理でき、申請から承認までシステム内で取り扱うことができるため、書類提出などの手間が省けて効率的です。

機能残業時間の設定、スケジュール・シフト管理、休暇管理機能、申請承認機能、アラート機能など
打刻方法パスワード認証、Myレコーダー、モバイル、Windowsログオン・ログオフ、ICカードリーダー、指紋リーダー、指静脈リーダーなど
無料トライアル
料金1ユーザー:月額300円

4.マネーフォワード クラウド勤怠

マネーフォワード クラウド勤怠は、テレワークや外回り営業など、オフィス外就業の管理に便利なGPS打刻に対応しています。

1つの画面上にアラート通知やワークフローが表示されているので、従業員の打刻漏れや有給や早退などの申請にも迅速な対応が可能です。

中小企業向けの料金プランも設定されているので、小規模事業者も導入の検討がしやすいでしょう。

機能勤怠チェック、様々な雇用形態に対応、カスタム自動集計、シフト管理、有給休暇管理など
打刻方法Web打刻、打刻モード、スマートフォン打刻、ICカード
無料トライアル
料金月額2980円~

労働基準法を遵守し正しい勤怠管理を行いましょう

労働基準法は、従業員を守ることはもちろん、企業を守る上でも重要なものです。

特に、働き方改革関連法により、労働基準法をはじめとする関連法が改正されたことで、勤怠管理に対する企業の責任は、より重いものになっています。

労働基準法を厳守するには、正しい勤怠管理が欠かせません。従業員の労働時間や休暇を正確に把握することで、労働基準法に沿った企業運営ができるからです。

勤怠管理を正確に行うために、システムの導入も検討してみましょう。

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