請求書の相殺処理とは?仕組みや仕訳方法・領収書の書き方や注意点を解説

2022/9/16 2022/09/16

請求書発行システム

請求書とボールペン

請求書の相殺処理を誤ると、企業のお金の流れが不透明になる恐れがあります。仕組みを理解したうえで、相殺処理を通じた経理処理を試みましょう。この記事では、請求書の相殺処理の概要や仕組みと仕訳の方法、相殺処理の方法や注意点、相殺時の相殺領収書発行について説明します。

請求書の相殺処理とは

請求書の相殺処理とは、自社と取引先の請求金額を差し引いて処理する行為です。

取引先と自社との間で、互いに商品・サービスを購入し合うことは珍しくありません。たとえば、会計事務所AがB社からコンサルティングと会計業務を委託されている一方で、B社がWebサイト更新、パンフレット制作、動画制作などのサービスを会計事務所A向けに提供しているケースが一例です。

このケースでは、会計事務所AとB社は、互いに売掛金と買掛金を持っている状態といえます。両者の合意があれば、その月に発行する請求書上の処理で、相殺処理できます。

それでは、請求書の相殺処理とは一体どのようなものなのでしょうか。ポイントを2点チェックしていきましょう。

(1)売掛で取引している場合の精算方法の1つ

請求書による相殺処理は、掛取引による売掛金を利用した精算方法のひとつです。

企業間取引の多くは掛取引です。購入した商品・サービスの代金を、月末や15日など締日にまとめ、締日までの購入金額を当月分として請求し、支払い期日までに支払いを受けるのが一般的な流れといえます。

請求書による相殺は、企業間の売掛金・買掛金を差し引いたのち、残った請求金額を請求する方法です。これにより、互いの売掛金・買掛金が精算でき、現金の移動は差額分だけで済むというメリットが生じます。

現金の移動が煩雑にならず、キャッシュフローの安定にも繋がることから、利便性の高い方法といえます。ただし、やりかたを間違えると取引先から信用を失ったり、経理上のミスを引き起こしたりすることがあるため、注意が必要です。

(2)請求書上に相殺したことが客観的にわかるように記載する

相殺処理を請求書上で実施する際は、あとで書類を確認したときに、客観的に相殺処理があったことがわかるようにしましょう。

第三者が請求書を見た際に、相殺内容がわかるよう明確に記載しておく必要があります。もともとの請求金額(売掛金)がいくらで、相殺処理した分の金額がいくらかを明示することが大切です。

相殺処理をした際は、取引の透明性を担保するために、相殺処理したことを示す領収書を発行します。お金の動きが実際に発生しているわけではないので、領収書は簡易的なもので構いません。

相殺の仕組みと仕訳について

そもそも相殺とは、どのような手続きなのでしょうか。相殺処理を実践する前に、相殺処理の仕組みと仕訳の方法を確認していきましょう。

(1)相殺の仕組みとは

相殺の仕組みを理解するために、実際の流れを説明します。

たとえば、A社がB社に月契約のコンサルティングを発注していて、その費用として50万円の買掛金を持っているとします。同時に、B社はA社にWebサイトの更新作業を委託し、30万円の買掛金を持っているとしましょう。

双方の買掛金を差し引きすると、50万円−30万円でA社に20万円の買掛金が残ることになります。相殺処理とは、上記のような場合に、A社とB社の合意のもとで実施する請求処理です。A社のWebサイト更新費用の30万円は相殺するものとし、B社は差し引きして残った20万円を請求します。

(2)相殺処理した際の仕訳方法

相殺取引は、現金の動きが発生しない取引です。そのため、記帳の際の仕訳をわかりやすく記す必要があります。

仕訳の記載例を見ていきましょう。たとえば、以下のケースにおける仕訳を考えていきます。

  • 当月のA社に対する売掛金が150万円
  • A社への買掛金は100万円ある
  • 100万円を相殺し、翌月にA社から50万円の振込み入金があった

■当月処理

A社への当月の売掛金と、A社からの仕入による買掛金を記帳します。

借方 貸方 摘要
売掛金:150万円 売上高:150万円 A社売上
仕入高:100万円 買掛金:100万円 A社より仕入

■翌月処理

A社から相殺した差額の50万円の入金があったことと、100万円は買掛金・売掛金にて相殺処理したことを記帳します。

借方 貸方 摘要
預金:50万円 売掛金:50万円 A社からの入金
買掛金:100万円 売掛金:100万円 A社取引相殺処理

請求書上で相殺処理をする方法

請求書による相殺処理は、順を追えば難しいものではありません。ここでは、相殺処理の流れを確認していきましょう。

(1)請求額と相殺額を記載する

請求書により相殺処理をする際は、通常の方法と同様に請求書を作成します。請求書に必要な内容は、一般的に次のとおりです。

  • 請求先企業名
  • 自社企業名(住所、部署担当者名、連絡先等)
  • 請求書の発行年月日
  • 件名
  • 金額
  • 振込先金融機関情報

取引先企業によっては、請求案件名の指定や整理番号等の記入を求められることがあります。あらかじめ確認するとよいでしょう。

請求書で相殺処理する場合、記載の必要な情報は「元の請求金額」「相殺金額」「相殺後の支払金額」です。相殺する分を表記する際は、マイナスを表す「-」「△」「▲」を用います。金額の摘要欄には、どの取引を相殺しているのかがわかるように情報を記載するよう心がけましょう。

(2)最終合計額で相殺後の金額を記載して請求する

合計金額の下欄に相殺分の金額を書いたあとは、最終合計金額の行に、相殺後の請求金額を記載します。

最終合計金額は実際に支払ってもらう金額であるため、わかりやすく太字にしてみてもよいでしょう。また、「こちらが相殺後の請求金額です。こちらの金額をお振り込みください」などの注意書きを添えると、より丁寧です。

請求書は、2枚に分けて用意する方法も存在します。1枚には相殺以前の請求金額を記載したものを、別の1枚には相殺金額と最終的な請求金額を記載する方法です。どのような請求書を用意するのかは、取引先に確認したうえで決めるよう心がけましょう。

請求書上で相殺処理をする場合の注意点

請求書による相殺処理を試みる場合、のちのち問題とならないように押さえるべきポイントが存在します。ここからは、主な注意点をチェックしていきましょう。

(1)取引の内容が曖昧になりやすい

請求書による相殺処理は、実際の取引内容と現金のやりとりが異なるため、取引内容が曖昧になりがちです。

特に、複数の取引によって売掛金や買掛金の件数が多い場合など、どの取引金額を相殺対象にしたのかが把握しづらくなります。相殺の対象取引に関して両者の認識にズレが発生すると、トラブルとなる可能性があるためご注意ください。

(2)請求書上の書き方に注意が必要

請求書による相殺処理を行う場合は、いつ・どの案件に関しての売掛金や買掛金が対象なのか、それぞれの請求金額、相殺金額などの重要事項を、誰が見てもわかるように記述するよう心がけましょう。そうすることで、取引先と自社双方の経理処理がスムーズに進められます。

相殺処理後の相殺領収書の書き方

相殺処理では、現金の動きがない場合でも互いに領収書を発行し合うことで、取引の透明性を確保することが可能です。相殺処理の領収書は通常のものと異なる点がいくつかあるため、違いや書き方を確認していきしょう。

(1)相殺処理領収書の概要

相殺処理領収書は、2社間で相殺処理をしたことを証明するのに有効な書類です。実際に相殺した取引内容と金額を記載することで、双方が相殺に合意したこと、対象取引における支払いが済んでいることを証明できるため、二重請求や二重払いの発生を防げます。

相殺処理では、帳簿で正確に記載していた場合でも、税務調査などの際に取引内容や金額、入金との関係を明確に示す必要に迫られることもあるでしょう。相殺領収書を互いに発行して保管しておくことで、そのような場合にも問題なく取引を証明できます。

また、相殺処理した取引ごとに互いに領収書を発行しておくと、いつ・どの案件によって相殺したのかが容易に確認可能です。

(2)一般的な領収書との違いとは

領収書は一般的に、商品・サービス等の代金を受け取った証拠として発行するものです。相殺領収書は、金銭のやりとりがないケースで発行する領収書です。

相殺領収書では支払いを証明するのではなく、買掛金(債務)が打ち消され、支払う必要がなくなったことを証明します。通常の領収書と相殺領収書では、金額の書き方や、収入印紙の有無などにおいて違いがあるため、注意が必要です。

(3)相殺領収書の記載方法

2社間の売掛金・買掛金が同額で全額を相殺する場合と、同額ではなく一部を相殺する場合で、相殺領収書の書き方は異なります。

ここからは、それぞれの記載方法を確認していきましょう。

#1: 記載内容が相殺のみの場合

2社間で同じ金額の売掛金・買掛金を相殺し合う場合には、相殺した金額を領収金額として記載します。但し書きとして、相殺処理したことを第三者にもわかるように記載することも重要です。

あとで見直す可能性を考慮し、具体的に相殺した案件名、金額、支払い期日等を記載しておくとよいでしょう。但し書きでは「上記金額を相殺しました」「売掛金と相殺し領収しました」といったように、相殺したことがわかるように記入します。

#2: 一部のみ相殺する場合

取引先との間の売掛金額に差があり、一部の金額だけを相殺し、差額分を現金によって受け取った場合は、領収書の書き方が異なります。この場合、相殺処理した金額と支払いを受けた額を合わせた全額を領収金額として記載し、但し書きで、相殺分がいくらであるかを示すとよいでしょう。

たとえば100万円の売掛金に対して、取引先への買掛金が80万円あるケースで相殺処理したとします。その場合、領収金額の欄には100万円と記載し、但し書きで「内買掛金と相殺分80万円」「相殺金の80万円を含む」などと記載します。

より丁寧な記載内容を心がけるのであれば、「〇〇の件100万円につき、振込金額20万円、買掛金との相殺分80万円で合意」という文言でもよいでしょう。

(3)収入印紙は不要

通常、5万円以上の金額の領収書を作成する際には、収入印紙が必要になります。ただし、相殺処理の際に発行する領収書には、相殺金額に対する収入印紙を用意する必要はありません。

たとえば150万円の領収書を作成し、全額の150万円を相殺金とした場合、金銭のやりとりは発生していないため、収入印紙は不要です。一方、150万円の領収書のうち、100万円を相殺し、50万円の入金を受けた場合は、50万円に対する収入印紙の貼付が必要になります。

150万円を金銭で受領した場合の印紙税額は400円、50万円を受領した場合は200円です。詳しくは国税庁ホームページで確認してみてください。

[参考:国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」]

請求書の相殺処理を使って効率的に経理処理しましょう

企業間での掛取引は、信用にもとづいて行われます。掛取引において互いに売掛金がある場合には、自社の買掛金を請求金額から差し引く「相殺処理」が可能です。

相殺処理をする請求書には、全請求金額と、相殺する金額、金銭のやりとりが必要な金額をそれぞれ明記します。金額を相殺する旨が第三者にも理解できるよう、但し書きに相殺対象となった取引内容を記入することを心がけてください。

請求書の相殺処理を正しく利用し、自社の経理処理の効率化を図っていきましょう。

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