組織改編とは?目的や進め方・組織変更との違い、事例を紹介
業務量の増加や業務の停滞など、さまざまなリスクを伴う組織改編。リスクがあるにもかかわらず、組織改編が実施されるのはなぜなのでしょうか。本記事では、組織改編の概要と目的、必要とされる理由や進め方などを実際の事例とあわせて紹介します。
・組織改編とは、新規部署の設立や既存部署の統合などで会社の組織構造に変更を加えること
・経営戦略の一つであり、組織効率性の向上や市場変化などへの適応などの目標を達成するために行う
目次
組織改編とは?
組織改編とは、新規部署の設立や既存部署の統合など、会社の組織構造に変更を加えることです。部署名の変更も組織改編にあたります。
英語では「organizational change(読み方:オーガナイゼーショナル チェンジ)」「reorganization(読み方:リオーガナイゼーション)」と表記されます。
組織改編は経営戦略の一つで、組織の効率性向上や市場変化への適応などの目標を達成するために行う点が特徴です。
部署の新設や統合などが行われるので人事異動を伴い、社員の負担になることがありますが、組織改編が成功すれば会社の成長や部署の活性化など、大きなメリットが得られます。
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組織改編と類似している用語
組織改編には、いくつかの類似した言葉があります。ここからは、組織改編と類似している用語についてそれぞれ解説します。
組織変更との違い
組織変更とは、部署を分割したり部署名を変更したりすることであり、基本的には組織改編と同義で使用されています。
しかし、会社法における組織変更では、株式会社から合同会社になるなど、法人の種別を変更することを意味します。一方で組織改編は、一般的に組織内の部署や構造を変更するという意味で使用される言葉です。
組織変更は会社の法的な形態変更を指すため、組織改編とは異なる文脈で使用されることがあると覚えておくとよいでしょう。
組織再編との違い
組織再編とは、会社の合併や分割などを行うことであり、組織改編と組織再編は、変更を行う部分が異なるといえます。
組織改編は、部署の新設や統合など、内部の体制変更を行います。一方で、組織再編は法人種別自体の変更を行う点が特徴です。それぞれ似た言葉ではありますが、変更の対象が異なる点に注意しましょう。
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組織改革との違い
組織改革とは、業務体制や制度などの「ハード面」と、社風や社員の意識などの「ソフト面」のどちらも改革を行うことです。社会の変化に対応し、生産性を高めるために行われます。
組織改編は組織構造だけを変更しますが、組織改革は組織のソフト面とハード面のどちらも改革を行う点に違いがあります。しかし、どちらも生産性や効率性を高め、市場変化に適応するために行われるという点は同じです。
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人事異動との違い
人事異動とは、社員の役職や配置などを変更することです。社員にとって大切な施策で、労働環境に大きく関わります。
組織改編による部署の新設や統合に伴い、基本的には人事異動が行われるため、人事異動は組織改編の際に同時に行われる施策といえるでしょう。
組織改編の目的・必要とされる理由
組織改編は、人事異動を伴うため社員に負担がかかる場合があります。しかし、多くの会社で組織改編が行われているのはなぜなのでしょうか。
ここからは、組織改編の目的・必要とされる理由を2つ紹介します。
会社の継続的な成長
会社の継続的な成長には、新たな事業展開や拠点の拡大が必要です。組織改編は、会社の持続的な発展を目指すための重要な手段となります。
一方で、業績低迷時には無駄な部署を見直し、効率化を図る必要があるでしょう。柔軟に組織改編を行うことで、ビジネス機会の最大化や社員の成長促進を促し、企業の競争力を高めます。
各部署の活性化
組織改編では、各部署の統合や新設を行うため、人事異動を伴います。これにより、各部署内の人事編成の固定化を防ぎ、異動に伴って部署の活性化を促すことが可能です。
また、社員が同じ部署に長期間在籍することによる不正行為も防止できるため、会社にとっても得られるメリットは大きいといえるでしょう。各部署が活性化することで、社員のモチベーション向上も期待できます。
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組織改編の進め方
組織改編を進めるには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。ここからは、組織改編を進める際の効率的な方法を4つ紹介します。
組織が抱える課題・問題を明確にする
組織改編を進めるうえで重要なのは、組織が抱える課題や問題を明確に把握することです。
組織改編を成功させるためには、組織内の現状や課題を正確に理解し、可視化することが必要になります。可視化によって組織改編の目的が明確になり、効率的な変革が可能となるでしょう。
組織内の問題を把握することで、不必要な業務や部門の整理、効率改善のポイント、スキルや人材配置の見直しなど、具体的な施策を導き出せます。これにより、組織改編が単なる形式的な変更ではなく、問題解決と目標達成を目指す具体的な手段となるのです。
組織が内包する問題を浮き彫りにし、それに対する解決策を組織改編の中に取り入れることで、効率性や社員満足度の向上などの成果を生み出せるでしょう。
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組織改編の具体的な内容を決める
次に、組織改編の具体的な内容を決定しましょう。具体的にはどの部署を統合し、事業展開に合わせてどのような部署を新設するかを決めていきます。また、組織改編を行う時期も決定しておきましょう。
組織改編を行う時期や人事異動は会社によって異なり、基本的には一年中どの時期でも構いません。しかし、日本企業では以下の3つの時期で実施される場合が多いです。
- 決算期と繁忙期の終了後
- 新規事業の立ち上げや拡大期
- 組織改善の実施が決まった時
多くの会社で決算は3月・9月に実施されます。決算後の4月・10月で異動が行われることが最も多いため、この時期に組織改編を行うと社員の混乱を起こしにくいでしょう。
組織改編の実施を社内へ周知する
組織改編の実施は、必ず社内へ周知しましょう。
社内への周知によって、組織改編の背景や目的が共有され、社員の理解と協力を得られます。透明性を保ち、社員が不安や疑念を感じないような配慮を行うことも大切です。
組織改編の理由や目的を明確に伝えることで、社員は変化の意義を理解し、前向きな姿勢で取り組むことができるでしょう。また、組織改編に伴ってなぜ人事異動が行われるのか、その背後にある理由や期待を説明することで、個々の社員に対する敬意を表せます。
組織改編によって得られる経験や成長の機会も提示し、社員にとってのメリットや将来の展望を共有することも欠かせません。社員の意見や反応に対しても耳を傾け、誠実に対応する姿勢を示しましょう。
長期的な視点で組織改編に取り組む
組織改編を進める際には、長期的な視点を持つことが重要です。
組織の変革は単なる一時的な調整ではなく、将来のビジョンと目標に基づいて行うべきものです。長期的な視点を持つことで、組織がどのように成長し、事業を拡大していくのかを見極めることができます。
組織改編に際しては、現状の問題を解決するだけではなく、将来の展望を考慮して人事異動や部署再編を行いましょう。組織の戦略的な方向性やニーズを理解し、その方向に向かってスキルや人材配置を調整することで、組織の持続的な成長を実現できます。
また、組織内で必要なスキルや能力が変化する場合にも、柔軟に対応できるような組織体制を構築することが求められます。組織改編を通じて新たな部署やチームを立ち上げる際には、将来的なニーズを予測し、必要な人材を想定して配置することが必要です。
これによって、組織は変化に適応し、持続的な成功の達成が可能となるでしょう。
組織改編をするうえでの課題
組織改編を実際に行う際には、いくつかの課題が伴います。ここでは、組織改編により起こりうる4つの課題を解説します。
作業量が増加してしまう
組織改編には、膨大な業務量の増加という課題がついて回ります。ワークフローシステムを提供する株式会社エイトレッドが行った調査では、組織改編に伴うストレスの要因として、業務量や残業の増加が挙げられています。
組織改編を行うと、通常業務に加えて関係書類の作成や、システムの設定変更などさまざまな作業が発生するため、社員は負担を感じることが多いようです。さらに、残業時間の増加も避けられず、多くの人が組織改編の際に残業が増えたと回答しています。
また、業務量が増えると業務フローも複雑化する恐れがあり、人事異動した社員が業務フローに慣れるまでは特に時間がかかります。そのため、組織改編の際には業務フローの再編も必要です。組織改編に伴う業務の適切な管理と、社員の負担軽減策の検討が重要となるでしょう。
[出典:株式会社エイトレッド「組織変更・人事異動に伴うバックオフィスの苦労調査」]
引き継ぎが円滑にできない
組織改編に人事異動が伴う場合は、業務の引き継ぎが必要です。しかし、前任者が不在だったり業務が属人化していたりする場合は、引き継ぎが円滑にできない場合もあります。
このように、作業量の増加だけではなく、引き継ぎが円滑にできないことも社員のストレスとなるため注意しなければなりません。
マネージャー層の意思統一ができない
経営層とマネージャー層の間で組織改編への意識に違いがあると、組織改編の必要性が浸透しない場合があります。その結果、組織改編に反対する社員が増えたり、業務に混乱が生じたりする恐れがあるでしょう。
そのため、経営層とマネージャー層は連携して、組織改編の目的や必要性に関して共通認識を持つ必要があります。マネージャー層の意思が統一されると、一般社員へも組織改編の必要性や目的を滞りなく共有できるようになります。
変化を嫌う社員の負担になる
組織内には、必ず変化を嫌う社員が存在します。「現状を変えたくない」「リスクを冒したくない」という気持ちから、現状維持を望んでしまうのです。
しかし、変化を嫌うのは人間の本能的な心理であり、悪いことではありません。変化を嫌う社員を放置したり強要したりすると、大きな負担になるうえに組織改編も円滑には進められないでしょう。
そのため、組織改編を行う際は反対の意見も聞きながら、変化を嫌う社員の視点にも立ったうえで改編を進めていく必要があります。
組織改編をすべきタイミング
組織改編は、実行すべきタイミングがあります。タイミングを逃してしまうと、思うような効果が得られない可能性もあるため注意しましょう。
組織改編をすべきタイミングは、主に次の通りです。
- 新規事業の立ち上げ
- 人材の増加、不足
- 外部要因の変化
新規事業を立ち上げた際は新たな部署で人材が必要となるため、組織改編が必要です。新規事業の立ち上げに伴い、既存の部署で人材不足が発生しないよう、全社的に組織改編が欠かせません。
また、「働き方改革」や「DX推進」「SDGs推進」などの社会の変化に対応するため、組織改編が必要になる場合もあります。外部要因の変化に柔軟に対応できなければ、これまでの体制では通用せず、会社が衰退してしまう恐れがあるのです。
このように、組織改編は適切なタイミングを見計らって実行に移すことが大切です。
組織改編の事例
最後に、実際に組織改編を行った会社の事例を2つ紹介します。2社の事例を参考にして、自社で組織改編を行う際の参考にしてみてください。
日本航空株式会社
日本航空株式会社は、航空運送事業を中心に展開する会社です。同社では経営再建のために組織改編を行い、見事成功しました。
組織改編を行う前の同社は2次破綻の恐れがありましたが、社内では危機感がない状況でした。また、組織体制も経営幹部が指示を出して組織全体で指示を守り実行するという、官僚的な組織であったことも課題としてあげられています。
そこで、まずは旧経営陣のメンバーを一新して、企業理念や同社のロゴマークも刷新しました。
また、従業員にモチベーションとコミュニケーション力を高める研修やフィロソフィの浸透、従業員が意欲的にサービス改善に取り組める環境構築を行い、わずか6年でV字回復を達成しました。
[出典:NTT東日本BizDrive「JALをV字回復させた稲盛和夫の「意識改革」」]
株式会社トプコン
医・食・住の課題解決に向けたDXソリューションを提供する株式会社トプコンは、産業機器事業部の組織改編を行いました。
いくつかに分かれていた営業部門を統合することで、顧客密着度を高めた営業展開を行うことを目指しています。同時に光デバイス営業部を新設し、産業機器事業部に組み込むことで相乗効果が生まれることを期待しています。
この改革は、半導体市場の変化への対応や光デバイス事業の成長を見据えて行われたものです。営業部門と技術部門の連携により、効率的な事業展開を推進し、顧客満足度が高まるようさらなる改革を行っていくとしています。
[出典:株式会社トプコン「産業機器事業部の組織改編と光デバイス事業への注力」]
必要性を理解し組織改編に取り組もう
ビジネスのグローバル化やテレワークの推進など、取り巻く環境が目まぐるしく変化する昨今では、状況に応じて柔軟な組織改編を行っていくことが求められます。
人事異動を伴うため従業員の負担になるといえますが、組織改編を行うことで会社の継続的な成長や部署の活性化などの効果が期待できます。
新規事業の立ち上げや人材の増加・不足時、外部要因の変化などがあった際は、組織改編の最適なタイミングとして効率的に改編を進めていきましょう。
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