RPAの内製化とは?外部委託との違いやメリット・デメリット

最終更新日時:2023/08/23

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RPAの内製化

RPAを導入する際、一連の導入プロセスを外部委託するか、あるいは、全て内製で進めるかについては、組織の状況によって異なるでしょう。今回は、RPAの内製化について、外部委託との違いや社内で完結するメリット・デメリットなどを紹介します。

RPAの内製化とは?

RPAの内製化とは、企業が外部のベンダーやサービスプロバイダーに依存することなく、自社内でRPAの導入・運用・管理を行うことを指します。

これには、RPA化できそうな業務の洗い出し、RPAツールの選定、プロセスの設計、ロボットの開発、試用、効果測定および課題検証といった流れを経て本格的な導入となった後の運用、維持管理までの一連のプロセスが含まれます。

そのためRPAの導入を内製化するには、RPAの仕組みのほか、ツールを使いこなすための知識やスキルを必要とします。その一方で、外注費をカットできる、社内にノウハウが蓄積されるといったメリットもあるのが、RPA導入の内製化です。

RPAの外部委託との違い

内製化に対して、RPAの外部委託とは、一連の導入プロセスや運用を外部の専門家やベンダーに依頼することを指します。

専門的な知識や豊富な経験を持つプロフェッショナルに業務を任せることができるため、社内での教育や人材育成にコストや時間をかける必要はありません。ただし、相応の外部委託費用が発生することになります。外部委託と内製化には、それぞれにメリットとデメリットがあるため、企業の状況や目的に応じて選択する必要があるのです。

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RPA内製化のメリット

RPAの内製化は、多くの企業で注目される動きとなっています。その背景には、内製化による様々なメリットが存在します。その主要なメリットについて詳しくみていきましょう。

社内ニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできる

RPAの内製化の最も大きなメリットは、企業独自の業務要件やニーズに合わせてRPAのプロセスを再設計し、開発し直すなど、カスタマイズが迅速かつ柔軟におこなえる点にあります。

外部委託する場合、一般的な業務フローやプロセスに合わせたソリューションが提供されることが多いため、特定の要件に合わせたカスタマイズが難しいことがあります。

しかし、内製化では、業務プロセスの変更、新しいシステムの導入、独自のデータ処理の要件設定など、社内事情にそった細かな変更・設定にも対応でき、企業独自の状況や課題に合わせてRPAを最適化することができます。

このような柔軟性は、業務効率の向上やエラー削減、そして業務の質の向上に直結します。

トラブル発生時の迅速な対応が可能となる

RPAの内製化がもたらすもう一つの重要なメリットは、トラブル発生時の迅速な対応ができる体制が社内に構築できることです。

RPAは自動化された業務プロセスを実行するため、問題が発生した場合、その影響は即座に業務に現れます。

外部委託の場合、トラブルの発生を確認し、ベンダーに連絡を取り、対応を待つという時間が発生します。この時間は、業務の停滞や損失を拡大させる可能性があるでしょう。

一方、RPAを内製化している場合、トラブルに関する報告・相談、改善策の実行が全て社内で完結できるため、解決までの時間を最大限に短縮できるのです。

また、不具合による業務停止などのリスクを最小限に抑えることができるだけでなく、トラブル対応ノウハウが社内に共有されることから、同様の問題の再発を防ぐための知見も社内に蓄積されます。

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開発コストを抑えられる

外部委託の費用は、RPA導入において、どのプロセスを委託するかや規模によってコストが大きく異なりますが、RPAロボットを1件(1体)開発するにあたっての費用は、おおよそ30万円程度が相場とされています。

そのほか、外部のエンジニアに常駐して運用をしてもらう際には、月額50〜150万円程度の外注費を見込んでおく必要があるでしょう。しかし、内製化を選択することで、導入にかかる初期費用やランニングコストを大幅に抑えることが可能です。

高額な初期費用の削減はもちろん、ランニングコストといった中長期的な視点でのコスト削減は、企業の競争力向上に寄与します。代わりに内製化に必要な人材育成のコストが必要となる点に注意しましょう。

社内にナレッジを蓄積できる

RPAの内製化は、社内に専門的な知識や経験を蓄積し、持続的な成長の土台を築くことに繋がります。

外部委託する場合、トラブルシューティングやカスタマイズの際の方法や知識の詳細がユーザーに共有されることはありません。しかし、内製化により、これらのナレッジやノウハウが社内に蓄積され、よりよい運用や改善策の立案に生かされ続けることになります。

さらに社内ナレッジの蓄積は、社内教育プログラムの構築・ブラッシュアップによる人材育成の効率化にも貢献するでしょう。そのため、企業の持続的な成長と競争力の向上に寄与する不可欠な要素ともなり得るのです。

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RPA内製化のデメリット

RPAの内製化は多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。

RPAに関する豊富な知識・スキルが必要となる

RPAの内製化を実行するには、プログラミング、業務プロセスの設計、トラブルシューティングなど、RPAの技術やツールに関する専門的な知識とスキルが必要です。

しかしながら、これらの知識やスキルを備えたIT人材は、獲得競争が激化し、採用が難しい状況にあります。また、社内で人材育成する場合にも、時間とコストがかかるため、組織の現状によっては短期的なスケジュールでの計画実行や課題解決が難しいこともあるでしょう。

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開発者への業務負担が増える

RPAの内製化を進める際、開発者やIT部門の業務負担の増加は避けられない課題となります。

特に、RPAの導入時の初期設定やプロセスの自動化を検討する際は、既存の業務に加えて設計、開発、テストといった一連の作業が発生します。これにより、開発者の業務スケジュールが圧迫され、他の重要なプロジェクトやタスクへの対応が遅れるリスクが生じることも考えられます。

また、RPAの運用中にトラブルが発生した場合は、迅速な対応が求められるため、余裕を持った人的リソースの確保およびスケジューリングをしなければなりません。

専門家からの助言が得られない

内製化した場合、RPAのプロフェッショナルである専門家からの助言やフィードバックを受け取る機会が減少してしまいます。

RPAやAIといった最新テクノロジーは、日進月歩で進化し、実用が進められる領域です。ベンダーやRPA導入のコンサルなどをおこなう会社は、当然ながら、日々、最新の技術動向の調査や活用事例などの情報を収集しています。そのようなトレンドをいち早くキャッチしにくくなってしまう点は、少なからずデメリットといえるでしょう。

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RPA内製化の手順

RPAの内製化を進める際には、計画的かつ段階的なアプローチが求められます。

ここからはRPA内製化の主な手順についてみていきましょう。

RPA人材の育成・確保する

RPA導入の成功は、専門的な知識やスキルを持った人材の有無に大きく依存します。

まず、社内からRPAプロジェクトのリーダーやメンバーを選定します。その時点で、社内にRPAに関する知識が不足している場合は、外部の研修やセミナーの受講など、基本的な知識や技術の習得から始めましょう。そのほか、経験豊富な専門家を育成担当として一時的に雇用することで、人材育成をサポートする方法もあります。

RPAによって自動化する業務を洗い出す

既存の業務の中でRPAによる自動化により生産性や効率が上がる可能性のある業務を洗い出していきます。その際は、まず現状の業務の棚卸しから始め、業務プロセスの全体像を可視化することから始めましょう。

業務プロセスの全体像が可視化された後は、業務における課題の検出、自動化が可能なプロセスの洗い出しといった手順で進めます。RPAによる自動化の候補が決まったら、作業内容だけでなく、作業時間も記録しておくとRPA導入後の効果測定もしやすくなるでしょう。

RPAの要件定義を実施する

RPAを導入する業務やプロセスを明確にした後は、その自動化に必要な要件を詳細に定義します。ここで定義するのは、「ロボットに置換する作業内容」と「ロボットの動き」の2点です。

具体的には、業務フローの確認、自動化の範囲を詳細に設定したうえで、ロボットの動きを定義していきます。たとえば、「エクセルを開く」動作についても、実際には、何曜日の何時に開くのか、すでにエクセルが開かれていた際はどう動くのかなど、細かい設定が必要になります。そのため、要件定義の段階での十分な検討は、後の開発や円滑な運用につながる重要なプロセスです。

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RPAツールの設計・開発を進める

要件定義にもとづき、RPAツールの設計をおこないます。これには、業務のフローの設計、ロットの動作の設計、エラーハンドリングの設計などが含まれます。設計が完了したら、実際の開発を進め、テストを行いながらツールを完成させます。

保守・改善を行う

RPAツールの本格導入後も、業務の変更やシステムの更新などに対応するための保守・改善は継続的におこなわなければなりません。これにより、RPAの効果を長期的に維持・拡大することができます。

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RPAの内製化に成功した事例

RPAの内製化は、多くの企業で取り組まれており、自動化によって生産性や業務改善に成功した事例も多々あります。ここでは、2社の成功事例を詳しく紹介します。

静岡トヨペット株式会社

自動車の販売や整備を手掛ける静岡トヨペット株式会社では、業務の効率化を目指してRPAの内製化に取り組みました。当初は社内にRPAの知識やノウハウはなかったものの、抜擢された6名のRPA開発チームメンバーに対し、RPA開発基礎、応用トレーニング、RPAトレーナー養成教育などの育成プログラムの受講を実行するところからRPAの内製化を開始しました。

その後は、複雑な業務プロセスや大きな負担となっていたデータ入力作業を自動化することで業務の効率化とミスの削減を実現。現在もロボット開発、エラー対応など実務ベースでスキルやナレッジを増強し続け、さらなる業務効率化や生産性向上を目指しています。

フロントリテイリング株式会社

フロントリテイリング株式会社は、百貨店を中心としたリテールビジネスを展開する企業です。

同社は、顧客データの管理や在庫管理などの業務を効率化するためにRPAの内製化に取り組みました。社内にRPAチームを設立し、業務プロセスの分析からRPAの設計・開発、運用までを一貫しておこなうことで、業務の効率化を実現しています。

また、内製化するにあたっては、導入後、システム部門に頼ることなく、各業務部門にて使いこなせるRPAツールの設計にこだわった点が、迅速な展開や生産性の向上に大きく貢献したといいます。

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RPAの内製化を成功させ企業の成長につなげよう

RPAの内製化は、業務効率化やコスト削減の実現を目指す企業にとって大きなメリットをもたらす選択肢の一つです。

成功の鍵は、専門知識を持った人材の育成や適切な要件定義、そして継続的な改善活動にあります。内製化によるコスト削減やスピーディな業務改善は、競争力の強化やビジネスの拡大にも大きく貢献するでしょう。持続的な成長を支える重要なステップとして、RPA導入の内製化を検討してみてはいかがでしょうか。

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