請求書の時効とは?時効の種類と未払いに対する対処法を解説
代金請求の法的効力が失われる請求書の時効。支払期日を過ぎているが入金されない、このまま代金の回収はできないのか、など頭を抱えたことのある人もいるのではないでしょうか。本記事では、請求書の時効とは何か、時効の種類と未払いに対する対処法をあわせて解説します。
目次
請求書の時効・有効期限とは?
代金請求のために発行される請求書には、時効と有効期限があります。入金されないまま時効が過ぎてしまうと、その請求書には代金を請求する法的効力が失われてしまうので注意しましょう。
時効の種類
民法により、請求書の有効期限は定められています。2017年までの民法は、債権の有効期限が短いため「短期消滅時効」と呼ばれていました。時効が成立するまで期間は支払期日の翌日からカウントし、旅館や飲食業の場合は1年、産物または商品の代価の場合は2年、医療関連の場合は3年と、業種によって時効が成立するまでの期間に差があったのです。
しかし、2020年4月1日に施行された新民法166条により、時効が成立するまでの期間は支払期日の翌日から5年に引き延ばされました。また、短期消滅時効も廃止され、業種に関わらず時効の成立期間は統一されています。
[出典:e-Gov 民法 第百六十六条]
▷請求書の法的効力とは?法律上の根拠や有効期限・未払いへの対処法
債務者の援用による時効
援用とは、債権者が請求書の時効が成立したことを請求元に主張することです。債権者側が援用の意思を示すと、代金の請求ができなくなってしまいます。
すでに時効が成立している請求書の未発行・未送付が発覚した場合は、請求先に支払いの意思があるかを確認しましょう。債権者に支払いの意思がなく援用した場合は、代金の請求ができなくなってしまいます。
援用を成立させるには、支払い期日の翌日から5年後に債権者が消滅時効援用通知書を発行し請求元に通知することが必要です。ただし、時効成立前6ヶ月以内に請求書などで支払の催促をしていた場合は、最後の請求から6ヶ月後が時効成立日となります。
請求書未払いに対する対処法
請求書未払いが発生した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、請求書未払いに対する対処法について解説します。
自社に不手際がないか確認
請求書未払いが発覚した際は、自社に不手際がないか確認しましょう。請求書の発行忘れがないか・宛名に間違いはないか・期日は間違っていないかなどの確認が必要です。
自社のミスが原因であったにもかかわらず、いきなり取引先を疑うような対応をしてしまうと信頼を失いかねません。よって、まず自社のミスがないか確認し、ミスがあった場合は早急に対応しましょう。
▷請求書発行に必要な記載項目一覧!書き方・送り方も合わせて解説
先方へ入金を催促する
自社の不手際がなく取引先からも連絡がない場合は、入金の督促を行います。単なる入金忘れであった場合は、即座に対応してもらえるでしょう。
督促の際は、電話やメールなど直接連絡できる手段の使用が大切です。電話は取引先とすぐに連絡がつきやすい手段であるものの、やりとりの記録を残せない点はデメリットです。一方でメールは緊急の連絡には不向きですが、やりとりの履歴を残せる点はメリットと言えるため状況に応じて連絡手段を使い分けましょう。
▷【解説】請求書送付の催促メールの文例とポイントについて
法的措置をとる
取引先に直接督促しても入金されない場合は、法的措置をとる形になります。具体的な方法は以下の3つです。
- 内容証明書を発行する
- 支払督促の申立てをする
- 時効の更新・完成猶予を行う
内容証明書を発行
内容証明書とは、誰が・いつ・どのような書類を郵送し、誰がいつ受け取ったのかを証明できる書類です。内容証明書自体には支払いを督促する効力はありませんが、訴訟に発展した場合に代金を請求していた証拠として扱われます。
内容証明書を発行して支払いを督促すると、催告をしていたとみなされ、時効の延長も可能です。また時効成立前の6ヶ月以内に発行すれば、請求の有効期限を6ヶ月延長できます。ただし、時効の延長は1回限りで、延長期間の間に訴訟を起こすなどの法的措置を起こさなければ時効の延長は認められません。
支払督促の申立て
裁判所に支払督促を申し立てるのも1つの手段です。支払督促を行うと、裁判所から取引先に督促状が発行されます。繰り返し請求書を発行しても支払いが行われない場合は、より強制力のある督促状の送付が有効です。また、督促状の送付から2週間以内に取引先から異議申し立てがあった場合は訴訟に発展します。
「時効の更新」「完成猶予」
時効が成立する前に、時効の更新や完成猶予も効果的です。旧民法では時効の中断と呼ばれていましたが、民法の改正に伴い用語も削除されました。
時効の更新は進行していた時効を更新し、新たに5年の時効期間のスタートが可能です。また、完成猶予は時効を一定期間停止させることを指します。時効の進行が再開した後は、停止した時点で残っていた期間が経過すると時効が成立します。
時効の更新や完成猶予をするための事由としては以下のものが有効です。
- 裁判上の請求
- 支払督促
- 和解・調停
- 破産手続き等への参加
上記4つの事由に関しては、完成猶予の場合は判決が出るまで猶予されます。ただし、確定判決などによって争うことができなくなった場合は、猶予期間はその判決が出た時から6ヶ月間です。また時効を更新する場合は、判決が出た時から時効期間がスタートします。
貸倒れ償却処理
貸倒れ償却とは、債権の回収が不可能だと明らかになった際に行う会計処理です。発生した事業年度の損益計算書にある損金欄に記入する必要があります。
繰り返し督促を行っても入金されない場合や時効が成立してしまった場合など、債権の回収ができないと認められた場合は貸倒れ償却処理を行いましょう。
▷請求書の訂正方法やルールとは?金額ミスや再発行の対処法について
請求書未払いに対するリスク回避の方法
請求書未払いを発生させないためには、さまざまな対策が必要です。ここでは、請求書未払いに対するリスク回避の方法について解説します。
支払期日を事前に伝える
請求書を発行する際は、支払い期日を記載するようにしましょう。支払い期日の記載がないと、任意の期間であれば支払いがいつになってもよいとみなされるため、トラブルの原因になります。双方の信頼関係を維持するためにも、支払い期日は必ず決め、口頭ではなく請求書などで書面に残しておくことが大切です。
▷請求書の支払期限ってどう決める?設定方法や支払期日を過ぎた場合の対処法
入金サイトを見直す
入金サイトとは、取引代金が確定し請求してから実際に入金されるまでの期間のことを指します。請求書の未払いリスクを回避するには、入金サイトが適切に設定されているか見直すことも大切です。
下請代金支払遅延等防止法では、親事業者が下請事業者の給付を受領した日から60日以内の期間で、できるだけ短い期間で支払期日を定めなければならないと決められています。
一般的に支払期日の設定は請求側が行うため、請求書の発行前に入金サイトが長すぎたり短すぎたりしないか確認するようにしましょう。また、取引における代金を回収するまでがビジネスであるという意識を持つことも重要です。
[出典:e-Gov 下請代金支払遅延等防止法 第二条の二]
大型連休等を考慮する
支払期日を設定する際は、土日祝と重ならないように注意しましょう。また、年末年始などの大型連休についても考慮が大切です。大型連休などは金融機関も休業しているため、入金作業ができず、休日に支払期日を設定するとトラブルの原因になってしまいます。
企業によって支払期日の考え方は異なるため、支払期日が休日と被ってしまった際は、直前の平日・直後の平日のどちらに設定するのかなどお互いに共通認識を持つといいでしょう。
与信管理の徹底
取引先は信用できる企業なのか、将来性はあるのか、支払能力はあるのかといった与信管理の徹底も重要です。一度与信調査を行った取引先でも、定期的に基準を見直し、再度調査を行うようにしましょう。
与信管理を徹底することで取引先の不審な兆候を早い段階で察知し、トラブルを未然に防げます。
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請求書の発行に加え代金回収までの管理も重要
請求書の未払いを防ぐためには、請求書の発行だけではなく代金回収までの管理も行いましょう。また、代金回収を徹底するための体制や仕組み作りも有効です。
時にはシステムなども活用して、請求書の未払いが発生しないように社内の意識を高めてください。
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請求書の重要性を認識し未払いリスクを回避しよう
請求書を発行しても、代金回収までの管理が徹底できないと未払いが起こる恐れがあります。時効が成立してしまうと代金の回収が不可能になるため、未払いを起こさないように注意しましょう。
未払いリスクを回避するためには、さまざまな対策が必要です。本記事を参考に請求書の重要性を再認識し、健全経営が行える体制を構築しましょう。
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