ビジネススキル研修とは?目的や得られる効果・おすすめの研修プログラム
社員一人ひとりのスキル向上を図る「ビジネススキル研修」。新入社員から経営層まで幅広い社員が対象となり、プログラム内容も多岐にわたります。本記事では、ビジネススキル研修とは何かや研修の目的、得られる効果について、おすすめプログラムとあわせて解説します。
目次
ビジネススキル研修とは?
ビジネススキル研修とは、業務に必要なスキルの習得・向上を目的とした研修の総称です。
ビジネススキルの定義は広く、必要なスキルは階層や業務内容などによって大きく異なります。研修効果を得るためにはどのようなスキルを向上させたいかを明確にし、目的や受講者のレベルに合った研修を実施することが重要です。
幅広い種類があるビジネススキルですが、アメリカの経営学者が説いた「カッツ理論」では次の3種類に分けられています。
名称
| 概要
| 向上する主な能力
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ヒューマンスキル
| 対人関係の構築や維持に関するスキル
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テクニカルスキル
| 職務を遂行するための専門的なスキル
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コンセプチュアルスキル
| 情報や状況を適切に洞察するスキル
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ビジネススキル研修の目的とは?
ビジネススキル研修の目的は、社員それぞれの階層に必要なスキルの習得と、スキルアップによってこれまで以上の成果を生み出す人材へと成長を促すことです。
個々のスキルアップだけではなく、組織全体の発展にも重要な意味を持ちます。各人が能力を磨くことでチームとしての活動にもプラスの影響を与え、企業の成果や成長にも寄与するのです。
個人レベルのスキル向上により組織全体の活性化を図ることも、ビジネススキル研修の目的に含まれます。
ビジネススキル研修の実施で得られる効果とは?
ビジネススキル研修の実施で得られる具体的な効果を3つ解説します。
社員のスキルが向上する
立場やレベルに合ったビジネススキル研修の実施によって、社員のスキル向上が見込めます。
たとえば、新人や若手社員であればビジネスの基本やマナーなどの基礎的スキル、管理職であれば役職に相応しい振る舞いやマネジメントの方法について学ぶと、効果的に能力を高められるでしょう。
各々が所属する階層に必要なスキルを磨けば、個人の成長はもとより、組織全体のスキルをレベルアップできるのです。
組織の活性化・業務効率の向上が期待できる
ビジネススキル研修を実施することで、組織の活性化や業務効率の向上が期待できます。個々人のスキルが向上し、課題の解決能力や作業スピードが高まるためです。
スキルアップによってできることに幅が生まれると、面白みややりがいを感じやすくなります。一人ひとりが自身の仕事にやりがいを感じることで良いシナジーが生まれ、組織全体が活気づくのです。
▷組織活性化とは?強い組織をつくる5つの原則や成功事例・フレームワークを解説
人材流出・離職の防止につながる
人材流出や離職の防止にも、ビジネススキル研修が効果を発揮します。研修の成果によって自身の成長を実感したり、役に立っているという意識を持てたりすることで、エンゲージメントが向上するためです。
エンゲージメントが向上すれば、会社への愛着を高く維持でき、人材の流出を防ぐことにつながります。また、研修によるスキルアップで成長や貢献を実感できると、労働に対する幸福感を感じやすく、転職意識が低くなるのです。
研修を通じて自身の将来像や役割を認識した社員は、モチベーションが高まる傾向にあります。モチベーションの高まりはエンゲージメントの強化にも役立つことから、帰属意識の向上が期待できるでしょう。
実際に、離職の防止やエンゲージメントの向上を目的に据えて研修を導入している企業も珍しくありません。
ビジネススキル研修のおすすめプログラム
ビジネススキル研修におすすめの具体的なプログラムを13種類紹介します。それぞれの詳細を把握し、受講者の立場や階層に適したプログラムを選択しましょう。
ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修は、仕事に対する姿勢や基本的なマナーを学ぶ研修です。主に新入社員や入社して数年の若手社員を対象とし、丁寧な言葉遣いや実践で使えるマナーを身につけます。
新たなマナーへの対策や学び直しの意味を込めて、中堅以上の社員が受けるケースもあるビジネススキル研修です。
対象者
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目的
| 社会人に必要な汎用性のあるビジネスマナーを習得し、業務に活かす
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具体的な研修内容
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コミュニケーション向上研修
コミュニケーション向上研修とは、社内外の人間関係や意思疎通を円滑にし、業務の生産性を高めることを目的としたビジネススキル研修です。
すべての階層に必要なスキルである一方、各階層で必要な能力は異なるため、それぞれにフォーカスしてプログラムを組むのが一般的です。聞くスキル・伝えるスキル・洞察力など、ビジネスコミュニケーションの質を高めるさまざまな研修が行われています。
対象者
| 必要とする全社員
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目的
| コミュニケーションに必要なスキルを習得し、対人関係の円滑化や生産性の向上を図る
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具体的な研修内容
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ロジカルシンキング研修
ロジカルシンキングとは論理的思考法を意味し、研修によって学びを深めることで、問題発見や課題解決に活用可能です。
近年は業務の複雑化・多様化が進み、明確な正解がない中で試行錯誤するシーンが増加しています。このような状況下で、本質的な課題を捉えて解決していく論理的な思考力は、どの階層でも求められるスキルといえるでしょう。
対象者
| 必要とする全社員
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目的
| ロジカルシンキングを習得し、課題解決能力の向上を図る
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具体的な研修内容
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ビジネス文書・ライティング研修
正しい日本語や伝わりやすい文章スキルを身につけるために、ビジネス文書・ライティング研修が実施されます。
フォーマルな文章術のほか、情報を正確に伝えるための正しい言葉遣いを学べるビジネススキル研修です。
対象者
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目的
| ビジネス向けの文書作成能力や添削能力を習得し、業務の効率や質の向上を図る
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具体的な研修内容
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プレゼンテーション研修
プレゼンテーション研修では、プレゼンテーションのノウハウを体系的に学習できます。的確に要点を伝え、相手を納得させたうえで行動に移してもらう術を学び、身につけるビジネススキル研修です。
プレゼンテーションスキルは、業種や階層を問わずに必要なことが多く、ビジネスパーソンとして身につけておきたいスキルの一つといえます。
対象者
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目的
| 企画・作成・提案まで、効果的なプレゼンテーション能力を習得し、実務に活用する
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具体的な研修内容
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ファシリテーション研修
ファシリテーション研修は、会議の円滑な進行能力が得られるビジネススキル研修です。主に会議参加者の合意形成を促すための能力を伸ばせます。
具体的には、理解力・質問力・傾聴力のほか、論点を押さえて話題を取りまとめる力などが挙げられます。模擬会議などのアウトプットを含めたプログラムが多いのも特徴です。
対象者
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目的
| 商談を含めた会議における進行役としてのスキルを習得し、円滑な会議を実現する
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具体的な研修内容
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マーケティング研修
モノやサービスが売れる仕組みや流れを学べるのが、マーケティング研修です。多様化する消費者の価値観やニーズに対応するために、モノやサービスの流通に関わる専門スキルを学習できます。
実際の研修内容は業界や階層によって異なり、企画・広報・販促の基本を学ぶものから、事業戦略で活用できる広域かつ専門性の高いものまで多岐にわたります。
対象者
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目的
| 基礎から応用までのマーケティング能力や、マーケティング課題の解消に必要な能力を習得し、実務に活かす
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具体的な研修内容
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リーダーシップ研修
ビジネススキル研修には、リーダーシップを深く学習できるものがあります。チームや組織を統率・牽引するために必要な考え方やスキルなどを学ぶ研修です。
具体的には、コミュニケーション能力・目標設定能力・育成力・判断力・実行力・傾聴力など、複数の要素が挙げられます。リーダーシップスキルは、業界や企業規模を問わずあらゆる組織で必要とされ、生産性や業績などにも大きく影響します。
対象者
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目的
| 自社に必要なリーダーの能力を習得し、実務や人材育成に活かす
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具体的な研修内容
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プロジェクトマネジメント研修
プロジェクトを成功に導くために役立つのが、プロジェクトマネジメント研修です。プロジェクトの責任者であるマネージャーを対象とします。
プロジェクトの管理効率や精度を上げるためには、チームを牽引するマネージャーの能力が欠かせません。ただプロジェクトを完遂するスキルだけでなく、高いクオリティでの成功やトラブルへの対応策も学ぶことができます。
対象者
| プロジェクトマネージャーに該当する全社員
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目的
| プロジェクトマネージャーが身につけるべき能力を習得し、プロジェクトの成功に役立てる
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具体的な研修内容
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マネジメント研修
マネジメント研修は、組織・チームの成果を最大化し、目標達成に向かうための知識やスキルを学ぶビジネススキル研修です。対象者は新任・既存管理職・経営層とさまざまで、組織の規模や階層によって求められる要素や課題が異なり、研修プログラムもそれに準じたものになります。
階層に適した研修プログラムを選択することが、組織力を効果的に高める鍵となるでしょう。
対象者
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目的
| マネジメントに必要な能力を習得し、課題の解消や組織力の向上を図る
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具体的な研修内容
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▷マネジメント研修の内容とは?目的や実施方法・おすすめのサービスを紹介
ネゴシエーション研修
ビジネススキル研修のうち、交渉・折衝スキルを磨くために行うのがネゴシエーション研修です。具体的には、他者を説得するプロセスやメカニズムなどの概論や、効果的な働きかけを行うためのコミュニケーションスキルなどを学びます。
セールスに携わる社員を対象に、交渉スキルの向上や営業の効率化などを目的に実施されるのが一般的です。
対象者
| 営業、販売に関連する部門の社員
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目的
| ビジネスにおける交渉スキルを習得し、営業力の向上につなげる
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具体的な研修内容
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セルフコントロール研修
自分をコントロール・軌道修正する術を学ぶビジネススキル研修として、セルフコントロール研修が挙げられます。怒りの感情とうまくつき合うための「アンガーマネジメント」も、セルフコントロールの一例です。
周囲の影響や感情に振り回されず、一定のパフォーマンスを発揮できる自分づくりに活用できます。
対象者
| 必要とする全社員
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目的
| 常に一定のパフォーマンスを発揮するための自己制御能力を習得し、実務に活かす
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具体的な研修内容
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ITスキル研修
ITスキル研修は、業務効率を高めるためのツールやデータの活用方法を学ぶ代表的なビジネススキル研修です。Word・Excelなどのアプリケーションの使い方や活用方法、データの抽出・分析方法など、基本から応用まで幅広く学べます。
使用するツールやスキルは業界・階層・職種によって大きく異なるため、受講者の属性を鑑みて研修プログラムを企画・カスタマイズするのが一般的です。
対象者
| 必要とする全社員
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目的
| PCやアプリの操作方法などIT関連の基礎および応用の能力を習得し、業務に活用する
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具体的な研修内容
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ビジネススキル研修の形式について
ビジネススキル研修はさまざまな形式で行われます。ここでは代表的な4つの形式を紹介します。
OJT
OJTとは「On-the-Job Training」の略で、実際の業務を通じてスキルや知識を身につける育成手法です。ビジネススキル研修のなかでも、自社のみで取り組みやすい形式の一つとなります。
経験豊富な上司や先輩社員らの指導を用いることで、座学・研修・マニュアルではなかなか身につかない実践的なスキルを習得可能です。
特徴
| 実務を介してスキルや知識を直接学べる研修形式
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メリット
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デメリット
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グループワーク
グループワークとは、複数人で議論や作業を行い、グループとして一つの結論・成果物をまとめる学習方法です。参加者の属性や研修目的などに合わせて最適な方法を選択し、ビジネススキル研修のプログラムに組み込みます。
議論を中心とするものからゲーム要素の強いものまで、さまざまな学び方があるのも魅力です。
特徴
| グループでの成果物の作成を通じてスキルを身につける研修形式
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メリット
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デメリット
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▷OJTとはどういう意味?目的やメリット・研修の効果を高める秘訣をわかりやすく解説
ロールプレイング
ビジネススキル研修で用いられる形式に、ロールプレイングがあります。実際の現場に近い場面・環境を作り、本番さながらに役割を演じる学習方法です。
ロールプレイングの主な目的は「実践力を身につけること」であり、マニュアル化しづらいコミュニケーションスキルや対応方法を習得したい場合に適しています。
特徴
| 現場を想定した演習により実践的なスキルを学べる研修形式
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メリット
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デメリット
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オンライン研修・eラーニング
オンライン研修・eラーニングとは、PCやWeb会議システムなどを用いて行う研修の総称で、「Webセミナー」や「ウェビナー」もほぼ同義です。
研修の形式は幅広く、リアルタイムに研修を行うライブ形式や、あらかじめ用意された動画を再生する形式などがあります。
特徴
| インターネットを活用する研修形式
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メリット
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デメリット
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ビジネススキル研修の具体的な手順
ビジネススキル研修を実施する際の具体的な手順を、4つのステップで解説します。研修の成果をより高めるためにも、基本となる手順を知っておきましょう。
研修の目的や求める人物像を設定する
まずは研修の目的や求める人物像を設定しましょう。ビジネススキル研修によって何を得たいか、どのような人材を育成したいかによって、やるべき研修や内容が大きく異なるためです。
現状と目指すべき状態を比較・分析すれば、目的を達成するために必要な研修が何かを判断できます。社員へのアンケート調査などを行うことで、現状を詳細に把握できるでしょう。調査や分析をもとに、どのようなスキルを強化すべきか、現状とどの程度ギャップがあるかを明確にし、実施する研修の骨子を作ります。
研修の内容やスケジュールを策定する
目的と求める人物像が設定できたら、それを実現できる研修内容やスケジュールを策定しましょう。
ゴールから逆算し、どのような内容・形式が適しているか、網羅すべき内容は何かを考慮しながら、具体的な研修期間やカリキュラムを設計していきます。
研修内容は組織からの押しつけにならないよう、受講者の視点に立って設計することが何よりも重要です。受講者のレベル感に合っているか、わかりやすい内容であるか、講師との相性は良いかといった観点を持つと良いでしょう。
研修の形態を決めて実施する
ビジネススキル研修の効果を最大化するために、適切な形態を選定します。実務を考慮した体験型、知識の習得に比重を置く座学型など、研修形態はさまざまです。
各形態にはメリット・デメリットがあり、研修内容との相性も異なります。たとえば、営業スタッフの営業力を強化したい場合にインプットメインの座学は不向きといえるでしょう。
あわせて、受講者や会社の状況も考慮する必要があり、規模が大きく多拠点型の企業であれば、オンラインやeラーニング形式にすることで移動の負担や費用を削減可能です。
目的の達成だけでなく、現実的に実現可能な研修形態を選択してください。
アクションプランを設定してPDCAサイクルを回す
ビジネススキル研修後に取り組むアクションプランの設定を行います。PDCAサイクルを意識し、研修内容の評価や改善がしやすいプランを設定しましょう。
PDCAサイクルに沿った循環型のアクションプランであれば、成果の検証や振り返り、改善点の抽出がスムーズに行えます。繰り返し取り組むことで研修の精度を高められるほか、プランそのものの見直しにも役立つのです。
アクションプランの具体例を挙げてみましょう。まずは受講者からフィードバックを集め、実務への変化や効果を分析します。その結果を受けて、現在の研修内容が適切かどうかを数値などで可視化し、必要に応じて改善を繰り返す流れです。PDCAサイクルに沿ってアクションプランを起こせば、ビジネススキル研修のブラッシュアップにつながります。
▷PDCAとは?サイクルを回す意味や具体例・失敗する原因をわかりやすく解説
▷PDCAを効果的に回す4つのコツと正しい手順をわかりやすく解説
ビジネススキル研修を実施し組織の発展・成長につなげよう
社員一人ひとりのスキル向上を促し、組織全体の成長や生産性の発展を目指せるのがビジネススキル研修の魅力です。
誰のどのようなスキルを向上させたいかによって、研修内容は異なります。業界や階層などに合わせて、最適な研修を実施することが重要です。研修実施後も継続的にPDCAサイクルを回すことで、より効果的な研修にブラッシュアップされていくでしょう。
ビジネススキル研修を積極的に実施し、組織の発展・成長を実現してください。
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