請求書をPDFで発行してOK?有効性や原本の扱い・送付する際の注意点

最終更新日時:2022/11/15

請求書発行システム

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従来、請求書は紙媒体で発行し、取引先に郵送するか、もしくは訪問して直接渡すのが一般的でした。しかし現在は、PDFなどにデータ化した請求書で取引を行う企業が増えています。本記事では、PDFで請求書を発行した場合の法的な有効性やメリット・デメリット、気をつけるべき注意点などを解説します。

PDFで請求書を発行した場合、法的な有効性は保たれる?

結論として、PDFで請求書を発行しても法律上の問題はなく、法的な有効性も紙媒体の請求書と同様に認められています。そもそも取引において、債権者(売手)が、債務者(買手)に対して、請求書を発行する法律上の義務はありません。

そのため、ここで言及する法的な有効性も、あくまで「請求した事実」を証明するためのものであることから、PDFで請求書を発行しても何ら問題はないのです。

ただし、ビジネスマナーとしては、PDFで請求書を発行する際には取引先に、その旨問題がないかを確認した上で行うのが一般的です。

PDFの請求書に印鑑は必要?

請求書への押印についても、義務ではないことから、税法上の記載事項を満たしていれば押印の有無にかかわらず正式な書類として認められます。

しかしながら、こちらも一般的な商習慣として押印された請求書にてやり取りされているケースは少なくありません。この場合、あくまで形式上の押印となるため、PDFの請求書に対する押印も、必ずしも電子印鑑システムを利用する必要はなく、印影を画像化したデータを使ってもOKです。

電子印鑑を作る方法

簡易的な電子印鑑はWordやExcelでも自作できます。具体的には、ツールバーの「挿入」の中にある「図形」と文字を組み合わせることで作ります。Wordであれば、同じく「挿入」タブから、さまざまな文字装飾ができる「ワードアート」を使って、文字をカスタマイズするのも良いでしょう。

データが完成したら、それらをコピーし、「ペイント」のソフトを起動して貼り付け、保存すれば完成です。電子印鑑のデータは、背景を透過させた方が使い勝手が良いため、保存する際のファイル形式はPNGをおすすめします。

また、実際の印影をスキャンしてデータ化し、電子印鑑を作成する方法もあります。まず、白い紙に印鑑を押し、印影をスキャンもしくは写真で撮影し画像データ化します。そのデータをIllustratorやPhotoshopなどのソフトを使い、背景透過などの編集をして電子印鑑を作成する方法です。

必要な編集ソフトさえあれば、WordやExcelを使って作るよりも簡単ですが、実際の印影を用いることから、印鑑が偽造されてしまうリスクが発生します。使用する印鑑には十分注意しましょう。

このような印鑑の偽造・なりすましを防止したい場合は電子印鑑作成サービスの利用がおすすめです。特に捺印証明機能が付いている電子印鑑システムであれば、捺印後の改ざんを防止したり、本人が捺印したことを証明できるので安心です。

PDFで請求書を扱う際のメリット・デメリット

ここではPDFで請求書を扱う際のメリットとデメリットについて解説します。

(1)メリット

請求書をPDFで発行することで、大きく2つのメリットを得ることができます。

コスト削減

PDF化された請求書は、メールで送付可能なため、印刷・郵送にかかるコストが削減できます。また、税法上の証憑書類となる請求書は7年間(法人が繰越欠損金の控除を受ける場合には10年)の保存義務があるため、書類の保管スペースを管理コストをかけて確保している企業も多いでしょう。

しかし、データ化された請求書であれば、そのような保管場所を要することもないため、書類管理にかかるコストを軽減することができます。

請求書業務の効率化とスピードアップ

請求書を印刷、宛名書きした封筒と送付状を用意して発送、その後、控えをファイリング。紙の請求書を発行して郵送する場合、最低限これらの事務作業は必ず発生することになります。

しかし、データ化された請求書であれば、その多くの工程を削減することが可能です。郵送後の取引先に届くまでのリードタイムもなくなるため、1件の請求業務にかかる手間と時間を大幅に省くことができるでしょう。

(2)デメリット

請求書をPDFで扱うデメリットとしては、取引先の理解を得る必要があること、場合によっては、紙の請求書を要求されるケースもあること、などが挙げられます。

その場合、PDFで発行する取引先と、それ以外の取引先を分けて管理することになるため、事務作業が少々煩雑化するのは、デメリットと言えるでしょう。

PDFで請求書を送付する際のメール例文

次に、取引先にPDFで請求書を送付する際のメールの例文を記載します。実際に送付する際は参考にしてみてください。

件名:XXXX年X月分制作費 請求書のご送付【XYZ株式会社】

株式会社ABC

XXX部XXX課

佐藤様

平素より大変お世話になっております。

XYZ株式会社の鈴木です。

X月分制作費の請求書を、本メール添付のPDFファイルにてご送付いたします。

恐れ入りますが、添付内容をご確認のうえ、ご対応のほどお願いいたします。

なお、本請求書のお支払い期限は下記の通りとなっております。

お支払い期限:XXXX年X月XX日

記載内容など、ご不明な点がございましたら、

ご遠慮なくご連絡くださいませ。

何卒よろしくお願いいたします。

============================

XYZ株式会社

第一営業部

鈴木 太郎

TEL:090-XXXX-XXXX

E-mail:taro_suzuki@xyz.co.jp

〒000-0000

東京都〇〇区△△1-1-1

XYZビル 2F

URL :(会社公式サイトURL)

============================

PDFで請求書を送る時に注意すべきポイント

次にPDFで請求書を送る時に注意すべきポイントについても確認しておきましょう。

特に請求書は、税法上の証憑書類となるため正しく取り扱う必要がある点に注意してください。

(1)請求書は7年間の保管義務がある

取引があったことを証明する証憑書類である請求書は、税法上7年間(法人が繰越欠損金の控除を受ける場合には10年)の保管義務があります。

これまでは、PDFで発行し、メールなどの電子的な方法で授受した請求書であっても紙での保管が認められていましが、2022年1月に施行された改正後の電子帳簿保存法により、電子取引にてやり取りされたデータに関しては、紙ではなく「データ保存」することが義務化されました。

猶予期間として2023年12月31日までの間は、データにて取引された請求書であっても紙に印刷しての保存が認められていますが、2024年1月からは電子帳簿保存法の要件に従った方法での保存が必須となります。

(2)ファイルには必ずパスワードを設定する

請求書には口座情報や取引内容などの機密情報が含まれています。情報漏洩を防ぐために、PDFファイルをメールで送付する際は、パスワードを設定し、パスワードは、請求書を送付するメールとは別のメールで伝えるといった運用をルール化して徹底しましょう。

(3)送信先ミスには細心の注意を払う

パスワードを設定するだけでなく、送信ミスや添付する際のファイルの取り違えにも十分注意しなければなりません。

ファイルの取り違えを防止する具体的な方法としては、ファイル名の命名規則を設けるほか、担当者以外が容易にアクセスできないよう、取引先ごとにフォルダ分けしアクセス権を設定しておくなどの方法が挙げられます。

トラブルの発端が些細な「うっかりミス」であっても、請求書の送信ミスや取り違えは、信用問題に発展することもある重大さをしっかり認識しておきましょう。

(4)件名に請求日を入れる

電子帳簿保存法では保存要件として「検索機能の確保」が定められています。

したがって、どの取引の請求書か分かりやすくするため、ファイルを保存する際には、「請求日(もしくは取引が発生した日など)」、「取引先名」、「取引金額」の3点による統一した命名規則を設けるのがおすすめです。

たとえば、2022年10月1日のABC株式会社からの3万円の請求書データであれば、ファイル名は「20221001_ABC_30000」とするなどです。

ファイル名の記載方法に関する法律上の詳細な決まりはありませんが、以下の要件を満たす範囲内でルールを統一しておきましょう。

要件5 検索機能の確保 施行規則第3条第1項第5号

帳簿にかかる電磁的記録について、次の要件を満たす検索機能を確保しておくこと

(イ)取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定できること

(ロ)日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること

(ハ)二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること

[引用:国税庁「電子帳簿保存時の要件」]

(5)解像度が低すぎないようにする

電子帳簿保存法では、国税関連書類をスキャナで読み取って保存する際には、「200dpi」相当以上の解像度を確保することも定められています。

これは書類をスキャナで読み取って保存する際の要件ではありますが、可読性や真実性の確保の観点から定められた要件であることを考えると、PDFにて発行する請求書についても、同等の解像度を確保しておくのが良いでしょう。

ちなみに、Wordで作成した書類をPDFにて保存した際は、おおよそ200dpi程度の解像度で変換されます。

Web請求書発行システムが便利!おすすめ5選

Web請求書発行システムは請求書の作成・発行・取引先への送信・管理が一貫してできるシステムです。請求書のテンプレートが複数用意され、売掛情報から自動で請求書を作成することも可能なので、請求書発行にともなう負担が大幅に軽減できます。

入金管理までできるものなど、システムによって搭載機能には違いがあるため導入目的に合わせて選びましょう。

(1)楽楽明細

楽楽明細は、電子帳簿保存法・インボイス制度にも対応した帳票発行業務に特化したWeb請求書発行システムです。必要最低限の機能で構成されているため、システムが苦手な方でも利用しやすい操作性の高さが特徴です。

帳票発行の手段はWeb・メール添付・郵送・FAXから選択可能、また、帳票ステータス管理や、顧客からのファイル返送機能など請求書に関するやりとりをスムーズにする機能も備わっています。

提供元株式会社ラクス
初期費用110,000円(税込)~
料金プラン26,400円(税込)〜/月
導入実績導入企業4,000社以上(※ 2022年5月時点)
機能・特徴

  • Web・メール添付・郵送・FAXで帳票発行が可能
  • 帳票ステータス管理
  • 電子帳簿保存法に対応
  • インボイス制度に対応
  • 販売管理システムや決済システムとの連携が可能
URL公式サイト

(2)MakeLeaps

MakeLeapsは、見積書から請求書までクラウド上で作成・共有ができるWeb請求書発行システムです。

見積書、発注書、請求書など9種類の書類作成が可能な上、作成した書類は、ワンクリックで印刷・封入・投函までを完了することができます。そのため、請求書業務に関連した事務作業を削減したい企業におすすめと言えるでしょう。

提供元メイクリープス株式会社
初期費用無料
料金プラン

  • 無料プラン:無料
  • 個人プラン:550円(税込)/月(1ユーザーあたり)
  • 法人プラン:880円(税込)/月(1ユーザーあたり)
  • エンタープライズプラン:27,500円(税込)/月(1社あたり、ユーザー数無制限)
  • Salesforce版:要問い合わせ
機能・特徴

  • 定期的な定額請求を自動で請求書作成する予約機能
  • 書類テンプレートは日英2種類の言語に対応
  • 電子帳簿保存法に対応
  • インボイス制度に対応
  • 高度なセキュリティ対策
URL公式サイト

(3)マネーフォワードクラウド請求書Plus

マネーフォワードクラウド請求書Plusは、請求書発行業務を効率化し、債権管理業務までできるWeb請求書発行システムです。電子帳簿管理法とインボイス制度にも対応しています。

SalesforceなどのCRMと連携し、自動で取引内容に沿った請求書を作成できます。また、銀行入金情報と連携した入金消込処理や会計ソフトと連携した売上計上機能があるので、債権管理フロー全体の一元管理が可能です。

提供元株式会社マネーフォワード
初期費用要問い合わせ
料金プラン要問い合わせ
機能・特徴

  • CRMと連携し自動で請求書作成が可能
  • 銀行入金情報と連携し入金消込作業を効率化
  • 会計ソフトと連携しワンクリックで売上計上が可能
  • 電子帳簿保存法に対応
  • インボイス制度に対応
URL公式サイト

(4) Bill One

Bill Oneは、請求書の発行業務だけではなく受領作業も効率化できるWeb請求書発行システムです。郵送された請求書の受領・データ化を代行してくれるため、請求書は送付方法に関わらずクラウド上で一元管理が可能です。

電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応しており、従業員が100名以下の場合は無料で使えるのも大きなポイントと言えるでしょう。そのため、個人事業主にもおすすめのシステムです。

提供元Sansan株式会社
初期費用スモールビジネスプラン(従業員100名以下):無料

従業員101名以上:要問い合わせ

料金プランスモールビジネスプラン(従業員100名以下):無料

従業員101名以上:要問い合わせ

機能・特徴

  • 紙の請求書の受領・データ化代行
  • 請求書はクラウド上で一元管理が可能
  • 会計ソフト・ワークフローシステムとの連携
  • 電子帳簿保存法に対応
  • インボイス制度に対応
URL公式サイト

(5)BtoBプラットフォーム 請求書

BtoBプラットフォーム請求書は、請求業務全体を一元化できるWeb請求書発行システムです。会計システムや販売管理システムと連携し、請求データをまとめて処理できます。

取引先の請求書確認状況が分かる機能が搭載され、支払日直前に取引先にお知らせメールを送付することも可能なため、未回収リスクが低減できるでしょう。また、紙での請求書発行を希望する取引先には、別途有償にて郵送代行サービスを利用することもできます。

提供元株式会社インフォマート
初期費用110,000円(税込)~
料金プラン22,000円(税込)〜/月
導入実績導入企業770,867社(※2021年BtoBプラットフォーム全体実績)
機能・特徴

  • 請求書発行から入金管理までを一元化
  • 経営ダッシュボードで経営に関する情報を可視化
  • 販売管理システムとの連携で請求書を自動作成
  • 電子帳簿保存法に対応
  • インボイス制度に対応
URL公式サイト

PDFによる請求書は注意点を理解した上で取り扱おう

請求書をPDFで発行する際の注意点と、おすすめのWeb請求書発行システムを紹介しました。請求書のデータ化は、業務効率化やコスト削減だけでなく、ペーパーレス化による環境保全にもつながります。

また、電子帳簿保存法の改正によりPDFで送付した請求書はデータ保存が義務化されています。2023年末までの猶予期間があるとはいえ、対応できる体制は早急に整えておく必要があるでしょう。

ここでご紹介した注意点を踏まえた上で、生産性の向上にもつながる請求書のPDF化を少しずつ取り入れてみてはいかがでしょか。

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ビズクロ編集部
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