組織学習とは?考え方や2つのサイクル・具体例を簡単に解説

2024/06/10 2024/06/10

組織・マネジメント

組織学習とは

組織が抱える課題を解決する方法の1つ、「組織学習」。言葉は聞いたことがあっても、組織学習の概念とは何か、なぜ今必要とされているのか理由が分からないという人も多いのではないでしょうか。本記事では、組織学習とは?考え方やサイクルについて成功事例と併せて簡単に解説します。

組織学習とは?

組織学習とは、個人が習得した知識やスキルが組織全体の学びとなり実践に活かされ、さらに組織の変容が個人の学びにつながるという、継続的な学び合いのプロセスです。

組織学習が進むことで組織内に「学習のサイクル」が確立されるため、課題解決が効率的に進んだり、常に改善に取り組める組織になったり、などの「革新体質」が定着するようになります。

組織学習を通して、組織の課題や社会の変化にも効率的に対応できる組織になることから、変化の激しい現代のビジネス環境において、組織の持続的な成長を支える重要な要素とされているのです。

組織学習の考え方

組織学習は、個人が習得した知識が組織全体に共有され、共通の認識(理解)の下で、最終的に組織内で記憶され、繰り返し活用されるようになる一連のサイクルです。このサイクルは以下の4つのフェーズで構成されます。

  • 知識の獲得
  • 情報の移転
  • 情報の解釈
  • 組織の記憶

例えば、個人で学んだスキルや知識によってマニュアルが改善され、従来業務が効率化されたのち、組織内でそのマニュアルがさらにブラッシュアップされていく、といった一連の流れは、組織学習による効果の身近な例と言えるでしょう。また、組織学習は、実務だけでなく組織文化や風土のような共通認識に影響を与えることなども含まれます。

【簡単解説】組織の意味とは?目的や定義・良い組織を作るためのポイント

ナレッジマネジメントとの違い

組織学習とナレッジマネジメントは、似ているようで異なる概念です。組織学習は、個人の学びが組織全体の行動を変革させ成長につなげるプロセスであるのに対し、ナレッジマネジメントは個人が持つスキルや経験と組織が持つ既存の知識や情報を共有し高度化するための取り組みを指します。

【解説】ナレッジマネジメントとは?注目される背景や手法・具体例を紹介

組織学習の2つのサイクル

組織学習には、重要な2つのサイクルがあります。それぞれのサイクルがどのように機能し、組織の成長につながるのか、詳しく見ていきましょう。

シングルループ学習

シングルループ学習とは、問題解決の際に既存のルールや手法を適用して行動を修正するプロセスです。この学習サイクルでは、設定された目標や基準を変えずに、手段や方法を調整して成果を改善します。行動と結果のみのサイクルであるのが「シングルループ」と呼ばれる所以です。

この手法は、既存の枠組み内で効率を上げるのに有効で、日常業務や短期的な改善が必要な場面でよく用いられます。

ダブルループ学習

ダブルループ学習とは、問題解決の過程で、既存のルールや目標そのものを見直し、再設定するプロセスです。この学習サイクルでは、行動と結果のみでなく根本的な前提や考え方を問い直すという学びも含め循環するため「ダブルループ」と呼ばれます。

この手法は、組織が大きな変革を必要とする場面や、既存の枠組みでは解決できない複雑な問題に直面したときに効果的です。

組織学習を活用するメリット

ここでは組織学習を活用する3つのメリットについて紹介していきます。

トラブルや問題が起きたときにスピーディーに解決できる

組織学習を活用すると、トラブルや問題が発生した際に迅速に対応できるようになります。学習のプロセスを通じて、社員が問題解決のスキルを高め、過去の経験から学ぶことで、同じミスを繰り返さない仕組みが整ううえ、情報共有がスムーズになるからです。結果として、組織全体の対応力が向上し、トラブル発生時にも冷静かつ効率的に対処できるようになります。

エンゲージメントが向上して離職率を下げられる

組織学習を活用することで、社員のエンゲージメントが向上し、離職率を下げられます。学習の機会が豊富な組織では、社員が自己成長を実感でき、やりがいを感じやすくなるでしょう。

社員が積極的に知識やスキルを共有し合う環境であれば、組織内のコミュニケーションが活発になり、信頼関係も深まります。自然と社員が組織に対する愛着や忠誠心を持つようになり、結果として離職の防止につながるのです。

コミュニケーションが活発化する

組織学習を活用することで、社員間のコミュニケーションが活発化します。社員が知識や経験を共有し合うことで、自然と対話の機会が増えるでしょう。このような環境では、異なる部署間でも情報交換が進み、組織全体の連携が強化されます。

また、オープンなコミュニケーション文化が育まれることで、社員同士の信頼関係が深まり、チームワークの向上にもつながります。結果として、組織全体のパフォーマンスが向上し、より効果的な業務遂行が可能になるでしょう。

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組織学習の成功事例

組織学習を取り入れた企業がどのように成功を収めたのか、その具体的な事例を紹介します。

フォード・モーター・カンパニー

1990年代に大企業として初めて組織学習を導入したのが、自動車業界大手のフォード・モーター・カンパニーです。アメリカで古くから人気のあったリンカーン・コンチネンタルですが、トヨタ自動車のレクサスの北米市場参入で状況は一変。フォードは危機に瀕します。そこで研修に取り入れたのが1991年にピーター・センゲが著した「学習する組織」で、この手法を用いてプロジェクトをマネジメントすることになりました。

研修では、センゲが提唱する5つの学習領域についての講義を受けてグループ演習を繰り返したのち、ファシリテーター同席での定期的なマネジメント会議で「振り返り」を強化。問題点とその原因に気付くことができたのです。

さらに、この「振り返り」を日常的に行うことで、次々と新しい施策や開発プロセスのイノベーションが起こるようになります。結果として、こうした経緯を経て生まれた新世代リンカーン・コンチネンタルは、デザインやコストなどさまざまな面において優れた開発事例となりました。

[出典:チェンジ・エージェント「学習する組織入門(8)「学習する組織の実践事例(1)」」]

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組織学習の考え方を理解し自社の発展につなげよう

組織学習は、生産性の向上や変化の激しいビジネス環境における適応力が重視される現代において、企業の成長と発展に欠かせない重要なプロセスです。

組織全体のパフォーマンス向上、競争力強化の実現に向け、組織学習の考え方を理解し、積極的に取り入れていきましょう。

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