請求書への消費税の記載方法!表示義務やよくある間違いについて解説

最終更新日時:2022/09/30

請求書発行システム

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請求書に消費税はどのように記載すればよいのでしょうか。本記事では、請求書の書き方や総額表示の義務の有無、請求書でよくある間違いを紹介します。インボイス制度適用後の適格請求書に書くべき項目も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

請求書に消費税を書くべき理由

請求書に消費税を書く理由は、請求金額の内訳を明確にして円滑な取引を図るとともに、課税事業者が仕入税額の適用を受けるために必要な情報であるからです。

仮に単価10万円の制作物を2個納品し、その報酬を取引先に請求する場合を考えてみましょう。

  • 4月分制作物A:10万円
  • 4月分制作物B:10万円
  • 4月分合計:20万円

もし上記のような請求書であった場合、実際に取引先が支払うべき金額が不明確です。記載されている金額の消費税の有無がわからず、20万円なのか22万円(※標準税率10%が適用される場合)かで迷ってしまいます。

次のように税込金額か税抜金額かを記載しておけば、取引者同士の認識のズレを防ぐことが可能です。

  • 4月分制作物A:10万円(税抜)
  • 4月分制作物B:10万円(税抜)
  • 10%対象計:20万円
  • 消費税:2万円
  • 請求金額:22万円(税込)

円滑な取引を図るためには、請求書に消費税額を明記したほうが望ましいでしょう。

消費税法で請求書への記載が要求されている項目

課税事業者が納付する消費税額を計算する際は、基本的に課税売上にかかる消費税額(売上税額)から課税仕入れにかかる消費税額(仕入税額)を差し引きます。仕入税額を差し引くことを、仕入税額控除と呼びます。仕入税額控除を適用することにより、課税事業者は納付税額の負担を抑えることが可能です。

ただし、仕入税額控除のためには、一定の記載事項を満たした請求書を作成しなければなりません。一定の記載事項とは、以下の6点です。

  • 宛名
  • 発行日
  • 取引内容
  • 発行者の氏名または名称
  • 軽減税率の対象品目である旨
  • 税率ごとに合計した対価の額(税抜き又は税込み)

それぞれの項目について、詳しくみていきましょう。

(1)宛名

宛名とは、消費税法第30条第9項第1号に定められた

書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

のことです。一般的には「株式会社◯◯御中」のように取引先名を記載します。

[引用:e-Gov 「消費税法 第30条第9項第1号」より]

請求書を郵送する場合などは、部署や担当者名を記入することもあります。

(2)発行日

発行日とは、消費税法第30条第9項第1号に定められた

課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)

を指します。

[引用:e-Gov 「消費税法 第30条第9項第1号」より]

勘違いしやすいのが、発行日と作成日です。作成日は請求書を実際に作った日付を示す一方で、発行日は請求先に債務が発生した日付を表します。発行日は企業の締め日に合わせるのが一般的であるため、間違いのないよう注意しましょう。

(3)取引内容

取引内容とは、消費税法第30条第9項第1号に定められた

課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容

のことです。

[引用:e-Gov 消費税法 第30条第9項第1号より]

一般的には、商品やサービスの品目名と単価、数量、金額を記載します。

(4)発行者の氏名または名称

発行者の氏名または名称とは、消費税法第30条第9項第1号に定められた

書類の作成者の氏名又は名称

のことです。

[引用:e-Gov 消費税法 第30条第9項第1号より]

氏名または法人の名称を記載するだけで十分ですが、取引慣習としては住所や電話番号、電子メールアドレスなどの連絡先情報を併記するケースも珍しくありません。

(5)軽減税率の対象品目である旨

軽減税率の対象品目である旨とは、飲食料品など軽減税率8%が適用される品目について、適用税率が他の品目と異なることを示す項目です。記載方法としては、対象品目の横に「※」や「☆」などの記号を書き、記号が書かれている品目が軽減税率の対象であることを明記します。

(6)税率ごとに合計した対価の額(税抜き又は税込み)

税率ごとに合計した対価の額(税抜き又は税込み)とは、たとえば次のように表示する項目です。

  • 8%対象(税抜):10万円
  • 10%対象(税抜):10万円

なお、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が適用される2023年10月1日まで、合計金額は税込金額で表示する必要があります。

請求書に消費税を含めた総額表示の義務はある?記載なしでも問題ない?

「消費税における総額表示義務」とは、事業者が不特定かつ多数の消費者に対して事前に価格を示すときは、税込価格で表示しなければならない、という義務です。

たとえば、「11,000円」や「10,000円(税込11,000円)」という表示が有効です。一方、「10,000円+税」という表記は認められません。

ただし、請求書は不特定多数の者に対するものではないため、総額表示義務の対象外です。

取引に際して相手方に交付する請求書、領収書等における商品の価格の表示は、不特定かつ多数の者にあらかじめ価格を表示しているものではないため、総額表示義務の対象とはならない。

[引用:財務省「事業者が消費者に対して価格を表示する場合の価格表示に関する消費税法の考え方」より]

インボイス制度適用後の適格請求書に書くべき項目

2023年10月1日から、新しい仕入税額控除の方式であるインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まります。

現行の請求書は「区分記載請求書」と呼ばれますが、インボイスでは区分記載請求書に対して、登録番号や税率ごとの消費税額といった記載事項が追加されました。インボイスの具体的な記載事項は次のとおりです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称に加え、登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目は、その旨を記載)
  • 税率ごとに区分した合計額と、それぞれの消費税額
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 請求書対象先の事業者氏名または名称

[出典:国税庁「免税事業者のみなさまへ 令和5年10月1日から インボイス制度が始まります!」]

記載事項の1つである登録番号を記載するためには、課税事業者のみが登録申請できる「インボイス発行事業者」としての登録を受ける必要があります。適格請求書を用意する必要のある事業者は、インボイス制度の開始前に登録を済ませておきましょう。

請求書作成時の注意点

請求書を作成するときは、以下の5つの注意点を押さえておきましょう。

  • 振込手数料の負担者を定める
  • 取引確定日をチェックする
  • 源泉徴収される場合は金額を記載する
  • 押印は必須ではない
  • ダブルチェックする

それぞれ詳しく解説していきます。

(1)振込手数料の負担者を定める

請求書を発行して交付したのち、取引先は定められた期日までに請求金額を支払います。支払方法は銀行口座への振込が一般的ですが、振込には手数料が発生することがあります。

この振込手数料については、民法において弁済費用とされ、原則債務者負担(支払者負担)と規定されていることを覚えておきましょう。ただし、双方の合意があれば、債権者負担(請求者負担)とすることも認められています。

(弁済の費用)

第四百八十五条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

[引用:e-Gov 民法 第四百八十五条より]

(2)取引確定日をチェックする

消費税の税率が変わる前後の取引については、取引の確定日を明確にしておく必要があります。消費税の申告や納付は課税期間(個人の場合は1月1日から12月31日まで)ごとに行うため、通常は取引日が問題になることはそれほど多くありません。

一方、消費税の税率が変わる前後については、その取引に適用される税率が異なる場合があるため、取引の確定日を明確にするよう心がけましょう。

(3)源泉徴収される場合は金額を記載する

源泉徴収とは、個人の収入にかかる所得税を、報酬を支払う側が代わりに支払う行為を指します。源泉徴収が発生する場合は、報酬金額から源泉徴収額を差し引いた金額が、受け取り人へ支払われる金額です。

源泉所得税の税率は、原則として100万円以下の場合は料金額の10.21%です。ただし、一度の取引で支払う金額が100万を超える場合は、20.42%の税率が適用されます。

なお、源泉所得税の計算は、原則として税込金額が対象です。ただし、請求書に報酬と消費税が明確に区分されている場合は、税抜金額(報酬)のみを源泉徴収の対象としても差し支えないとされています。

しかしながら、源泉徴収の計算方法をどのように定めるのかは、取引先の意向も関係します。あとでトラブルとならないよう、事前に相談しておくとよいでしょう。

(4)押印は必須ではない

取引先に向けて発行・交付する請求書に対する押印は、法律で義務付けられていません。ただし、原則として押印は不要であるものの、取引先によっては押印を必須とするケースもあるため、事前に確認しておくのが賢明です。

(5)ダブルチェックする

慎重に請求書を作成したとしても、ちょっとした記入ミスや計算ミスが発生する可能性はゼロではありません。誤った請求書を取引先に発行してしまわないよう、2人以上によるダブルチェックを実施してミスを予防しましょう。

請求書でよくある間違い

請求書に関してよくある間違いは、次のとおりです。

  • 桁数・単価・数量など
  • 計算ミス
  • 請求日
  • 誤送

それぞれの注意点をみていきましょう。

(1)桁数・単価・数量など

請求書に記載した数値に関しては、発行前に念入りに確認しておきましょう。本来は11,000円であるところ、111,000円というように桁数を間違えていたり、品目ごとの単価や数量が入れ違いになっていたりすることがあります。

発注書や受注書のデータをそのまま転記する形であればミスは起こりにくいものの、メールや口頭で交わした契約内容の場合、記入ミスが発生しやすいものです。必要に応じて書面を作成し、契約内容を明確にしておくとよいでしょう。

(2)計算ミス

記入ミスと同様に気をつけておきたいのが、計算ミスです。請求書作成ソフトを利用すれば自動的に計算されるため、計算ミスは少ないでしょう。一方、手書きの場合は自分で計算して記入するため、電卓の打ち間違いなどによって誤った合計額を算出する可能性があります。

ほかにも、「海外で発生した経費なのに、日本の消費税を適用して記載してしまった」という計算ミスも存在します。1人のチェックだと気づきにくい計算ミスも存在するため、ダブルチェックの徹底を心がけましょう。

(3)請求日

意外に思われるかもしれませんが、請求日の記載ミスもよく起こる間違いのひとつです。過去の請求書をコピペして使用した結果、請求日が昔のままとなっていたケースもあります。

ほかにも、取引先の都合などにより、支払日が変更になることもあります。数値間違いがないことはもちろん、請求日や支払日についても間違いがないようにチェックしておきましょう。

(4)誤送

請求書の宛先を誤り、他の取引先に対して送付してしまうケースもゼロではありません。宛先を間違えると取引先から信頼を失うだけでなく、入金が遅れる可能性もあるため、注意が必要です。

また、請求書を送ろうとして会社の内部資料を送ってしまうケースもあります。気軽に送れるメールでのやり取りの際は特に、誤送のないよう気をつけましょう。

消費税の記載ミスなく請求書を作成しよう

請求書に消費税を明記することは、取引相手に請求金額の内訳を正しく伝え、認識のズレによるトラブルを防ぐ目的があります。また、課税事業者が仕入税額の適用を受けるために必要な情報であることから、欠かさず記載しておきましょう。

消費税法で定められた請求書への記載事項は、宛先、発行日、取引内容、発行者の氏名または名称、軽減税率の対象品目である旨、税率ごとの合計額です。正しい情報を請求書に記載し、取引先とのスムーズなやり取りを図っていきましょう。

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