電子契約の海外での普及率は?外国企業との電子契約における注意点も解説

最終更新日時:2022/12/20

電子契約システム

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「外国企業との取引も電子契約が利用できる?」と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、海外での電子契約の普及率や電子契約を使う際の注意点を解説します。海外の企業との取引が頻繁に発生する企業におすすめの電子契約サービスもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

海外での電子契約の普及率は?

新型コロナウイルスによるパンデミックの影響もあり、ここ数年で電子契約(インターネットを介した契約取引)は、世界的に普及率が増大しています。

アドビ株式会社が、2020年12月に実施した「電子署名の利用に関する意識調査」によると、過去2年間における各国の電子契約の普及率は以下のようになっています。

電子契約の普及率
フランス67%
アメリカ66%
シンガポール59%
ドイツ36%

また、電子契約の増加率の数値は以下です。

電子契約の普及率
グローバル60.1%
アメリカ57.9%
ヨーロッパ57.4%
日本を除くアジア太平洋(APAC)75.6%

これらの数字からも世界各国で電子契約が普及していることがわかります。ちなみに、現在、電子契約で最も大きな市場を持っているとされているのがアメリカです。

その市場規模は2030年までに約2608億円まで上昇すると予想されており、さらに、アメリカに次いで市場規模が大きいとされるドイツは、2030年までに約952億円まで上昇すると予想されています。

[参考:アドビ株式会社「電子サイン使用に関するグローバル調査」]

[参考:P&S Intelligence 社「E-Signature Market Research Report」]

2020年時点における日本での普及率は?

海外での電子契約の普及率に比べて、日本の普及率はどの程度かという点は気になるところです。

既出のアドビ株式会社の調査によれば、「過去2年間に電子署名を使用した企業」は、日本の場合「18%」と他国と比べて低い割合に留まっています。他の国々と比較すると1/5程度の数値となっており、それほど普及が進んでいないことが明らかになっています。

しかし、一方の日本での電子契約の増加率に目を向けてみると、こちらは51.6%となっており、増加率においては、そのほかの国々と比べても遜色ありません。

この点から、日本の電子署名の状況としては、普及においてまだ発展途上にあるものの、確実に増加傾向にあり、普及率が半数を超えるのも時間の問題として考えられることがお分かりいただけるかと思います。

さらに、JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が行った「企業IT利活用動向調査2020」では、電子契約の導入について、2020年の時点で「導入済み」もしくは、「検討中」と答えた企業の合計は7割を超えており、国内企業の半数以上が電子契約に前向きな姿勢をみせていることも分かっています。

電子契約の仕組みと導入方法とは?サービスを選ぶポイントも簡単に解説

外国企業との取引を電子契約で行うことは可能

既に説明したように、現在日本を含め世界各国で、電子署名や電子契約を使用した取引が広がりつつあります。そのため、電子契約の法的効力が認められている国における企業との取引では、電子契約を利用することが可能であると考えられるでしょう。

その反面、電子契約についての法整備がなされていない国の企業との取引では、従来通りの契約方法を優先すべきとの見方もできるため、その点には、注意しなければなりません。

これまで、日本企業が海外企業と契約を結ぶときは、どちらか一方が、相手国へと出向き対面して契約書類にサインするか、契約書類を郵送でやり取りする必要がありました。

しかし、いずれの方法においても、時間とコストがかかるというデメリットがあります。その点、電子契約を利用すれば、対面や文書のやり取りをすることなく契約を締結できるようになるため、スムーズに契約ができるだけでなく、コストや時間、煩雑な事務作業を大幅にカットすることが可能です。

ただし、前述のとおり、電子契約ならではの注意点があるのも事実です。この点について、次項で詳しく解説していきます。

電子契約に印鑑は本当に不要?書面契約との違いや電子印鑑のリスクを解説

外国企業との電子契約における注意点

外国企業との間で電子契約を行う場合、国によって言語の違いや法律の違いによりトラブルが発生する場合もあります。そのため、国内企業との取引に比べ、異なる言語における言葉のニュアンスや十分なコミュニケーションによる意思の疎通に、より気を配る必要があるでしょう。

また、外国企業との電子契約で課題となるのは、言語や法律だけではありません。その国独自の商習慣、社会常識、国民性なども関係してくるため、日本での常識が外国企業との取引では通用しないケースも少なくありません。

外国企業との取引というのは基本的にトラブルが起こりやすい、また問題が深刻化する恐れがあるということを前もって把握することが大切です。

ここからは、外国企業と電子契約を行う際にどのような問題が起こりやすいか解説します。

(1)国によって法的有効性が異なる

外国企業と電子契約をする場合、まず確認すべきなのはその国における電子契約の法的な有効性についてです。国によっては、電子契約の法的効力を原則認めていないこともあります

また、電子契約が認められている国であっても、電子契約が有効とみなされる条件(規定)はそれぞれの国で異なるので注意しなければなりません。

さらに、外国企業との電子契約では、どちらの国の法律を準拠とするかが重要となります。

この、「どちらの国の法律を準拠とするか」を事前に明確にしておかないと、のちに契約の内容や条件の面でトラブルが発生した際には、不利な状況に追い込まれてしまう可能性があるので注意しましょう。

(2)ほとんど場合英文で契約が結ばれる

外国企業と契約を結ぶ場合は、双方の国の言語で契約書を作成するか、もしくは、英文で契約書を作成するかのいずれかの方法となりますが、多くの場合は、英文で作成されるのが一般的です。そしてこれは、電子契約の場合でも同様となります。

契約書には、法的な専門用語や言い回しも多数記載されることになりますが、それらの文章もすべて英文です。そのため、たとえ英語が堪能な社員が在籍していたとしても、契約内容の英文に関しては、必ず専門家のリーガルチェックを受けることをおすすめします

さらには、前項で説明したように、電子契約における法的有効性の要件などは各国で異なる可能性もあるため、毎回同じ条件・要件が適用されるとは限らないということに留意しておく必要があります。

このような問題を解消するためには、グローバルな取引に慣れた弁護士のサポートを受けるのが現実的かつ最善の方法と言えるでしょう。英文の契約書に精通している弁護士であれば、法律英語を正確に翻訳し、自社にとって不利な状況になることがないような契約書作成のサポートを行ってくれます。

電子契約できない契約書とできる契約書の違い|できない理由と電子化の秘訣

外国企業との電子契約を行う際に意識すべきポイント

現在、電子契約の普及は世界で広がりつつあり、今後は電子契約がグローバルスタンダードな契約方法として定着する可能性は非常に高いです。外国企業との電子契約は、法的な問題や英文表記などの面をクリアできれば、多くの面でメリットを享受できるでしょう。

ここでは、外国企業との電子契約を成功させるうえで、しっかりと意識しておくべきポイントについて解説します。

(1)契約の前提部分もきちんと明文化&文書化する

日本の商習慣を前提とし、かつ日本の法律が準拠となる国内企業同士の電子契約においては、契約の前提部分が意識されることはあまりありません。しかし、グローバルな商取引の場合は、契約の前提部分について明確にしておくことが重要です。

外国企業と電子契約を進める前の前提条件としては、主に以下の点を明確にし、理解した上で契約を進めなければなりません。

  • どちらの国の法律を準拠とするか
  • 裁判や紛争に発展した場合はどこ(どちらの国)で裁判を行うか
  • 相手側の契約担当者は、決裁権を有しているか

こうした点が曖昧なまま契約を進めてしまうと、契約後に大きな問題が発生したり、法的紛争につながってしまったりする恐れがあります。

既にご説明したように、このような問題を回避するためには、専門家である弁護士などにサポートを依頼したほうが安心です。

(2)自国の法令や常識が当たり前であると考えない

国内で日本企業を相手に取引をするときは、日本特有の商習慣や習わし、社会常識といった点について、わざわざ契約書に記載することなく暗黙の了解として進められることも珍しくありません。

ひいては、こうした「明文化されていない常識」が、契約の内容を補完しているといってもいいでしょう。

外国企業との契約で注意すべきなのは、このような常識が通用するとは限らないということです。つまり、日本国内のビジネスの常識は、海外において万能ではないことを理解しておかなければなりません

商習慣や社会常識が異なれば、自ずと契約書において明確にしておくべき点も変わってきます。そのため、外国企業との取引では、国ごとに柔軟に対応を変える必要があるのです。

その国特有の習わしや常識をできるだけ言語化し、相手企業との認識のずれやギャップを埋める努力が、契約書だけでなく、コミュニケーションにおいても求められることになります。

(3)海外取引に強い電子契約サービスを使う

電子契約を行う方法としては、主に「自社で文章作成ソフトを使って作成する方法」と「電子契約サービスを利用する方法」の2つがあります。

前者の場合、契約書、電子署名、タイムスタンプ、電子証明書などをすべて、個別に手配しなければならず、非常に手間と労力がかかります。そのため、電子契約においては、電子契約サービスの利用が一般的です。

電子契約サービスは、国内企業が提供しているものもあれば、外資系企業が提供するものもあります。外国企業と電子契約をする場合は、できれば海外取引に強い電子契約サービスを選んだほうがよいでしょう

海外取引に強いサービスの特徴としては、以下の点が挙げられます。

  • 多言語に対応している
  • 世界でのシェア率が高い
  • 多くの海外企業からの信頼性が高い

電子契約サービスといっても種類はさまざまです。次項では、外国企業と電子契約を進める際におすすめの電子契約サービスをご紹介します。

電子契約における立会人型と当事者型の違いは?各メリットや選ぶ基準を解説

海外取引に強いおすすめ電子契約サービス2選

電子契約サービスは、国内のみならず海外のサービスを含めると、非常に数多くの種類があります。やはり外国企業と電子契約をしたい場合は、多くの言語に対応した外資系の電子契約サービスの利用が好ましいでしょう。ただし、同じ外資系の電子契約サービスであっても、質の高さや信頼度はそれぞれ異なります。

世界的にシェアが高い電子契約サービスであれば、セキュリティや信頼性という点でみても問題なく使用することが可能です。世界的にみてあまり知られていないサービス、利用している企業が少ないサービスの場合、セキュリティなどの面で信頼性は低くなるので注意しましょう。

「外国企業との取引で、セキュリティなどの不安なく電子契約を行いたい」「海外取引に強い電子契約サービスを利用したい」という人のために、おすすめの電子契約サービスをご紹介します。

(1)DocuSign

現在、世界の電子契約サービスのなかで最も高いシェア率を誇っているのが、「DocuSign(ドキュサイン)」です。2003年からサービスが開始されているDocuSignは、世界180カ国以上、約100万社の会社が利用し、総ユーザー数は10億人以上といわれています。

DocuSignの大きな強みは、多言語に対応していること。日本語を含め、44言語で署名することができます(正確には受信側が44言語、送信側が14言語)。

DocuSignは世界の大手企業から、中小企業まで幅広い業種の企業が利用しており、「海外取引で電子契約サービスを導入するなら、まずはDocuSign」という声が非常に多いのも特徴です。

認知度の高さから、DocuSignは、まずは電子契約サービスを試してみたいという企業におすすめできるサービスです。

公式サイトはこちら

(2)Acrobat Sign(旧Adobe Sign)

「AcrobatSign(アクロバットサイン)」は、アメリカのAdobe(アドビ)社が提供する電子契約サービスです。

2011年からサービスが開始され、現在では年間80億回近い取引が行われている世界的規模のサービスといえるでしょう。DocuSignと同様に多言語に対応しており、受信側・送信側の両方で36言語が利用できます。

Acrobat Signの長所は、同じAdobe社が提供する製品・ソフトと相性がよい点です。また、世界水準のセキュリティを維持しているため、安心できる環境で取引が行える、信頼性の高さもメリットといえます。

加えて、Acrobat SignはMicrosoft、Salesforce、Workdayといった他社サービスとも容易に連携・統合できるという点も大きな特徴です。この点から見ると、知名度の高さとサービスの汎用性を電子契約システムに求める企業に向いているでしょう。

公式サイトはこちら

海外での電子契約の重要性は日本以上に高い

すでにグローバルスタンダードとなりつつある電子契約ですが、この流れはさらに加速していく可能性が高いといえます。

日本では、昔ながらの「ハンコ文化」が根付いていることもあり、電子署名に懐疑的であることから、海外に比べると電子契約の普及が遅れている状況にあります。しかし、電子契約を導入する国内企業は、今後、確実に増加していくでしょう。

統計データからも分かるように、電子契約は諸外国において、日本以上の急速な普及を見せています。今後海外取引を始めたい、または事業のグローバル展開を考えている場合は、電子契約サービスを導入し、いち早く電子契約の正しい運用について理解を深めておく必要があるでしょう。

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