SFAとERPの違いとは?それぞれの役割や関係・導入メリットについて
SFAとERPは混同して捉えられがちですが、役割としてはどのように異なるのでしょうか。本記事では、SFAとERPの役割や機能、導入メリットの違いを解説します。SFAやERPを選ぶ時のポイントも紹介しているので参考にしてください。
目次
SFAとは?
SFA(Sales Force Automation)とは、営業支援システムのことです。
営業活動の支援を主目的としたツールであり、商談履歴や案件進捗といった一連の営業活動を管理し、仕組み化を通じて営業組織の強化に役立てられます。
これまで営業担当がメモ帳やExcelなどに書き留めていた内容を、1つのシステムに集約することで、同僚・先輩・管理職からのサポートも受けやすくなっています。
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(1)SFAの役割
SFAには「商談内容等の記録・共有」「意思決定の補助」という2つの役割があります。
#1: 商談内容等の記録・共有
1つ目は、商談内容等の記録・共有です。SFAは見込み顧客を発掘してから成約に至るまで、あらゆる営業活動を記録します。
SFAに活動履歴が蓄積されると、個々の営業ノウハウが集まるだけでなく、トッププレイヤーの成果要因を分析することで、全体のパフォーマンスの向上が期待できるでしょう。
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#2: 意思決定の補助
2つ目は、意思決定の補助です。SFAに記録される営業活動は、それ自体がナレッジとして機能します。
自分自身が担当している案件と類似の事例を抽出し、ケースバイケースの対処と結果を閲覧できると、過去の成功・失敗体験を踏まえたうえでの判断ができるでしょう。
また、SFAはアポ獲得数、商談化率、成約率、案件稼働数などの指標を可視化し、そこから売上の見込みを算出します。
そのため、管理職は売上目標に対して進捗状況がどのくらいなのかを把握し、商談が停滞・遅延しているメンバーを支援するなども可能です。
(2)SFAの主な機能
ここではSFAに搭載される主な機能を5つご紹介します。
#1: 顧客管理
1つ目は顧客管理です。社名をはじめ、所在地・連絡先・担当者の名前や役職・過去の商談履歴・取引履歴・決裁者などの情報を一元管理します。
顧客と営業担当者を紐づけることで、重複対応や担当変更時の引き継ぎがされないという事態を予防できるでしょう。
#2: 案件管理
2つ目は案件管理です。見込み顧客に対して営業をかけてから、受注までのプロセスを管理します。
また、案件の進捗状況だけでなく、商材の提案内容・見積もりの提示額・次回のアクション予定など、これまで担当者しか知らなかった情報も可視化されます。
これによって受注の確度を分析するだけでなく、管理職もより細かいフィードバックを実施できるでしょう。
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#3: 行動管理
3つ目は行動管理です。アポイント獲得数・商談数・受注数など、行動と結果を数値化し、目標の達成度合いやボトルネックの特定に役立てます。
企業ランクごとに必要な行動量を算出し、キャパオーバーにならないように調整する、未対応のタスクがあればアラートが鳴るなどの機能を搭載するSFAも多いです。
#4: 売上予測
4つ目は売上予測です。受注見込みのデータをベースに売上予測を算出し、営業実績と突き合わせて、乖離の度合いや課題点をリアルタイムで抽出できます。
全体のデータだけでなく、顧客の業種や事業規模などのセグメントを分けて集計することも可能です。売上予測の自動化によって状況把握がスピーディになり、経営の軌道修正も迅速に行えるでしょう。
#5: 見積書作成
5つ目は見積書作成です。SFAの見積書作成は必要な情報を案件情報から自動反映するだけではありません。
項目のプルダウン化やテンプレート機能を有しているツールも多く、素早く発行できるメリットがあります。また、見積書の管理機能があるツールであれば、SFA上で承認を行うことも可能です。
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(3)SFAの導入メリット
あらゆる営業活動を記録・共有し、意思決定をサポートするSFAには2つの導入メリットがあります。
#1: ノウハウを共有できる
1つ目は、ノウハウを共有できる点です。SFAの導入を通じて、営業プロセスが可視化されることで、あらゆるシチュエーションにおけるベストプラクティスが分析できます。
これによってトッププレイヤーとの違いを言語化しやすくなり、業務の平準化に役立てることができるでしょう。
#2: 戦略立てに役立つ
2つ目は、戦略立てに役立つ点です。SFAでは入力したデータを多角的な視点で分析できます。
単一的なデータ集計だけでなく、複数のデータを組み合わせてレポートを作成し、チーム全体にフィードバックを行うことが可能です。
成約に結びつきやすい顧客属性の特定、失注に結びつきやすいトリガーの把握、営業活動のパイプライン管理などを実行するための足がかりとして、SFAで収集したデータが活用されます。
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ERPとは?
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業資源計画という意味を持つ言葉です。
統合基幹業務システムと呼ばれることもあり、部門ごとに点在するヒト・モノ・カネ・情報という経営資源を1つのシステムに集約し、経営の効率化を支援します。
(1)ERPの役割
ERPの役割は、データの管理方法を統一し、経営資源を最適化することです。
現在は部門ごとに別々の業務システムを活用するシーンが増えた結果、データのフォーマットが異なってしまい、現状把握が煩雑になっています。
ERPの導入を通じて、部門ごとに点在するデータを収集・整形し、経営資源の分配を最適化することで、経営の効率化が期待されています。
(2)ERPの主な機能
ここではERPに搭載される主な機能を4つご紹介します。
#1: 販売・購買管理
1つ目は販売・購買管理です。自社が提供する商材の販売・在庫・出荷の状況確認に加えて、各種書類の作成、受発注・売上管理などの機能が該当します。
#2: 生産管理
2つ目は生産管理です。生産や資材などの計画から、人員・設備などのリソース管理、コストマネジメントなど、製造業における生産プロセスの支援機能が該当します。
#3: 財務管理
3つ目は財務管理です。決算書類をはじめとする書類作成や、固定資産・与信管理などの機能が該当します。
#4: 輸出入管理
4つ目は輸出入管理です。貿易に関する受発注管理、明細書・計算書・請求書の管理、外貨取引や為替予約の管理などの機能が該当します。
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(3)ERPの導入メリット
企業活動を統合的に管理するERPには、主に3つの導入メリットがあります。
#1: 企業のデータを一元管理できる
1つ目は、企業のデータを一元管理できる点です。これまでは部門から情報を集約し、フォーマットを整形してから分析に移るプロセスが一般的でした。
しかし、プロセスが複雑化するとミスが起こりやすく、データの転記・整形が発生することも珍しくありません。
ERPは統合データベースに情報を一元管理し、統一のデータフォーマットを使用するため、データの不整合や転記ミスが起こりにくくなります。これによって工数削減に貢献しつつ、経営層が素早く現状を把握できるようになるでしょう。
#2:セキュリティを一元管理できる
2つ目は、セキュリティを一元管理できる点です。データが分散すると、情報漏えいや不正利用のリスクが高まるだけでなく、管理者の状況把握にも時間がかかってしまいます。
そのため、コンプライアンス違反の検知を効率化するうえでも、データを一元管理するERPの導入は有効であるといえるでしょう。
#3: リアルタイムなデータで適切な経営判断ができる
3つ目は、リアルタイムなデータで適切な経営判断ができる点です。ERPではあらゆる部門の情報がリアルタイムで更新されていきます。
そのため、経営層が把握する情報と現場の実情にタイムラグが発生することなく、企業活動の軌道修正が適切に実施できるでしょう。
SFAとERPの関係性
SFAとERPは連携させることで相乗効果を生みます。
SFAは営業活動にフォーカスされた機能を揃えていることから、営業部門のみで活用すると思われがちですが、SFAで収集したデータは経理部門などのバックオフィスでも活用可能です。
ERPは統合基幹業務システムの役割を持ち、SFAに類似した機能を持ち合わせているものもあります。
一方で営業部門と経理部門では必要とされる機能やデータの用途が異なるため、ERP単体ではできることに限界があるでしょう。
そこにSFAを連携させることで、営業部門の業務効率化を進めながら、請求書をはじめとする各種書類の処理を経理部門で行い、売上状況に応じて経営戦略を修正するという動きをよりスムーズに進めることができるのです。
SFAとERPの違い比較表
SFA | ERP | |
役割 | 営業活動の効率化 | 社内リソースの最適化 |
主な機能 |
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導入メリット |
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SFAとERP、どちらを選べば良い?
SFAとERPは役割やメリットが異なる一方で、機能が重複する箇所もあります。
そのうえでSFAとERPのどちらを選ぶべきかという点について、3つのポイントをご紹介します。
(1)導入の目的をはっきりさせる
1つ目は導入の目的をはっきりさせることです。自社が抱えている課題を整理し、SFAやERPの導入によってどのような変化を実現したいのかを明確化しましょう。
この部分が曖昧な場合、システムに必要な機能を定義することも難しくなってしまいます。
まずはAs-Is/To-be分析などを活用し、現在の状態と理想の状態を定め、そのギャップとなる課題を抽出したうえで、改善すべき優先順位を決めましょう。
その際、課題解決のアクションとして、SFAとERPどちらのほうが役割として適しているかを判断します。
(2)扱いたい情報の幅を決める
2つ目は扱いたい情報の幅を決めることです。SFAが営業活動に関連する情報の収集・活用に特化しているのに対して、ERPは社内全体の情報を統合・管理するため、データの取り扱い範囲が異なります。
したがって、導入の目的に応じて、どの領域のデータを扱うのかという点も、選定において重要なポイントです。
営業活動の構造や売上状況の詳細を把握したい場合はSFA、部門をまたいだデータ統合や社内リソースの可視化を行いたい場合はERPを選ぶと良いでしょう。
(3)SFAとERPの連携も考える
3つ目はSFAとERPの連携も考えることです。SFAとERPは役割が異なるため、必ずどちらか1つに絞らなければいけないわけではありません。
SFAの売上予測をベースに、ERPでの社内リソースの最適化を行うなど、長所を活かしながら双方のシステムを活用する選択肢もあります。
SFAは現場、ERPは経営層の判断を支援してくれるため、必要に応じてシステムの連携を考慮すると良いでしょう。
自社に合ったSFA・ERPの選び方
SFA・ERPのどちらのシステムを導入するか決めた後は、無数に存在するSFA・ERPの中から、自社に合ったシステムを選定する必要があります。
ここではSFA・ERPのシステムにおける選び方をご紹介します。
(1)SFAの場合
SFAの中から自社に合ったシステムを選ぶときの主なポイントは、「モバイルに対応しているか」「他のツールと連携できるか」「サポート体制が充実しているか」の3点です。
#1: モバイルに対応しているか
1つ目はモバイルに対応しているかという点です。SFAを主に利用するのは営業担当のため、外出先でも情報を確認できるか否かは、業務効率に大きな影響を及ぼします。
商談前に過去のやり取りを確認する、商談後に結果を忘れないうちに入力する、担当顧客の連絡に対するレスポンスの代行を依頼するなど、外出先からSFAにアクセスできることで、業務の遂行が円滑化するでしょう。
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#2: 他のツールと連携できるか
2つ目は他のツールと連携できるかという点です。
SFAは営業活動の強化に長所を持つ反面、見込み顧客の獲得やLTV(Life Time Value/顧客生涯価値)の向上を目的とした顧客育成など、営業活動の前後工程における領域は得意ではありません。
そのため、見込み顧客の獲得から商談化までを支援するMAツールや、顧客化してからのアップセル/クロスセルや顧客満足度の向上を支援するCRMと連携できるかで、売上も変動します。
SFAを導入する際は、MAやCRMなどの営業活動を支える業務システムや、ERPなどの経営資源の最適化を支援するシステムとの連携を確認すると良いでしょう。
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#3: サポート体制が充実しているか
3つ目はサポート体制が充実しているかという点です。
営業力の強化を目指すためにSFAを導入したとしても、機能やデータを活用できなければ意味がありません。しかし、現場の営業担当にとって、SFAのシステム構造や操作性を完璧に理解することは難しいでしょう。
そのような場合、SFAを提供するベンダーの協力が不可欠です。問い合わせに対して、回答にかかる時間、提供された情報の量・質の満足度は、そのままシステムの活動レベルに直結します。
だからこそ、稼働・保守・運用などの領域で、SFAのベンダーがどこまで対応できるのかを把握することは重要といえるでしょう。
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(2)ERPの場合
ERPの中から自社に合ったシステムを選ぶときの主なポイントは、「自社業務に適しているか」「サブスクリプション型かオンプレミス型か」「現場の人も使いやすいか」の3点です。
#1: 自社業務に適しているか
1つ目は自社業務に適しているかという点です。
ERPは製造・流通・販売・財務・人事など、幅広い部門が活用する前提でシステムを設計しているため、多種多様な機能を有しています。
そのため、自社が求める理想像に対して、必要な機能がどこまであるかを確認することが重要です。
#2: サブスクリプション型かオンプレミス型か
2つ目はサブスクリプション型かオンプレミス型かという点です。ERPの利用には、主にサブスクリプション型(クラウド型)とオンプレミス型の2つの選択肢があります。
サブスクリプション型(クラウド型)は、インターネット経由でサービスを利用する形態のため、インフラ環境の初期構築が不要で、運用・保守もベンダーが対応します。
一方でメンテナンス時期を自由に決められない、柔軟なカスタマイズが難しいといったデメリットを抱えています。
オンプレミス型は、自社の管理施設内にハードウェアやソフトウェアを設置し、システムを動かす形態になります。そのため、カスタマイズの自由度が高く、強固なセキュリティを構築しやすいです。
一方で、初期費用(イニシャルコスト)や維持費用(ランニングコスト)が高騰しやすく、運用・保守の担当者(エンジニア)に対する人件費も発生するなど、費用面でのデメリットを抱えています。
近年はサブスクリプション型(クラウド型)を選択する企業が増えており、ERPパッケージに標準搭載されている機能でカバーできない領域も少なくなっています。
そのため、特殊な機能を求める場合や、システムのメンテナンス期間を柔軟に調整する必要がある場合以外は、サブスクリプション型(クラウド型)でも事足りるでしょう。
#3: 現場の人も使いやすいか
3つ目は現場の人も使いやすいかという点です。ERPは幅広い部門のメンバーが活用するため、操作性、デザイン性、反応速度などの面でストレスを感じないことが重要になります。
どれだけ優秀な機能を持っていても、操作が分かりにくい、デザインが見にくい、反応が遅いなどの悪条件が揃うと、社内でのシステム利用が定着しません。そのため、デモ画面などを現場で触ってもらい、使い勝手が良いシステムを選ぶと良いでしょう。
SFAとERPの特徴を理解し、上手に活用しよう
本記事では、SFAとERPの役割や機能、選定ポイントなどを中心にご紹介しました。
近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要度が高まった影響で、多くの企業がシステム導入を検討していますが、システムは導入すれば絶対的に効果を得られるわけではありません。
SFAやERPなどのシステムの特徴を理解したうえで、自社の課題に合わせて必要なものを採り入れましょう。
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