経費精算とは?前提の基本知識からやり方・最新の効率化方法まで解説
経費精算にミスが多く、確認・承認作業が遅滞しがちだと、業務効率化が妨げられてしまいます。多くの企業が経費精算について問題を抱えています。今回は企業が抱える経費精算の課題を踏まえて、経費精算とは何か、前提知識ややり方、最新の効率化方法について紹介します。
目次
基本知識から解説!経費精算とは?
経費精算は、従業員が負担した費用を精算することです。しかし、どこからどこまでが経費になり、精算に何が必要かなど、わかりにくいところもあります。
まずは、経費精算の基礎知識について確認していきましょう。
(1)事業を行う際にかかった金銭を払い戻すこと
経費精算とは、業務において従業員が負担した金銭を、会社が払い戻すことです。たとえば営業部の社員が、得意先を訪問した際に発生した交通費や出張宿泊費などを会社に申請します。
申請後、経理部などが申請に誤りがないか確認し、承認された金額を会社の経費として精算するのです。従業員へは、振込や手渡しで払い戻しされます。
(2)経費精算書は3種類
従業員が経費精算を申請する際には、「経費精算書」を作成し、領収書などを添付して提出するのが一般的です。経費精算書は主に3種類あり、目的によって使い分けます。
#1:仮払経費申請書
仮払いとは、正確な金額が決まっていない段階で、事前に概算として出した経費の金額を従業員に渡しておくことです。
主に出張にともなう宿泊費や交通費など、費用が高額になることが見込まれる場合に利用します。立替による従業員の金銭的負担を軽減することが目的です。
#2:仮払経費精算書
仮払いした経費の、余剰分や不足分を精算するための書類です。宿泊したホテルや飛行機代など、実際にかかった費用の領収書などと一緒に提出します。
#3:出張旅費精算書
出張の際や社員旅行などで発生した費用を精算するための書類です。発生費用の項目や目的、金額などを記載したうえで、領収書と共に提出します。
会社ごとに規定が異なりますが、上司へ出張旅費精算書を提出し、承認を得たのちに経理部門で処理される流れが一般的です。
(3)経費と費用の違い
経費と費用の違いを簡単に説明すると、事業のために利用したお金を「費用」といい、その費用のなかに「経費」という項目があるイメージです。
法人税を計算する際に、所得から引いてよい費用のことを「経費」といいます。ただし、費用には経費の対象になるものとならないものがあります。住民税などの税金や、プライベートな会食費、私的利用を目的としたスーツや時計などの購入費用は、経費として認められません。
経費の対象になる費用の科目について
経費の対象となる費用には、どのようなものがあるのでしょうか。仕訳の際に使う勘定科目には、20種類以上もの科目が存在します。
ここでは、利用されることの多い9項目を解説していきます。
(1)交通費
会社までの通勤費や、業務上付き合いのある取引先へ向かう際の移動にかかる電車やバス、タクシーなどの交通費が対象です。
(2)出張費
出張の際の新幹線や飛行機などの移動費用、ホテルの宿泊代などが対象です。
(3)消耗品費
文房具や印刷機、ノートパソコンなど、事業に必要な物品の購入費です。ただし、消耗品費に該当するものは、原則として10万円未満のものか、使用可能期間が1年未満のものに限られます。
(4)接待費
顧客と飲食をともなう会合や、取引先を接待した際のお茶菓子代、イベントへの招待費などが対象です。接待費は公私混同されやすいことから、税務署から厳しくチェックが入る科目といわれています。
接待費を申請するには、日時や人数、目的が明らかでなくてはなりません。また、それぞれの企業で上限金額や対象費用が設定されていることが多いため、申請の際には注意が必要です。
(5)通信費
インターネットのプロバイダ使用料や電話料金、切手代や郵便料金などが該当します。ただし、自社製品を郵送する際に発生する配送料や梱包費に関しては、「荷造運賃」として会計処理されるのが一般的です。
(6)福利厚生費
給与や賞与以外に会社が従業員へ与えたサービスやサポートを、福利厚生と呼びます。教育訓練費用や健康診断費、忘年会の費用などが福利厚生費です。
福利厚生費には、社会保険料の会社負担分のように法律で定められているものと、企業が独自に定めているものが存在します。
(7)広告宣伝費
新聞やテレビなど各メディアへの広告代や、チラシの作成費用などが対象です。また、名刺や販促物の作成費用も広告宣伝費に含まれます。
(8)水道光熱費
会社経営において使用される水道代、電気代、ガス代などの経費を、水道光熱費と呼びます。
(9)保険料
従業員の厚生年金、健康保険料など、会社で負担する分の保険費用が対象です。
経費精算の基本的なやり方
ここからは、経費精算の基本的なやり方を順に確認していきましょう。
(1)従業員による立替
まず、交通費や接待飲食費、消耗品の購入費用など、業務中に発生した経費を従業員が立て替えます。
(2)領収書の受領
費用を立て替える場合、従業員は支払った証明として領収書を受け取る必要があります。領収書を受け取る際は、日付、支払先の店名、金額、購入した品名といった内容が書いてあるか確認しましょう。
(3)経費精算書の作成
精算を申請するために、経費精算書を作成します。経費精算書の提出期限は、経費が発生した当月中が一般的です。
金額ミスや記載情報の不足があると経費として承認されないため、支払い日時、金額、品名、購入目的などを入念にチェックしましょう。
(4)経理担当者によるチェック・承認
経費精算書の用意ができたら、従業員は領収書を添付して直属の上司へ提出します。上司は内容を確認し、問題がなければ書類に押印します。
部署やチーム別に取りまとめ、期日までに経理部へ提出する流れが一般的です。経理担当が記入ミスなどの不備がないかチェックし、問題がなければ経費として承認されます。
(5)経費の払い戻し
経費として承認されたあとは、会社が規定している期日や支払い方法で経費が払い戻されます。経理部では経費として支払った金額を会計ソフトなどに入力し、領収書はファイルなどに保管します。
経費精算で企業が抱える課題
ミスやトラブルが起こりやすい経費精算は、多くの企業が抱える課題のひとつです。ここでは、経費精算に関する主な課題について解説していきます。
(1)申請・承認における人的ミス
申請書に記載した金額や日付が間違っているケースも、珍しくありません。経費精算書に不備があれば従業員へ差し戻されるため、経理部門の負担が大きくなります。
また、経理部門での承認時においてもミスが発生することがあります。経理部門のミスは、誤った金額の払い戻しや経費の計上ミスに直結するため、企業として対策を講じておきたい課題のひとつです。
(2)承認作業の遅滞
経費精算では、月末を締め切りに設定しているケースが一般的です。その場合、月末に申請書がまとめて経理部に提出されます。一度に大量の申請書を処理する必要があることから、経理部門への負担となり、場合によっては承認作業が遅れることもあるでしょう。
承認作業が遅滞すると、その月に発生した経費が正確に把握できないため、経営にも影響が出る可能性があります。また、立て替えた費用が精算されないことから、従業員の不満に繋がるリスクも懸念されます。
(3)申請書の紛失等
経費精算は領収書と経費精算書といったように、紙ベースで手続きするケースが一般的です。そのため、申請に必要な書類を紛失してしまうケースも少なくありません。
領収書やレシートは再発行が原則できないため、支払いを証明する別の書類を用意する必要があります。
(4)不正が起こるリスクがある
不正の例としては、以下のようなものがあります。
- 出張費として支給された新幹線や飛行機のチケットを払い戻し、夜行バスなど安い手段で移動する
- 領収書に数字を書き足して水増し申請する
領収書が発生しないこともある交通費は、特に経費の水増しが多い科目です。企業側としては、指定したルートと手段で移動しているかチェックする必要があります。このほかにもカラ出張など、実際にやっていない出張や経費の申請には注意が必要です。
目的別!経費精算を効率化する方法
経費精算の業務効率化は、会社のコスト削減に大きく関わります。ここでは、効率化の方法を目的別に確認していきましょう。
【申請・チェックを効率化したい】経費精算システムを導入する
業務効率化でまず検討したいのが、経費精算の自動化です。システムを導入することで、申請された経費精算をチェックする時間や手間の削減が期待できます。
特に交通系ICカードから直接履歴を読み込めたり、クレジットカードと連携できたりする機能は、正確なデータ抽出に役立つため、記入ミスの発生を軽減可能です。
【承認作業を早くしたい】ワークフローを自動化する
経費精算システムは、ワークフローの自動化を実現します。経費精算ワークフローシステムは、経費精算の申請・承認・確認といった各フェーズにおける手間や時間のロスを解消するのに最適です。
スマートフォンなどのデバイスからも申請できるため、申請忘れを防ぐ効果も期待できます。また、督促機能を活用すれば、管理者の承認漏れや遅延の防止が可能です。
会計システムと連携すれば領収書などの書類をデータで保存できるため、紛失リスクの軽減が期待できるでしょう。
【入力ミスを減らしたい】入力補助機能を活用する
金額や日付など、経費精算に必要な情報を入力する際のミスを防ぐだけで、大きな効率化が図れます。修正作業の発生は、申請者と承認者の双方の負担になるためです。
スマートフォンのカメラで領収書やレシートを読み込むことで、情報が自動入力される機能を搭載したサービスもあります。こうした経費情報の入力をサポートする機能を活用することで、経費精算の効率化が実現可能です。
【経理担当の負担を減らしたい】法人カードを渡す
経費精算に法人カードを導入することで、経理担当者の負担を減らせます。法人カードを利用したものに関しては、カード会社から毎月発行される「カード利用明細書」で確認可能です。誰がいつ何のために、どこでいくら利用したのかを容易に把握できます。
会計ソフトと連携することでカードの明細内容を取り込めるので、経理部の確認業務や入力業務の効率化が期待できるでしょう。
【交通費精算業務を簡単にしたい】ICカードを利用する
最近では、電車やバスなどの公共交通機関でICカードを利用するのが一般的です。ICカードの履歴を読み取れるシステムを利用することで、交通費の精算業務が簡単になります。
会社の端末に従業員のICカード情報を記録しておけば、ICカードをタッチするだけで、金額や利用した日時などの情報を読み取り可能です。業務の効率化だけでなく、不正防止にも役立ちます。
【不正を防止したい】経費精算のルールを明確化する
経費精算での不正を防止するには、経費精算ルールの明確化が大切です。曖昧なルールで手続きするのが習慣化してしまうと、チェックがいい加減になり、不正を見落す可能性が高まります。
架空の経費申請を防ぐために、レシートや領収書を必ず添付しないと不可とするなど、ルールを厳格化することも大事なポイントです。
経費精算システムの機能や導入メリット
経費精算システムの導入には、多くのメリットがあります。ここからは、経費精算システムの機能や導入メリットをチェックしていきましょう。
経費の申請・承認を電子化して効率化
経費精算システムを導入すれば、これまでアナログでしていた申請・承認作業がすべてデータ上で行えます。
経費精算システムには、領収書の自動読み取り、交通系ICカードの履歴反映といった便利な機能があります。手続きの手間が減り、業務効率化が可能になるのです。
会計ソフト・給与計算システムとの連携も便利
経費精算で処理した経費は、経理担当者が仕訳し、会計ソフトに入力します。会計ソフトと連携が可能な経費精算システムであれば、自動的にデータが連携されるため、業務効率化や入力ミスの防止が期待できるでしょう。
給与の振込時に経費を払い戻している場合は、給与計算システムとの連携が便利です。個別に手続きする必要がないため、業務が効率化でき、支払い漏れの防止にもなります。
導入による効果やメリットは?
経費精算システムを導入する効果やメリットには、次のようなものがあります。
- 経費精算の確認業務など、経理担当の負担を軽減できる
- 申請作業を簡素化し、本来の業務に集中できる
- 承認待ちなどによる時間のロスを削減できる
- 不正な申請を防止できる
- データを一元管理できるため、紛失リスクが軽減できる
システム導入には費用が発生しますが、業務効率化による生産性の向上や人件費の削減など、長期的に見ればコストカットに繋がる可能性があります。
機能をカスタマイズできるものや、スマホやタブレットで利用できるものなど、さまざまなシステムがあるので、比較検討して自社に合ったサービスを見つけていきましょう。
最適な方法で経費精算を効率化することが重要
経費精算は、企業活動に欠かせない業務のひとつです。しかし、人為的ミスや不正のリスクなど、課題も多く見受けられます。また、紙ベースで対応している企業においては、経理部門への負担が懸念されます。
経費精算の課題の解決・業務効率化のためには、経費精算システムの導入がおすすめです。申請から承認までの作業がスムーズに行えるだけでなく、ミスや不正の防止に繋がります。自社に合ったシステムを取り入れて、経費精算の効率化を実現していきましょう。
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