飲食店開業の資金調達方法について|費用の内訳や目安・融資の必要性について
どんな事業でも、始める際にはまとまった資金が必要です。特に飲食店は、さまざまな業種の中でも開業資金が高めとされており、計画的に資金を調達する必要があります。本記事では、飲食店開業における資金調達・融資の必要性を、開業費用の内訳や調達資金の目安、具体的な方法などと併せて解説します。
目次
飲食店における資金調達・融資の必要性
飲食店が資金調達や融資を必要とするタイミングは多岐にわたります。例えば、新店舗を開店する際や、既存の店舗のリノベーションが必要な際、季節に応じたメニュー更新のための原材料費が必要な場合などです。
これらはすべて、売り上げを増やし、顧客満足を高めるための重要な投資です。その一方で、これらの出費は資金繰りを悪化させる可能性もあり、場合によっては経営の失敗につながるリスクも伴います。特に、初期投資の回収が遅れると、資金繰りが厳しくなり、追加の融資が必要となることがあるでしょう。
▷資金調達とは?調達方法や種類、メリット・デメリットをわかりやすく解説
飲食店を開業する際に必要な資金の内訳と目安
飲食店を開業する際には、さまざまな費用が必要です。ここでは、具体的にどんな費用が含まれるのかを詳しく解説します。
初期費用
飲食店を開業する際の初期費用には、店舗の賃貸料、内装・装飾、厨房設備の購入やリース料、初期在庫の購入などが含まれます。これらの費用は立地や店舗の規模、コンセプトによって大きく異なりますが、一般的には500〜600万円程度必要となることが多いようです。
ただし、好立地への出店や高級感のある内装を目指す場合、1000万円以上の初期投資が必要なことも珍しくありません。
運転資金
運転資金とは、日々の経営活動をスムーズに行うために必要な資金のことです。具体的には、原材料の購入や人件費、光熱費など、定期的に発生する経費を指します。
飲食店を開業する際には、開店後売り上げが安定するまでの間、これらの費用を支払えるだけの資金を準備しておかなければなりません。一般的には、開業後数カ月分の運転資金を確保しておくことが推奨されます。
生活資金
飲食店を開業する際には、事業の資金計画と並行して、個人の生活資金もしっかりと確保しておくことが重要です。生活資金を事前に確保しておく理由は、新しいビジネスが軌道に乗るまでの間、個人の生活費に困らないようにするためです。
具体的には、飲食店の売り上げが安定するまで、家賃や食費、光熱費といった個人的な支出をカバーするための資金が必要となります。開業時には、少なくとも半年から一年分の生活費を確保しておくことが望ましいでしょう。
飲食店を開業する際の資金調達の方法
飲食店を開業する際には、さまざまな資金調達の方法があります。ここでは具体的な方法と、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
金融機関の融資を受ける
飲食店を開業する際は、金融機関からの融資を受けることが一般的です。主な借入先としては、日本政策金融公庫や民間銀行があります。これらの機関は、開業資金を提供するためのさまざまなローンプログラムを用意しているのが特徴です。
また、地方自治体による制度融資や、信用保証協会による保証付融資も利用可能です。これらの融資は通常よりも低い利率で利用できることが多く、開業初期の負担を軽減するのに役立つでしょう。
金融機関の融資を受けるメリット
金融機関の融資の中でも、日本政策金融公庫からの融資は、新規事業者や小規模事業者にとって特に有利な条件を提供しています。
具体的には、比較的低い利率での融資が可能であり、返済期間も長く設定されているため、開業初期の財務負担を軽減できる点です。事業計画が承認されれば、安定した資金調達が見込めるため、事業を着実に成長させるための基盤を固めることができるでしょう。
金融機関の融資を受けるデメリット
金融機関の中でも日本政策金融公庫の融資においては、厳格な審査があり、事業計画の具体性や信頼性が高くなければ承認されない点がデメリットでしょう。
また、融資を受けることで借り入れが発生し、将来的に返済義務が生じるため、経営不振に陥った場合には返済が大きな負担となることもあります。さらに、返済計画に沿った定期的な返済を行う必要があるため、キャッシュフロー管理もしっかりと行わなければなりません。
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助成金・補助金を利用する
飲食店を開業する際の資金調達方法としては、国や地方公共団体からの助成金や補助金の活用も考えられます。これらの資金は、特定の条件を満たす事業者に対して、開業費用の一部を支援する目的で提供されます。
例えば、地域活性化や雇用創出を目的とした助成金であれば、条件を満たして申請することで、人件費や設備投資の一部が補助されることがあります。また、新しい技術やサービスを導入する際の補助金もあり、イノベーティブな飲食店の開業が支援されることもあるのです。
助成金・補助金を利用するメリット
助成金や補助金を利用する最大のメリットは、返済の必要がないことです。これにより、金融機関の融資と比較して財務負担を大幅に軽減することができます。
また、助成金や補助金は、特定の事業計画や革新的な取り組みを支援することを目的としているため、事業の質を向上させるための資金として活用することも可能です。事業の社会的信頼性を高め、さらなる支援や投資のチャンスを引き寄せる効果も期待できるでしょう。
助成金・補助金を利用するデメリット
助成金や補助金を利用するデメリットとしては、申請の手続きが複雑で時間がかかることが挙げられます。具体的な要件を満たす必要があるため、多くの書類を準備し、詳細な事業計画を提出する必要があります。
また、承認されるまでに時間がかかることが多く、基本的には事後申請のため、一度はお金を立て替えなければなりません。さらに、助成金や補助金は目的が限定されており、使用できる範囲が制限されているため、事業運営の柔軟性が制約されることもあります。
クラウドファンディングを利用する
クラウドファンディングは、インターネットを通して多くの人から小額の資金を集める方法です。このプラットフォームを利用することで、飲食店の開業資金を調達することができます。
具体的には、プロジェクトのページを作成し、ビジネスアイディアや目標金額、リターン(支援者へのお礼)を明記します。ここでは、プロジェクトに共感してもらうためのアピールが重要です。
この方法は、資金の調達だけでなく、将来の顧客や自社製品のファンを作ることにもつながるため、事業の初期段階でのマーケティングとしても有効です。
クラウドファンディングを利用するメリット
クラウドファンディングを利用する最大のメリットは、集めた資金の返済の義務がないことです。この方法で資金を集める場合、支援者に対する見返りとして、プロジェクトに関連した商品やサービスを提供します。
クラウドファンディングでは広範なネットワークを通じて多くの人々にアプローチできるため、事業への認知度向上も期待できます。さらに、支援者からの資金提供は、市場のニーズや期待を直接反映したものであるため、市場での商品やサービスの立ち位置を早期に把握できることも大きなメリットです。
クラウドファンディングを利用するデメリット
クラウドファンディングにはメリットが多く存在しますが、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。まず、目標金額に達しない場合、集まった資金を全額返金しなければいけないタイプのものもあり、資金調達が失敗に終わるリスクがあります。
また、プロジェクトを成功させるためには、魅力的なプレゼンテーションと積極的なマーケティングが必要であり、多くの時間と労力が必要です。さらに、リターンとして提供する商品やサービスの生産と配送が、事業主にとって予想外の負担となることもあるでしょう。
家族・親戚から借りる
飲食店を開業する際は、家族や親戚から資金を借り入れることも一つの選択肢です。この方法は、金融機関からの融資を受けるよりも手続きが簡単で、低金利あるいは無利息で借りられることが多いため、初期コストを抑えることが可能です。また、返済スケジュールも柔軟に設定できることが多く、創業期の不安定な時期に金銭的なプレッシャーを強く受けずに済みます。
ただし、家族間での借り入れは、返済に関する明確な合意を事前に形成しておくことが重要です。
家族・親戚から借りるメリット
家族や親戚から資金を借り入れる最大のメリットは、その柔軟性にあります。金融機関のような厳しい信用審査や複雑な手続きを経ずに、迅速に資金を調達することができるのが一般的です。また、低金利または無利息で借りられるケースが多く、返済計画も相談によって柔軟に設定できるでしょう。
これらのメリットから、開業初期の金銭的負担を軽減し、事業に必要なリソースをより効率的に投入することができます。
家族・親戚から借りるデメリット
家族や親戚から資金を借り入れる際のデメリットとして最も大きいのは、金銭的な問題が人間関係に影響を及ぼすリスクがあることです。事業がうまくいかない場合、借入金の返済が困難になり、それが家族間の緊張やトラブルの原因になることがあります。
また、借り入れに関する条件が十分に明確にされていないと、あとから誤解や不満が生じる可能性があります。このような事態を避けるためにも、詳細な契約内容を事前に文書で残すことが重要です。
共同経営者を募る
飲食店を開業する際には、共同経営者を募ることも有効な資金調達方法の一つです。共同経営者を迎えることで、必要な資金を複数人で分担し、リスクも共有することが可能となります。
共同経営者として関わる人々がビジネスプランに共感し、事業の成功のために積極的に働きかけてくれるため、単に資金を調達するだけでなく、事業運営においても大きなサポートを受けることができます。
共同経営者を募るメリット
共同経営者を募ることによる資金調達のメリットは多岐にわたります。まず、資金面での負担が軽減されることが大きなメリットです。複数の経営者から資本を集めることで、一人ですべての資金を調達するよりもリスクを分散できます。
さらに、それぞれの共同経営者が持つ異なるスキルセットや専門知識を活かせるため、ビジネス運営の質が向上します。意思決定を共有することで、より多角的な視点から戦略を練ることが可能となり、ビジネスの成功確率を高めることができるでしょう。
共同経営者を募るデメリット
共同経営者を募ることで資金を調達する方法は便利ですが、いくつかのデメリットも存在します。大きな問題の一つが、意思決定の過程で意見の相違が生じる可能性があることです。共同経営者が多いと、各々のビジョンや経営方針が異なるため、合意形成に時間がかかります。経営権を共有することによって個々の経営者の権限も限定されるため、柔軟で迅速な対応が困難になるでしょう。
また、利益の分配に関する問題も発生する可能性があり、こうしたことが関係の悪化につながる場合もあります。
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飲食店を開業する際に必要な資金の算出方法
飲食店を開業する際には、必要な資金を正確に算出することが非常に重要です。ここでは、資金の算出方法を説明します。
資金計画を立てる
資金計画とは、飲食店開業に必要な資金を効率的に管理し、必要なタイミングで必要な金額を確保できるようにする計画のことです。
資金計画を立てる際には、まず開業に必要な総額を把握し、初期投資費用、運転資金、生活資金などのカテゴリーに分けて詳細をリストアップします。次に、これらの費用をいつ、どのように調達するかのスケジュールを作成し、資金の流入と流出を時系列で明確にします。
この資金計画には、将来的な収入予測や支出計画も含まれています。資金の状況を常に把握し、必要に応じて調整を行うことが重要です。
収支計画を立てる
収支計画とは、飲食店開業後の収入と支出を予測し、管理するための詳細な計画のことです。この計画では、具体的に月ごとの売上予測、原材料費、人件費、家賃や光熱費などの固定費と変動費の詳細を計算します。
収支計画のポイントは、現実的な売上目標を設定し、予期せぬ支出に対応できる余裕を持たせることです。予測される総収入から予測される総支出を差し引くことで、純利益を見積もります。
この計画を通じて、先々の財務状況を大まかに把握し、今後直面する可能性のある財務的な課題に対処できるようにします。
返済計画を立てる
返済計画を立てる際には、借り入れた資金の返済スケジュールと利息負担を明確に計算することが重要です。返済計画のポイントとしては、まず月々の返済額が事業のキャッシュフローに与える影響を考慮し、無理のないように設定することが重要です。また、返済期間を現実的に見積もり、可能であれば猶予期間を設けておくと安心でしょう。
余裕を持った返済計画を立てておくことで、開業初期の財務負担を軽減し、事業が軌道に乗るまで余裕を持つことができます。想定よりも多く利益が出始めたら、予定より早めに返済を行うことで、長期的な利息負担軽減も可能です。
売上予測を立てる
売上予測を立てる際には、市場の状況や競合他社の動向、季節性、および想定される客数と平均単価を詳細に分析することが重要です。
飲食業の売上予測を作成するには、過去のデータや類似店舗の実績を参考にするとよいでしょう。これにより、リアルな売り上げの見込みを設定できます。
売上予測を立てる際の注意点としては、過度に楽観的な見積もりを避け、現実的な数字を算出することです。また、非常事態や市場の変動に柔軟に対応できるよう、定期的に予測を見直し、必要に応じて調整することも重要です。
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飲食店の開業に伴う資金調達は計画的に進めよう
飲食店開業を成功させるためには、適切な資金調達が大切です。その際、開業資金の正確な算出、適切な資金調達方法の選択、資金計画や収支計画などの精密な作成が必要不可欠です。それぞれの資金調達方法のメリットとデメリットを理解し、自身の事業計画に合った方法を用いて開業を目指しましょう。
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