テレワークが疲れる原因は?個人・企業での対策方法や在宅勤務のストレスによるリスク
働き方改革としてのメリットばかりが注目されがちなテレワークですが、実際に長く続けてみると、テレワークならではの疲労感に悩まされているという人も少なくないようです。そこで、テレワークはなぜ疲れるのか?その原因や身体的リスク、対策方法などを詳しく解説します。
目次
テレワーク疲れとは?
テレワーク疲れとは、テレワークによって生じる「身体的な疲れ」と「精神的な疲れ」の両方を指す言葉です。
主に、ワークスタイルの変化による生活の乱れや運動不足、コミュニケーションが減少することによる精神的な負担などが起因していると考えられています。
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テレワークが疲れる原因
テレワークにおいて心身の疲れが蓄積しやすい原因について紹介していきます。
- 長時間労働になりやすい
- 同じ体勢での作業が長時間続く
- コミュニケーションが減少する
- 不慣れなシステムへのストレス
- 集中できる環境が整わない
- 仕事に適した作業環境がない
長時間労働になりやすい
テレワークでは休憩や仕事の切り上げなどを全て自らでコントロールしなければならないため、メリハリがつかずにダラダラと仕事を続けてしまうケースが多いです。
そのため、オフィスでの勤務と比べてテレワークの場合は長時間労働が常態化しやすいなどの特徴もあります。
同じ体勢での作業が長時間続く
オフィス勤務では、通勤や打ち合わせ、取引先への訪問など、意識しなくとも体を動かす機会がありました。しかし、テレワークでは、打ち合わせや商談も全てオンライン化されているケースも多く、一日中、画面と向き合う日が続くことになります。
そのため、座り姿勢によるデスクワークが長時間続き、肩こりや腰痛、眼精疲労などが起きやすくなってしまうと考えられています。
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コミュニケーションが減少する
テレワークでは、業務の合間の雑談やオフィス内ですれ違った際のコミュニケーションがなくなってしまいます。ちょっとした会話で生じる、励ましや労いなどがいいリフレッシュになり、仕事のモチベーションにもなっていたという人は少なくありません。
このようなコミュニケーションの減少により孤独を感じてしまう、あるいは、すれ違いが起きやすくなることから人間関係のストレスが増加するなどの背景が心的ストレスにつながることがあります。
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不慣れなシステムへのストレス
オフィス勤務からテレワークへの移行時に、これまでのワークフローや業務内容を見直し、システム化を図った企業も多いでしょう。特に、感染症対策としてテレワークを導入した企業においては、十分な学習の機会を設けないままに導入を進めてしまったケースもあるかもしれません。
新しいワークフローに変更されたうえに、システムの操作方法にも不慣れとなれば、ストレスを感じやすくなり疲労にもつながってしまいます。
集中できる環境が整わない
テレワークを行う場所として、セキュリティや勤怠管理などの観点から原則「自宅」を指定している企業も多いでしょう。しかし、当然ながら自宅は普段の生活空間のため、必ずしも集中できる環境とは限りません。
家族の話し声や生活音が気になることもあれば、周囲の目がないことから緊張感が保てずに集中力が続かないといったケースもあるでしょう。作業に集中できずに労働時間が長引いてしまい、結果的に疲労につながってしまうのです。
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仕事に適した作業環境がない
テレワークになったからといって、自宅に「仕事専用の部屋」が作れるワーカーは少ないでしょう。実際に、自宅でのテレワークの場所に関するアンケートでは、常にリビングのダイニングテーブルやローテーブルで仕事をしているという回答が上位に見られます。
オフィスのような、仕事に適したワークチェアやデスクがない点は、肩こり・腰痛などの体調不良を起こしやすくする原因の一つと考えられます。
テレワークにより懸念される心身の疲労への影響
テレワークで蓄積したストレスが心身の疲労に及ぼす影響として、以下のものが挙げられます。
メンタルの不調
テレワークによって生じる孤独感や孤立感、人間関係の悪化などは、放っておくとメンタル面の不調を引き起こしてしまうこともあるでしょう。
メンタル面の不調は、「落ち込んだ状態から抜け出せない」、「食欲不振」、「感情がコントロールできない」などの症状として現れることもありますが、テレワークの場合、周囲がこのような様子にいち早く気づくことは困難であり、症状を悪化させてしまうことがあります。
眼精疲労
眼精疲労は、長時間画面を凝視するテレワークにおいて、よくある体調不良の一つです。疲れ目が悪化した状態である眼精疲労を放置すると、頭痛、吐き気、肩こりなど全身症状が伴う場合もあります。
体のこり
首・肩・腰のこりなども、テレワークによる不調としてよく挙げられる症状と言えるでしょう。放置してしまうと、日常生活に支障をきたすほどの激しい痛みを感じるようになってしまうことがあります。
むくみ・冷え
運動不足の慢性化が血行不良の原因となり、むくみや冷えに悩まされる人もいます。
また、むくみや冷えは、生活リズムが乱れることによる自律神経のバランスが崩れることでも起こると言われています。テレワークによって生活が不規則になってしまいがちな人は、睡眠の質や食事のタイミングなども注意しなければなりません。
睡眠不足
長時間労働による生活習慣の乱れ、持続的なストレスにより、睡眠不足に陥る場合があります。慢性的な睡眠不足は、集中力の欠如につながるだけでなく、肥満・高血圧・糖尿病といった生活習慣病を引き起こす原因にもなり得ます。
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【従業員向け】テレワーク疲れを解消するための対策
テレワーカーの疲れを軽減・解消するには、ワーカー自身の工夫と組織としてのサポートの両面における対策が必要です。
具体的なテレワーク疲れの解消方法をみていきましょう。
コミュニケーションの機会を増やす
テレワークによるコミュニケーションの減少は、テレワーク疲れを助長するだけでなく、業務効率や生産性にも悪影響を及ぼします。最悪の場合には、うつにもつながる可能性もあるので重要な課題です。
オンラインでのランチ会を開催する・終業後にオンライン上で会話する機会を作るなど、コミュニケーションが取れるような働きかけを心がけましょう。
▷テレワークでコミュニケーション不足になる原因とは?解決するための対処法
定期的にリフレッシュを行う
テレワークでは、「合間にストレッチをする」「昼休憩に短時間の散歩をする」など、マイルールによるリフレッシュを習慣化するなどの自分なりの努力や工夫も必要です。また、自宅以外での作業も許されているのであれば、カフェやコワーキングスペースなどを利用して気分転換を図るのもおすすめです。
軽い運動やストレッチをする
体のこりは、軽症であれば簡単なストレッチを習慣化させることで、症状が軽減されることもあります。時間を決めてストレッチを行うのはもちろん、一日のうちで「スタンディングワーク」の時間を30分〜1時間程度設けるなどの対策も効果的です。
メリハリをつけて仕事に望む
テレワークでは作業効率が落ちる傾向が強く、業務時間も長期化しがちです。業務時間が増えることによって、疲労を抱えやすくなるので、できるだけメリハリをつけて残業をしないようにしましょう。
「この業務を1時間以内に終わらせて10分休憩する」「○時までに業務を終わらせる」など、時間や業務の区切りでメリハリをつけることによって、短時間で集中して業務をこなせます。
また、1日の初めにその日にやる業務をタスクにして可視化することで、取り組む業務が明確になるので労働の長期化防止が期待できます。
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【企業向け】テレワーク疲れを解消するための対策
テレワーク疲れの解消に向けては従業員に一任するのではなく、企業側でも様々なサポートが可能です。企業から働きかけないと解決しないケースもあるので、企業がすべきテレワーク疲れの解消方法を紹介していきます。
業務状況を可視化し定期的に見直す
業務の配分・負荷が特定の人に偏っている場合も、多忙さから疲労がたまり、一方で仕事量の薄くなった社員にはキャリア形成上の不安が募ることになります。
また、仕事が割り振れず、抱え込んで疲弊している管理職もいるかもしれません。タスクとメンバーの状況を見える化し、分配の仕方を見直すことも、会社からの働きかけとして必要なことと考えられます。
作業環境向上に向けた制度を作る
自宅でのテレワークが前提となっている場合、作業環境の整備を全て「社員の努力」としてしまっている企業も少なくありません。
しかし、作業環境を整える上では、デスクやワークチェア、モニターの購入など、金銭的な負担も生じます。従業員任せにするのではなく、支援金制度をつくるなど、会社としてのバックアップ体制も整えましょう。
[参照:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」]
定期的なストレスチェックの実施
心の不調は、本人の様子が見えないテレワークにおいては、周囲が気づけずに悪化させてしまうことも少なくはありません。
「つらい」「悲しい」といった感情を自分から周囲に伝えられる人ばかりとは限らないという認識を持っておくことが大切です。また、組織としてもストレスチェックの実施などストレスに気づける体制を整えておきましょう。
▷テレワークで増加する体調不良とは?原因や企業・個人が取るべき対策方法
テレワーク疲れを軽減するための企業の取り組み事例
最後に、企業における実際の取り組みをご紹介します。
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社では、東日本大震災をきっかけにテレワーク化を進め、現在では社員の9割がテレワークを行っています。
すでに必要備品の貸与、2年ごとのPC交換などのテレワークを円滑に進めるためのルールが浸透していたものの、コロナ禍により、「出社」か「テレワーク」かを社員が選べる環境から、ほぼ強制的に「出社」の選択肢がなくなったことにストレスを感じる社員もいました。
そこで、テレワークを辛く感じる主な原因がコミュニケーションの難しさにあるととらえ、対策として毎朝10分程度のウェブ会議「朝会」を導入し、いつでも入れるテレビ会議室「バーチャルラウンジ」を設けることで、気軽なコミュニケーションの活性化を図っています。
日本ケロッグ合同会社
加工食品や菓子などの製造を行う日本ケロッグ合同会社では、テレワーク環境下での社員の健康ケアとして、人気インストラクターによるオンラインレッスンなども受けられる運動習慣化支援アプリ「BeatFit for Business」を導入しました。
運動不足の解消だけでなく、この活動を通じた会話が社内で生まれるなど、相乗効果として、社員同士のコミュニケーション促進による「メンタルケア」にも役立っています。
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テレワークで疲れてしまう原因や対策方法を把握すること
メリットばかりが注目されがちなテレワークですが、テレワークならではの悩みに関しては、それらを根本的に解消するための社員自身の工夫と組織としてのサポートが必要です。
テレワークをする社員が、自分なりの工夫で業務効率や生産性を確保する努力をするのはもちろんのこと、企業側も、テレワーク環境が心身の疲れやストレスになることもあるという前提に立った制度や体制の見直しを行うことが大切です。
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