業務改善プロジェクトの進め方と成功させるためのポイント

最終更新日時:2022/05/26

業務効率化・業務改善

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生産性を向上させるためには、業務改善プロジェクトを立ち上げ、組織的に目の前の業務を改善していく必要があります。本記事では、業務改善プロジェクトの始め方や具体的な進め方、成功させるためのポイントや役立つおすすめのツールについて詳しく解説していきます。

業務改善プロジェクトに必要な準備と始め方

ここでは業務改善プロジェクトを始めるための、準備と始め方について説明します。

プロジェクトを成功させるためには、最初の準備が極めて重要です。なぜなら、この段階はプロジェクトの方向性を決定するからです。もしも方向性が誤っていれば、あとのプロセスがどれだけうまくいっても、望んだ効果は得られないでしょう

プロジェクト発足の提案には、二種類のものがあります。

一つは、役員などの上席の指示によるものです。この場合は経営管理や全社的なデジタル化など、経営者目線での改善が提案がされます。

もう一つは、現場からの提案です。働き方の改善や業務の効率化など、現場目線での改善が目的となります。

このどちらから提案されたものかという視点は、プロジェクトの方向性を決める上で重要です。誰から発案されたのかを考慮しないと、なにを改善しようとしているのかが曖昧になり、目的がぶれてしまうからです。プロジェクトを進める上での指針となるため、忘れないようにしましょう。

それでは、ここから準備段階で具体的に何をおこなうべきかを説明します。

1.目的・目標を明確にする

プロジェクトにかかわる人が共通認識を持てるよう、目的・目標を明確にしましょう。

すべての業務は、最終的にプロジェクトの達成につながっていなければなりません。もしもプロジェクトの目的・目標がはっきりしていなければ、改善案がぶれて、効果が薄くなる・または逆効果になる危険があります。

たとえば、業務効率の改善が目的なのにメンバーが目的を理解しておらず、漠然と「会社によいこと」を考えるとどうなるでしょうか。

経費削減のための備品調査や、従業員のストレス軽減のためのオフィスBGMの導入を提案するかもしれません。これらは会社にいい影響を与えるかもしれませんが、業務効率には直接的に繋がりません。

このように、目的・目標を明確にしないと、プロジェクトは方向性がズレてしまい、効果がない、あるいは逆効果になってしまうケースがあるので注意しましょう。

目的・目標の設定には、以下の項目を明確にするようにしましょう。

  • 改善の対象
  • 改善範囲
  • 手段
  • 担当者
  • 期限
  • 目標値

これらの項目を情報共有することで、メンバー皆がぶれることなく業務に取り組むことができます。

2.問題点・改善点を推測しておく

目的を達成するためには、問題点の発見とその改善が必要です。最初の段階では現状が不明確なため問題が明確になっていないかもしれませんが、解決すべき問題点・改善点を推測しておくようにしましょう。

その推測が間違っていても、問題発見のための最初のとっかかりになります。推測であたりをつけることで、業務改善の初動がスムーズになります。

業務改善プロジェクトの具体的な進め方

ここではどのように業務改善を進めていくのか、具体的に解説していきます。改善のステップを正しく把握していないと、効率的に進められない、期待した効果を得られないなどの危険があります。一つ一つ、着実に進めていきましょう。

業務改善プロセスは、大きく分けて以下の6ステップになります。

  1. 業務の流れをフロー図で把握する
  2. 現状の業務量の把握
  3. 問題点を一旦全て洗い出す
  4. 業務改善案を計画する
  5. 改善案を実行する
  6. 効果を確認してPDCAサイクルを回す

それぞれについて、各項目で説明します。

1.業務の流れをフロー図で把握する

はじめに、現在の業務をフロー図で把握するようにしましょう。業務フロー図を作成することで、作業手順を俯瞰できるようになり、問題の発見や改善がしやすくなります。

業務フロー図の作成には、BPMN(業務プロセスモデル図)を利用しましょう。BPMNは業務プロセスの開始から完了までをフロー図にするための手法です。BPMNの優れた点は、誰が読んでも同じように理解できるという点です。

ここで作成する業務フロー図は、その業務に関わっていない人間も利用します。そのため、業務知識のない人間でも理解できるものでなければいけません。

BPMNは作業者からマネージャーまでさまざまな階層の人間が、正確にコミュニケーションするための標準記法です。BPMN記法を用いることで、全社的な情報共有が可能になります。

また、BPEC(Business Prosess Engineerring Cycle)という手法も有効です。BPECは、株式会社BPデザイナーが確立した業務改善手法です。BPECツールを用いて改善プロセスを繰り返すことで、無理なく効果的に業務改善をおこないます。

業務改善を一過性のものではなく、継続的に続けていきたい場合は、BPECの導入も検討してみましょう。

2.現状の業務量の把握

次に、現在の業務量を把握しましょう。業務量を把握することで、どれだけの負荷がかかっているか、業務が偏重していないかなど、現場の状況を正確に知ることができます。

業務量の調査には4つの方法があります。

1.実測法

観測者が現場のモニタリングをおこない、業務量を調べる方法です。実際の作業を観察して計測するため、情報の信頼性が高いというメリットがあります。作業時間にぶれの少ないルーチン業務の計測に適しています。

2.実績記入法

従業員の自己申告をもとに業務を調べる方法です。データの信頼性に不安が残りますが、観測者が調査する必要がないため、調査の負荷が少なく済みます。

3.推定比率法

作業者やマネージャーが、全体の業務時間から逆算して業務量を推測する方法です。主観が入りやすいため信頼性は高くありませんが、素早く回答を手に入れることができます。

4.合成法

複数の作業を分析することで、ある特定の業務量を推測する手法です。実際の観測が不要というメリットがありますが、詳細なルールを設定する必要がある、多くの工数を必要とするなどのデメリットがあります。

業務量調査においては、どれか一つを選択するのではなく、必要に応じて複数の方法を用いるとよいでしょう。

なお、業務量調査での現場でのヒアリングについて、一つ注意点があります。それは、必ずしもヒアリングで正確な情報を聞き出せるわけではないということです。

作業員たちが立場上言いづらい場合、業務の変化を好まない場合などは、積極的な協力が望めません。そのため、現場の人間をプロジェクトに巻き込んでおくなどして、協力体制を準備する必要があります。

業務プロセス分析の方法とは?意識すべきポイントやITツールを紹介

3.問題点を一旦全て洗い出す

調査が終了したら、業務の問題点をすべて洗い出します。洗い出しのためには、問題を徹底的に掘り下げる必要があります。もしも掘り下げが不十分な場合、問題が漠然としていて、原因の特定ができないからです。

問題の掘り下げには、「なぜなぜ」の手法が有効です。「なぜなぜ」の手法は、一つの問題に対してなぜを繰り返すことで、問題の原因を究明する手法です。たとえば、業務負荷が高いという問題があれば、下記のような掘り下げができるでしょう。

タスクを抜け漏れなく洗い出す手法を解説!注意すべき点やコツとは?

業務が負荷が高い>作業量が多い>作業手順が非効率>重複している作業がある

ここまで掘り下げることで、「重複している作業をやめる」という改善に繋げられるようになります。

4.業務改善案を計画する

問題を洗い出したら、業務改善案を立てましょう。改善案は5W2Hを意識することで、実現性の高いものになります。

業務の改善方法には、大きく分けて以下の3つの方法があります。

1.廃止

昔は必要だったが、業務内容が改定される中で不要になることがあります。そのような無駄なものを取り除くことで、業務時間を削減します。不要な業務が消えるだけなので、業務への影響は最小限です。

2.標準化

作業者によってムラのある業務は、標準化することで一定の質を保つことができます。標準化の方法で代表的なものは、業務マニュアルの作成です。

3.導入

これは新しい業務を組み込んだり、他の業務と取り替える方法です。改善作業は大掛かりなものになり、他の業務への影響も大きくなります。

これらは廃止、標準化、導入の順に難易度が上がります。問題の重要性にもよりますが、できるだけ難易度の低い方法で改善案を考えるのが望ましいでしょう。

改善案を計画したら、KPIの設定をおこないます。KPI(Key Performance Indicator)は、目標達成までの進捗具合を確認するための指標となるものです。

0の状態から最終的な目標までの間に複数の評価指数を設定することで、プロジェクトの進捗具合を確認できるようになります。

5.改善案を実行する

改善案の作成が完了したら、改善案の実行に移ります。実際に作業に移ってみると、思うように進まないこともあります。そのため、常に現状の進捗を確認し、適時に問題に対処しなければなりません。

進捗確認に有効なのがKPIです。KPIはプロジェクトの進捗具合を数値で確認できるため、現状認識に最適です。改善案の計画段階でKPIを設定しておきましょう。

6.効果を確認してPDCAサイクルを回す

改善業務が完了したら、一連の業務を振り返りましょう。作業に問題点や、予想外のトラブルはなかったか、期待した効果は得られたかなど、改善業務をさまざまな観点から評価します。

改善できる点があれば、どうすべきだったかを考えて、次回の業務に活かせるよう計画を立てましょう。PDCAサイクルを回すことで、改善業務の効果をより一層高めることができます。

業務改善プロジェクトを成功させるためのポイント

業務改善プロジェクトを開始しても、期待した効果を得られなかったり、プロジェクトが空転してうやむやになる企業は少なくありません。一度プロジェクトが失敗してしまうと、周囲の理解を得られず、再度の挑戦が困難になってしまいます。

ここでは、プロジェクトを成功させるためのポイントを解説します。

1.プロジェクト体制をしっかり構築する

磐石な体制の元で、プロジェクトに臨みましょう。まず必要なのがメンバーの選出です。プロジェクトを統括し、進捗・課題・リスク管理をおこなうマネージャーを決めます。マネージャーが決まったら、プロジェクトに参加するメンバーを招集します。

次に、意思決定機関を明確にしましょう。プロジェクトの決定事項は、意思決定機関によってオーソライズされなければなりません。また、決めたことを実行に移せるよう、どのプロジェクトや部門にエスカレーションするか決める必要があります。

そして、プロジェクトの体制を社内に周知することも忘れてはいけません。業務改善プロジェクトは部門を超えて、さまざまな人員を必要とします。「自部門の人員を持っていくが、何をしているのかよくわからない」と思われてしまうと、十分な協力は得られません。

プロジェクトの役割や活動内容を明確にして、社内の理解を得られるよう努めましょう。

2.効果の測定と分析を怠らない

改善作業で得られた効果を数値化し、分析することを忘れてはいけません。改善業務のどの部分が効果を生み出したのか、どこが失敗の原因になったのか、要因分析をしっかりおこなうことで、次回の業務につなげることができます。

要因分析で重要な判断材料になるのが、KPIです。KPIを用いることで、業務改善効果を数値的に測定できるようになります。KPIは進捗管理にも用いられるため、改善業務計画時点でKPIの設定をしておきましょう。

3.進捗の共有を定期的に行う

プロジェクトの進捗具合は、常に関係者に共有するようにしましょう。全体の進捗やタスクごとの完了率を全員が認識することで、メンバーが俯瞰的に現在の状況を把握できます。

また、社内にプロジェクトの状況を周知することで、全社的な協力体制を生み出すことができます。プロジェクトがどれだけの効果を上げているか、今なにが求められているのかがわかれば、プロジェクト外の社員も協力しやすくなるでしょう。

4.スケジュールを厳守する

スケジュールを厳守するよう、徹底しましょう。作業の遅れが常態化すると、スケジュールが意味をなさなくなります。

特に、業務改善プロジェクトはさまざまな部門からメンバーを招集するため、他の業務を抱えていることも珍しくありません。期日を守らなくてもいいのであれば、どうしてもそちらを優先してしまいます。

スケジュール管理には、WBS(Work Breakdown Structure)がおすすめです。WBSは作業を細かなタスクに分解し、それぞれのスケジュールを管理する手法です。全体の進捗とタスクの完了率を確認できるので、メンバー全員がプロジェクトの状態を一目で確認できます。

5.中長期の視点で改善を続けていく

改善業務はその場限りではなく、中長期的な視点で改善を続けなければなりません。

改善業務はPDCAサイクルを回すことで、効果を上げていきます。一度目はノウハウが蓄積されていないため、改善するべきことが大量に出てくるでしょう。そのため、得られた効果が業務負荷に見合わないということもあるかもしれません。

それでも、改善業務を繰り返すことで、作業を効率的に進め、効果的な改善をおこなえるようになります。

業務効率化・業務改善に役立つフレームワーク10選!活用法まで解説

業務改善プロジェクトに役立つおすすめツール

業務改善プロジェクトは多くのメンバーが参加するため、少しでも効率的に業務をおこなえる環境づくりが大切です。そこで役に立つのが業務ツールです。

ここでは、業務改善プロジェクトを行う上で有益なツールをご紹介します。

ビジネスチャットツール

ビジネスチャットツールは、ビジネス上のコミュニケーションを正確におこなえるよう設計されたチャットツールです。LINEのような通常のチャットツールの機能に加え、ビジネスに役立つ機能が数多く搭載されています。

その一つがメッセージの管理機能です。メッセージの検索やタグ付け、スレッド表示が可能です。また、ファイルの保存・グループ内での共有も簡単にできます。

また、組織単位でのメンバー管理も特色の一つです。プロジェクト・部門などさまざまな単位でメンバーを編集できるため、目的に応じて柔軟にチャットグループを作成できます。

さらに、タスク管理も非常に便利な機能です。プロジェクトメンバーにタスクを共有することで、メンバーがおこなうべきことと、進捗状況をリアルタイムで把握できるようになります。

ビジネスチャットツールを利用することで、コミュニケーションの促進、プロジェクトの可視化が実現するでしょう。

プロジェクト管理ツール

プロジェクト管理ツールを利用することで、進捗の管理を効率的におこなえます。

企業によっては、エクセルを使ってプロジェクトを管理しています。たしかにエクセルを利用すればWBSを使った管理ができますが、レイアウトが崩れやすい、進捗記入がむずかしい、見づらいなどの問題があります。そこでおすすめなのがプロジェクト管理ツールです。

プロジェクト管理ツールは、作業の進捗状況をWBSやメンバーごとのタスクリストなど、必要に応じた形式で確認できます。モバイル端末でも閲覧できるため、現場調査など社外にいるメンバーもストレスなく利用可能です。

その他にも、タスクの変更や期日が近づいてきた時に通知をおこなうなど、プロジェクト管理に役立つ機能が搭載されています。

改善業務はさまざまなメンバーが異なる業務を並行して進めます。そのため、このようなプロジェクト管理ツールで進捗を可視化することは、マネジメント面で非常に有用です。

また、プロジェクトの進捗を記録することは、業務を評価して改善する際にも有用です。プロジェクト管理ツールで記録した情報は、PDCAサイクルを回す上で貴重な情報になるでしょう。

マニュアル作成ツール

マニュアル作成ツールを活用することで、改善業務の効率を向上できます。

プロジェクトを進めていく上でマニュアルは重要です。作業手順やノウハウが人依存で情報共有できないと、他のメンバーに任せられない、改善ができないなどの問題が発生するからです。

マニュアル作成ツールは、マニュアルの作成を効率化し、必要な時にユーザーが閲覧できるように設計されています。画像や動画の添付も可能なため、業務内容・ノウハウをわかりやすく伝えられます。また、作業内容を広く共有することで、改善案を皆で考える環境が実現できるでしょう。

業務改善プロジェクトは生産性向上にかかせない施策

人手不足が深刻化する昨今、企業は限られた人員で生産性を向上させる必要に迫られています。

しかし、現状の個人や部門内での思いつきでの改善には限界があり、日々の業務をこなしながら問題を打開することは容易ではありません。そのため、会社規模での業務改善プロジェクトを立ち上げる必要があるのです。

業務改善プロジェクトは、現状の調査を徹底することで、今まで見えなかった潜在的な原因を明らかにします。また、全社的におこなうため、個人や部門だけでは対応できない問題にも取り組めるのも大きな利点です。

さらに、業務改善を継続的におこなう社内体制を構築することは、社員の意識改革に繋がります。ヒアリングを通して社員が積極的に意見を出せるようになるため、職場のために自発的に考えるモチベーションが生まれるからです。

業務改善プロジェクトを通して、常に成長を続けられる企業体制を実現しましょう。

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