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従業員の経費精算で不正が発覚!会社が取るべき対応や従業員の処分とは?

2022/03/03 2024/04/10

経費精算システム

経費精算での不正

経費精算において不正な請求をしてしまうと、詐欺罪や業務上横領罪に問われる可能性があります。そのため、いざ発覚した際には、会社としてどう対応すべきなのかを決めておく必要があるでしょう。この記事では、従業員の経費精算で不正が発覚した際に企業が取るべき対応や従業員の処分、不正防止のための対策を解説します。

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経費に関する不正とは

従業員の経費精算に関する不正とは、例えば、虚偽の住所申告による通勤手当の受給、交通費や接待交際費などの水増し、架空の領収書を作成するなどをして、経費を受け取る行為があげられます。

経費に関する不正には、従業員が利益を得るために故意に行うケースもあれば、勘違いや単純なミスで起こるケースもあります。いずれにせよ、経費申請は従業員の自己申告によって行うことが多いため、会社が経費精算のルールをしっかりと決めていても、経費に関する不正が多く起こってしまうのが現実です。

経費精算の不正が発覚した時に会社が取るべき対応

従業員による経費精算の不正が発覚したときには、会社として適切な対応が必要です。ここでは、会社が取るべき対応の流れをご紹介します。

(1)不正が事実かどうか調査する

従業員による不正の可能性を見つけたときには、事実関係の調査が必要です。他の従業員からの報告や目撃情報だけでは、証拠が十分とは言えず、不正の事実を立証できません。

例えば、実際には行っていない出張の経費を不正に申請して着服する「カラ出張」の疑いがある場合は、下記の方法で調査を行います。

  • 領収書の金額、内容の確認
  • 出張時に従業員が訪れたはずの関係先への確認
  • ホテルの宿泊履歴の確認
  • 交通機関のキャンセル履歴の調査等

「カラ出張」が事実であれば、上記の調査により不正を立証する客観的な証拠が集められるはずです。

(2)証拠を揃えて本人に事実を確認する​​

客観的な証拠が用意できたら、不正をした従業員本人に事実を確認します。証拠が揃っていても経費の不正は、本人の証言なしでは事実関係の把握が難しいからです。

本人への確認内容は、事情聴取書として詳しくまとめ、本人による署名をもらうようにしましょう。はじめは不正を認めていても、主張をひるがえしたり、証拠を隠滅したりするリスクがあるからです。

(3)就業規則に則って処分を行う

客観的な証拠を用意して本人への事実確認ができたら、就業規則に則って不正をした従業員の処分を行います。

不正が故意ではなくミスによるものであれば、始末書を提出させる譴責(けんせき)などの軽い処分で済ませる場合も多いです。一方、故意に行った場合には、不正の金額や悪質性に応じて重い処分を検討する必要があります。

(4)悪質な場合は刑事告訴や損害賠償請求を行うこともある

悪質な経費精算の不正に対しては、被害届や告訴状の提出、損害賠償の請求をするかを検討します。損害賠償で請求できるのは、着服した金額だけではありません。不正により会社の社会的イメージが悪化し、それにより生じた損害に対する賠償なども請求できることがあります。

また、被害届の提出や刑事告訴によって、従業員に刑事罰が科せられる可能性があることも理解しておきましょう。悪質性の度合いや被害額に応じて、会社としてどのように対処するかの検討が必要です。

経費精算の不正が発覚した際の従業員の社内での処分

次に、経費精算の不正をした従業員に対する社内での処分について解説します。

(1)ミスで経費を不正に受け取った場合: 始末書の提出

経費精算に関するルールの理解不足や単純なミスで、悪意なく経費を不正に受け取ってしまった従業員に対しては、文書や口頭で厳重に注意を行う戒告や、始末書を提出させる譴責などの処分を下すことがあります。

ただし、従業員が責任ある立場の場合やミスが繰り返される場合、ミスであっても看過できない内容であるときは、さらに厳しい減給や降格などの懲戒処分を検討します。その場合、社会通念を反映して、重すぎる処分にならないよう注意が必要です。

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(2)経費を故意で不正に受け取った場合: 懲戒解雇などの処分

悪意を持って、故意に経費を不正に受け取った場合、懲戒解雇や諭旨解雇などの重い処分の検討も必要です。懲戒解雇は、就業規則などに定められている懲戒処分理由に基づき、退職金などを支給せずに会社から一方的に解雇を言い渡すことです。

諭旨解雇では、懲戒解雇に相当する理由があっても、退職金などの支給ができるように会社の温情で自主退職を促すことですが、退職しない場合には解雇とするのが通常です。

悪質な経費精算の不正の場合は起訴・逮捕の可能性もある?

従業員が経費精算において悪質な不正を働いた場合、どのような罪や責任に問えるのでしょうか。ここでは、経費精算の不正をした従業員に科せられる可能性がある刑事罰などについてお伝えしていきます。

(1)刑事罰

従業員が経費精算において悪質な不正を働いた場合、以下の刑事罰に処される可能性があります。

#1: 業務上横領罪

顧客との会食費用として会社から預かっていた経費を、従業員が故意に個人的な飲食費の支払いに使用した場合など、会社の資産を、個人が無断で使ってしまう行為は、刑法第253条の業務上横領の罪に問われる可能性があります。

刑法第253条には、

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する

(引用:eーGov法令検索)

と規定があり、上記のケースでは、会社から預かっていた顧客用の会食費用が「業務上自己の占有する他人の物」であり、「個人的な飲食費の支払い」が横領行為にあたります。

#2: 詐欺罪

実際には発生していない交通費や宿泊費などの経費を、負担したように見せかけて会社から受け取ることは、刑法第246条の詐欺の罪に問われる可能性があります。

刑法第246条では、

人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する

と規定されています。また2項には、

前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする

(引用:eーGov法令検索)

と規定があり、不正をした本人が利益を得た場合だけでなく、家族や他人に対し会社の経費で利益を与えた場合も罪が科せられます。配偶者のホテル宿泊費用を、出張経費として請求するなどが、この典型的な例です。

#3: 私文書偽造罪

実際よりも多く経費を負担したと見せかけるために、領収書を偽造したり、書き換えたりした場合、刑法第159条の私文書偽造等の罪に問われる可能性があります。取引相手の押印や署名がある領収書の偽造や書き換えは、3ヶ月以上5年以下の懲役に処されることがあります。

(2)民事賠償責任

不正によって会社に金銭的な損害を与えた場合、従業員は民事上の賠償責任を負うのが一般的であり、会社は損害賠償請求により、従業員の責任を追及できます。話し合いでは折り合いがつかず、賠償を請求しても支払われない場合は、民事賠償請求訴訟も可能です。

会社の申し立てが認められれば、強制的に財産を差し押さえる強制執行ができます。ただし、事前に従業員の財産を調査しておいた方が良いでしょう。差し押さえる財産が十分になければ、結果的に賠償を受けられず、訴訟費用などが無駄になる可能性があるからです。

(3)内容証明と弁済の要求

使い込まれた経費の弁済を求める場合、従業員の家族や身元保証人などがいれば、なるべく交渉のテーブルについてもらいましょう。分担して支払いができれば、本人だけに求める場合よりも弁済の可能性が高くなります。

弁済を求める際には、内容証明郵便を使うのもひとつの方法です。文書を送付したことが証拠として残るので、「支払わなければならない」という意識をもたせられます。

(4)弁済が出来ない場合は従業員が逮捕されることも

業務上横領や詐欺、私文書偽造・変造の罪に当たる行為を従業員がしていた場合、会社として被害届の提出や刑事告訴をするかどうかを判断する必要があります。

会社が被害届の提出や刑事告訴をして警察による捜査が行われると、従業員が逮捕・拘留・起訴されたり、刑事罰を受けたりする可能性があります。とはいえ、刑事告訴となれば、時間も費用も要することになります。

会社に顧問弁護士などがいれば、どのような場合に被害届の提出や刑事告訴をするか、事前に会社としての判断基準を相談しておくのもよいでしょう。

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経費精算の不正を防止するための対策

経費精算の不正が発覚した場合には、会社として適切な対応をしなくてはなりません。しかし、それ以上に重要なことは、不正を未然に防ぐことです。ここからは、経費精算の不正を防止する有効な対策を紹介します。

(1)経費精算の不正は犯罪であると明示する

経費精算の不正は「つい魔が差した」「少額だから問題ないと思った」など、従業員が犯罪行為である意識を持たずに行っていることが多いです。そのため、「経費精算の不正は犯罪であり、逮捕される可能性がある」と明示しておくことが不正防止の対策になります。

方法としては、従業員の目につきやすい場所に紙を貼って掲示する、定期的に文書やメールで周知するなどがおすすめです。また、どんな行為が経費精算の不正にあたるのか、それによりどんな罪に問われるのかを明らかにしておくと、より効果が得られやすいでしょう。

(2)不正発覚の処分を社内規則に記載する

経費精算の不正が発覚した際に、会社としてどのような処分を下すかを社内規則に記載しておくことも効果的な対策です。

懲戒解雇や降格、減給など、進退に関わる処分や給与に影響のある処分の周知は、有効な注意喚起になり、従業員が不正を思い止まる要因になるでしょう。

(3)ミスや不正が起こりづらい経費精算フローを立てる

経費精算に対する勘違いや単純なミスによる不正を防ぐには、従業員が理解しやすいルールやフローを立てる必要があります。

経費精算のルールや申請手順を明確に、わかりやすいものにすれば、勘違いや単純ミスの削減が可能です。また、精算前に上長の承認を必要とするフローを構築するなど、チェック体制を厳重にすることでも、不正を未然に見つけられるようになります。

(4)不正ができない経費精算システムを導入する

ルールや手順の整備だけでは不安が残るのであれば、経費精算システムの導入がおすすめです。

交通費の精算に関しては、経路検索機能や交通系ICカードとの連携による自動計算が可能なシステムを選ぶことで、遠回りルートや定期区間を控除していない交通費の水増しといった不正が防げます。

また、なかには交通手段の予約や宿泊予約などの出張手配と連携できる経費精算システムもあります。このようなシステムを利用することで、「カラ出張」の不正も防止できるでしょう。

(5)接待交際費は事前申請が必要に変更する

接待交際費は、事前申請を必要とするルールにするのも不正対策として効果的です。接待の予定が決まった際に、取引先名、人数、場所、予算を明記して申請させるのです。

会社は利用する飲食店や費用が把握できるため、領収書の書き換えや私的な領収書を提出するなどの不正の防止になります。

(6)全社レベルで内部統制の見直しをする

経費精算は主に管理を担当する経理部だけでなく、すべての従業員に関わる問題です。限られた部署だけで不正の対策を練るのではなく、全社レベルで内部統制の見直しをするのも重要になるでしょう。具体的には、次のような方法があります。

  • 不正防止のための対策チームを作る
  • 部署ごとに経費精算のチェック体制を設ける
  • 不正に気づいた人が声を上げられる環境を整備する

全社をあげて取り組むことで、従業員による経費の不正使用や請求に対する「断じて、してはいけないこと」という意識が高まり、経費の不正が起こらない社内の風土や環境が醸成されます。

経費精算の不正が発覚したら厳格に対処を!

経費精算の不正が発覚した際には、会社として厳格に対処しなくてはなりません。そのためには、対応手順を理解しておき、ケースごとの対処や処分を決めておく必要があります。

適切な対処ができなければ、従業員の法令遵守に対する危機意識の低下や不公平感を招き、業務にも支障がでる可能性があります。また、会社が社会的な信用を失うことにもつながりかねません。

経費精算の不正リスクに対しての備えと共に、不正が起こらない社内体制作りを行いましょう。

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