人材育成に必要なスキル7つのスキル|重要なポイントと課題を解説
人手不足が深刻な現代における課題の1つ「人材育成」。理想の人材を育成するためには、指導者自身のスキル向上が不可欠ですが、どのようなスキルを身につければ良いのでしょうか。本記事では、人材育成に必要な7つのスキルを、人材育成の課題やポイントとあわせて解説します。
目次
人材育成をする目的
企業経営において人材育成を行う目的は、以下の3つです。
- 生産性を向上させるため
- 従業員の離職を防ぐため
- 組織力を向上させるため
上記の目的について、それぞれ解説していきます。
生産性を向上させるため
人材育成には、業務の生産性を向上させる目的があります。人材育成に注力することで、従業員一人一人のスキルアップが期待でき、個人が高いパフォーマンスを発揮できれば必然的に業務における生産性を向上させることが可能です。
現代においてはどの業界においても、慢性的な人材不足が深刻な問題となっています。「令和5年版高齢社会白書」によれば、現在約7,400万人いる生産年齢人口が2070年には4,535万人になると予測されていて、最小限の人数でいかに生産性の高い業務を遂行していくかが課題となるでしょう。
[出典:内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」]
従業員の離職を防ぐため
人材育成を積極的に行うことで、従業員の定着率の上昇効果も期待できます。離職や転職の理由としては、給与の低さや劣悪な労働環境が挙げられますが、「スキルアップの機会を求めて」転職する人が非常に多いのも現状です。
業務の消化ばかりに力を入れ、人材育成をないがしろにしてしまうと、社員は「成長の機会がない」と感じてしまいます。その結果、離職に繋がる可能性もあります。従業員にとって有益な環境を構築する意味でも、人材育成は重要な役割を担っているといえるでしょう。
組織力を向上させるため
人材育成には、企業全体の組織力を高める目的もあります。「人材育成」という言葉から、個人のスキルアップを連想する人が多いかもしれませんが、実はそれだけではありません。人材育成においては個人のスキルアップはもちろんのこと、企業理念や経営目標といったマクロ面を浸透させることも可能です。
組織としての価値観や目指すべき目標を全体で共有できれば、当然組織としての団結力アップを見込むことができます。組織としての企業の在り方を考えた際にも、人材育成の意味合いは非常に大きいといえるでしょう。
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人材育成に必要な7つのスキル
人材育成は社員のスキルアップなどを目標としていながらも、育成担当者にも相応のスキルが要求されます。ここでは、人材育成において育成担当者に要求される7つのスキルについて解説します。
1.現状を把握するスキル
人材育成は、「企業において求められる人物像」から逆算して行うことで最大限の効果を発揮できます。そして、企業に必要な人材を導き出すには、自社が抱えている課題や、置かれている現状を正確に把握している必要があります。
現状や課題を把握するためには、定量的な数字から課題を見極める分析力や、周りを見て判断する観察眼が重要です。そのため、人を育てるスキルはもちろん、企業そのものを把握するスキルも欠かせない要素といえます。
2.目標・スケジュールを管理するスキル
現状の把握を行った後に必要なのは、課題をもとに具体的かつ適切な人材に関する目標設定を行うことです。たとえば、営業力に問題があると分析できた場合には、営業力に強みのある人材育成を行っていくための目標設定をする必要があります。
そして、設定した目標はある一定の期間内に達成することが重要です。そのためには、育成プランの進捗を正確に管理する、スケジュール管理スキルも必要といえるでしょう。
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3.コミュニケーションスキル
社員との関わりを通じて育成を促す以上、人材育成担当者には一定水準以上のコミュニケーション能力も必要とされます。育成に関する自身の意図や考えを正確に伝える能力はもちろんのこと、「なぜこうしたのか」という社員の行動意図を理解する能力も重要です。
また、ここでいうコミュニケーションスキルとは、単に他者と打ち解ける能力のことではありません。実力を発揮できていない社員のモチベーションを引き出すコーチングスキルや、育成のために必要な事項を分かりやすく伝えるティーチングスキルも含まれます。
4.リーダーシップスキル
現場で働きながら部下たちと目標達成に向けて動いていく以上、リーダーシップは必要不可欠なスキルといえます。リーダーシップを充分に発揮できず、あやふやで要領を得ない指導になってしまえば、育成を受ける側の社員も指針を失ってしまうでしょう。また、スキルを発揮して成長する機会の喪失にもつながります。
こうした事態を避けるためにも、人材育成担当者は常に明確な目標を掲げ、部下たちを引っ張っていくリーダーシップを発揮しなければいけません。リーダーシップを発揮できた時にこそ、部下の成長を促すことができるでしょう。
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5.ロジカルシンキング
ロジカルシンキングとは、「論理的思考」を意味する言葉で、物事の原因と結果、その関係性を理解する能力を指します。ロジカルシンキングは、人材育成担当者に不可欠な能力の一つで、課題理解や理にかなった育成計画の構築に役立つでしょう。
たとえば、ロジカルシンキングの能力が欠けていた場合、人材育成担当者は従業員の課題を正確に把握できません。また、課題をもとにした育成計画の作成もできないでしょう。ロジカルシンキングは、人材育成担当者にとって根幹となる能力といえます。
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6.クリティカルシンキング
クリティカルシンキングとは「批判的思考」のことです。これは決してマイナスな意味での「批判」ではなく、状況の本質を見極めるための分析能力に置き換えることができます。
クリティカルシンキングができなければ、現状の課題やこれまで行ってきた人材育成計画について考え直す機会を得られません。状況に対して批判的かつ懐疑的な見方ができるからこそ、常に人材育成の改善を図れます。
7.人を育てるスキル
人材を育てるための具体的なスキルも重要です。人材育成に関するスキルとは、人材を育てるためのプランニングや、効果的な施策に関する知識などが挙げられるでしょう。たとえば、営業の主力人材を育て上げるためには、営業に必要なアピール力や交渉力を養うための育成スキームを実行に移す必要があります。
このように、企業の人材育成担当者には、育てる人材や所属している部署ごとに要求される人材育成スキルの発揮が求められます。人を育てるスキルがなければ、これまでに紹介した6つのスキルを有効活用することもできないでしょう。
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人材育成の課題
企業の人材育成では、さまざまな要因から生じるいくつかの課題が浮き彫りになっています。ここでは、人材育成が抱える4つの課題を解説するので、当てはまるものがないかどうか、参考にしてみてください。
人材育成をするための時間的余裕がない
従業員を育成するには、それなりの時間が必要です。育成される側はもちろん、育成する側も一定の時間を割く必要があります。しかし、人材難に悩まされる現場において、人を育てるための時間を確保するのは容易ではありません。
取引先などから降りてきた利益に直結する業務の方が、現場社員にとっては優先順位の高い業務です。そのため、上長たちは自身の通常業務に追われ、人材育成業務をプライオリティの上位に置く余裕を持てないことが問題になっています。
人材育成をするための社内体制が整っていない
人材育成を行うための社内体制の未整備も課題のひとつです。現場の上長たちが従業員の育成に時間を割く余裕がないのは、「育てるための仕組み作り」ができていない社内体制に起因しているといえます。
育成のための研修やセミナーを開くには、参加する上長や社員たちの穴を埋める体制などが不可欠です。こうした社内体制を整えている企業が少ないのは、日本企業が人材育成において課題を抱えている原因の一つといえるでしょう。
人材育成に対する評価制度が整っていない
育成される側ではなく、育成を担当するメンター側への評価制度が不十分であるのも問題といえます。育てる側の社員も人間である以上、業務を行う上でのモチベーションが必要です。育てたことに対する正当な評価がくだされなければ、忙しい業務の中で人を育てることは難しいでしょう。
むしろ、評価がされないのであれば育成業務を行わず、自分の業務に集中してしまう原因にもなりかねません。育成機会を確保するためにも、人材育成に対する正当な評価は不可欠です。
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育成される側の意識が低い
育成する側だけでなく、育成される側の意識も課題に挙げられています。育成を受ける社員が企業側の意図や目的を理解できず、「ただ受け身でプランを消化する」事態はさまざまな現場で問題になっています。
こうした事態を回避するためには、明確な言葉や文章として、「育成を行う目的」や「スキルアップするメリット」を提示してみせることが必要です。これらを明確化することで、社員のモチベーションを刺激し、能動的に人材育成を受ける環境づくりが可能となるでしょう。
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【階級別】人材育成のポイント
企業はピラミッドのような階層で構成される組織です。そのため、階層によって育成のポイントは大きく異なるでしょう。ここでは、3つの階層別に人材育成のポイントを解説していきます。
新入・若手社員
まだ経験の浅い新入社員や若手社員には、業務を行う素地となる仕事の基本事項や、ビジネスマナーなどの基礎的な教育を施していくのがポイントです。まだ社会人としての経験が浅く、「分からないことだらけ」の社員を急かしてスキルアップさせようとしても、かえって逆効果を生んでしまうリスクがあります。
まずは新入社員たちが安定して継続的に仕事をしていくための土台作りをする意味で、基礎的な教育を丁寧な指導でゆっくり行っていくことが重要です。
中堅社員
ある程度経験を積んだ中堅社員には、管理職への昇格も見据えた人材育成を行っていくことが重要です。たとえば、人材のマネジメントスキルを養う研修を行う、実際にプロジェクトのリーダーを任せるなど、管理職に求められるスキルの向上を狙いとした育成プランが挙げられます。
企業の主力を担う中堅社員は、目先の利益を優先するあまり育成時間が不足しがちです。しかし、次代の管理職を担うポジションだからこそ、丁寧かつ的を射た人材育成プランの実行が不可欠といえます。
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管理職
管理職まで登り詰めた社員にも人材育成は欠かせません。しかし、業務スキルは充分備えている以上、必要な育成は局所的で、簡単ではないといえます。業務に関する研修などを行っても、経験豊富な管理職社員にとって得ることが少ないためです。
管理職には、経営人材への昇格を見据えた経営に関する研修の実施などが効果的です。また、普段はマネジメントを行う立場だからこそ、管理職のメンタル面をケアしてあげることも重要といえます。
人材育成をする上で重要なポイント
人材育成を行う上では、いくつかの基本的なポイントを押さえて計画をたて、実行に移していく必要があるでしょう。ここでは、人材育成における3つのポイントを紹介します。
スキルマップを作成する
スキルマップは人材育成において重要な役割を果たします。スキルマップとは、業務上必要なスキルを一覧表として可視化したものです。スキルマップを作成することで、従業員一人一人がどのようなスキルを備えていて、何が足りないかを一目で判断することができます。
一方スキルマップがなければ個人のスキルの把握を行うのは難しく、人材育成計画の難易度も高まるでしょう。個人に足りない要素を適切に埋めていく人材育成計画を立てる上で、スキルマップは欠かせません。
▷人材育成で大切なPDCAサイクル|失敗する原因やサイクルを回すためのポイント
中長期的な視点を持つ
人材育成では、中長期的な視点を持って取り組むようにしましょう。育成プランの効果は一昼夜で出るものではなく、長い期間を経てようやく実を結ぶ類の取り組みとなるため、ある程度長い期間を想定して計画を立てる必要があります。
また、社員一人一人によって強みも呑み込みの早さも異なるため、全員が同じ速度で成長できるわけではありません。個人差も加味した上で、人材育成計画のプランニングを行っていくのが無難でしょう。
会社全体で協力し合う
一人一人の人材育成は局所的な取り組みでありながら、それがもたらす効果は全社的な利益となり得ます。そのため、人材育成には会社全体で協力体制を敷いて取り組んでいくことが重要です。
研修などにかかる金銭的なコストはもちろん、人的なリソースを教育に割く必要があります。企業全体の金銭や人的なサポートが、人材育成には不可欠であるといえるでしょう。
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必要なスキルを身につけ人材育成を成功させよう
本記事では、人材育成に必要な7つのスキルや、育成を行う際に重要となるポイントについて解説しました。
人材不足に悩む企業が多い中で、少数精鋭の組織を作る人材育成は今後重要なファクターとなります。先を見越した人材育成に力を注ぐためにも、育成する側も必要なスキルを身に付けていきましょう。
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