アウトソーシングと外注の違いとは?それぞれの目的や適した業務
近年では企業の戦略として活用する機会も増えているアウトソーシング。しかし、なかには外注とアウトソーシングを混同して認識している方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、アウトソーシングと外注の違いについて、それぞれの目的や適した業務などを解説していきます。
目次
アウトソーシングとは
アウトソーシングとは、業務の一部または大部分を外部企業へ委託することを指します。アウトソーシングサービスを提供する企業には、専門知識やスキルを兼ね備えた人材が多数在籍しているのが特徴で、安定した仕事ぶりが期待できます。
労働者の安定志向の高まりやフリーランスへの転向などによって、市場で優秀な人材を獲得が困難な現代において、人手不足解消と業務品質向上を実現する手段として、アウトソーシングを利用する企業が増えているのです。
▷アウトソーシングとは?意味やメリット・デメリット・種類を解説
アウトソーシングの種類
アウトソーシングは委託する業務内容に応じて種類分けができます。アウトソーシングの種類について以下の表にまとめました。
表:アウトソーシングの種類
BPO (Business Process Outsourcing) | ITO (Information Technology Outsourcing) | KPO(Knowledge Process Outsourcing) | |
特徴 |
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依頼例 |
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ビジネスモデルや課題に応じてアウトソーシングサービスを使い分けましょう。
アウトソーシングと外注の違い
アウトソーシングと外注先に求める役割には、3つの異なる点があります。それぞれの違いをみていきましょう。
- 依頼目的
- 戦略性
- コスト削減
依頼目的の違い
アウトソーシングは外部リソースを有効的に活用し、収益拡大や組織力強化を図るのが目的です。外部企業へ業務を委託し、コア業務への人員集中や良質な顧客体験の提供を実現します。委託先は、自社のブランド価値を高めるためのビジネスパートナーとして位置づけられ、さまざまな面でのサポートを期待しています。
一方、外注先を活用する主な目的はコスト削減です。自社で対応するよりもコストを抑えつつ、高品質な成果物の納品が求められます。信頼できる外注先を多数確保できれば、自社で多くの人材を雇用する必要もありません。そのため、人件費や設備導入費を削減できるでしょう。
戦略性での違い
アウトソーシングでは、人手不足解消や業務効率改善など、自社の課題解決につながる提案も委託先に求めています。自社の課題を正確に反映した提案を得るためにも、コンサルティング力に優れた企業を選定することが重要です。
豊富な支援実績がある企業に依頼すると、業務プロセスの見直しやRPAの導入など、現状を正確に反映した提案を受けられます。
一方、外注先に戦略性を求めるケースは少ないです。自社が作成したマニュアル通りに作業を進め、期限通りに成果物を納品することが求められています。
コスト削減における違い
アウトソーシングの場合、必ずしもコスト削減が優先されるわけではありません。アウトソーシングを利用する目的は、収益拡大や組織力強化、ブランディングイメージ向上などさまざまです。企業価値の向上につながれば、多少割高になってもアウトソーシングの利用を決断します。
一方で、外注先を活用する目的は時間や費用の削減です。コスト削減が見込めない外注先に、業務を依頼してもメリットは得られません。他社への乗り換えや内製化を検討しましょう。
アウトソーシングと外注それぞれに適した業務
業務によってアウトソーシングと外注のどちらを選ぶかが異なります。それぞれに適した業務をみていきましょう。
アウトソーシングに適した業務
アウトソーシングは、幅広い業務で活用できるのが特徴です。また、プロフェッショナルな経験とノウハウを必要とする業務との相性がいいともいえます。具体的にどんな業務が適しているのかみていきましょう。
経理
多くの工程をこなす経理業務もアウトソーシングに向いているといえるでしょう。経理では、日次・月次の処理をはじめ、決算書の作成など以下のような業務でアウトソーシングを利用することが多いです。
- 年末調整
- 記帳代行
- 請求書代行
- 決算書の作成・申告など
また、社会保険や税金など専門的な知識を必要とする業務においてもアウトソーシングすることが可能です。これらの業務をアウトソーシングすることで、コア業務に集中できる環境づくりにも役立ちます。
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秘書
秘書やアシスタントが行う業務もアウトソーシングに適しています。秘書代行というと電話代行をイメージする方も多いかもしれませんが、そのほかにも幅広い業務を任せることが可能です。
- 電話・メール対応
- 資料作成
- スケジュール管理
- Webサイト管理
- SNS管理
人事
採用などを行う人事もアウトソーシングに適した業務です。説明会の開催や面接準備など多くの業務を行う人事では、効率的な業務遂行のために以下のような業務をアウトソーシングすることがあります。
- 面接
- 面接などのスケジュール調整
- 説明会の開催など
また、給与計算や労務管理などを人事で行う場合もあるでしょう。これらの業務は税金や社会保険に関する知識が必要になり、正確性も求められる業務です。アウトソーシングすることで効率化や人件費の削減が期待できます。
営業
営業スキルを持った人材がいない場合なども、アウトソーシングの活用が可能です。
- DM発送
- Web集客
- 対面での営業など
上記のような業務を外部に委託することで、営業のノウハウを有した人材の力を借りることができます。営業のスキルを持った人材の採用・育成をするよりも、短期間で効果を得られるでしょう。
IT関連
ITに関する知識を持った人材が不足している場合もアウトソーシングが有効です。具体的には、以下のような業務で活用されています。
- コーディング
- 社内ネットワーク構築・運用
- データ分析
- ヘルプデスクなど
上記のような専門性の高い業務に対応する人材を確保するのは簡単ではありません。アウトソーシングを活用することで人件費の削減につながることもあります。
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外注に適した業務
外注は、比較的専門性を必要としない業務を任せるのに適しています。
データ入力
データ入力は専門性や創造性よりも正確さなどが重視される傾向にあるため、外注しやすい業務の一つです。作業マニュアルを作成しておけば、自社でリソースを割く必要がなく作業を進めてくれます。
従業員のリソースも別のコア業務に回せるので、会社全体の生産性がアップし、やりがいの向上にもつながるでしょう。
コールセンター
コールセンターも外注に適した業務です。問い合わせ対応などによりコア業務の時間が奪われてしまっている場合や、低コストでコールセンターを運用したいときなどに活用されています。
専門性を必要としない経理業務
法律の知識などが不要な経理業務についても、外注に適しているといえるでしょう。売上金や仕入れの管理など、専門知識を必要としない業務で利用するのがおすすめです。
アウトソーシングを活用するメリット
アウトソーシングの活用によって得られるメリットは以下の3つが挙げられます。
- コア業務の強化
- 業務の効率化・品質向上
- 人件費などのコストの削減
コア業務の強化
アウトソーシングを活用するメリットは、コア業務に集中してリソースを割ける点です。経理や人事、採用などのバックオフィス業務全般はアウトソーシングにも適しています。
人的リソースに余裕がでれば、営業やマーケティング、商品企画など、売上に直結する業務に配置することも可能です。これにより、収益拡大や新規顧客獲得につなげられるでしょう。
業務の効率化・品質向上
業務の効率性と正確性を高いレベルで両立できる点も、アウトソーシングを利用するメリットのひとつです。アウトソーシングサービスを提供する企業には、豊富な実務経験と優れたスキルを兼ね備えた人材が多数在籍しています。
分野ごとのスペシャリストに業務を依頼する形となるため、業務品質の向上にも期待できます。
人件費などのコストの削減
アウトソーシングの利用によって、コスト削減を図ることも可能です。アウトソーシングサービスを利用し続ける限り、一定水準以上の業務品質を確保できます。そのため、新たに人材を採用する必要がなく、採用にかかる費用や人件費の削減につながるでしょう。
また、外注先の担当者は業務の進め方を熟知しているため、一から業務を教える必要はありません。教育の手間や時間を削減でき、組織全体の生産性を高められます。
▷アウトソーシングをするメリット・デメリット|導入を判断する方法
アウトソーシングを活用するデメリット
アウトソーシングの利用はメリットばかりではありません。以下3つのデメリットがあることも考慮しておきましょう。
- 自社にノウハウが蓄積していかない
- 情報漏えいのリスクがある
- コストがかさむ可能性がある
自社にノウハウが蓄積していかない
アウトソーシングを活用するデメリットとして、自社にノウハウが蓄積しにくい点が挙げられます。外部企業に業務を依頼し続ける限り、従業員の実務経験の機会が減ることは避けられません。そのため、業務遂行に必要なスキルや知識は蓄積されないでしょう
多くの業務を依頼すると業務負担を軽減できる反面、人材育成に悪影響を及ぼします。外注先へ依頼する業務内容については、最小限に抑えることが必要です。
情報漏えいのリスクがある
外部企業に機密情報を公開する形となるため、情報漏えいのリスクが高まります。特に勤怠管理や労務管理など、機密情報を多数扱う業務を依頼する場合は注意が必要です。仮に機密情報が漏えいした場合、社会的信用の低下やイメージダウンは避けられません。
情報漏えいによる多額の利益損失を回避するためにも、セキュリティ対策が充実した企業を選びましょう。データの暗号化やウイルスソフトの導入、モニタリングなど、さまざまな対策を講じることが重要です。
また、プライバシーマークやISMSなど、国際規格を取得しているかについても確認する必要があります。どちらかの規格を取得していれば、セキュリティ対策や機密情報の取り扱いに関して、第三者機関から評価されているといえるでしょう。
コストがかさむ可能性がある
依頼する業務の量が多くなると、外部企業に支払う費用が高騰します。また、内製化に戻す際の移行費用が増えるため注意が必要です。
あらかじめアウトソーシングの利用に割く予算を決め、その予算内で運用していく体制の整備が求められます。
アウトソーシングとその他の手法の違い
アウトソーシング以外にも、外部に業務を依頼する手法はいくつかあります。ここからは、以下3つの手法とアウトソーシングの違いについてみていきましょう。
- 派遣
- BPO
- クラウドソーシング
派遣との違い
派遣とは、人材派遣会社に在籍している労働者を自社オフィスに派遣してもらうことを指します。派遣労働者は派遣先ではなく、派遣会社と雇用契約を結ぶのが特徴です。
派遣先は派遣会社と労働者派遣契約を締結し、就業日や労働時間、時間外労働の上限に関して定めます。労働時間は1日8時間、週40時間を遵守するのが基本的なルールです。時間外労働は、36協定の上限である月45時間、年360時間以内に収めなければなりません。
派遣の場合、派遣労働者と直接対話しながら業務内容の指示や進捗状況を確認できる点がメリットといえるでしょう。毎月の給与計算や、各種保険の加入手続きも自社で対応する必要がないため手間を省けます。
しかし、派遣先は派遣労働者を直接選ぶことはできません。そのため、人材のミスマッチが起きる可能性が考えられます。依頼予定の業務内容に関して、必要なスキルを派遣労働者が習得している保証はないため注意が必要です。
また、職場の雰囲気や人間関係と合わない場合、派遣労働者のパフォーマンスが低下することも考えられます。
▷アウトソーシングと人材派遣の違いとは?特徴やメリット・デメリットを解説
BPOとの違い
BPO(Business Process Outsourcing)とは、業務プロセスの一部または大部分を外部企業に委託することを指します。これは、アウトソーシングサービスのひとつと考えられていて、優れたスキルを持つ人材が多数在籍するのが特徴です。
経理や労務管理、営業事務など、バックオフィス業務を中心にさまざまな業務の代行を依頼できます。アウトソーシングとの違いは、企業運営の最適化などを行い経営改善にもつなげられる点です。
業務プロセスの見直しや排除、再構築などによって、業務の属人化も解消できます。業務をスムーズに進める体制が整えられ、効率性と正確性を高められるでしょう。ただし、アウトソーシングと同様、依頼する業務量が多すぎると、社内にノウハウが蓄積されません。
また、BPOを利用することで業務の質を高められる分、委託先へ支払う毎月の費用も高くなります。実務経験の機会確保とコスト削減を両立するため、依頼する業務範囲を限定することが重要です。
▷BPOとは?メリット・デメリットや向いている業務を簡単に解説!
クラウドソーシングとの違い
クラウドソーシングとは、webサイトを活用して個人事業主や副業ワーカーなどに業務を発注する業務委託の一種です。システム開発やライティング、webデザインなど、さまざまな業務を依頼できます。
クラウドソーシングサイトを活用すると、業務の発注から納品まで、一連の業務をオンライン上で完結できるのが特徴です。業務委託契約の締結もオンライン上で取り交わしができるため、契約書の作成や印刷をする必要がありません。
また、専門的なスキルや豊富な実務経験を持つ方が多い点も魅力です。企業に依頼するよりもコストを抑えつつ、高品質な成果物の納品が期待できます。近年はクラウドソーシングサイトの種類が増えており、発注者と受注者がマッチングしやすい環境が整いつつあります。
業務に関するやりとりは、チャットやメールでのテキストメッセージがメインです。発注後のトラブルを避けるためにも、業務マニュアルやレギュレーションを事前に作成しておきましょう。
クラウドソーシングの受注者は稼働状況も不規則になることが多いため、定期的に進捗状況を確認することも重要です。また、スキルについてもばらつきがあるので、業務を発注する際は事前にポートフォリオの提出やテストを行い人選のミスマッチを防ぎましょう。
▷クラウドソーシングとは?メリット・デメリットを簡単にわかりやすく解説
アウトソーシングと外注の違いを押さえておこう
今回は、アウトソーシングと外注の違いについて説明しました。この2つはとても似ていますが、じつは違う意味を持ちます。そのため、目的や業務によって使い分けることが重要です。
外部の力を借りて経営の改善を図りたい場合はアウトソーシング、できるだけコストを抑えつつ業務を代行して欲しい場合は外注を利用するのがよいでしょう。
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