人事管理システムの選び方とは?目的別タイプや選定ポイントを解説
人事管理システムといっても、その種類や機能は様々あり、どこに注目をすればよいのか悩む担当者の方も多いでしょう。本記事では、そんな人事担当者のみなさまのために人事管理システムの選び方や目的別タイプなど詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
人事管理システムとは?
人事情報管理・人事評価・給与計算・勤怠管理・採用・労務管理など、人事に関係する業務は数多くあります。
人事管理システムとは、人事業務に必要となる社員の様々なデータを包括的に管理する仕組みのことです。
人事管理システムの主な機能
人事管理システムには、具体的にどのような機能が備わっているのでしょうか。ここでは、基本的な機能を5つ解説します。
社員のマスターデータ管理
人事管理システムは、次に挙げるような社員の個別情報を一元管理する基本機能を搭載しているのが一般的です。
- 個人情報:生年月日・入社年度・職歴・配属先・職位など
- 保有スキル情報:スキル・資格・研修受講歴など
- 勤務状況:遅刻や欠勤などの回数、休業歴など
人事評価
業種や職種に合わせて作成された評価基準をもとに、管理者が社員を評価できる「人事評価機能」も、人事管理システムにおける主な機能のひとつです。
社員の保有スキルやポテンシャルに応じて、目標値を設定することも可能です。人事評価機能の活用によって、社員の目標管理を行いながらPDCAサイクルを回すことができます。
勤怠管理や給与計算の細かい作業
勤怠管理や給与計算などの細かい作業は、手作業で行うと入力ミスや計算ミスが発生する可能性があります。
給与計算に対応する人事管理システムでは、以下の作業が可能です。
- 月例給与や賞与の計算
- 社会保険額や支払経費の算出
- 給与明細書の発行
- 給与支給額の予測
所得税の計算や年末調整の管理が簡単になるほか、法改正や税率変更などにも対応しています。そのため、手作業によるミスを避けることができ、人件費を抑えられるというメリットもあります。
人材育成のためのデータ分析
人事基本機能や人事評価機能によって収集した情報を、「分析」する機能を備えた人事管理システムもあります。
分析機能では、散布図などの各種チャートで自社の人材に関するレポートを作ることが可能です。また、分析データを新卒採用戦略などの新たな人材採用に有効活用することもできます。
最適な人員配置の提案
人員配置機能を搭載する人事管理システムも少なくありません。
ビジネスシーンにおいては、様々なプロジェクトが並行して稼働しているケースもあります。プロジェクトの進捗によって、プロジェクトメンバーを増員や減員したり、他のプロジェクトと入れ替えたりする必要性が生じることもあります。
人員配置機能を組み込んだ人事管理システムを利用すれば、社員の保有スキルや業務歴、各種分析データに基づき、各社員を最適なプロジェクトや部署に配置することができます。
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人事管理システムの目的別タイプ
人事管理システムには、目的別に以下の2種類があります。
- 人事や給与の管理が目的のタイプ
- 人材の管理が目的のタイプ
ここからは、それぞれのタイプにおけるシステムの特徴や必要になる場面について解説します。
人事や給与の管理が目的のタイプ
人事や給与の管理を目的とする人事管理システムには、以下の3種類の機能があります。
- 勤怠管理システム
- 労務管理システム
- 給与計算システム
機能の特徴について見ていきましょう。
勤怠管理システム
勤怠管理システムは、社員の出退勤や休日・休暇などの勤務状況を確認するための機能です。
近年はタイムカードではなく、パソコンやスマートフォンのアプリによる勤怠管理を採用するケースも少なくありません。
勤怠管理システムでは、一般的に以下のような細かい勤怠情報を入力できます。
- 勤務時間の打刻
- 出勤時間の集計
- 休暇などの申請
- 休日出勤や直行直帰の状況
勤怠管理システムを活用することで、人事の業務が簡略化するほか、入力・計算ミスや不正防止にもつながります。
労務管理システム
労務管理システムは、社員情報の管理や、社会保険・雇用保険の申請などを行うことができる機能です。
社員の個人情報を取り扱う人事部門においては、厳重なセキュリティが求められます。
労務管理システムは、サービス提供側がセキュリティを強化するため、セキュリティに関するリスクを低減できるというメリットもあります。
また、短時間で正確に書類を作成できる機能が付いている労務管理システムも増えています。
▷人事管理と労務管理の違いとは?目的や具体的な業務内容もあわせて解説給与計算システム
給与計算システムは、勤怠情報などにもとづき、各社員の給与や賞与を自動計算できる機能です。勤怠管理システムに付随している場合もあります。
改正される法律や税率にもリアルタイムで反映しているので、担当者が都度最新情報をチェックして対応する必要がなくなります。
人材の管理が目的のタイプ
人材の管理を目的とする人事管理システムには、以下の3種類の機能があります。
- 採用管理システム
- 人事評価システム
- タレントマネジメントシステム
それぞれの機能の特徴について見ていきましょう。
採用管理システム
採用管理システムは、人材採用に関する様々な情報や業務を一元管理できる機能です。例えば、次のようなデータをまとめて管理することができます。
- 氏名・住所など応募者の基本情報
- 応募方法・選考や面接日などの採用活動
新卒入社や中途入社をはじめ、パートやアルバイトなどの採用区分に対応している採用管理システムもあります。
採用活動の業務を自動化・効率化できるだけでなく、業務に関わる人と必要な情報を共有できるという点がメリットです。
人事評価システム
人事評価システムは、社員の能力・評価・役職・退職などに関する情報をまとめて管理できる機能です。中には、資格取得や社内教育など、社員育成に関する情報を管理できるシステムもあります。
評価は、営業成績などの数字だけでなく、事務など評価しにくい業務実績も評価に加えることが可能です。
さらに、セクハラやパワハラといった問題行動や、コンプライアンスの問題などの履歴を同時に管理することもできます。人事評価システムを活用することで、より適正な評価につなげることができるでしょう。
タレントマネジメントシステム
タレントマネジメントシステムとは、社員と組織のパフォーマンスの最大化を目指すために、能力やスキルなどの社員ごとの情報を集約してデータ化し、人材の採用や配置・育成に活用するシステムのことです。
人事評価システムに似ていますが、タレントマネジメントシステムの方が対象の業務範囲が広いです。企業によって目指すべき目標や人事課題が異なるので、実践すべきシステムやタレントマネジメント内容は、企業ごとに異なります。
▷人事管理とタレントマネジメントの違いは?それぞれの目的や業務内容を解説
人事管理システムの選び方・選定ポイント
搭載されている機能が多岐にわたる人材管理システムを導入する際、どのように選べばよいか悩んでしまう担当者の方も多いのではないでしょうか。
ここでは、注目すべき選定のポイントを5つ解説します。
- 自社に必要な機能の有無
- 画面の見やすさや操作の利便性
- サポート体制の充実度
- 連携機能や一括管理の有無
- クラウド型かオンプレミス型か
自社に必要な機能の有無
導入目的を明確にし、自社が必要とする機能が備わっているかどうかを確認しましょう。
人事に関する課題を整理しておくと、優先度をつけやすくなります。具体的な導入目的には、以下のようなものが挙げられます。
- 社員の保有スキルや実績をデータ管理して、人材育成や評価に関する業務を効率化したい
- 社員の適性や能力を客観的に分析して、人材配置や企業経営に活かしたい
- 労務管理や給与計算を自動化してミスを減らし、業務の効率化と人件費の削減を目指したい
導入目的をはっきりさせることで、機能をうまく活用できないなどのリスクを回避できます。
画面の見やすさや操作の利便性
導入システムをよりスピーディに活用するために、画面の見やすさや操作の利便性をチェックしておくことも大切です。
例えば、評価データの場合、個別データだけでなくチーム全体のデータ分析、コメント欄やグラフ表示が可能なものを選ぶことで組織全体のバランスを把握しやすくなります。
また、業種別や役職別の項目設定ができるなど、自社のニーズに合わせて自由にカスタマイズできるシステムを選べばより利便性が高くなるでしょう。
必要に応じて、無料トライアルを活用するのもおすすめです。
サポート体制の充実度
サポート体制の充実度も、システムの選定ポイントのひとつです。
雇用形態や賞与体系といった個別の事前設定が必要になる導入時に加え、導入後の不具合や課題に対する長期的なサポートも受けられると安心できます。
例えば、保険や税・マイナンバーなどの制度や法律が改定された際にアップデートで迅速に対応できる設計になっているものを選べば、長期的にシステムを活用できます。
連携機能や一括管理の有無
連携機能や一括管理機能があるかどうかも、重要な選定基準です。
例えば、人事評価の結果を人材配置システムに連携させることで、評価の結果にもとづく人材配置案を簡単に作成できます。
また、採用管理データと人事評価システムを連携できれば、採用業務がより一層効率化が見込めます。現在導入している既存システムとの連携が可能かどうかも視野に入れて検討するのがおすすめです。
クラウド型かオンプレミス型か
システムの提供方法で選ぶこともできます。
クラウド型では自社にサーバーを置かず、システムの提供会社のサーバーを利用します。従量課金制のため、少人数で利用する場合は費用を抑えることが可能です。初期費用や維持・管理費用もかからないので、コスト面でメリットが大きいです。
また、マルチデバイスに対応しているため時間や場所に関係なくアクセスできます。
オンプレミス型は、自社サーバーにデータを置き、社内専用回線を利用して各端末に接続する方法です。情報の機密性が高いという強みがあります。
また、買い切りのため、大規模な会社で長期的な継続利用を検討しているケースでおすすめです。一方、様々な初期費用がかかるほか、社内の情報システム体制を整える必要があります。
それぞれのシステムの提供方法をふまえ、自社に合ったシステムを選ぶことが大切です。
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人事管理システムを導入する5つメリット
人事管理システムを導入することによって、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。主な5つのメリットを詳しく紹介します。
1.大幅な業務の効率化
大幅な業務の効率化を期待できることは、大きなメリットのひとつです。人事管理システムは、全社員の勤怠管理や評価といった情報を一括して管理できます。
人事部門が時間をかけて行っていた単純作業を自動化することで、スピーディかつ正確な処理が可能です。また、業務の効率化によって人件費の削減につながるという、経営面から見たメリットもあります。
2.正確な人材配置
メリットの2つ目は、様々な点に配慮して決定する必要がある人材配置を、正確かつ迅速に行えることです。
人材配置の業務は、それぞれの社員が経験してきたプロジェクトや性格・交流関係など、判断基準が多岐にわたるケースも少なくありません。
人材配置の際に必要となる社員の情報を細かく管理できる人事管理システムを利用することで、正確かつ迅速な業務につながります。また、社員の持つスキルや能力のマネジメントを行うことが可能です。
3.より効果の高い人材育成
より効果の高い人材育成を期待できる点も、メリットのひとつです。
人材管理システムでは、社員一人ひとりの能力や実績などの細かい情報をデータベースに集積し、それらのデータをもとに社員の評価を行うことが可能です。
具体的なデータに裏付けられた評価を行うことで、評価を受ける社員の納得度も上がります。適正な評価は、社員のモチベーションアップや生産性の向上にもつながるでしょう。
4.法改正への柔軟な対応
法律改正にともなう大幅な制度の変更への対応は、人事部門で手間のかかる業務のひとつではないでしょうか。
改正される法律や税率にリアルタイムで対応する人材管理システムを利用すれば、法律が改正された場合でも適切な対応が可能です。
業務の大幅な効率化だけでなく、社員のよりよい就業環境を整えるための新たな施策を作成しやすくなることもメリットです。
5.セキュリティ面の強化
セキュリティ面の強化を図れることもメリットのひとつです。
社員の氏名や住所などの個人情報や、社外秘の機密情報を多く扱う人事部門では、データ管理にともなう強固なセキュリティは必須と言えるでしょう。
その点、人事管理システムには様々なセキュリティ機能が備わっています。主なセキュリティは、以下の通りです。
- 操作ログを保存できるため、早い段階でトラブルを発見できる
- ユーザーごとにパスワードを設定できる
人事管理システムでセキュリティを強化し、機密情報を守ることもできます。
人事管理システムを導入する際の注意点
人事管理システムには多くのメリットがある一方で、導入にあたって気をつけておきたいポイントもあります。ここでは、導入する際の注意点について見ていきましょう。
機能が多すぎると慣れるまでに時間がかかる
機能が多いシステムを選んだ場合、使いこなすまでに一定の時間がかかる可能性があります。例えば、端末操作を苦手とする社員がいる場合は、特に配慮が必要でしょう。
そのため、サポート体制が充実したシステムを選択したり、社内に専用のヘルプデスクを設置したりするなどの対策を講じておくことが大切です。
導入や連携が難しいものもある
システムを利用するためのデータベースの構築などは、専門知識を持たない担当者にとっては難易度の高い作業です。
スムーズにシステムを導入するため、技術的な不安がある場合は、導入や連携について手厚いサポートを受けられるシステムを検討するのがおすすめです。
人事管理システムの選び方を生かして最適な管理体制を
人事管理システムは、便利な機能が利用できることはもちろん、業務の効率化や人件費の削減・的確な人材配置・効果的な人材育成などのメリットがあります。
幅広い機能を備えた人事管理システムがあるので、導入の際はぜひ今回ご紹介した選び方を参考にしてみてください。自社のニーズや現状に合わせたシステムを選び、最適な管理体制を整えることをおすすめします。
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