インボイス制度が個人事業主・フリーランスに与える影響や対応策について

記事更新日:2022/09/24

請求書発行システム

インボイス制度って何?の文字とイラスト

2023年10月1日から始まるインボイス制度は、免税事業者の個人事業主やフリーランスに大きな影響があります。本記事では、インボイス制度が与える影響や対応策、免税事業者のままでもインボイス制度の影響を受けない個人事業主やフリーランスの例を紹介します。

インボイス制度とは?

インボイス制度(正式名称:適格請求書等保存方式)とは、2023年10月1日から始まる新しい仕入税額控除の方式のことです。

インボイス制度は、事業者間の取引における請求書発行や保存の方法についてのルールを定めた新たな制度であり、適用後は、請求書発行や保存の方法が従来とは大きく変わることになります。

インボイスはあらかじめ登録された課税事業者(インボイス発行事業者)しか発行できないため、これにより免税事業者からの仕入れについては仕入税額控除ができなくなります(経過措置あり)。

なお、2023年9月30日までは区分記載請求書等保存方式が適用されるため、免税事業者からの仕入れでも要件を満たしていれば仕入税額控除が可能です。

仕入額控除とは?

インボイス制度を理解するにあたっては、まず「仕入額控除」について理解しておく必要があります。

仕入額控除とは、売上にかかった消費税から、仕入れ時にかかった消費税を差し引いて納税する仕組みのことであり、「重複課税」を避けるためのものです。そのため、課税事業者の消費税納税額に大きな影響を与える仕組みと言えます。

具体的には、仕入額控除が適用されるケースにおける納付消費税額は以下の計算式にて算出します。

売上の消費税額 - 仕入れや経費の消費税額 = 納付する税額

しかし、インボイス制度適用後は、仕入額控除の適用のために「インボイスの保存」が義務付けられることになるため、インボイスがなければ、仕入額控除が受けられなくなってしまうのです(ただし簡易課税制度を選択した場合は、インボイスの保存は免除)。

適格請求書とは?

次に、適格請求書についてご説明します。適格請求書とは、売手が買手に対して適用税率や消費税額などを正しく伝えるためのものです。

具体的には、区分記載請求書に対して登録番号や適用税率ごとの消費税額が記載事項として加えられた請求書や納品書、領収書、レシートなどのことを指します。

適格請求書(インボイス)には、次の事項を必ず記載する必要があります。

  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

  • 取引年月日

  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

  • 税率ごとに区分して合計した対価の額税抜き又は税込み)及び適用税率

  • 税率ごとに区分した消費税額等

  • 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

[引用:国税庁「免税事業者のみなさまへ 令和5年10月1日から インボイス制度が始まります!」]

なお、記載要件を満たしたデータ(電子インボイス)も適格請求書の1つです。

売上1000万未満の場合、免税事業者で適格請求書発行ができない

課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合、原則として消費税の納税義務が免除されます。

インボイスを発行するためには適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録を受けなければなりませんが、この登録を受けられるのは課税事業者に限定されています。つまり免税事業者は、免税事業者のままでいる限りインボイスを発行できません。

適格請求書発行事業者の登録申請手続が必要です。

登録は課税事業者が受けることができます。登録を受けなければ適格請求書を交付できません。登録を受けるかどうかは、事業者の任意です。

[引用:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」より]

なお基準期間における課税売上高とは、個人事業主の場合は前々年(2年前)の課税売上高のことを指しています。仮に課税期間が令和4年(2022年)だとすると、個人事業主の場合はその2年前である令和2年(2020年)の課税売上高で免税事業者かどうかを判定します。

また、課税売上高は課税取引の売上高(税抜)のことですが、その基準期間で免税事業者であった場合は売上高には消費税が含まれていないため、その期間内の課税売上高を計算する際に、税抜き処理をする必要はありません。

個人事業主やフリーランスが影響を受ける理由とその内容

基準期間の課税売上高が1,000万円以下で納税義務が免除されている個人事業主やフリーランスなどの免税事業者は、インボイス制度が始まると次のような影響を受けることがあります。

契約を打ち切られる可能性がある

実際に行われた仕入れ取引を元に税額計算を行う一般課税方式にて消費税の確定申告をする課税事業者にとって、免税事業者との取引(課税仕入れ)は消費税分の税負担が増すことになります。

そのため、将来的なコスト削減を見越して、取引相手を「インボイス発行事業者」から選択する方針転換が行われる可能性はあり得るでしょう。

免税事業者に対する「違法行為」に注意!

インボイス制度の開始に当たっては、取引先の選定に新たな基準を設けたり、既存の取引先との契約見直しを行う課税事業者も出てくるでしょう。ただし、以下のような行為は、下請法や独占禁止法に違反する行為と見なされる可能性もあるため、注意が必要です。

(1)消費税分の値引きを要求する

インボイス制度適用後は、インボイスの有無によって、以下のように納税額が異なることになります。

例えば、課税事業者が、仕入の消費税額1万円、売上の消費税額2万円の商品を販売した際は、インボイスの有無によって、納付税額の負担に1万円の差額が発生します(実際には経過措置あり)。

  • インボイスあり:売上税額2万円-仕入税額1万円=納付税額1万円
  • インボイスなし:売上税額2万円-仕入税額0万円=納付税額2万円

※標準税率10%が適用される取引を前提としています。

つまり買手となる課税事業者からすると、インボイス発行事業者から仕入れる場合と比べ、免税事業者との取引は消費税分だけ負担が大きくなってしまうのです(簡易課税制度を利用している場合には、インボイスの有無で納付税額の負担が変わることはありません)。

もちろん、インボイス制度の開始を機に取引条件の見直しを行うこと自体に問題はありません。

ただし、免税事業者であることを理由に、消費税分の値引きを迫るような行為は、たとえ合意があったとしても、売り手側が関係の悪化を懸念し、値下げに応じざるを得なかったと判断され、「買いたたき」として下請法に抵触する行為と見なされる可能性があります。

[出典:e-Gov 下請代金支払遅延等防止法 第4条第1項第3号]

(2)課税事業者登録を迫る

免税事業者に課税事業者となり、インボイス発行事業者として登録すること(課税転換)を迫る行為は独占禁止法に抵触する恐れがあります。免税事業者が課税事業者となってインボイス発行事業者として登録をするのは強制(義務)ではなく任意です。

もっとも、インボイス発行事業者として登録することを要請する行為が、すぐさま違法と見なされる訳ではありません。あくまで「取引の継続」を担保として、登録を迫るようなことは避けるようにしましょう。

価格交渉、登録の要請、いずれもお互いの負担を考慮した上で真摯に協議した結果、取引が終了するのであれば問題ありませんが、立場を利用した一方的な条件の変更や提示は、違法行為となる可能性があることを認識しておきましょう。

個人事業主やフリーランスの対応策2パターン

個人事業主やフリーランスなどの免税事業者がとれるインボイス制度への対応策として、以下の2つのパターンがあります。

(1)課税事業者になって適格請求書発行事業者の登録申請をする

まず挙げられる対応策は、課税事業者となってインボイスを発行できるようにすることです。

インボイスを発行できれば、一般課税で消費税の確定申告をする課税事業者との取引においても、インボイス制度の適用を機に取引条件の変更などを要請されることはありません。ただし、インボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録する必要があります。

登録申請は、e-Taxを通じて申請可能です。国税庁も書面ではなく、e-Taxでの提出を推奨しているため、e-Taxでの提出を積極的に検討しましょう。

[参考:国税庁「e-Taxによる登録申請手続」]

なお、インボイス発行事業者の登録申請をすれば、改めて消費税課税事業者選択届出書を提出する必要はありません。具体的には、経過措置によって2023年10月1日から2029年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合は不要です。

また、インボイス発行事業者として登録される際には、以下の2点についても認識しておきましょう。

#1: 課税事業者を選ぶ場合、2023年3月31日までに手続きを

免税事業者から課税事業者となり、インボイス制度が始まる2023年10月1日からインボイスを発行できるようにするためには、原則として2023年3月31日までに登録申請をする必要があります。

[出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」より]

#2: 公表サイトに氏名が掲載される

インボイス発行事業者として登録を受けると、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」において氏名と登録番号、登録年月日が公表されます。申出により、任意で屋号や事務所所在地を公表することも可能です。

(2)免税事業者のままでいる

免税事業者のままでいる対応も考えられます。その場合、具体的には次のような対応が必要となるでしょう。

#1: 値引きを検討する

ビジネスとして、双方の負担を考慮した価格の見直しを検討する必要はあるでしょう。ただし、あくまで「適正価格の範囲内」での協議が前提です。一方的かつ非合理な値引き交渉に応じる必要はありません。

#2: 競合他社にない強みを身につける

競合他社にない強みは、最も効果的な対応と言えるでしょう。値下げをせずに取引を継続するには、その負担に見合う強みが必要です。インボイス制度の開始を契機として、改めて強みを明確にし、交渉の材料にするのも良いでしょう。

課税事業者にならなくても良い個人事業主・フリーランスとは?

インボイス制度が開始されても、免税事業者のままで特に影響がない個人事業主やフリーランスもいます。具体的には、主な取引先が一般消費者や免税事業者であったり、課税事業者であっても簡易課税制度の選択をしていたりする場合です。

取引先が一般消費者や免税事業者であれば、どちらも仕入税額控除の計算をしないためインボイスの発行は不要となります。

また、取引先が課税事業者であっても簡易課税制度の選択をしている場合は、仕入税額控除の計算に際してインボイスは必要ありません。そのため、インボイスの発行を強く求められることもないでしょう。

個人事業主やフリーランスが用意すべきこと

インボイス制度を控え、個人事業主やフリーランスが用意すべきことは次の3つです。それぞれ解説していきますので、ぜひ実践してみてください。

  • 資金繰りに気をつける
  • インボイス制度に対応する会計ソフトを選ぶ
  • 請求書のフォーマットを作っておく

(1)資金繰りに気をつける

インボイス制度が開始すると、免税事業者の場合は利益の減少によって、課税事業者となった場合には消費税の納税負担によって資金繰りが悪化する可能性があります。そのため、それらを念頭に置き、資金繰りに余裕を持たせられるよう準備しておくことがおすすめです。

(2)インボイス制度に対応する会計ソフトを選ぶ

利用中の会計ソフトがあれば、インボイス制度に対応しているかどうかをチェックしておきましょう。仕入税額控除を受けるにはインボイスの保存も必要であるため、場合によっては電子帳簿保存法にも対応している必要があります。

(3)請求書のフォーマットを作っておく

適格請求書等保存方式(インボイス制度)は、従来の区分請求書等保存方式の書式に、「登録番号」、「適用税率」、「税率ごとの消費税額」の3点が記載事項として追加されました。

そのため、請求書の書式がインボイスの記載事項を満たしているか確認し、不足していれば追加するようにしましょう。なお、インボイス制度においては消費税の端数処理についても規定されています。

具体的には、端数処理は税率ごとにまとめて行う必要があります。請求書に記載した品目ごとに消費税額の端数処理をして、その端数処理後の金額を合計することは認められませんので注意しましょう。

・ 次のいずれかの方法とし、それぞれの方法により算出した金額の一円未満の端数を処理(一請求書当たり、税率区分ごとにそれぞれ一回)

① 取引の税抜価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額に100分の10(軽減税率対象品目については、100分の8)

② 取引の税込価額を税率の異なることに区分して合計した金額に110分の10(軽減税率対象品目については、108分の8)

[引用:財務省「適格請求書等保存方式の導入」より]

[引用:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」]

個人事業主やフリーランスもインボイス制度を理解しよう

2023年10月1日から始まるインボイス制度は、個人事業主やフリーランスなどの免税事業者にも大きな影響を与える可能性のある新制度です。具体的には、消費税分の値下げを交渉されたり、課税事業者となってインボイス発行事業者となるよう求められたりすることが想定されるでしょう。

2023年10月からの制度開始に向け、影響度を把握しつつ、ここでご紹介した対応策などを実践してみてはいかがでしょうか。

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