銀行が電子契約サービスを導入するメリットとは?増加する背景も解説

2022/3/15 2022/03/15

電子契約システム

電子契約を交わすビジネスパーソン

契約業務に多くの時間を消費していると感じたことはありませんか?本記事では、銀行の契約業務を効率化できる電子契約サービスについて、基礎知識や導入時の注意点、導入方法まで詳しく解説します。電子契約を導入して、安全で効率的な契約を行いましょう。

電子契約サービスとは?

電子契約サービスとは、これまで紙の契約書に署名・押印していた一連の契約業務を、すべて電子ファイル化されたデータにて、インターネットを介して行うシステムのことです。

電子契約は、法的な要件を満たした上で運用することで、紙の契約書と同等の法的効力が認められるため、企業間の契約で利用できるのはもちろんのこと、企業と個人の契約や社内決裁などにも利用することができます。

特に、個人融資取引など、いわゆるBtoCの契約業務が多く発生する銀行での業務においては、電子契約サービスの導入により、多くの契約業務をウェブ上で行うことができるようになり、業務にかかる時間や手間を大幅に短縮することが可能です。

利用者は、窓口を訪れることなく契約を完結できるため、時間を気にすることなく申請が行え、また、銀行にとっても、手間の軽減だけでなく、銀行内の混雑緩和に役立つというメリットが得られます。

電子契約が増加する背景

多様化する働き方への対応や、さまざまな社会背景から、近年、多くの企業がテレワークを導入するようになりました。それと同時に、日本のハンコ文化による弊害も浮き彫りになっています。

電子契約が普及してきたとはいえ、国内の契約形態は、今も紙媒体で行う従来の方法が主流です。そのため、テレワークを導入している企業では、署名やハンコを押すためだけに出社するといった業務の非効率さが、徐々に目立つようになっていたのです。

そんな中、行政のデジタル化を政策の1つに掲げていた政府は、2020年に行政手続きにおける認印(印鑑登録を行っていない印鑑)の押印をすべて廃止すると発表しています。

この政府の脱ハンコ化宣言は、民間企業にも大きな影響を与えています。さらに、新型コロナウイルスの影響も相まって、これまで対面で行っていた手続きを電子化する企業が増え、電子契約化の流れは、一気に加速することになったのです。

電子契約の仕組みと導入方法とは?サービスを選ぶポイントも簡単に解説

銀行で電子契約サービスを導入するメリット

個人情報や機密情報を多く取り扱う銀行にとって、電子契約サービスの導入は、どのようなメリットを得られるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

(1)ウェブ上で契約できる

紙の契約の場合、銀行は「郵送でやり取り」「顧客を訪問」「顧客が銀行に来訪」のいずれかの方法にて契約をしなければなりません。郵送、対面のどちらにおいても契約には、それなりの時間を要することになります。

一方、電子契約の場合、契約書は電子データでやりとりするためスマートフォンやタブレット、パソコンがあれば時間や場所を問わず、ウェブ上で契約することが可能です。スケジュール調整や移動時間を確保する必要もなく、双方の時間を有効に使うことができるのです。

(2) 手続きの手間を減らせる

紙の契約の場合、契約書類の作成や印刷、場合によっては郵送など、関連する多くの事務作業が発生します。

しかし、電子契約の場合、契約書の保管も電子ファイルで行うため、これらの事務作業を大幅に減らすことが可能です。また、インターネット環境さえあれば、外出先でも担当者や決裁者の確認・承認作業が行えるので、事務作業だけでなく、社内の業務フローも効率化されます。

(3)コストが削減できる

紙の契約書の場合、インク代や印刷代、収入印紙代や郵送代などの経費がかかります。また、顧客を訪問する際は交通費もかかるため、1件の契約にかかる銀行側のコスト負担は少なくありません。

電子契約の場合は、導入費用やシステムの月額料金といったランニングコストはかかりますが、上記のようなコストは一切かかりません。

インク代や印刷代はもちろんのこと、現在、電子契約は、印紙税の課税対象になっていないため、収入印紙代が不要となります。また、印刷や宛名書きなどの事務作業を大幅に減らせるので、人件費の削減にもつながるでしょう。

(4)セキュリティが強固になる

機密情報や個人情報を扱う銀行において、最も心配なのがセキュリティ面の安全性です。電子契約サービスでは、承認の進捗状況が可視化されるため、「いつ」「誰が」閲覧・変更したのか、どんな変更内容であったのかなどをチェックすることが可能です。

また、電子文書に使われる電子署名には高度な暗号化技術が使われ、確かに本人が署名したということを証明できるようになっています。

さらに、電子署名に加えてタイムスタンプ(電子署名が付与された時刻を正確に記録するもの)を付与することにより、その時刻に電子文書が存在していることを証明できるので、改ざんのリスクを減らすことも可能です。

外部ネットワークからのサイバー攻撃や不正アクセスを防ぐファイアウォール、第三者によるなりすましを防ぐ二段階認証などといった、さまざまなセキュリティ対策を導入することで、契約書を強固なセキュリティ体制の下、管理することができます。

電子契約における本人確認の重要性となりすまし防止への対策について

(5)契約書を紛失する心配がなくなる

紙の契約書の場合、契約書は、施錠した倉庫やロッカー、金庫などに保管しておくことが一般的でしょう。そのため、その量が次第に膨大になり、後に閲覧が必要になった際には、探し出すのに苦労するといったケースは少なくありません。

書類の多さと管理の煩雑さから、実際に、銀行が顧客の書類を紛失してしまうといった事故は、過去にも度々起きています。

この点、電子契約なら、契約書のデータをクラウドやサーバー上に保存するため、管理が容易になり、検索機能を使えばすぐに、目的の書類を見つけることが可能です。

さらに、電子データには、アクセス制限やパスワードを個別に設定することも可能なため、閲覧権限をより厳密に管理でき、情報漏洩のリスクを回避することができます。

(6)顧客の利便性が上がる

先にお伝えしたとおり、紙の契約書の場合、銀行の担当者が契約書を作成し顧客のところまで持っていったり、顧客が銀行まで出向いたりしなければなりません。

また、顧客とのスケジュール調整、書類の郵送にも時間がかかるなど、実際の「契約業務」以外にも時間を要することが多かったのです。

電子契約においては、スマートフォンやパソコン、およびインターネット環境があれば、場所と時間に縛られることなく、オンライン上で契約できます。そのため、契約締結までの時間が大幅に短縮できるでしょう。

電子契約を導入する際の注意点

電子契約を導入する際には、さまざまな注意点があります。ここでは、どのような注意点があるのか詳しく見ていきましょう。

(1)契約相手の同意が必要

せっかく電子契約を導入しても、契約相手の取引先が、電子契約で進めることに同意してくれなければ意味がありません。

そのためにも、まずはしっかり電子契約について説明し、理解してもらいましょう。その際には、以下のような注意点があります。

  • メリットだけでなくデメリットもしっかり説明する
  • (当事者型の場合)契約相手には同じ電子契約サービスを利用してもらう必要がある
  • 利用するサービスによっては、環境整備に手間やコストがかかる場合がある

これらの注意点を包み隠さずしっかり話しておかないと、トラブルのもとになったり、信用を失ったりすることにもつながるので注意が必要です。

(2)電子契約が認められない取引もある

一般的な契約方法のひとつになりつつある電子契約ですが、すべての取引やそれにかかわる書類が、電子化できるわけではありません。

書面契約が法律で義務付けられている契約および書類をいくつかご紹介します。

  • 不動産売買・交換の媒介契約書
  • 不動産売買・賃貸借契約の重要事項説明書
  • 不動産売買・交換・賃貸借契約成立後の契約等書面
  • 定期借地契約書(事業用も対象)
  • 定期建物賃貸借契約書および説明書面
  • 取壊予定建物の賃貸借契約における取壊事由書面
  • 訪問販売等の特定商取引の契約等の書面

その多くが不動産取引に関連する契約であり、銀行の契約業務に直接的にかかわるものではありませんが、住宅ローンの契約においては、不動産売買の契約書や重要事項説明書の確認が必要になるでしょう。

ただし、上記の契約取引も「事業用定期借地契約書」を除いて、電子化を認める改正法がすでに可決されており、2022年5月から電子契約が利用できるようになります(訪問販売等の特定商取引の契約等の書面のみ、2023年6月施行予定)。

電子契約ができないケースとは?対応不可な書類や相手に拒否された時の対処法

(3)業務フローの改善をともなう

ハンコ文化の根強い日本においては、電子契約の信頼性を懸念するケースも少なくありません。

特に、高齢の方はインターネットやパソコンに苦手意識を持っていたり、方法を変更すること自体に抵抗を感じたりするかもしれません。利用者に対しても、導入前に、電子契約サービスを導入するメリットや業務フローなどについてしっかり説明し、理解してもらいましょう。

また、導入前に現在の業務フローをしっかり把握し、どう調整・改善したらよいのか検討することが重要です。さらに、社内だけでなく取引先への調整・フォローも必要となる場合があるので、しっかり対応できるよう準備しておきましょう。

(4)サイバー攻撃のリスクがある

電子契約の場合、インターネットを介して取引を行うため、サイバー攻撃などのリスクを完全に排除することはできません。サイバー攻撃を受けると、データの改ざんや顧客情報の流出、重要データの破損などのトラブルが発生する可能性があります。

これらのトラブルを最大限に予防するには、電子契約サービスの選定時に、高度なセキュリティが設けられているかを、しっかり確認することが重要です。

また、メールを介して行われる電子契約は、なりすましや誤送信による情報流出の可能性があります。送信ファイルには個別にパスワードを設定し、パスワードは当事者しか知り得ない方法で伝えるといった業務フローを構築するほか、社員への注意喚起を徹底するようにしましょう。

電子契約を導入する際の5ステップ

電子契約をスムーズに導入するためには、次の5つのステップを行うことが重要です。課題を1つずつクリアすることで、導入後、トラブルが起きても適切に対応することができます。ここでは、電子契約を導入する際に必要な5つのステップについて詳しく見ていきましょう。

ステップ1:契約書の管理と業務フローの見直し

まずは、契約書や契約業務フローの中に、紙を前提とした文言やプロセスがないかチェックします。

例えば、関連する書類の中に「押印して」などの電子契約には不必要な文言が残っていると、「どこに、どう押印するの?」といった、問い合わせに追われてしまう場合があります。

本来、必要のなかった業務が発生することのないよう、手順などの説明書は、詳細にわたって確認するようにしましょう。

また、管理している契約書の種類や内容、保管場所や方法、契約の決裁者などの現状を把握することは、自社に合ったシステムを選定する上でも重要な作業となります。現状を把握し、電子契約の効率的な運用にそった業務フローへと見直しましょう。

ステップ2:電子契約の導入範囲決定

次に、電子化する契約書の種類や範囲を決めます。自社の課題を洗い出し、取引のすべてを電子化するのか、契約の種類などによって範囲を限定するのかを、事前に決めておきます。

実際に導入する際も、いきなりすべての取引を電子化するのではなく、段階的に導入範囲を広げていくスケジュールを決めておくと、混乱なく移行できます。

その際は、まず社内の運用から始め、使ってみてわかった事項をマニュアルに補足しつつ、徐々に範囲を広げていくと良いでしょう。

ステップ3:電子契約サービスの選定

自社に合った電子契約サービスを選びます。電子契約を使用する部署の意見を取り入れつつ、業務フローが滞らないか、ランニングコストが見合っているかなどしっかり話し合い、見合ったサービスを選定しましょう。

いきなり1つに絞らず、複数の電子契約システム会社を検討することが大切です。また、主な取引先が導入している電子契約サービスがある場合は、同サービスを導入した方がスムーズな取引につながります。

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ステップ4:社内ルールを明確にし関係者に周知

電子契約についての社内ルールを整えます。

具体的には、「電子契約を行う契約の種類」や「契約締結までの流れ」、「承認者の設定」などについて細かく決めておきます。ルールが明確に決まったら、マニュアルを準備し、問い合わせに対応する担当者を決めておくと、よりスムーズに運用を開始できるでしょう。

そして、契約業務にかかわる社員に対しては、電子契約書に関する法令やシステムの使い方、移行時期などについての説明会を開催します。特に、セキュリティ対策の上での注意点は、関係する社員全員が理解する必要があります。必ず周知を徹底するようにしてください。

また、取引先などの関係者にも電子契約を導入するメリットや理由をしっかり説明しましょう。取引先などの関係者が理解していないまま運用を始めると、トラブルの原因にもなりかねないので注意が必要です。

ステップ5:電子契約の導入効果を検証

実際に電子契約を導入したら、導入前と比べてどのくらいコストを削減できたか、どのくらい作業時間が軽減したのかを検証しましょう。また、業務フローも担当者からよかった点や問題点などの意見を聞き、アップデートしていくことが大切です。

電子契約を導入して業務を効率化しよう

今回は、銀行が電子契約サービスを導入するメリットや注意点、導入までのステップについてご紹介しました。多くの個人情報や機密情報を扱う銀行では、これまで窓口において本人確認を行い、紙の契約書に署名・押印するのが一般的でした。

しかし、電子契約は、契約の安全性や法的効力を保ちつつ、非対面での契約が可能になるなど、利用者と銀行側の双方に多くのメリットをもたらしてくれます。ぜひ電子契約サービスを導入し、業務の効率化とサービス向上の両立を目指してみてはいかがでしょうか。

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