請求書に源泉徴収は記載すべき?記載方法や注意点・算出方法を解説

最終更新日時:2022/09/03

請求書発行システム

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請求書に源泉徴収を記載すべきかどうかは、取引先によっても変わります。この記事では、源泉徴収制度の概要や請求書に源泉徴収を記載すべきかどうかをパターン別に解説。また、源泉徴収の記載・算出方法と請求書を作成する場合の注意点についてまとめました。

そもそも源泉徴収制度とは?

源泉徴収制度とは、従業員への給与をはじめ、税理士などの特定の士業や、デザイナー、フリーランスなど決められた業種の個人事業主への報酬を支払う際に、報酬を支払う側が所得税を国に対して納税する制度です。

つまり、報酬を支払う側が、予め所定の方法で計算した所得税を天引きして、報酬を受け取る側の代わりに国に納税する仕組みです。

また平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間は、所得税の源泉徴収の対象となる所得については、所得税と併せて復興特別所得税も徴収し、納付する源泉徴収制度が採用されています。

(1)源泉徴収の対象となる報酬とは?

源泉徴収の対象となる範囲は、支払いを受ける側が個人か法人かによって異なります。

支払い先が個人である場合、源泉徴収の対象となる報酬には以下のものがあります。

イ 原稿料や講演料など

ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

ロ 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金

ハ 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

ニ プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金

ホ 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金

ヘ ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金

ト プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金

チ 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

[引用:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」より]

また、支払い先が法人の場合は、「馬主である法人に支払う競馬の賞金」が源泉徴収の対象となります。

したがって、報酬や支払う料金のすべてが源泉徴収制度の対象となるとは限りません。ただし、謝礼、研究費、取材費、車代など、源泉徴収対象外の名目で支払われたものであっても、その支払いの実体が上記のいずれかに該当するものである場合は、源泉徴収の対象となる点に注意しましょう。

(2)源泉徴収の算出方法とは?

源泉徴収税額は、現在、所得税と復興特別所得税(令和19年12月31日まで)の2種類があり、源泉徴収の対象となる支払金額により採用すべき計算式(税率)が異なります。

■支払い金額が100万円以下の場合

支払金額×10.21%■支払い金額が100万円を超える場合

(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円

※いずれも求めた税額に1円未満の端数があるときは切り捨て。

このように100万円以下の場合は、所得税率は10%、復興特別所得税は0.21%で計算するのに対し、100万円を超える場合は所得税率は20%、復興特別所得税は0.42%となるなど、税率が大きく変わるため、源泉徴収制度の対象となる取引を行う際には注意が必要です。

請求書に源泉徴収を記載すべきかは取引先次第

源泉徴収の対象となる取引の請求書を発行する際、源泉徴収の項目を記載すべきかどうかは、取引先のルールに準ずることになるのが通例です。

ただし、請求書への記載の有無に関わらず、源泉徴収を行い、国に納税する義務を追うのは、報酬を支払う側にあります。

(1)源泉徴収の請求書への記載義務はない

税法上、源泉徴収税額を請求書に記載する義務はありません。しかし、記載していない場合、報酬を支払う側が「源泉徴収」をせずに、請求額をそのまま支払ってしまい、返金などの手間が発生することもあります。

そのため基本的には、源泉徴収の対象となる支払いが含まれる請求書を発行する場合は、源泉徴収税額を記載しておく方が安心です。

(2)クライアントから記載なしと言われた場合は書かない

源泉徴収の項目は、記載しておく方が安心ではありますが、義務ではないため、ビジネスマナーとして、クライアント(請求先)のルールを優先するのが一般的です。そのため、記載なしと言われた場合は、その旨に従った請求書を発行しましょう。

請求書に源泉徴収を記載する時の記載方法

次に、請求書に源泉徴収を記載する時の記載方法を紹介します。

間違った処理を行うと後の処理方法が大変になるため注意して行う必要があります。

(1)源泉徴収税額の計算と記載の方法

源泉徴収税額は、源泉徴収の対象となる金額の小計(消費税は対象外)から計算します。

また、請求書への記載項目としては、主に取引金額を以下の項目と順番にて記載する方法が一般的です。

  • 小計
  • 消費税
  • 源泉徴収税
  • 合計

(2)対象となる報酬と源泉徴収額を引いた金額を記載する

請求書の内容によっては、源泉徴収の対象になる報酬と対象外となる交通費などの実費分の請求が混在する場合もあるでしょう。

その場合は、品目や商品名などの取引の詳細記載部分に採番し、源泉徴収税欄に対象とした取引の番号を記載する、もしくは、対象外とした取引金額の小計を記載するなどの方法がありますが、いずれも決まったルールはありません。

両者を明確に区別して、どのように源泉徴収税額を算出したかが分かるよう記載しましょう。

請求書に源泉徴収を記載する際の注意点

請求書に源泉徴収を記載する際には、いくつかの注意点もあります。どれも怠ってしまうと後々手間がかかってしまうもののため、作成時には、しっかりとチェックしてください。

(1)確定申告の際は支払調書があると便利

企業がフリーランスなどの個人と取引を行い、報酬を支払った場合には、年間で支払った報酬額と源泉徴収税額を集計した支払調書を税務署に提出しなくてはなりません。

ただし、支払いを受けた個人側が確定申告時に支払調書を添付する必要はなく、したがって、企業が個人に支払い調書を発行する義務もありません。

しかしながら、個人側の事情としては、支払調書があると、確定申告時の計算が楽になるといったメリットがあります。そのため、可能であれば、確定申告前に支払調書を発行してもらっておくと良いでしょう。

(2)消費税の取り扱いに注意して計算する

取引によって生じた報酬や料金等うち消費税の額が明確に分けられていない項目に関して源泉徴収税額を計算する際には、原則として消費税を含んだ税込金額にて、源泉徴収税額を計算することになります。

ただし、消費税額を明確に区分して記載している場合には、税抜金額で源泉徴収税額を算出することが認められているため、手取り額が増える税抜金額での計算方法が一般的と言えるでしょう。

(3)源泉徴収について契約書で取り決めておく

源泉徴収税額を税抜もしくは税込、どちらの方法で算出するのかについては、法律による明確な定めはありません。そのため、実際に納税を行う取引先(報酬を支払う側)のルールに従うことが求められるケースもあり得ます。

これらの計算方法の違いは、取引金額によってはその差が大きなものになります。トラブルを防止する観点からも取引前に必ず確認し、可能であれば契約書へも記載しておくようにしましょう。

源泉徴収制度を理解し正しく請求書を作成しよう

税制と聞くだけで「源泉徴収制度」を、難しく感じてしまう方もいるかもしれませんが、その概要は、所得税の納税を企業が個人事業主に代わって行うことを義務付けるものであり、決して複雑な仕組みではありません。

源泉徴収制度を正しく理解した上で、ここでご紹介した請求書発行の際のポイントと注意点に留意しながら、正しい請求書を発行しましょう。

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