経費精算の領収書に印鑑は必須?押印の目的や法律上の見解を解説

最終更新日時:2023/01/25

経費精算システム

日本に根深く残る印鑑文化。重要な契約の締結時には強い効力を発揮しますが、領収書に関しては印鑑なしでは処理されないのか、疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。本記事では、経費精算の領収書に印鑑は必須なのか、押印の目的と法律上の見解とあわせて解説します。

印鑑なしの領収書でも経費精算は可能

領収書に印鑑が押されていないことが理由で、経費精算上の必要書類として無効になることはありません。

後述する消費税法によって定められた5つの必要項目が記載されていれば、領収書としての有効性は担保されるため印鑑の有無は関係無いのです。

領収書は、取引の内容をお互いに確認し、その取引が成立したことを証明するための「証憑書類」にあたります。

そのため、支払い事実を証明できる書類であることが、領収書の有効性を判断する上で最も重要な指標であり、形式的な要素は判断基準に含まれていないのです。

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政府による法律上の見解

2020年6月に政府は、「見積書、請求書、領収書等については、押印不要とする」という見解を発表しています。

政府の見解発表は、新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの企業が出勤の自粛、テレワークへの切り替えを行ったことが深く関係しています。

テレワークによって直接書類の受け渡しができなくなったことにより、これまでの押印ルールを守りながら業務を遂行することが困難となったことが背景にあるのです。

それまで、税法上や経理上の取り決めとして、印鑑の有無は問題では無かったものの、「印鑑の無い領収書は無効」とする形式的な社内ルールが残っているケースも散見されていました。

本来の領収書の意義である、「金銭のやり取りが、いつ、誰から誰へ行われたのか」「使途は何か」「金額はいくらか」といった項目の明確化よりも、形式の方が優先されていました。

しかし、政府の見解が発表されたことで、領収書への印鑑の必要性を改めて確認し、経費精算ルールを見直したケースも少なくありません。

【出典:内閣府「「行政手続における書面主義、押印原則、対面主義の見直しについて(再検討依頼)」の結果概要」】

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国税庁による領収書に関する規定

領収書の有効性を担保するために必要な記載項目は、消費税法第30条で下記のように定められています。

  • 発行者住所氏名 : 領収書の発行者の住所・名前
  • 日付 : 領収書が発行された日付
  • 但し書き : 取引を行った具体的な品目
  • 金額 : 取引対価として領収された金額とその内訳
  • 宛名 : 領収書の受取人の住所・名前

一部の例外を除いて、上記項目が記載されていれば、領収書としては有効になります。

【出典:e-Gov法令検索「消費税法第30条9項1号」】

特定の業種が発行するレシートも可

タクシーやコンビニでもらった宛名無しのレシートも、経費精算の際に有効な領収書です。

なぜなら、以下の業種が発行する領収書に限っては、宛名の無いレシートでも領収書として有効とすることが消費税法上認められているためです。

  • 小売業(スーパー、百貨店等)
  • 旅客運送業(バス、タクシー、電車、飛行機等)
  • 旅行業(旅行代理店等)
  • 飲食業
  • 駐車場業

先述の通り、領収書の有効性を担保するためには、「宛名」の記載は必須事項です。

しかし、上記の業種から受け取る領収書は、宛名の記載がなくても有効となるのです。

実務上の観点からすると、宛名が無記載であったり「上様」などの匿名なものだったりすると、誰が使用し支払ったのかが不明なので、二重申請などの不正につながるリスクが懸念されます。

税務調査でも、宛名無しの領収書が多い、または宛名無しの高額な領収書があると、調査官の不信感を招くことになり、調査が長引く恐れもあります。

そのため、法律上は、宛名無しの領収書やレシートが認められる場合であっても、基本的には全ての領収書には宛名を記載しておいた方が、スムーズに経費精算や経理業務を進められるでしょう。

【出典:e-Gov法令検索「消費税法施行令第49条4項」】

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領収書に押印する目的

ここまで、領収書には押印が無くても、法律上の問題は無いことを解説しました。

しかし、領収書を発行する際、多くの企業が角印と呼ばれる社印を押印しています。

押印の必要性は無いにもかかわらず、なぜ押印した領収書を発行するのでしょうか。

ここからは、領収書に押印する目的について、解説していきます。

偽造防止

印鑑が押印されていない領収書は容易に偽造できてしまうので、社印が押印された領収書には、偽造や偽造によるトラブルの未然に防ぐ抑止効果が期待できるのです。

領収書の偽造によるトラブルは、経費の水増しや脱税、架空の経費精算などの不正が考えられます。

不正が発覚した場合、偽造領収書の発行元として記載された企業も不正に加担したとみなされる可能性があるため、「知らなかった」では済まされない事態へと発展してしまう恐れがあります。

不正を未然に回避するため、領収書が正式に発行されたことを証明する社印を押印するのです。

企業によっては、押印の無い領収書を経費精算として認めないという社内規定を設けることで、リスクヘッジしているケースも少なくありません。

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先方への配慮

日本の商慣習上、領収書への社印の押印は、取引の正当性や社会的な妥当性を担保する意味合いから、先方との良好な関係を維持するための大切な要素だと言えます。

押印の無い領収書を発行した企業内で不正が発覚した場合、先方へも調査が及ぶ可能性が出てきます。

発行元の社印を押印することで、発行者を明確にし、先方と安心してやり取りを続けることができるのです。

印鑑文化の影響

印鑑は、古くから日本文化に根付いており、現代社会においてもビジネスに関する様々な法律に影響を及ぼしています。

例えば、印鑑を偽造し公文書を偽造した場合、「1年以上10年以下の懲役」が課せられることが刑法により定められています。

また、文書偽造罪においても、印鑑の有無で判決や量刑が変わることは珍しくありません。

加えて、印鑑を偽造すること自体、印章偽造罪や公印偽造罪といった罪に問われるほど、印鑑は日本文化において非常に大きな効力を持っているのです。

このような文化的背景から、押印があることは、高い信用性・信頼性の証明を意味します。

そのため、社印が押印されている書類の証明力が強いと感じる人も多く、社内規定で、領収書への押印を義務付けている企業もまだまだ多いです。。

【出典:e-Gov法令検索「刑法155条」(公文書偽造等)】

【出典:e-Gov法令検索「刑法159条」(私公文書偽造等)】

【出典:e-Gov法令検索「刑法164~168条」(印章偽造の罪)】

収入印紙が貼り付けてある

領収書に収入印紙が貼り付けられている場合、必ず消印を押さなければなりません。

これは、領収書に課せられる「印紙税」という国税の納付において、納税の証明・再使用の防止のために必要な対応です。

領収書の記載金額が5万円(税抜)以上の場合は、収入印紙の貼り付けと印紙と領収書にまたがるように割印することが義務付けられています。

この2つのいずれかが欠けていた場合、書類不備として過怠税が徴収されます。

過怠税は、もともと納付すべき印紙税の額の2倍に相当する金額となるため、発行元はしっかりと確認の上で渡すよう注意しなければなりません。

ちなみに、印紙税や過怠税の納付は領収書の発行元が行うため、収入印紙の貼り付けや消印がない領収書でも受け取り側には問題はありません。

収入印紙はあくまで国税の納付に必要なものであるため、印紙や消印に不備があったとしても、領収書として無効にならないのです。

【出典:e-Gov法令検索「印紙税法第20条」(印紙納付に係る不納税額があつた場合の過怠税の徴収)】

【出典:e-Gov法令検索「印紙税法別表第1(課税物件表)第17号」】

経費精算は領収書なしでも可能?領収書がない場合の具体的な対処法

領収書の印鑑なしが認められない場合がある

領収書の法的効力は印鑑の有無に影響されることはありませんが、実務上の観点から印鑑無しの領収書が認められない場合があります。

前述したように、印鑑があると、領収書やその取引自体の証明性が高まると感じるので、多くの企業が社内規定として押印を義務付けています。

経費精算でも印鑑が無いことで想定される様々なトラブルを懸念した上で、印鑑の無い領収書での経費精算を認めないという判断を下しているケースも少なくありません。

領収書への印鑑の有無に対する考え方や規定は、企業によって異なるため、発行元、受領者の双方があらかじめ確認し合い、書類不備による差し戻しや再発行の手間が生じないように注意しましょう。

丸印・認印・電子印鑑いずれも使用可能

領収書への押印を求められるケースでは、押印する印鑑の種類は基本的にどのような種類でもその効力には違いはありません。

もともと押印自体が不要であるため、丸印、角印、認印、電子印鑑のいずれかを押印した場合でも、領収書の有効性に影響を及ぼすことはないのです。

ただし、印鑑の種類によってそれぞれの持つ効力が異なるため、その違いを理解して適した用途にて使い分けることが大切です。

印鑑の種類は大きく分けて、以下の3種類です。

実印

役所で印鑑証明を受けた印鑑を指します。

実印には、法的・社会的な権利や義務が生じるため、捺印にも大きな責任が伴うことから、金銭の賃借証明や不動産取引などの重要書類にのみ使用されることが一般的です。

法務省に登録した法人の実印(会社実印)は丸印とも呼ばれ、重要な契約書や誓約書などに使用されます。

丸印は、企業の代表個人が意思表示した証拠として扱われるため、部内で使い回せるような状態での管理は厳禁です。

認印

日常的に使用する印鑑を指します。

印鑑登録や金融機関への登録をしていない印鑑で、企業では主に一般事務に分類される伝票や出勤簿作成などの広い用途で使用されてます。

公的な効力は無いものの、押印によってその書類の内容を確認した証明となるため、安易に押すことは避けましょう。

社印や角印と呼ばれる企業名が記載された四角い印鑑は、企業における認印です。

請求書や領収書、納品書などに使用されることが一般的で、その効力は先述の丸印に劣ります。

銀行印

金融機関に登録した印鑑を指します。

役所の印鑑登録はしていないものの、金銭の出納から保険や証券の契約時に必要となる印鑑で、使用には大きな責任を伴います。

企業においては、法人口座の管理や給与や買掛金、各種税金の支払い業務でも使用する印鑑なので、汎用的な認印とは別に用意し、保管・管理も厳重に行いましょう。

このように、印鑑それぞれの持つ効力という観点から見た時、法的効力の強い丸印を領収書に使用することは避けた方が良いでしょう。

また偽造防止という点においては、シヤチハタタイプの認印の使用も控えた方が無難です。

加えて、近年導入が進んでいる電子印の使用は、押印がどの程度の効力を意味するかという定義をはじめ、まだまだ企業によって見解が分かれます。

領収書の発行後・受領後のトラブルを回避するためにも、事前に先方へ電子印の使用の可否について確認しておきましょう。

経費精算に印鑑は不要だが必要に応じて対応しよう

経費精算のため提出する領収書は、印鑑が押されていなくても法律上違反や無効となることはありません。

しかし、長らく「はんこ文化」が根付いた日本の印鑑は、まだまだビジネスに不可欠な存在であると言えます。

スムーズかつ穏便にビジネスを進めるためにも、印鑑の必要性に関しては先方の見解や社内規定を尊重しながら柔軟に対応していきましょう。

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