自立型組織とは?事例やメリット・デメリット、組織の種類を簡単に解説

最終更新日時:2023/12/13

組織・マネジメント

自立型組織とは

予測が立てにくい現代社会に対応するために必要とされている「自律型組織」。新しい組織形態として昨今注目されていますが、自律型組織とはどのような組織なのでしょうか。本記事では、自律型組織とは何か、組織の種類や自律型組織のメリット・デメリットを簡単に解説します。

この記事の要約

・自立型組織とは、個々の従業員が自らの責任のもとで判断をし、業務を進める組織のこと
・自立型組織の特徴として、フラットな組織構造や個人の裁量が大きいなどがあげられる
・自立型組織の種類には、アジャイル組織・ティール組織・ホラクラシ-組織の3つがある

自律型組織とは?

自律型組織は、従来の上下型の指示命令式の組織構造とは異なり、個々のメンバーが独自の判断と責任のもとで業務を進める組織を指します。英語では分散型、自律型といった意味の単語で構成された「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」と呼ばれる形態です。この組織形態は、メンバー個々の自主性や創造性を最大限に引き出すことを目的としています。

自律型組織の主な特徴としては、フラットな組織構造、個人の裁量権の拡大、柔軟で迅速な対応力などが挙げられます。変化の激しい昨今のビジネス環境において、自律型組織は競争力を維持・向上させるための有効な手段です。

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自律型組織と階層型組織の違いとは?

階層型組織は、従来よく見られるトップダウン方式の組織形態であり、上位の役職者・管理者が方針や業務内容を決定し、下位の社員に指示や命令を下す仕組みです。

自律型組織との具体的な違いは、体制や裁量権にあります。個々のメンバーやチームに裁量権がある自律型組織と異なり、階層型組織は上司・上層部に権限が集中しているため、決裁に時間を要する傾向にあるのです。さらに自律型は、階層型のような上司・部下の関係性はほとんどありません。主体的な学習を重視する自律型組織に比べ、階層型組織は計画的に業務を実行することに重きを置きます。

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自律型組織の種類

近年、組織の運営やマネジメントに関する新しい考え方や手法が登場しており、これらの多くが自律的な性質を持っています。以下に、代表的な自律型組織の種類について解説します。

アジャイル組織

アジャイル組織は、迅速な変化や不確実性に柔軟に対応するための組織形態です。ソフトウェア開発の「アジャイル」手法からインスパイアされており、小規模なチームが中心となって短期サイクルで業務を進める点が特徴です。

各社員に決定権があるほか、詳細な計画を立てずにプロジェクトを進めるのもアジャイル方式ならではといえます。その場その場で最適な方法を取り入れ、持続的なフィードバックや改善を通じてプロジェクトを遂行する方法です。計画通りの進行にこだわらないため、迅速な意思決定やイノベーションが期待されます。

ティール組織

ティール組織は、コンサルティング企業の社員だったフレデリック・ラルーが提唱した新しい組織の形態です。従来の階層型組織にあるヒエラルキーを撤廃し、フラットな階層を採用しています。

ラルー氏によれば、ティール組織は5段階の進化を経て完成する形態です。進化の始まりである第1段階は上下関係が最も濃い組織であり、段階が進むにつれてヒエラルキーがなくなっていきます。第5段階まで進化すると、社員同士がフラットな関係性であるティール組織になるという考え方です。

管理職のないティール組織では、各メンバーが共同で意思決定を行うことで、組織の目的に対しての自律的な活動を展開します。持続可能で人間中心の働き方を実現するための新しいパラダイムとして注目されているのです。

ホラクラシ-組織

フラットなヒエラルキーを基盤とするホラクラシー組織は、ティール組織に似た構造を有します。ティール組織との決定的な違いは、特定のルールが定められている点です。組織運営におけるルールを敷いたり、部門やプロジェクトごとに決まりを設けたりします。

個人の決定権や主体性を維持しつつ、ルールという形で統制をとるのがホラクラシー組織の特徴です。ルールから逸脱しない範囲であれば柔軟に行動できるため、個々人に任せつつも会社として一定の規範に沿ってほしい場合に適しています。

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自律型組織のメリット

自律型組織は運営方法や価値観が従来の組織形態とは異なり、独自の強みやメリットを持っています。以下に、主要なメリットを具体的に解説します。

社員1人ひとりの裁量が大きい

自律型組織の特徴として、社員それぞれが持つ裁量が大きい点が挙げられます。社員自身が業務の遂行方法を考えて実行することで、成果に対する責任感や自己成就感が高まる効果が望めます。自己判断のスキルが磨かれ、個人の持つ長所を活かして業務を遂行可能です。

従属関係がほとんどない自律型組織においては、意思決定への圧力や支配を恐れる必要がありません。より自由で柔軟な対応を促し、社員の個性を反映した事業運営ができるでしょう。

スピーディな意思決定ができる

自律型組織では、個々の社員ごとに裁量が与えられているため、各レベルでの迅速な意思決定が可能となります。現場の社員が直面する問題や課題に対し、上層部への報告や承認を待たず、即座に適切な対応をとることが可能です。スピーディな決定プロセスは、市場の変動や急な状況変化にも柔軟に対応する能力を持つため、組織の競争力を高める要因となります。

そのため、テレワークにおけるコミュニケーションがとりにくく、意思決定が進まない課題に対しても、それぞれの裁量に委ねる自律型組織であれば迅速な対応が可能です。

社員の意欲向上が期待できる

社員に大きな裁量と責任が与えられる自律型組織において、労働意欲の向上が期待できます。自らの意見やアイディアを業務に反映できるため、自分の働きが組織の成果に直結すると感じやすくなるためです。

自律型組織のような環境は、社員のモチベーションを高め、職務への熱意やコミットメントを向上させる効果があります。やる気に溢れる社員が集まる組織となり、エンゲージメントや生産性の向上にもつながるでしょう。

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自律型組織のデメリット

自律型組織は多くのメリットを持つ一方で、運用において考慮すべきデメリットや課題も存在します。以下に、主要なデメリットを具体的に解説します。

社員ごとに高い自己管理能力が必要

自立型組織ではマネージャー・リーダーなどのメンバーを管理してマネジメントする存在がいないため、自発的に行動して自らを管理できるスキルが必要です。

自己管理ができないと業務への意欲が低下したり、業務の品質が低下してしまったりなどのリスクにつながってしまいます。

すべての社員が自らを律して仕事に取り組めないケースも考えられるので、定期的なミーティングやモチベーションを高めるための取り組みが必要となるでしょう。

情報の一元化・共有が難しい

意思決定や業務遂行が分散的に行われる自律型組織は、情報の一元化や共有が課題となることがあります。組織内の各部門やチームが独自の情報を持って行動することで、同じ情報に対する認識のズレや重複業務の発生が懸念されるのです。また、重要な情報が適切に共有されないことで、組織全体の効率や成果に影響を与える恐れがあります。

そのため、効果的なコミュニケーションツールの導入や情報共有のためのルール作りが不可欠となります。

自律型組織に必要な要素

自律型組織を成功させるためには、複数の要素が必要です。自律型組織を実現・維持するための重要な要素について解説します。

組織の理念・行動指針の社内への浸透

自律型組織の成功の鍵は、組織の理念と行動指針が社員全員に浸透しているかどうかにかかっています。社員が個々の裁量を持って業務を進める際、共通の理念や指針を基盤として行動することで、組織全体としての一貫性や方向性を保つことができます。

理念や指針はわかりやすく言語化するほか、必要に応じて社員にヒアリングを行いましょう。明確で共感を生むビジョンを掲げることで、個々人が柔軟に行動してもブレない運営が可能です。

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働きやすい職場環境

自律型組織特有の自発的な行動や、責任を持った業務遂行のためには、働きやすい職場環境の構築が不可欠です。物理的な環境だけでなく、精神的・社会的な側面も含まれます。管理職不在の自律型組織は従来のマネジメント機能が働きにくいため、職場環境を整えることが意欲・能力を上げる鍵になるのです。

具体的には、相互の信頼が築ける社風、コミュニケーションのとりやすいオープンな人間関係、適切なリソースとサポートの提供が求められます。ワークライフバランスの尊重や多様性を受け入れる姿勢も、社員が安心して自律的に行動するための重要な要素です。

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目標の設定

自律型組織での目標設定は、組織活動の方向性を明確にし、社員の行動の指針となる要素です。明確な目標があることで、社員は何を目指し、どのような行動をとるべきかを具体的に理解できます。そのため、チームやプロジェクトに応じて、達成に意欲的になれる目標を定めるのが大切です。

定量的な成果に基づく目標を短期間で設定し、繰り返し達成していく手法「OKR」の活用もおすすめです。短いスパンで改善を行えるため、方向性に迷いが生じても軌道修正が的確に行えます。自律的に動く組織では、独自の判断や行動が求められるため、行動指針となる目標設定の重要性を強く認識しておきましょう。

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自律型組織の企業事例

自律型組織は、組織運営の新しいアプローチとして注目されています。以下に、自律型組織を採用し成功を収めている企業の事例をいくつか紹介します。

Marketing-Robotics株式会社

Marketing-Robotics株式会社は、MAツールの開発・運用支援を行う先進企業です。同社ではメンバーの増加に伴い、組織面での壁にぶつかるという経験をしました。企業の方向性に疑問が生まれ、目指している姿との乖離に危機感を持ったといいます。

方向性を見直すために、「つよく・まっすぐ・氣持ちよく」という新たなバリューにアップデートし、経営計画書を全社員へ展開する方法も取り入れています。社員からは求められる成果や行動が明確になり、働きやすさが向上したと評価を受けているのです。

株式会社プレイド

株式会社プレイドは、CXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」などの開発を手がける企業です。組織力や柔軟性を高める多くの手法を取り入れた、自律・分散型の組織構造を採用しています。

決まったフレームワークを使うのではなく、要素同士の組み合わせや要点だけを抽出して組織に反映しているのが特徴です。スクラム開発手法や学習型組織などでそれぞれの利点は取り入れつつも、各枠組みに囚われ過ぎないように工夫しています。

キャディ株式会社

製造業をデジタル技術で支援するキャディ株式会社は、OKRを活用して自律型の組織運営に取り組む企業です。OKRを3年・1年のスパンでそれぞれ設定し、目標達成のための成果であるKRを3ヶ月ごとに決めています。

「なぜ・何を・どうやって」の観点から社員個人に目標達成の理論を立て、代表自らが作った戦略と個人のOKRを融合して具体策に昇華しているのです。より身近な目標は日々アップデートを行うなど、自律型組織で重要な目標設定の方法に趣向を凝らしています。

自律型組織を実現させ組織を発展させよう

自律型組織は、社員の主体性や裁量権を重視し、組織全体の柔軟性と効率を高める新しい組織運営のスタイルです。各メンバーの能力を最大限に活用し、イノベーションを促進することで、競争力を獲得し持続的な成長を実現できます。

自律型組織の実現には明確なビジョンと適切な情報共有、社員教育が不可欠です。実際の企業事例も参考にしながら、自律型組織の持つポテンシャルを最大限に引き出し、組織を新しいステージへと導きましょう。

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