人材育成で大切なPDCAサイクル|失敗する原因やサイクルを回すためのポイント
人材育成は一辺倒な方法だけでは難しく、成長を促すためのさまざまな手段が必要です。本記事では、人材育成で大切とされるPDCAサイクルについて解説します。育成が失敗してしまう原因や、サイクルを回す際のポイントについても紹介するので、社員の育成に役立ててください。
目次
人材育成とは?
人材育成は、組織・企業が従業員やメンバーの能力やスキルを向上させるために実施する取り組みを指します。
人材育成の目的は、個々の人材の成長と発展を促し、組織全体のパフォーマンスや競争力を向上させることです。マネジメントができるリーダーの育成や、離職率を下げることも目的として挙げられます。
育成のためのトレーニングや教育プログラムを通じて、従業員の専門知識や技術スキルを高められるでしょう。人材育成がうまくいけば、業務の効率性や品質などの向上が期待できます。
人材育成は、従業員の成長と組織の発展を両立させる重要な取り組みなのです。
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人材育成ではPDCAサイクルが大切
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取った、W・エドワーズ・デミングが提唱したフレームワークです。人材育成ではPDCAサイクルを回し、常に改善していくことが重要となります。
4つの要素について、それぞれ詳しくみていきましょう。
Plan:計画
Planでは、人材育成における目標や目的を設定し、実行計画を立案します。適当に設定するのではなく、下記のステップで詳細に設定することが重要です。
- 仕事内容スキルの洗い出し〜目標設定
- 育成手順の設定
- 5W1Hの明確化
それぞれ詳しく解説します。
1.仕事内容スキルの洗い出し〜目標設定
社内でどのような業務があるのか、仕事内容の洗い出しを行いましょう。洗い出しを終えたら、業務を遂行するうえで必要なスキルをリストアップします。
たとえば、請求書の作成には経理のスキルが必要、といった具合に書き出していきましょう。
リスト化した情報をもとに、目標設定を行ってください。身につけさせたいスキルに対し、どのような課題を設けるかを決めます。経理スキルなら伝票入力から取り掛かってもらうなど、比較的容易な目標からクリアさせていくのがコツです。
2.育成手順の設定
リストや目標を軸に、育成手順を設定します。いきなり直接的なスキルの育成をするのではなく「ビジネスマナー」や「チームとの協調性を養う方法」など、ビジネスの基礎から教えることが重要です。
基礎的なスキルが磨かれてから、専門知識の教育に着手するのが理想でしょう。
3.5W1Hの明確化
リスト化した項目や目標・手順に対して、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を明確化しましょう。
5W1Hが明確化されれば、部下は何をどのレベルまで求められているかを理解できます。目標達成への道筋が見えやすくなり、効率的な人材育成にも役立つでしょう。
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Do:実施
Doでは、Planで策定した人材育成計画を実施します。与えた業務に対して説明のみでスキルを取得できる従業員は少ないため、教育担当者が業務を行った上で詳細を説明する必要があります。
説明を終えたら、部下を業務に着手させましょう。慣れるまではミスの発生や品質が低下する場合がありますが、実際に手を動かしてスキルを身につけてもらうことが重要です。
また、業務内容を適切に理解できているか適宜質問を投げかけてみたり、ミスをした業務に対して「なぜ間違えたのか」を部下に考えさせたりしましょう。正しい理解を促し、自分で考えることを覚えさせるためにも大切です。
Check:評価・測定
Checkフェーズでは、実行した人材育成計画の進行状況を定期的に確認します。進捗についてのフィードバックを行い、部下の状態とあわせてチェックを行いましょう。仮に計画がうまく進んでいなければ、その理由や原因も含めて解析しなければなりません。
フィードバックをもとに、自身に足りない知識やスキルを考えさせる機会も設けてください。自発的な思考を促す意味でも重要な取り組みとなります。
Action:改善・対策
DoとCheckの内容に応じて、適切な改善・対策を行います。計画目標の達成にはどのような行動が必要か、分析を行ってください。
分析結果をもとに、部下それぞれに必要な改善策を実行します。知識不足ならe-ラーニングによる学習や座学研修を行う、スキル不足であれば現場での実践機会を増やしてあげるなどです。
PDCAサイクルは、長期的な循環が欠かせません。改善や対策を講じたあとにもサイクルを維持し、常に改善し続けることで人材育成を促しましょう。
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人材育成におけるPDCAサイクルを回すポイント
人材育成においてPDACサイクルをうまく回すには、以下のポイントを意識しましょう。
- 2種類の質問を使い分ける
- 相手とのコミュニケーションを大事にする
2つのポイントを意識すれば、円滑な人間関係を構築でき人材育成にもプラスの影響をもたらします。それぞれ詳しく説明していきましょう。
2種類の質問を使い分ける
PDCAサイクルの回転に関わるのが、部下への質問の仕方です。以下2種類の質問を使い分けることは、育成に必要な関係性の構築にも影響します。
- オープン・クエスチョン
- クローズド・クエスチョン
オープン・クエスチョンは「はい」「いいえ」などの絞られた選択肢から回答するのではなく、部下自身が考えて回答する質問です。たとえば、「顧客と良好な関係を築くためには何が必要ですか」といった質問が挙げられます。質問の回答には制限がないため、部下の思考をそのままを答えにしやすいのが特徴でしょう。
クローズド・クエスチョンは、選択肢のなかから回答させる質問です。「資料作成を明日までに終わらせられますか」という質問は「はい」「いいえ」で回答できるため、クローズド・クエスチョンにあたります。
部下に考えさせて成長を促したい場合は、オープンド・クエスチョンを活用しましょう。会話をある程度コントロールをしたい場合はクローズド・クエスチョンを使うなど、状況に応じて工夫してください
相手とのコミュニケーションを大事にする
PDCAサイクルを回していくためには、部下との密接なコミュニケーションを大事にしましょう。サポートやフォローを丁寧に行うほか、成長具合を適宜伝えることもコミュニケーションの一環です。
部下自身にすべてのことをやり遂げさせるスタンスではなく、後ろで支えていることを感じてもらえる関係性が理想でしょう。サポートによる安心感と、部下自身で考えることとのバランスがとれている必要があります。
部下が自身の成長を実感できるように、成長度合いを伝えることも重要です。目標に対してどのレベルまで近づけたのかを伝えれば、部下が目指すゴールまでの過程のずれをなくせます。
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PDCAサイクルを用いた人材育成が失敗する原因と対策
PDCAサイクルを用いた人材育成が失敗する原因としては、以下のことが考えられます。
- 適切な計画を設定できていない
- サイクルが途中で止まってしまう
- 正確に評価できていない
- サイクルを繰り返し行わない
PDCAサイクルによる育成がうまくいかない場合、当てはまる原因がないかチェックしましょう。それぞれの原因と対策方法について解説するので、改善に努めてください。
適切な計画を設定できていない
PDCAサイクルの失敗要因の一つとして、不適切な育成計画を策定することが挙げられます。目標値が高すぎると、部下はモチベーションを維持することが困難です。反対に低すぎても甘く考えてしまうため、目的に対する意識が低くなります。
いずれも部下に適した人材育成計画が練られていないことから起こる現象でしょう。育成する部下のレベルを適切に把握したうえで、計画を設定しなければなりません。
部下の仕事の質や量を理解し、育成計画や指導スケジュールを作成する必要があります。部下の状態を理解せず計画すると「無理を押し付けられている」と感じさせてしまい、計画倒れになる可能性があるでしょう。
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サイクルが途中で止まってしまう
PDCAサイクルで起こりがちな失敗として、サイクルが途中で止まってしまうことが挙げられます。計画設定や評価分析が慎重になり過ぎることが主な要因です。計画に時間をかけ過ぎると、プラン策定時と現状との相違が大きく不適切な計画になる恐れが高いでしょう。
PDCAサイクルにおいて、C(評価)とA(改善)のフェーズは非常に重要であり、計画策定や実行の段階で時間をかけすぎるとCとAが滞ることにもつながります。原因の解析と改善策の実行ができなくなるため、C・Aの段階でサイクルを止めないよう注意してください。
PDCAサイクルの停滞・停止を防ぐには、評価にかける期限を定めておくのが有効です。組織や部署間でコミュニケーションをとり、サイクルをスムーズに回して人材育成を行いましょう。
正確に評価できていない
PDCAサイクルでは、偏った評価や分析が失敗の原因となるため、注意が必要です。
人間には感情があるため、評価に主観が混じることがあります。礼儀正しく好印象な部下は実際のスキルより高く評価したり、反対であれば低く評価したりするのが例です。ほかにも計画の成果を急ぐあまり、正しい評価をし損ねるパターンもあるでしょう。
正当な評価をするためには、客観的な視点をもつことが重要です。複数の人が評価できるような仕組みを導入すると偏りをなくすことができます。Checkフェーズに十分時間をとり、正しい分析を行えば人材育成における評価の正当性にもつながるでしょう。
サイクルを繰り返し行わない
PDCAサイクルは、実行してからすぐに効果が表れるとは限りません。特にサイクルを一度きりにしたままだと、適切な改善策や新たな課題を見つけることはできないでしょう。PDCAサイクルは回転させ続けることで効果を発揮するため、一巡で終わらないよう気をつけてください。
教育担当者が積極的にサイクルを活用し、次回のサイクルにつながるように誘導する必要があります。効果が表れた際はなぜ良い結果が得られたのか、どのようにすればさらに結果を得られるかを考えることが大切です。分析や評価、改善を繰り返してサイクルを回しましょう。
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人材育成に役立つ他のフレームワーク
人材育成を成功させるためには、PDCA以外のフレームワークを活用するのもおすすめです。人材育成に役立つフレームワークは、代表的なものに以下の5つがあります。
- 経験学習サイクル
- SMARTの法則
- カッツ理論
- カークパトリックモデル
- HPI
それぞれの特徴や人材育成における活用例について、詳しくみていきましょう。
経験学習サイクル
経験学習サイクルは、経験・振り返り・概念化・実践の4つのプロセスから構成されるのが特徴です。
自身の経験を振り返り、成功につなげるためにはどのようにすべきかを考えます。経験から得た知識をまとめて、具体化してから実践に移すのです。一連の繰り返しにより、経験学習サイクルが形成されます。
経験学習サイクルによるメリットは、過去に得られなかった「気づき」を得られることです。自身の経験と向き合い、出来事を細かく分析して振り返ることで新たな発見につながるのでしょう。
人材育成で経験学習サイクルを活用すると、従業員が自身の経験から「気づき」を得て、自己成長の促進に役立ちます。企業側視点では、サイクルに必要な経験の場を与える点に留意してください。
SMARTの法則
SMARTの法則は、以下の5つの基準をもとに目標を立てるフレームワークです。
- Specific(具体性)
- Measurable(計量性)
- Achievable(達成可能性)
- Relevant(関連性)
- Time-bound(期限)
SMARTの法則で目標を立てるメリットは、評価基準が明確になることです。
評価は目標の達成率に左右されるケースが多いため、達成度合いがわかりにくいと評価も不明瞭になります。SMART分析を使って目標を決めることで、5つの基準という明確な指針のもとに達成度の測定ができ、納得性のある評価をつけやすくなります。
公正を欠いた評価は、部下のモチベーションを低下させる要因です。SMARTの法則を活用して評価基準を明確にすると、正しい評定によるモチベーションの改善効果も得られるでしょう。
SMARTの法則に従い部下自ら目標を設定することで「現在何をすべきか」が明確になり、目標達成のためのスムーズな行動が可能となります。自主的な行動を促せば、部下のさらなるモチベーションアップが期待できるでしょう。
カッツ理論
カッツ理論は、職業の階層ごとに必要なスキルの割合を説いたものです。以下の3つの階層及び3つのスキルから構成されています。
階層 | スキル |
トップマネジメント | コンセプチュアルスキル(概念化能力) |
ミドルマネジメント | ヒューマンスキル(対人関係能力、人間理解能力) |
ロワーマネジメント | テクニカルスキル(専門能力) |
カッツ理論の特徴は、役職に応じて必要なスキルが明確化されている点です。たとえば、トップマネジメントでは本質を見抜くためのコンセプチュアルスキルが重視されます。ミドルマネジメントでは、ヒューマンスキルがバランスよく求められることがわかるでしょう。
カッツ理論で各階層に必要なスキルを具体的に示せば、それに基づいた研修や教育が可能でき、人事評価においても評価項目の設定やウェイト調整に活用できます。
カッツ理論を活用すると組織全体のスキルバランス調整に役立ち、パフォーマンス向上が期待できるでしょう。
カークパトリックモデル
教育や研修の効果を4段階で総括するのが、カークパトリックモデルです。研修前と研修後の変化を投資効果として評価する必要性を提唱しています。
カークパトリックモデルでは、研修の成果を以下の4つの要素で表しています。
レベル1:反応(Reaction)
レベル2:学習(Learning)
レベル3:行動(Behavior)
レベル4:結果(Result)
カークパトリックモデルのメリットは、研修の効果を明確に把握し、問題点を特定して研修の改善が可能な点です。また、各段階の評価により、研修の投資対効果を具体的に測定できます。
カークパトリックモデルで分析した研修の成果を明示することで、組織全体の理解と支持を得やすくなるでしょう。より優れた研修の実施にもつなげられることから、効果的な人材育成が可能です。
HPI
HPIとは、人間が原因で発生するパフォーマンス・ギャップを解消するためのアプローチ方法です。
パフォーマンス・ギャップの原因として「部下のスキル不足」「販売計画の問題」などが考えられます。対処法として挙げられるのは、売上アップにまつわる研修の実施や計画の見直しなどです。対策を講じたのにもかかわらず成果が表れない場合は、別の原因があると考えられるでしょう。改めて、HPIを基準に原因を洗い出す必要があります。
HPIに基づくと、パフォーマンス・ギャップの要因を特定しやすいのがメリットです。部下の人材育成においては、効果がなかなか表れない際の原因特定に役立ちます。
原因を突き止めなければ、人材育成を効果的に行うことはできません。HPIを活用して、成果が出ない理由が何であるかを具体的に特定しましょう。
新しい人材を育成する際はPDCAサイクルを上手く活用しよう
社内で新しい人材を育成する際は、PDCAサイクルをうまく活用する必要があります。PDCAサイクルを人材育成に役立てるには、具体的な目的設定と計画の実行・評価・改善を繰り返すことがポイントです。
PDCAサイクルの効果をより高めるためにコミュニケーションを大事にし、。失敗の原因となる注意点に気を配りましょう。常にPDCAサイクルを回して評価ポイントや新たな課題を見つけ、効率的な人材育成を実現させてください。
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