看護マネジメントの意味とは?役割やプロセス・必須スキルを簡単に簡単に解説!
組織の成果を最大化するために欠かせない、マネジメント。ビジネスにおけるマネジメントの必要性は広く知られていますが、医療・看護の現場ではどうなのでしょうか。本記事では、看護マネジメントの定義や役割とともに、必要なスキルやマネジメント職になるメリットについて解説します。
目次
看護マネジメントとは?
看護マネジメントとは、目標達成に向けて組織全体の業務管理を行うことです。組織の役割や課題の明確化のほか、患者のニーズを満たすために看護師の知識・スキルを育成することも挙げられます。
患者の過ごしやすさだけでなく、看護師の働きやすさも考慮した管理を行うことも大切です。適切な看護マネジメントを行えば、業務効率化や顧客満足度の向上につながるでしょう。
看護マネジメントの役割
看護マネジメントの役割は、効率的かつ高度な看護サービスを提供するために、看護師同士を組織として機能させることです。
看護師が個々の判断で動くと現場の連携がとれず、非効率な看護になってしまいます。効率化のためにはマネジメントを正しく行い、チームでの業務を活性化しなくてはなりません。
また、組織として協力しあえる環境づくりだけでなく、看護師個人が抱える課題を把握して解決に取り組むことも大切です。スタッフそれぞれが働きやすい職場になれば、組織全体における環境整備にもつながるでしょう。
ハイクオリティで組織的な看護サービスを提供するために、看護マネジメントは重要な役割を担っているといえます。
看護マネジメントのプロセス
看護マネジメントには、以下4つのプロセスがあります。
- 計画化:看護活動の年間計画を立案
- 組織化:目標を達成するための人員配置や権限を設定
- 指揮:目標を達成するため、メンバーに指示や命令を行う
- 統制:活動の検証を行い、必要に応じて修正を加える
計画化から統制までのプロセスは、主に看護主任や看護師長といった役職の人が担います。ただし、現場で働くスタッフにも情報収集を行い、問題点を洗い出しながら改善していくことも大切です。
看護マネジメント職の種類
看護マネジメント職には、主に以下の3種類に分類されます。
- 看護部長
- 看護師長
- 看護主任
どれも看護部門において重要であり、病院全体でみても必須の役職です。それぞれどのような業務を行うのか、1つずつ詳しく見ていきましょう。
看護部長
看護部長は、病院の看護部全体のマネジメントを行う役職です。看護部の運営をはじめ、病院長や副病院長と協議を行うなど病院の運営にも関わります。病院によっては、看護部長が副病院長を兼任するケースもあるでしょう。
業務内容は看護部の目標や理念の設定・年間計画や採用計画の策定・経営会議への出席など多岐にわたります。看護業務に直接携わる機会は少なく、マネジメント業務が中心です。また、財務会計力・課題分析力・情報収集力など、看護業務以外のスキルも求められるのが特徴です。
看護師長
看護師長は、各病棟・外来・手術室などの部門ごとにマネジメントを行う役職です。
看護主任と協力しながら、現場で働く看護師の意見を聞いて働きやすい環境の構築を目指します。目標達成に向けた働きかけが必要なほか、経営陣と現場をつなぐ役割もある重要なポジションです。
看護師を統率しなければならない看護師長には、マネジメント力やリーダーシップが求められます。
看護主任
看護チームのリーダーとして現場を取り仕切るのが、看護主任の主な役割です。マネジメントの視点を持って、直接的な業務や部下の指導に取り組みます。
副看護師長と呼ばれることもあり、現場で経験を積んだ看護師が最初に就く管理職です。中間管理職に位置づけられ、現場スタッフと看護師長らとの架け橋を担うことにもなるでしょう。
業務が円滑に進むように、看護師一人ひとりとコミュニケーションをとって進捗管理を行います。新人教育・看護師長のサポートを行うのも、看護主任の大切な業務です。
看護マネジメントに必要なスキルと定義
公益社団法人日本看護協会が2019年に発行した「病院看護管理者のマネジメントラダー 日本看護協会版」では、看護マネジメントに必要なスキルとして6つの能力を挙げています。それぞれの定義について、詳しくみていきましょう。
組織管理能力
組織管理能力とは「組織の方針を実現するために資源を活用し、看護組織をつくる力」のことです。具体的な内容としては、以下が挙げられます。
- 自部署の方針を策定・共有できる
- 経営目線で資源を把握・管理できる
- 現場スタッフの立場や意見を理解し、調整・交渉できる
- 業務上の危険を把握し、予防・対策ができる
- 自部署スタッフの道徳観を育成し、交流文化を形成できる
- 他部署と調整・交渉できる
- 病院外の関係者と連携できる
組織としての力を最大限発揮するためには、組織管理能力が不可欠です。また、経営の立場から人材・設備を活用する力や、調整・交渉力なども必要となります。組織管理能力を高めるには、現場職員の意見を尊重する精神も求められるでしょう。
▷組織マネジメントとは?事例や必要な能力・参考にすべきフレームワークを紹介
人材育成能力
人材育成能力とは「将来を見据えて看護人材を組織的に育成、支援する力」のことです。下記のような、人材育成や支援スキルを中心としています。
- スタッフの育成体制を整備できる
- スタッフのスキルを把握し、個々の目標に向けて支援できる
- 外部からの実習・研修を受け入れる際に、学習環境を調整・構築できる
- スタッフのキャリア志向に合わせて計画的に支援できる
- スタッフの能力や可能性を引き出し、成長の機会を与える
人材管理能力では、将来を見据えたうえで人材を最大限活用するためのスキルが問われます。適切な人材管理・育成を行うと、人材不足の解消や看護サービスの質の向上が期待できるのです。
質管理能力
質管理能力とは「患者の生命と生活、尊厳を尊重し、看護の質を組織として保証する力」のことです。サービス品質を確かなものにし、さらに優れたサービスを目指すうえで欠かせません。具体的には、以下の能力が必要とされます。
- 看護データから自部署の課題解決に必要なデータを選別できる
- 自部署の課題解決に向けてスタッフを主導できる
- 自部署の看護サービスの現状を可視化し、見直し・評価・改善ができる
- 自部署の手順や基準の標準化・効率化を推進できる
- スタッフの能力に合わせた勤務体制をとることができる
患者を守るためには、看護サービスの質を維持・向上させる必要があります。看護に関わる情報をもとに課題解決や業務効率化を図ることで、より高度なサービスを提供できるでしょう。
看護師それぞれの能力に合った働き方にも配慮し、質管理能力を追求しましょう。
政策立案能力
政策立案能力とは「看護の質向上のために制度・政策を活用及び立案する力」のことです。具体的には、以下のような医療にまつわる決まりに則って動ける力が挙げられます。
- 医療制度・政策の動向について情報収集できる
- 医療制度・政策に課題意識を持てる
- 自部署の課題解決に医療制度・政策を活用できる
- 医療制度・政策の動向を踏まえて、事前に対応を準備できる
医療業界ではさまざまな制度・政策が設けられているため、看護マネジメントを行うには医療制度・政策に敏感になる必要があります。状況に応じてルールを活用したり、法改正への対応を検討したりするなど、看護サービスの質向上には欠かせない能力です。
危機管理能力
危機管理能力とは「予測されるリスクを回避し、安全を確保するとともに、危機的状況に陥った際に影響を最小限に抑える力」のことです。命を預かる現場において、欠くことのできないスキルといえるでしょう。
- 未然防止や再発防止の視点から、業務プロセスの見直し・改善ができる
- 自部署の事故・問題のリスクを分析したうえで、予防策を講じることができる
- 事故・問題発生時に、対応策の策定と行動の指揮をとることができる
- 事故・問題の再発防止に取り組み、継続的にモニタリングできる
- 災害発生時に、患者とスタッフの安全を確保するために準備できる
- 災害時に行動できるようスタッフを教育できる
看護マネジメントでは、過去に起こった事故・問題・災害をもとに分析を行い、再発防止に努めなければなりません。あらゆるリスクを予測し、事前に予防策を講じる能力が求められます。
自らがリスクに鋭敏であることはもちろん、スタッフ間で意識を共有することも大切です。
▷リスクマネジメントとは?手法やリスクの種類・事例を簡単に解説
創造する能力
創造する能力とは「幅広い視野から組織の方向性を見出し、これまでにない新たなものを創り出そうと挑戦する力」のことです。看護マネジメントにおいては、以下のような斬新なアイデアや柔軟な思考が求められます。
- 新たな看護サービスの提供方式・方法を提案できる
- 新たな看護サービスの提供方式・方法の実現に向けてスタッフとともに行動に移せる
- 地域の保健医療福祉サービスで共通の課題を想定し、解決に向けて調整できる
- 医療・看護の動向や地域の状況について情報収集を行い、ニーズの変化を予測して対応できる
創造する能力では、これまでになかった広い視野での発想が求められます。看護だけでなく、医療業界全体の可能性も含めて創造力を働かせる必要があるでしょう。現状に満足せず、多角的な視点を持つことが大切です。
看護マネジメントのリフレクションについて
リフレクションとは「内省」を意味する言葉で、自分の考えや言動について見つめ直し、その結果をもとに改善を行っていくことです。組織学習の研究を行っていたマサチューセッツ工科大学のドナルド・ショーン氏によって提唱され、現在ではさまざまな業界における人材育成の手段として活用されています。
リフレクションを実践するには、フレームワークを活用するのがおすすめです。ここでは、代表的な3つの手法を紹介します。
KPT |
| よい点と悪い点を悪い点を明確にし、実施可能な改善策を検討する。改善のための取り組みを効率よく進められ、課題の早期発見と解決につなげられる手法。 |
KDA |
| 継続して行うべきことと、やめるべきことを明確にし、新たに取り組むべきことを検討する。無駄なタスクや業務効率化の実現に適した手法。 |
YWT |
| はじめにやったことを振り返り、その経験を通じてわかったことを特定し、次にやることの計画を立てる。個人の経験や行動を振り返るのに有効な手法。 |
リフレクションの効果を最大化するには、実施する目的や状況に適したフレームワークを選ぶことが大切です。
看護師がマネジメント職になるメリット
マネジメント職は責任が大きい一方で、さまざまなメリットもあります。ここでは、看護師からマネジメント職になるメリットについて見ていきましょう。
収入のアップが見込める
マネジメント職になることで、業務範囲が広くなったり責任が増えたりするため、看護師と比べて収入アップが期待できます。役職に応じて基本給の上昇や役職手当が付与される場合があり、収入増加が見込めるでしょう。
役職に就くことで上がる収入の額は、病院によってさまざまです。病院の規模が大きくなるほど支給額も高くなる傾向にあります。どの役職につくかで収入が上がる見込みには差があり、上位職であるほど役職手当も高額になります。
スキルアップにつながる
スタッフの管理や現場の運営など、マネジメント職になった看護師にしか経験できない業務を担当することで、自らのスキルアップにつながります。
マネジメント職での経験は、リーダーシップやコミュニケーション能力の高さをアピールする材料にもなります。看護スキル以外も磨くことができ、転職する際も有利に働くでしょう。
職場環境を整備できる
職場環境の課題や改善策を上司に提案することも、マネジメント業務の1つです。仕事のなかで改善すべきことがあれば、上司や経営陣に積極的に提案できるようになります。
役職に就いていない場合は経営陣と接する機会が少なく、改善策の提案が難しいこともあるでしょう。マネジメント職になれば経営陣との接点が増え、提案・交渉の機会も増加します。現場の声を届けられるようになれば、自分自身や部下が働きやすい環境を構築できます。
▷マネジメントに向いている人とは?スキルがある人の特徴やスキルを身につけるコツ
看護マネジメントは患者さんのケアに欠かせない存在
看護マネジメントは、看護サービスの質向上や看護師の職場環境の改善などに欠かせません。主に看護部長・看護師長・看護主任がマネジメントを行い、適切な管理のもとで看護業務が遂行される必要があります。
また、すべての看護師が看護マネジメントを意識することで、看護サービスの質を高めることにもつながります。自らのスキルアップにも役立つので、率先してマネジメントスキルを習得していきましょう。
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