BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)とは?メリットや作り方を解説

最終更新日時:2022/10/31

業務効率化・業務改善

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BPMNとは、業務プロセスの手順を開始から終了までフロー形式で図式化する方法のことを指します。情報を視覚的に表すことで、より効果的な改善案を提案することが可能です。本記事では、そんなBPMNについて、メリットや作り方など詳しく解説していきます。

BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)とは?

まずはBPMNの言葉の意味などをチェックしていきましょう。

BPMNの定義

BPMNは「Business Process Model and Notation」の略称です。日本語だと「ビジネスプロセスモデリング表記法」と訳されます。

BPMNが生まれたきっかけは、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)が注目されたことにあります。BPMとは、業務フロー内での課題を発見・解決し、業務の改善や最適化を目指す管理手法のひとつです。

ただし、業務フローを可視化する際、担当者によって表記法が異なるため、誰が見てもわかる状態とはいえませんでした。そこで、表記法を統一するためのルールとして登場したのがBPMNです。

BPMNは、決まった種類の図や記号を使って業務フロー図を作成するため、視覚的にわかりやすく表現できます。BPMNに沿って作成したフロー図は誰が見ても理解でき、社内での標準化や共有に役立つでしょう。

BPMNの類義語

BPMNと似た言葉に「BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)」があります。BPRは「業務改善」と呼ばれることもあり、業務フロー全体を見直し、よりよい業務フローへと再設計するところまでが含まれます。

生産性や業績の向上、組織改革などを目的として取り組まれるのがBPRです。したがって、BPMNで業務フローを可視化したあとのプロセスともいえます。

BPMNを活用するメリット

ここからは、BPMNを活用するメリットを3つ紹介していきます。

業務の効率化

BPMNを活用して業務フロー図を作成する際、業務全体を見直すことになります。そのため、業務フローの中の不要な業務を発見することが可能です。

不要な業務や重複している業務など、これまで無駄なコストを割いていた業務を削減したり、改善したりすることで、業務の効率化が期待できます。

属人化の防止

BPMNで業務フローが可視化されるため、属人化を防止できます。部門ごとに業務フロー図を作成する際、担当者によって表記法が異なってしまうと、外部の人間には理解しにくくなります。この場合、引き継ぎや情報共有などが難しいことから、属人化を引き起こしかねません。

しかし、BPMNによって業務フロー図の表記法が統一されれば、誰が見ても業務フローの内容を把握できます。引き継ぎや外部との共有が容易になるだけでなく、外部からの理解や協力も得やすくなるため、属人化を防げるでしょう。

作成手順の簡略化

業務フロー図を作成するにあたって明確なルールがなければ、担当者がどのように表記すればいいか迷ってしまいます。BPMNであれば業務フロー図の表記法に明確なルールが設けられているため、担当者が表記法に迷うことはありません。

BPMNでは図や記号を用いて業務フロー図を表記するため、文章で説明しにくいものも可視化できます。担当者は作成手順や業務内容の表現方法に迷うことなく、読み手にわかりやすい業務フロー図を作成可能です。

BPMNが向いている業務の特徴

BPMNは業務フローを図や記号で可視化することから、以下のような特徴を持つ業務に向いています。

  • 業務に決まった手順がある
  • 業務フローが長い(プロセス数が多い)
  • 複数の業務を同時に進める
  • 1つの業務が複数の部門を横断して進む
  • 条件によって業務フローが分岐する

業務フロー全体をわかりやすく可視化できるため、上記のように業務フローが長いものや複雑な業務のフロー図の作成時にBPMNは役立ちます。

BPMNに取り入れる記号の種類

BPMNでは、決まった種類の記号を使用しなければなりません。ここからは、具体的にどのような記号があるのか紹介していきます。

イベント

イベントは、業務の開始・中間・終了を示す「円」です。開始は円、中間は二重の円、終了は太線の円にして使い分けます。

アクティビティ

アクティビティは、業務フロー内の各タスクを示す「角丸・横長の長方形」です。人やシステムによって実行しなければならないタスクを表します。記号の中にタスク名や具体的な内容を記入しましょう。

ゲートウェイ

ゲートウェイは、業務の条件分岐や並行処理を示す「ひし形」です。業務プロセスが交差する点に配置します。条件分岐であればひし形の中にクロス記号を記入し、並行処理であればひし形の中にプラス記号を記入し使い分けましょう。

シーケンスフロー

シーケンスフローは、業務の手順を示す「右向き・実線の矢印」です。イベントやアクティビティを正しい順序で結んでいきます。

メッセージフロー

メッセージフローは、異なる業務フロー図とのやりとりが発生する際に、コメントと一緒に使用される「始点に円の付いた破線の矢印」です。業務フロー内のイベントやアクティビティと結ぶことはありません。

関連するものを繋ぐライン

関連するものを繋ぐラインは「関連」とも呼ばれ、成果物と各アクティビティの関連を示す「点線」です。フロー図に必須のものではないため、業務フローを可視化するだけであれば使用しなくてもよいでしょう。

プールとスイムレーン

プールは業務フロー図全体を指し、スイムレーンは業務プロセスやアクティビティを部門ごとに分割したものを示します。プールはスイムレーンの集まりであり、スイムレーンによって各アクティビティの担当者や責任を明確にしています。

成果物

成果物は、業務フロー図の精度を上げるために追加する情報を示します。アクティビティと関連する要素を追加する場合は「グループ」として囲み、コメントが必要な場合は「テキスト注釈」を追加しましょう。

成果物の追加によって、業務フローの内容や順序が変更されることはありません。

BPMNの作り方

ここからは、実際にBPMNを作成する手順について学んでいきましょう。

BPMNを導入する目的を明確にする

まず、BPMNをなぜ作成するのか、目的を明確にします。目的によって、業務フロー図のゴールやタスクをどこまで細分化するのかが決まるからです。

BPMNで業務全体を見直すには各部門の情報が必要となるため、社内の協力体制が欠かせません。明確な目的があれば、BPMNの作成にも理解や協力が得やすいでしょう。

業務の全体像を把握する

業務フロー図を書き出すには、業務の全体像を把握しなければなりません。業務内容だけでなく、現在の業務手順、各業務の担当者や使用されているツールまで、業務に関わるあらゆる情報を洗い出すことが大切です。

業務の全体像をつかむには時間がかかるかもしれませんが、業務フロー図の作成を円滑に進めるためには重要な工程といえます。

シート全体の骨子を作成する

次に、業務フロー図の骨子を作成するにあたって、プールとスイムレーンを構成していきます。1つの業務開始から終了までに関わる部門を検討し、プールをイメージしましょう。

プール内の各アクティビティは、粒度を揃えることが大切です。アクティビティにかかる時間や担当者が変わるタイミングなど、1つのアクティビティとする基準を設けておくとよいでしょう。

部門別での各アクティビティの内容が複雑であれば、さらに担当者別でBPMNを作成してもよいかもしれません。そうすることで、各担当者は具体的にどのような行動を取ればいいのかが明確になり、業務の進行に迷いがなくなります。

実際にフロー図を作成する

業務フロー図の骨子が完成したら、実際にイベントやアクティビティなどを記入していき、ゲートウェイやシーケンスフローで繋げていきます。業務の終了まで繋がればBPMNの完成です。

BPMNを作る際のポイント

効果的なBPMNを作成するには、いくつか押さえておきたいポイントが存在します。ここでは3つのポイントを見ていきましょう。

活用のゴールを明確にする

BPMNは作成して終わるのではなく、どう活用するのかという観点が重要です。BPMNを活用して何を改善したいのか、何を成し遂げたいのかなど、活用のゴールを明確にしましょう。

活用目的としては、業務フローの標準化や業務効率化などが挙げられます。活用のゴールを明確にし、活用イメージを持ちながら作成するよう心がけましょう。

取り組む範囲を明確にする

BPMNには、数多くの図や記号が存在します。そのため、取り組む範囲が明確でなければ、どこまで詳細に表記すればよいかわからず、作成作業がスムーズに進められない可能性があります。

作成時に混乱が生じないためにも、どの程度詳細であれば読み手が理解できるのかを事前に確認し、無理のない範囲でBPMNに取り組んでいきましょう。

BPMNツールを活用する

WordやExcelを使用してのBPMN作成は、時間がかかったりデザイン性に欠けたりするなど、気になる問題点がいくつかあります。作成の手間を減らしたい場合は、BPMNの作成に特化したツールの利用を検討してみるとよいでしょう。

BPMNツールを活用すれば、業務フロー図をより簡単に作成できるだけでなく、システムによる自動化や業務の抜け漏れ防止などのメリットを得られます。無料で利用できるツールも存在するため、実際に使ってみて使用感を確認するのもひとつの方法です。

BPMNの作成におすすめのツール3選

効率的にBPMNを作成したい場合は、デザインツールやフローチャート作成ツールの利用がおすすめです。ここでは、おすすめのBPMNツールを3つ紹介します。

1.octpath

octpathは、業種・業界を問わずあらゆる業務に活用できるクラウド型のプロセスマネジメントツールです。

業務フローを可視化するだけでなく、それぞれのアクティビティに細かいタスクを登録できたり、期限や担当者を設定したりできます。期限切れのタスクを一覧表示で確認できることから、業務の抜け漏れも防げるでしょう。

提供元株式会社アクロリア
初期費用無料
料金プラン【基本料金】

スタンダード:1,650円(税込)/月

※1ユーザーあたり

機能・特徴業務フローの登録、自動条件分岐、期限・進捗管理、タスクの追跡
URL公式サイト

2.Ranabase

Ranabaseは、業務改善コンサルティングの知見や経験にもとづいて誕生したフローチャートツールです。

業務フロー図の作成だけでなく、各業務に関する情報を詳しく記録する機能が備わっています。業務の記録をメモ感覚で残していけることから、業務における課題の発見やスムーズな引き継ぎなどが期待できるでしょう。

提供元株式会社ユニリタ
初期費用要問い合わせ
料金プラン【基本料金】

  • フリープラン:無料
  • パーソナルプラン:550円(税込)/月

※編集ユーザー1人あたり

  • ビジネスプラン:79,200円(税込)~105万6千円(税込)/年

※編集ユーザー数および閲覧ユーザー数によって変動

機能・特徴ドローイング機能、業務用後の一元管理、コミュニケーション機能、テンプレート、教育コンテンツ
URL公式サイト

3.pipefy

pipefyは、海外の会社から提供されているBPMNツールです。カンバンボードのようにタスクを列ごとに管理するため、進捗状況を把握するのに役立ちます。

各タスクにはファイルの添付やチェックボックスの設置も可能であることから、業務記録を残すのにも有効です。視認性の高いワークフロー図を作成したい場合は、pipefyの利用を検討してみるとよいでしょう。

提供元pipefy
初期費用要問い合わせ
料金プラン【基本料金】

※月払いの場合

  • Starter:無料
  • Business:US$23/月/ユーザー
  • Enterprise:US$38/月/ユーザー
  • Unlimited:要問い合わせ

※年払いの場合

  • Starter:無料
  • Business:US$19/月/ユーザー
  • Enterprise:US$32/月/ユーザー
  • Unlimited:要問い合わせ
機能・特徴業務フロー構成・管理、タスク管理・追跡、スケジュール管理、テンプレート、アラート機能、コメント・メモ、メール管理
URL公式サイト

BPMNを活用して業務の効率化を図ろう

BPMNは、業務フローをわかりやすく可視化するのに役立ちます。適切に利用すれば、効果的な業務改善やコストの最適化などに繋がります。必要に応じてツールを活用しながらBPMNを作成し、業務の効率化を目指しましょう。

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