アウトソーシングをするメリット・デメリット|導入を判断する方法

最終更新日時:2023/05/16

アウトソーシング

アウトソーシングのメリット

近年経営手法として注目されている、アウトソーシング。業務の一部を外部に委託することを指しますが、なぜアウトソーシングが現代ビジネスにおいて注目されているのでしょうか。本記事では、アウトソーシングのメリット・デメリットを、導入が必要な理由等とあわせて解説します。

アウトソーシングとは?

アウトソーシングとは、「outsource」が由来の和製英語で、企業が社内業務の一部を外部に委託することをいいます。対象となる業務は、経理・人事・営業・IT分野・生産・物流など多岐にわたり、業務効率化やコスト削減を図れる点が主なメリットです。

委託範囲はケースによってさまざまで、企画立案を社内で行い実務のみを委託することもあれば、企画の立案から実施まですべてを委託することもあります。

アウトソーシングでは特定の業務をより特化した専門業者に委託するため、専門領域外のノウハウを活用でき、業務品質を高めることが可能です。また近年は企業競争力の強化や人手不足解消を図るために、社内リソースをコア業務に投入し、ノンコア業務をアウトソーシングするといった使い方をする企業も増えています。

アウトソーシングとは?意味やメリット・デメリット・種類を解説

人材派遣との違い

アウトソーシングと混同されやすいサービスのひとつに、人材派遣があります。どちらも企業が社外に業務の一部を委託する方法ですが、両者の仕組みは大きく異なります。

アウトソーシングでは、自社と委託先企業の間で「請負契約」または「委任契約(準委任契約)」を締結するのが一般的です。一方、人材派遣は自社と人材派遣会社の間で「労働派遣契約」を締結します。アウトソーシングでは成果物の納品や業務の遂行で対価が発生するのに対し、人材派遣では派遣スタッフの労働時間で対価が発生する点は大きな違いといえるでしょう。

また、業務指示の方法においても両者には明確な違いがあります。アウトソーシングでは委託先企業の責任者や管理者が業務指示を行いますが、人材派遣では派遣先の従業員が派遣スタッフに業務指示を行います。

そのほかの違いについては下記の表のとおりです。ぜひ参考にしてみてください。

 アウトソーシング人材派遣
採用までの工数採用コストなし派遣会社と打ち合わせ
採用にかかる費用なしなし
※備品などの費用は必要
人件費の変動必要に応じて可不可
スキルの幅広さチームで対応1人分のスキル
教育の必要性即戦力のため不要必要
業務開始までの日数スピーディな導入可1ヵ月程度の準備が必要

シェアードサービスとの違い

シェアードサービスとは、グループ企業内の各部門で処理していた共通業務を、グループ内の1つの部門でまとめて処理する経営手法です。業務の効率化や品質向上、コスト削減を図ることを目的としています。

対象となるのは主に人事・総務・経理などの間接部門が多く、具体的には会計業務や給与計算業務、社会保険業務などが挙げられます。

シェアードサービスもアウトソーシングの形態のひとつであり、業務効率化やコスト削減という目的は共通しています。しかし、アウトソーシングが「外注」であるのに対し、シェアードサービスは「部門集約」という点で違いがあります。

ただし、シェアードサービスを社外に委託するケースもあるため、必ずしも「シェアードサービス=社内」とは限らない点を押さえておきましょう。

アウトソーシングと業務委託の違いとは?目的やメリット・デメリット

アウトソーシングの種類

シェアードサービスのほかにも、アウトソーシングにはいくつかの種類があります。ここでは、「コ・ソーシング」、「マルチソーシング」、「クラウドソーシング」、「オフショアアウトソーシング」の4種類のアウトソーシングについてそれぞれ解説します。

コ・ソーシング

コ・ソーシングとは、アウトソーシングの発注側の企業と委託先企業が対等の立場で協働する契約形態です。事業の成功により当初の計画を上回る利益の創出やコスト削減が実現できた場合、両者で利益を分け合うのが特徴です。

コ・ソーシングでは発注側の企業と委託先企業が共同で業務を行うため、発注側の企業は委託先企業のノウハウを吸収し、社内に蓄積できるというメリットがあります。従来のアウトソーシングのデメリットを解消できる形態として、コ・ソーシングを導入する企業が増えています。

マルチソーシング

マルチソーシングとは、業務分野ごとに委託先企業を選定するアウトソーシングの方法です。特定の企業に業務を丸投げしてしまうとコスト管理の甘さや、一部の業務における専門性の欠如などの問題が生じます。

マルチソーシングでは業務を分割し、それぞれの特性に合った企業に委託できるため、コストの最適化や業務品質の向上が期待できるのがメリットです。

クラウドソーシング

クラウドソーシングとは、企業ではなくフリーランスなどさまざまな人材をインターネット上で募って、特定の業務や作業を依頼する方法です。企業を通さず直接作業を依頼できるため、コストを抑えやすいのがメリットです。一方で、個人によってスキルの差が大きく、受注者の能力や品質の見極めが難しいという側面もあります。

近年の副業解禁や働き方の多様化に伴い、クラウドソーシング市場は急速に拡大しており、さまざまな分野や業務で活用が広がっています。

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オフショアアウトソーシング

オフショアアウトソーシングとは、海外の企業に業務を委託する方法です。人件費が安価で技術力が高いインドやベトナムなどの企業に委託することが多く、なかでもIT分野のアウトソーシングが盛んです。

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アウトソーシングの業務内容による分類

アウトソーシングは、業務内容により「BPO」「ITO」「KPO」の3つに分類されます。ここでは、それぞれの業務内容について解説します。

BPO

BPO(Business Process Outsourcing)とは、企画・設計から実施まで業務プロセスを一括して外部に委託するアウトソーシングです。BPOの対象分野は主に人事・総務・経理などの部門で、具体的には採用業務や勤怠管理、年末調整、経費処理などのバックオフィス業務が挙げられます。

専門性が高い企業にそれらの業務を委託することにより、コスト削減だけでなく、業務品質の向上やコア業務への社内リソース投入などの効果が期待できます。

BPOとは?メリット・デメリットや向いている業務を簡単に解説!

ITO

ITO(Information Technology Outsourcing)は、ITや情報システムに関する業務のアウトソーシングです。システム管理や社内ヘルプデスク、社内ネットワーク構築や運用・保守、セキュリティ構築・維持など、ITや情報システムに関するさまざまな業務を委託できるのが特徴です。

DXやIT化を推進したいと考えていても、社内に高度なITスキルを持つ人材が不足しているケースは少なくありません。そのような課題を解決する方法としてITOは大きな注目を集めており、非IT企業を中心に活用が広がっています。

KPO

KPO(Knowledge Process Outsourcing)は、情報分析や専門性が高い開発、設計など、知的生産活動のアウトソーシングです。データ収集や分析・解析、データ加工などマニュアル化することが難しい業務を委託できるのが特徴です。

KPOは事業戦略立案や経営計画策定、市場調査、医療分野の研究開発などの場面で活用されています。近年は、賃金水準が低いにもかかわらず優秀な人材が多い、インドや中国などの海外企業への委託が増えています。

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アウトソーシングが必要な理由

近年、労働人口減少による人材不足や市場の変化、働き方の変容などさまざまな背景から、アウトソーシングの需要が高まっています。ここでは、アウトソーシングが必要な理由について解説します。

多角化戦略を実行するため

企業経営の多角化は、アウトソーシングの需要拡大に影響しているといえるでしょう。近年の社会や市場の急激な変化に対応するため、多角化戦略を推進する企業が増えています。そのなかで、限られた自社のリソースはコア業務に集中させ、それ以外の部分はアウトソーシングを活用するという手法がとられています。

労働力を補填するため

高齢化社会の到来によって、若年労働人口は減少の一途をたどっています。さらに働き方改革によって労働時間も減少傾向にある現代において、企業が優秀な労働力を確保することは困難になってきています。このような社会的背景からも、労働力を補填するためにアウトソーシングの導入が必要になってきているのです。

人件費を削減するため

アウトソーシングは、人件費の削減という面でも注目されています。想定のコスト内で専門技術や知識を持った委託先企業に業務を委託できるため、社員を育成して業務に携わらせるより、効率的に高品質な成果物を得ることができるというメリットがあります。

アウトソーシング業界の将来性は?市場規模の推移や依頼する際の注意点

アウトソーシング導入によるメリット

アウトソーシングを導入することで、企業は業務の効率化を実現できるほか、さまざまなメリットを享受することも期待できます。ここでは、アウトソーシング導入によるメリットを解説します。

業務効率向上が期待できる

煩雑で手間のかかる定型業務や単純作業などをアウトソーシングすることで、業務効率の向上が期待できます。ムダな業務時間も削減できるようになり、社員は本来のコア業務に集中できます。

専門知識をスピーディに活用できる

アウトソーシングを受託する企業や人材の多くは、高い専門性を持っています。そのため、同じ業務でも社内で行うよりスピーディに高品質な成果物をあげることができます。

品質・サービスレベルの向上が期待できる

最新のテクノロジーが必要なサービスをアウトソーシングすれば、ツールなどを導入せずとも最新技術を業務に適用することができ、サービスレベルは向上します。

また、日々発生する単純作業や定型作業をアウトソーシングすれば、自社の社員はコア業務に集中できるようになり、業務やサービスの品質向上にもつながるでしょう。

業務に関わるさまざまな費用を削減できる

アウトソーシングを導入することで、コストの削減が可能になります。例えば、アウトソーシングによって社員を効率的に配置できるようになれば、ムダな人件費が抑制できます。

さらに、アウトソーシングにより専門知識の高いリソースや情報システムを活用できることで、社内での人材育成やシステム導入・維持にかかるコストの削減にもつながるでしょう。

競争力強化が期待できる

アウトソーシングを活用することで、企業競争力の強化も図れます。日々発生する付加価値の低い業務をアウトソーシングすることで、社員はコア業務に集中できます。自社の大切なリソースを、企業の利益に直結する業務に集中的に投下することで企業は成長し、競争力も強化されていくでしょう。

企業経営を合理化できる

部署や間接業務が増えることで企業内の組織は肥大化し、管理体制も複雑化してしまいます。これらの問題を解消するためにも、付加価値の低い業務はアウトソーシングし、組織をスリム化することが重要です。アウトソーシングをうまく活用できれば企業経営を合理化でき、自社のコア業務の運営にだけ注力することも可能になるのです。

アウトソーシングの導入事例|成功・失敗からわかる導入のコツ

アウトソーシング導入によるデメリット

アウトソーシングの導入にはさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。アウトソーシングの導入を検討する際は、デメリットを理解し、しかるべき対策を取っておくことも重要です。

ここでは、アウトソーシング導入によるデメリットについて解説します。

知識を社内に蓄積できない

アウトソーシングを導入することで、社内にその業務の知識やノウハウは蓄積されにくくなってしまいます。委託先と定期的に運用報告の機会を設けるなど、ノウハウを共有してもらう環境をつくっておくのも大事でしょう。

業務進捗・内容の管理が難しい

アウトソーシングを導入し、一部業務を委託してしまうと、その後の業務進捗や内容の管理が難しくなります。業務の品質や効率などもコントロールできなくなるおそれがあるため、委託先と適切なルールを設け、自社内でも管理ができる体制を整えておく必要があります。

情報が流出する危険がある

アウトソーシングを導入する業務のなかには、自社の重要な情報を扱うものもでてくるでしょう。その場合は、情報漏えいのリスクに細心の注意を払う必要があります。委託先のセキュリティレベルを確認することはもちろん、情報の取り扱いについての契約を交わすなどの対策が必要です。

費用対効果が得られるかわからない

アウトソーシングのデメリットのひとつに、適正コストを判断しにくいという点があります。自社で対応したことがない業務であればなおさらで、費用対効果が得られるかわからないという状況に陥ることも考えられます。

業務の事前リサーチを行い、委託先とも十分に話し合いをしたうえで、コストを判断するようにしてください。

社員の意欲が低下する可能性がある

担当していた業務がアウトソーシングされることで、社員の意欲が低下してしまう可能性もあります。「なぜ、その業務をアウトソーシングするのか」、「アウトソーシングによって自社にどのようなメリットがあるのか」など、その目的や選定理由は、社内でしっかり共有しておきましょう。

エンジニアをアウトソーシングするメリット・デメリット!選ぶ際のポイントを紹介

アウトソーシング導入によって高い効果が期待できる業界

さまざまなメリットを企業にもたらすアウトソーシングですが、業界や業種により相性の良し悪しがあります。ここでは、アウトソーシング導入によって高い効果が期待できる業界を紹介します。

IT業界

技術の発展スピードが著しいIT業界では、より効果的にビジネスを展開するために、アウトソーシングを積極的に活用しています。アウトソーシングしている業務も、バックオフィス業務からシステム開発、インサイドセールス、カスタマサポートまで多岐にわたります。

ITアウトソーシングとは?活用する際の注意点やおすすめのサービス

製造・販売業界

製造・販売業界では、近年OEM事業が盛んに行われている背景もあり、アウトソーシングが積極的に導入されています。例えば、製品の企画や開発は自社で行い、製造をアウトソーシングするというようなことが行われています。

サービス・飲食業界

店舗を運営するサービス業や飲食業界でも、アウトソーシングが盛んに導入されています。例えば、複数ある店舗の在庫管理や原価管理などをアウトソーシングすることが多く、これによってメイン事業の展開に自社のリソースを集中的に投入しています。

アウトソーシング導入時の判断方法と基準

アウトソーシングを効果的に行うためには、どの業務に導入するのか十分に検討する必要があります。ここでは、アウトソーシング導入時の判断方法と基準について解説します。

間接的な業務であるか

アウトソーシング導入を検討する際に、コア業務とノンコア業務をしっかりすみ分けする必要があります。

コア業務は、企業の利益を生む直接的な業務です。業務の専門性や難易度が高いだけでなく、業務が定型化しにくく再現性も低いといえるでしょう。

一方、ノンコア業務とは、コア業務に間接的に関わってくる業務を指します。専門性や難易度は低く、業務の定型化や再現率も高いので、アウトソーシングに向いているといえるでしょう。

定型的な業務であるか

業務内容や作業の流れが定型化できる業務は、アウトソーシングしやすい業務といえるでしょう。定型的な業務では、マニュアルを設けるなどの対策をすることで、誰でも業務をこなせるようになります。

おすすめのアウトソーシングサービス15選|業務別のサービスを紹介

アウトソーシングを活用し企業の競争力を強化しよう

本記事ではアウトソーシングについて、そのメリットやデメリット、導入を判断する方法などについて解説しました。高齢化社会の到来による人材不足や、働き方改革の促進など、社会の変容にともない、アウトソーシングの導入を検討する企業は増加傾向にあります。

アウトソーシングを活用することで、企業はコア業務により注力できるようになり、競争力の強化や業務の効率化を実現することもできます。自社の状況や目標などをかんがみ、アウトソーシングの導入を検討してください。

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