給与計算の基礎ステップ~初心者でもわかる基礎知識から計算方法まで
給与計算を行うために必要となる基礎知識、給与計算で活用する計算式や給与計算業務の流れについて紹介しています。諸手当や控除の内訳や、その種類について触れているので、給料から差し引かれる控除の意味も把握することができます。
目次
給与計算とは?初心者でもできる?
そもそも給与計算というのは、支給された金額から控除額を差し引き、従業員へ支給するために行われる業務のことです。
給与計算業務を行うためには、給与計算の基礎知識や、支給額を決定するための計算をする方法を把握しなければいけません。給与計算に関わる内訳などを知っておきましょう。
▷給与計算を自動化・効率化するには?メリット・デメリットを徹底解説
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給与計算の目的
給与計算の目的を知ることによって、その重要性を改めて理解できます。給与計算は、従業員に給与を支払うという目的以外にも、従業員ひとりひとりが保険料や税金を納めるという目的があります。
従業員に適用される手当や社会保険は、パートや派遣社員といった雇用形態によって内容も変わってきます。
それだけでなく、従業員の年齢や扶養家族の人数によっても、所得税や保険料の金額が変動します。
これらは労働契約によって定められているため、期日までに支払いを完了し、計算時には誤りがないよう気をつけなければいけません。
給与計算初心者が理解しておくべき基礎知識
正確に行うことが当然とされている給与計算ですが、計算するためにも基礎知識を身につけておく必要があります。給与計算業務での基礎用語もあり、事前に把握しておくことで計算をスムーズに進められます。
また、給与計算は、従業員の給料がいくらになるかを算出するだけで終わりではありません。算出された給料を支払う時にも、労働基準法に則った方法で支払うため、この支払が完了してようやく給与計算が終わります。
賃金支払い5原則
給与を支払う時には、労働基準法第24条で「賃金支払い5原則」として定められている方法で支払うようになります。その5原則というのが以下の5つです。
- 通貨で支払う
- 直接労働した当人へ支払う
- 全額を支払う
- 毎月一回以上支払う
- 一定期日を設けて支払う
賃金支払い5原則が守られなかった場合には、労働基準監督署から立ち入り調査が行われることもあり、指導や罰則が課せられる可能性があります。
アルバイトの従業員が未成年だということで親の口座に従業員の給料を振り込んだとします。そうすると、「直接労働した人物ではない相手へ給料の支払いが行われた」ことになるため、違法行為となってしまいます。
罰則を課せられることがないよう、賃金支払いの5原則を守って給料の支払いをしましょう。
給与計算の仕組み
基本給や時間外労働手当によって支払われた給料が総支給額となり、そこから保険料や住民税などが含まれた控除が天引きされます。
天引きされて出された総額が従業員に渡される手取りとなるので、総支給額がそのまま従業員に渡されるわけではありません。
▷給与計算の仕組みとは?支給額・控除額・手取り額などわかりやすく解説
給与計算初心者がやりがちなミス・失敗例
人の手で作業をする以上は誰にでもミスが生まれてしまいますが、初心者の場合は特に失敗が起こりやすい傾向があります。
初心者がやりがちなミスを紹介していきます。
- 単純な計算ミス
- 控除額を理解していない
- 勤怠情報や従業員情報を給与に反映できていない
単純な計算ミス
エクセルを利用して手入力で給与計算する場合などは、特に入力ミスによりヒューマンエラーが起こりやすいです。
何十人もの計算を初心者がやるとなると、集中力も続かずにケアレスミスが多発することは避けられません。
給与計算業務に慣れている人であればミスなくできるかもしれませんが、初心者の場合はなおさらです。
単純なミスを減らすには、複数人で作業をしてダブルチェックしたり、計算ソフトを導入してデジタル化するなどの対策が効果的です。
給与計算に対してリソースを割けず、ダブルチェックの体制づくりが難しい場合には、給与計算ソフトの導入をおすすめします。
▷給与計算をExcel(エクセル)で行う方法とは?メリットやテンプレートも紹介
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ジンジャー給与は従業員情報や勤怠情報などと連携し、自動的に計算してくれるクラウド型の給与計算システムです。
面倒な手入力をする手間を省くことができ、給与計算業務初心者の方でも計算ミスを大幅に防ぐことができます。
導入にあたってのコストもリーズナブルで、操作性も良いので導入ハードルが低いのもポイントです。
控除額を理解していない
給与計算をする上で業務を複雑化しているのが、様々な控除の存在です。
数十種類以上もある控除項目は、従業員の収入や在籍年数、扶養の有無などによって代わり、個別に計算しなければなりません。
そのため、初心者の場合は全ての控除額を理解しておらず、差額が生まれてしまうケースも十分に考えられます。
勤怠情報や従業員情報を給与に反映できていない
働き方が多様化している昨今において、リモートワーク・時短勤務・フレックス制などの様々な働き方が推奨されています。
働き方が多様化しているという点は、従業員にとってはプラスなポイントですが、給与計算を複雑にする要因となります。
フレックス勤務によって深夜手当が発生したり、リモートワークで勤怠管理ができていなかったりと、あらゆるケースが生まれます。
このようなミスは、勤怠情報と給与計算の紐付けによって防止することが可能です。
ジンジャー給与には、勤怠管理ツールとの連携が可能で、情報を連携することによって給与計算業務を簡略化できるためです。
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給与計算の分類
給与計算するためには、基本給などの支給額や保険料などの控除をします。月にどれだけ出勤したかの勤怠データに分類されている内訳について把握しておきましょう。
一言に総支給額や控除とまとめても、その中には複数の手当に分類されているため、計算時にはどの分類に当てはまる金額かを知っておく必要があります。
基本給と諸手当
特に耳にする基本給は、名前の通り基本的な賃金のことです。これは勤続年数や役職によって金額の変動がありますが、それぞれの企業で決められた金額が算出されるようになっています。
この基本給に、残業代とされる時間外労働手当や、住宅関連手当、出張手当などの諸手当が加えられることで支給額が決まります。
時間外労働手当は、基本給として支払われる分よりも割増した額を払わなければいけません。住宅関連手当は企業が従業員の住宅費用を補助してくれる手当です。
こちらの手当は、賃貸物件の家賃を企業が負担するか、住宅ローンの返済を企業が補助する場合があります。企業によって手当の内容が変わってくるので、事前に確認しておきましょう。
▷基本給とは?給与や手取りとの違いは?低い場合のデメリットも解説
基準内給与と基準外給与
残業代については、基準内給与を元にして算出されます。時間外労働をしている従業員がいる場合は、給与計算の前に残業代の計算をしなければいけません。
残業代の計算に必要になる基準内給与とは、残業代計算のために基礎となる賃金のことです。反対に、残業代計算時に基礎に入らない賃金を基準外給与と言います。基準外給与となるのは7つあり、以下のとおりです。
- 通勤手当
- 家族手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われる給与
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる給与
従業員の個人的な事情によって支払われた手当が基準外給与としてあてはまるようになります。ですが、一律に支給されている家族手当や通勤手当などは個人的な事情として支給されるものではないため、基準内給与として該当するようになります。
給与計算の控除の種類
総支給額から天引きされる控除の内訳についても紹介していきます。
従業員に何かあった時のためにかけられている健康保険や雇用保険。健康保険の負担額は勤務先と半額ずつになり、企業の加入している健康保険組合によって保険料率が変わります。
失業した場合や雇用継続が難しくなった場合に活用される雇用保険は、定められている保険料率に則って企業と従業員で負担するようになります。
厚生年金保険料も、企業と従業員が半額ずつ負担するようになります。こうした保険料だけでなく、住民税や所得税も控除に含まれます。
▷給与所得控除とは?基礎知識や給与計算方法をわかりやすく解説
法定控除と協定控除
控除の種類は法定控除と協定控除に分けられています。法定控除に入るのは以下の6つです。
こちらの6つ控除は法律によって控除が許されているため、法定控除として含まれます。
この法定控除以外の賃金から控除をしたい場合は、従業員過半数の代表者と労使協定を締結させて、協定控除を設ける必要があります。協定控除に入るのは次のようなものがあります。
- 社宅費や寮費
- 親睦会費
- 生命保険料
- 労働組合費
- 財形貯蓄費
- 社内預金
協定控除は労使協定が締結されていなければ控除としては含まれないため、企業によっては協定控除がない場合もあります。
▷給与明細に記載される項目とは?天引きされる税金や保険料を解説
給与計算業務初心者が抑えておくべきポイント
給与計算業務によって作られる給与明細書に計算式などは書かれませんが、従業員一人一人にどれくらいの給料が支給され、控除額はいくらになっているのか一目で分かるようになっています。
給与明細書を作るためには、いくつかのポイントを抑えておくことで、より作成しやすくなるのです。
給与明細書の成り立ち
給与明細は、勤怠、支給、控除の三項目によって成り立っています。給与計算期間とされる出勤日数や不就労日数が記載される勤怠で、給与計算の基礎とされます。
次に支給ですが、これは基本給だけでなく、住宅手当や通勤手当など、従業員によってかかる各種手当が表示されます。勤怠と支給の二つの金額を合計したものが総支給額となり、ここから差し引く控除によって手取りが決まるのです。
▷給与明細とは?基礎知識から給与計算時の発行義務・発行方法について
給与計算業務の基礎用語
給与となる総支給額の中には、毎月の金額が変動する所定外給与と、勤務時間や営業成績で金額の変動がしない所定内給与があります。
また、所定労働時間を超えた範囲の法定時間内残業も給与計算には重要になります。
総支給額に含まれる性質の給与
所定内給与は「固定給」といった呼ばれ方もされています。基本給や手当などは毎月定額の給与なので、固定給として該当します。
所定外給与は「変動給」とも呼ばれ、時間外勤務手当の他にも歩号給なども該当します。変動給は固定給と違って月ごとに計算をし直す必要もあるため、給与計算業務で注意が必要です。
確認しておきたい「法定時間内残業」
法定時間内残業は、労働基準法32条で定められた1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えている勤務時間が対象となります。
給与計算を行う時には、この法定時間内残業に割増賃金を適用するため、企業が定めた残業代を把握しておきましょう。
社会保険料の計算に必要な「標準報酬月額」
標準報酬月額とは、毎年の4月、5月、6月に支給されている給与の平均額のことです。月々の社会保険料の算出のために標準報酬月額は必要となります。
給与から控除される税金は所得税と住民税
1月1日の時点で居住する地域へと納める住民税は、企業が給料から差し引いています。これによって、住民税の支払いを従業員が個人で行う手間を減らせるのです。
また、個人が1年間の内に得た所得に対して課税される所得税は、源泉徴収によって天引きされます。所得税は年末調整や確定申告によって精算されるので、こちらも企業側に任せることができます。
給与計算の毎月の流れ
給与計算業務を行う流れは、まずは従業員情報の確認から始まります。
雇用形態や勤怠、業績によって従業員情報は変わり、不就労分となる控除額の計算も行われます。欠勤や遅刻をしているとその分基本給が下がります。
総支給額が算出された後、保険料の有無等を確認してから控除額の計算をします。算出された控除額分を総支給額から差し引き、従業員へそれぞれの給与を支給していきます。
支給する際には賃金支払い5原則の通りに支払いを行いましょう。最後に控除した社会保険料や税金を関係機関へと納付して給与計算業務は完了します。
▷給与計算で間違いが発生した場合の対処法は?防止策についても解説
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給与計算初心者でもわかる流れを3STEPで解説
給与計算をする時は、総支給額と控除額の計算を行って、支給額の決定がされます。この3STEPで給与計算業務を進めていくためにはどんな計算をすればいいか、説明していきます。
▷給与計算を内製化した場合のメリット・デメリットとは?よくある課題も解説
【STEP1】総支給額の計算
総支給額の計算は以下のとおりです。
基本給+各種手当-欠勤控除
基本給はすぐに分かる場合もありますが、各種手当がいくらになるか分かるまで時間がかかる場合もあります。
【STEP2】控除額の計算
控除に含まれているものの計算はそれぞれ以下の通りとなっています。
①保険料の計算
- 社会保険料:標準報酬月額×保険料率
- 雇用保険料:総支給額×保険料率
②税金の控除額を計算
住民税は企業が支払う際は給与からの天引きがされますが、所得税は課税対象額によって計算されます。その計算式は次のとおりです。
- 課税対象額=総支給額-非課税対象の諸手当-社会保険/雇用保険
③所得控除と税額控除
税額控除は、所得控除とは別に税金を安くするためのもう一つの制度です。
所得控除は所得金額から一定額を差し引くことができますが、税額控除は最終的に算出された税額から一定額を差し引くことができます。計算式は以下のとおりです。
- 所得-所得控除=課税される所得税-税額控除=納付する所得税
【STEP3】支給額の決定
最後に手取りとなる支給額を計算しましょう。
- 手取り=総支給額-保険料/税金などの控除額
これによって従業員の手取りとなる金額が決定します。支給額が決定すれば、金融機関に振り込み、給与明細書を作成して従業員へ渡しましょう。
翌月の10日までに控除によって差し引いた保険料や税金を関係機関へ納付することで給与計算が完了となります。
初心者は給与計算の流れを理解しよう
給与計算業務のためには、基本給や諸手当以外にも、複数の控除について把握しておかなければいけません。
諸手当や控除の内訳は細かく決められているため、賃金支払い5原則など、労働基準法に違反せず正確に給与計算業務を行いましょう。
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