請求書と明細書の違いとは?記載事項や使い分け・作成時の注意点を解説
金銭の取引において請求書や明細書は必ず発行される重要な書類です。各書類の正しい使い方や違いを把握できていない方も少なくありません。本記事では、請求書と明細書の違いについて記載事項から使い分け方や作成時の注意点まで解説します。
目次
請求書と明細書の違いは発行する目的
請求書と明細書の大きな違いは発行する目的で、支払いを求める請求書に対し、取引内容の内訳を確認するのが明細書です。
BtoB取引の場合はどちらも請求する側の企業が発行し、BtoC取引の場合は企業側が発行する傾向にあります。BtoC取引で発行される明細書は、クレジットカードや電話料金などです。
請求書と明細書について
請求書と明細書の違いを解説する上で、それぞれどのような役割を持った書類かを見ていきましょう。
請求書とは?
請求書とは、主に企業間取引において発行され、取引に対する対価の支払いを求める書類のことです。
請求書の発行自体は義務ではありませんが、証憑書類とも呼ばれ企業間に取引があったことを証明できる書類です。
また、発行された請求書は法人なら7年、個人事業主でなら5年から7年の保存義務があるので、誤って破棄しないよう注意してください。
▷請求書とは何か?定義・必要性・役割や発行方法について徹底解説
明細書とは?
明細書とは、請求書の内訳を記載した書類で、具体的にどのような取引があったのか確かめるために発行されます。
企業間取引においては一般的に請求書と同時発行または、ひとつにまとめたものが発行されます。
また、ほとんどの企業が請求書を発行しているのに対し、明細書を発行している企業はあまり多くありません。したがって、取引先からの依頼がなければ無理に作る必要はありません。
請求書と明細書の種類
請求書と明細書にはそれぞれ種類があり、目的や発行者によって作成する書類が異なります。ここでは、請求書と明細書それぞれの種類を解説します。いつ、どのようなタイミングで作成すべきか覚えておきましょう。
請求書の種類
請求書には都度方式と掛売方式があり、請求書を発行するタイミングが異なります。
都度方式は、ひとつの取引ごとに納品が完了したら即時請求するため、納品書と同時発行し送付します。代金を迅速に回収できる一方で、取引毎に発行が必要になるので請求書作成が負担に感じるという方も多いでしょう。
これに対し掛売方式は、企業間で締め日と支払日を取り決め、月に1度まとめて請求するやり方です。月に複数回取引が発生する場合や定期的に取引がある取引先とは、一般的にこの方法が採用されます。
明細書の種類
明細書には請求明細書と支払明細書の2種類あり、大きな違いは発行者が異なることです。
請求明細書は、商品やサービスを提供し代金を請求する企業が取引内容の内訳を記載した書類を発行します。
これに対し、支払請求書は商品やサービスの提供を受けた企業が代金を支払うときに金額や取引内容に誤りがないか示すために発行する書類です。
しかし、明細書の種類によって発行者は異なるものの、記載されている項目はほとんど変わりません。
請求書と明細書の記載事項
ここでは、請求書と明細書にどのような項目を入れたら良いのかわからない方のために、記載事項を詳しく解説します。記載事項が漏れていたからといって、請求書として効力がなくなるわけではありません。
しかし、誰がみてもどのような取引があったのかわかるようなるべく全て記載することをおすすめします。
請求書の記載事項
請求書には以下の記載事項を入力します。
記載事項 | 詳細 |
---|---|
取引先情報 |
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自分の情報 |
|
請求番号 | 発行元が任意に決めた番号 |
期日 |
|
振込先 | 口座情報(金融機関・支店名・種類・名義・番号) |
請求内容 |
|
請求金額 | 数量×単価×消費税の合計額 |
小計/消費税/金額の合計額 | 消費税は税率ごとに分けて記載 |
備考 | その他の伝達事項 例)振込手数料負担について |
明細書の記載事項
明細書には、以下の記載事項を入力してください。
記載事項 | 詳細 |
---|---|
書類名 | 請求明細書または、支払明細書 |
管理ナンバー | 発行元が任意に決めた番号 ※元となる請求書や支払書に紐付け |
送付先の会社名 | 個人の場合は氏名または屋号 |
発行した日付 | 元となる書類と同封する場合は日付を統一 |
発行元の情報 |
|
残高の情報 | 掛売の場合残高を記載 |
取引内容 |
|
請求書と明細書を発行するタイミング
日常的に経理業務に携わっていなければ、請求書と明細書をいつどのタイミングで発行すれば良いのかわからないという方が多いのではないでしょうか。
請求書と明細書は種類によって発行のタイミングが異なるので詳しく解説します。
請求書を発行するタイミング
請求書を発行するタイミングは都度方式と掛売方式で異なります。都度方式の場合、納品書と同じタイミングで発行し同封するケースがほとんどです。
掛売方式は、企業間で取り決めた締め日の翌日に発行します。多くの企業が月末締めを採用しているため、月初3営業日以内の発行が多い傾向にあります。
▷請求書の保存期間は?基本の知識や個人事業主と法人の違いも解説
明細書を発行するタイミング
明細書を発行するタイミングは、請求明細書と支払明細書で異なります。
請求明細書は、請求書と同時に発行するか請求書送付後に先方から明細書の送付を依頼されて送るかのどちらかです。
支払明細書は、支払処理するタイミングで発行され、必要があれば取引先に支払書と共に送付し、必要なければ経理で保管します。
請求書と明細書の作成手順
ここでは、請求書と明細書の作成手順をわかりやすくまとめました。作成手順に不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
請求書の作成手順
請求書の作成手順は以下の通りです。
1.記載項目を把握する
まずは、請求書に何を記載すべきか把握しておきましょう。記載事項に法的な決まりはありませんが、インボイス制度の開始後は記載事項に漏れがあると会計処理に支障が出る可能性があるので注意が必要です。
また、請求書作成時に重要なのは相手にきちんと伝わるかどうかです。先に紹介した記載事項に含まれていないものでも、必要であれば入力するようにしましょう。
▷インボイス制度が個人事業主・フリーランスに与える影響や対応策について
2.書式を作成する
エクセルや請求書発行システムなどを活用して、書式を作成します。エクセルで作成する場合は、インターネットでテンプレートをダウンロードして自社用にカスタマイズしてください。
請求書発行システムの場合は、テンプレートが用意されているので、必要な項目を記載して書式を作成しましょう。
書式作成までに時間がかかるので、どちらを活用する場合でも既存のテンプレートを自社用にカスタマイズする方法をおすすめします。
3.必要事項を記載し入力する
書式が完成したら、必要事項を入力しましょう。
入力が完了したらPDF保存してから印刷し、請求書右上の会社名に少し被せるように社印を捺印して作成完了です。
メール等で請求書を送付するときは改ざんの恐れがあるので、エクセルではなく必ずPDFで送付しましょう。
▷請求書をPDFで発行してOK?有効性や原本の扱い・送付する際の注意点
4.同封する添え状を作成する
請求書を郵送する場合は、添え状を作成し同封してください。会計上必要な書類ではありませんが、ビジネスマナーとして同封するのが一般的です。添え状を同封することで取引先からの印象も良くなり、会社の信用度も上がります。
5.作成した請求書を送付する
作成した請求書と添え状を同封し発送手配が済んだら終わりです。支払漏れや取引先との関係を良くするためにも、送付後にメールや電話で連絡することをおすすめします。
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明細書の作成手順
明細書の作成手順は以下の通りです。
1.必要な記載事項を確認する
まずは、先に紹介した「明細書の記載事項」から明細書に必要な記載事項を確認し、必要な項目が記載できる書式を作成してください。
書式の作成方法は、請求書と同様にインターネット上から入手したテンプレートを自社用にカスタマイズするのがおすすめです。
また、元になる書類と書式を合わせておくと統一感が出て見やすく、情報の入力も容易になるので業務の負担が軽減します。
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2.必要事項を入力する
記載事項の確認と書式を用意したら必要事項をすべて入力しましょう。
このとき、記載漏れがないように書式を設定変更しておくと便利です。
エクセルを使う場合は必須項目が空白の場合色付けされる設定をし、請求書発行システムなら、必須項目を入力しないとエラーがでる設定にしておくと入力漏れが防げます。
3.取引内容を記載する
明細書記載事項にある取引内容は、一目見て取引内容がわかるように品名を詳しく書いておきましょう。
わかりやすい明細書を作成しておくと、今後同様の注文が来た際にスムーズに手配できるので型番やカラーといった詳細情報も入力してください。
また、請求書の番号と明細書の管理ナンバーを紐づけておくと管理が楽になるのでおすすめです。
4.社印を捺印する
明細書の必要事項をすべて入力し終えたら、印刷して書類右上の会社名に少し被る程度に社印を捺印してください。
社印は会社が発行した正式な書類であることを意味するため、特別な指示がない限り捺印しましょう。ただし社印に法的な効力はないので、社印の捺印がなくても問題ありません。
5.最終確認を行い発行する
捺印を終えたら、必ず記載事項に漏れがないか明細書を最終チェックしてから発行してください。
記載事項の漏れや入力ミスがあった場合、会計処理に影響する可能性や次回の発注時に間違えてしまうリスクがあるので慎重にチェックしましょう。
このときに、明細書作成者と確認者を分けておくとダブルチェックができ、ミスを防げるのでおすすめです。
明細書の注意点
ここからは、明細書を発行する上で注意してほしいポイントを5つ紹介します。
書式を統一して作成する
明細書は元となる書類と書式を統一して作成しておくと見やすくなるので、相手方に内容が伝わりやすくなります。
また、書式だけではなく記載事項の書き方も統一しておかないと、請求書と請求明細書を見比べたときにわかりづらくなるので注意してください。
メールを使用する場合は承諾を得る
明細書の送付にメールを使用する場合は、事前に取引先に承諾を得るようにしましょう。
企業によっては、メールにデータの添付を禁止していたり、原本の受領が必須と決められている場合があります。また、承諾を得る際は口頭ではなく、履歴が残るメールで確認しましょう。
場合によっては再発行できない
企業によってさまざまな書類の取り扱い方法があるため、書類の再発行ができない場合もあります。事前に書類の再発行に対応しているか確認しておいたほうが良いでしょう。
また、紛失しないよう書類ごとにファイリングしておくだけでなく、書類をスキャンしてコピーを保存しておくのもおすすめです。
▷請求書の再発行を依頼されたときの対処法!手順・注意点・法的リスクを解説
記載漏れや誤記入がないか確認する
明細書だけでなく書類を発行する際は、記載漏れや記載ミスがないか慎重にチェックしましょう。とくに、会計業務にかかわる書類は、記載漏れや記載ミスによって帳簿にズレが生じる恐れがあります。
帳簿のような膨大なデータから原因を突き止めるには時間と労力がかかるため、ダブルチェックや発行システムの設定で対策しておきましょう。
保存要件を確認する
明細書だけではなく、発行した書類を電子保存するには電子帳簿保存法に適合した方法である必要があるため、保存要件を確認しておきましょう。
最新の保存要件については国税庁のホームページをご確認ください。また、電子帳簿保存法をすべて覚えたり法改正のたびにチェックしたりするのは大変なので、電子帳簿保存法に対応した請求書発行システムの導入をおすすめします。
正しい使い分けにはそれぞれの役割を知ることが大事
請求書と明細書を正しく使い分けるには、それぞれの役割を知ることが重要です。明細書は、目的・発行のタイミング・記載事項を押さえておけば誰でも簡単に作成できます。
請求書・明細書・領収書は、証憑書類と呼ばれ取引があった証明になるので、記載漏れや記載ミスがないように気をつけましょう。
また、明細書の作成業務やそれにかかわる法律を随時チェックするのは大変なので、業務効率化を図りたい方は請求書発行システムの導入を検討してはいかがでしょうか。
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