組織再編とは?代表的な手法や事例・メリットをわかりやすく解説

2023/11/10 2023/12/04

組織・マネジメント

組織再編とは

企業の経営課題を解説するための手段として、組織の見直しを行うことは少なくありません。本記事では、組織再編について代表的な手法やメリットとデメリットを解説します。企業の事例も紹介しているので、編成し直す際に役立ててください。

この記事の要約

・組織再編とは、会社内の組織の形態を変えて編成しなおすこと
・事業の拡大や縮小、グループ企業の管理を効率化するために組織再編が実施される
・組織再編には複数の企業が関わるのに対し、組織変更は1つの企業内で完結する点に違いがある

組織再編とは

組織再編とは、会社の組織形態を変え、編成し直すことをいいます。再編成によって企業を発展させたり、運営の合理化を図ったりすることなどが目的で、経営課題の解決策として活用するケースもあるでしょう。

いくつかの会社を一つにまとめる、子会社を作って事業を分けるといった方法は、代表的な組織再編の例です。時代や事業の状態に応じて組織形態を見直し、抜本的な変更を行うことが、組織再編の主要な意味となります。

組織変更との違い

組織再編と組織変更とでは、実施する企業数が1つか複数かの違いがあります。組織変更は、1つの企業が実施する組織の改革手法で、合同会社から株式会社に・株式会社から持株会社に変わるなど、企業の数を増減させずに行う方法を指します。

組織再編は複数の企業が関わるため、実施後には企業の数が変わるのです。複数の会社が1社に合併する場合や、1社が2社以上に分割される場合など、会社数が変化するものが組織再編であると覚えておくと良いでしょう。

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適格・非適格組織再編とは?

組織再編を行う際、一定の条件を満たしている会社の組織編成を「適格組織再編」、適格要件を満たさない組織再編を「非適格組織再編」と呼びます。

適格組織再編では、資産を譲渡した際の課税を繰り延べできるため、法人税を節税できるメリットが発生します。

ただし、適格組織再編を行うには、関係各社の資本にまつわる要素のほか、事業の規模や関連性など多くの適格要件を満たさなくてはなりません。そのため、組織再編に用いる手法やプロセスを総合的に検討し、実行するのが一般的です。

組織再編を実施する目的

組織再編を行う目的を大別すると、「事業の拡大・縮小」または「グループ企業の管理効率化」の2つになります。それぞれの詳細についてみていきましょう。

事業の拡大・縮小

組織再編を行う目的の1つに、事業の拡大・縮小が挙げられます。たとえば、他社の経営権や事業を取得・継承し、事業を拡大したい場合です。拡大することで、自社の成長性や競争力を高める効果が期待できます。

不採算事業から撤退したい際は、組織再編として事業を縮小するパターンがあるでしょう。当該事業を切り詰めることで、自社ビジネスのスリム化や効率的な運営の実現に役立つのです。なお、組織再編の対象は自社内・グループ会社・他社間と、状況に応じて多岐にわたります。

グループ企業の管理効率化

グループ企業の管理を効率化する目的で組織再編が行われる場合もあります。事業の成長にともないグループ会社が増えていくと、各社が重複する管理業務を行うことで、管理の手間やコストが比例して増えるのが一般的です。

このような場合に組織再編することで、グループ全体の管理コストや工数を削減し、よりリソースを注ぎたい業務や事業に集中できるようになります。

組織再編の手法

組織再編における代表的な5つの手法を紹介します。手法によって、最終的な会社の形態や再編の条件などが違うため、内容を把握しておきましょう。

合併

合併とは、2社以上の企業を1つに統合する手法です。既存企業に統合する場合を「吸収合併」、合併のために新会社を設立する場合を「新設合併」と呼びます。吸収合併では関わった会社のいずれか1つが残るのに対し、新設合併はすべての会社が消滅したあとで、新たな1社が生まれるのが主な違いです。

吸収合併の場合、消滅する会社の資産・負債・許認可・権利義務などは、合併後に存続する会社が継承できます。新設合併においても権利義務など一部の要素を継承できますが、新会社設立の手続きがいるなど工程が煩雑化しやすい手法です。

合併による組織再編の利点は、権利義務などの継承によって事業をスムーズに進められることにあります。特に吸収合併では許認可なども引き継がれるため、認可を再申請する必要がありません。一方で、負債を承継しなくてはならない点などに注意しましょう。

株式交換

株式交換とは、既存の株式会社が発行済みの株式をほかの会社の株式と交換し、親会社・子会社の関係を構築する手法です。親会社は子会社の株式をすべて取得し、傘下に収め、子会社にいる株主に親会社の株式を分配することで、交換が成立する仕組みです。

株式交換は、M&A手法の1つとしても広く活用されています。資金がなくても実行できる組織再編ですが、これは株式を用いた取引ならではの特徴でしょう。反対意見がある場合でも、株主総会で特別決議が可決されれば実行できます。

株式移転

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新たに設立した会社に、既存会社のすべての株式を取得させる組織再編が株式移転です。新企業は完全親会社となり、既存の企業は完全子会社になります。

既存の株式会社同士で行う株式交換に対し、株式移転では新たに設立する会社が親会社になるという点が大きな違いです。

株式移転は、合併のように会社自体が消滅することはなく、株取引のため資金調達が不要なのが強みでしょう。完全親会社と完全子会社が別々で存続することから、内部統合に際する各従業員への負担が少ないこともいえます。

吸収・新設分割

会社が保有する事業の全部、または一部をほかの会社に継承することを目的に行われるのが会社分割です。このうち、既存の会社を対象とする場合を「吸収分割」、組織再編によって新たに設立する会社に継承する場合を「新設分割」と呼びます。

事業を他会社に引き継がせることで、運営効率を上昇させる狙いがあります。吸収分割は会社の設立手続きがいらないため、比較的簡単に実施できるのも利点でしょう。ただし、大規模事業の場合は事務処理が多くなるケースがあるほか、むやみに行うとリスクや無駄が生じる点に注意すべきです。

株式交付

株式交付とは、既存の株式会社が他社を子会社化するために行う組織再編です。親会社となる会社の株式と、子会社となる会社の株式との交換によって成立します。株式交付は、2021年3月1日に改正された改正会社法によって設定された比較的新しい手法です。

すべての株式取得により完全親会社・子会社の関係となる株式交換とは異なり、経営の独立性を保ちたい場合などには、一部の株取引のみで実施できます。経営方針などに応じて選択することで、適切な関係性を築ける手法として注目を集めています。

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組織再編のメリット

組織再編における5つの手法の主なメリットは下記の通りです。

手法名主なメリット
合併
  • スケールメリットを活かしやすくなる
  • 資金が増加することで信用が高まる
  • 会社間でノウハウ・技術を共有できる
  • 共通部門や管理体制の統合により管理コストを削減できる
吸収・新設分割

  • 成長事業、不採算事業を選んで切り離せる
  • 事業の意思決定速度を上昇できる
  • 転籍する従業員から同意を得る必要がない
株式交換

  • 子会社にも法人格が残るため、無理な組織統合をする必要がない
  • 子会社が親会社の経営に参画することもできる
  • 株式取得においてすべての株主から同意を得る必要がない
株式移転
  • 子会社にも法人格が残るため、無理な組織統合をする必要がない
  • 課税の繰り延べができる
  • 少数株主の排除が可能で、事業推進上のリスクを軽減できる
株式交付
  • 完全子会社化する必要がなく、両者の状況を鑑みた調整がしやすい
  • 株式交換に比べ少ないコストで子会社化できる
  • 親会社は子会社の新株予約権を取得できる

それぞれの手法では、適格要件を満たすことで税制上の優遇を受けることができます。また、株式を対価とすることで、いずれも資金調達の負担が減るメリットは共通です。重視する利点や目的に応じて、組織再編の手法を選択しましょう。

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組織再編を実行する手続きと流れ

組織再編を実行する際の具体的な手続きと流れについて、6つのステップで解説します。一連の工程への理解を深めてから組織再編に踏み切りましょう。

最終契約書の締結

会社法の規定にもとづき、関係会社の経営陣同士で契約を締結します。最終契約書の締結は、対象となる企業の選定や交渉、各種条件に対する企業間の合意が得られたのちに行われます。

両者の株主や債権者への同意は、最終契約書の締結後に行われるのが一般的です。

書面による事前開示

実施する組織再編の内容を書面にまとめ、会社法で定められている方法にもとづき、両社の株主や債権者に対して事前開示を行います。開示の具体的な方法については、会社ごとの規定にしたがってください。

会社の定款に特段の定めがない場合は、官報公告で告知を行います。くわえて、株主や債権者に対する通知を行いますが、個別にできない場合は日刊新聞紙・電子公告のいずれかの手段でも構いません。

これらの告知・開示は、組織再編に関係するすべての会社で行わなければならない点に注意が必要です。

株主総会の開催

組織再編の契約締結・事前開示が済んだら、株主総会を開催し、特別決議による承認を得ます。このためには、議決権を有している株主の過半数が出席していることと、出席した株主の3分の2以上の賛成が必要です。

株主総会の開催にあたっては、株主への招集通知を送付しなくてはなりません。通知には期限が定められており、非公開会社の場合は開催日の1週間前まで、公開会社の場合は開催日の2週間前までとされています。

簡易組織再編など、株主総会で承認を得る必要のないケースもありますが、関連企業への影響度合いにも左右されます。判断が難しいときは、専門家への相談を行ってください。

債権者保護の手続き

組織再編によって債権者に大きな影響が出る場合は、必要に応じて債権者保護の手続きを行います。

債権者保護とは、組織再編に異議を申し出た債権者に対して弁済や担保の提供を行う手続きです。官報公告と個別の催告、または電子公告を用いて、一定期間内に異議申し立てができる旨を掲載する必要があります。

主に、反対株主や会社の債権を保有している人が対象です。債務者に変更がないケースや、債務者の同意のもと進められる組織再編では、債権者保護の手続きは不要となります。

登記の実施

関係者への告知や承認が済んだら、会社の登記を実施します。会社の登記は利用した手法によって異なり、変更登記・解散登記・新設登記などから適切な手続きを行う必要があります。

登記の際は、組織再編に関するさまざまな書面が欠かせません。締結した契約書をはじめ、株主総会の議事録や債権者保護の措置に関連する各種書類、登記事項証明書などの用意が必須です。登記を行うときに提出を求められるため、事前に準備しておけばスムーズに手続きを進められるでしょう。

再編による効力の発生

再編による効力の発生は、組織再編の手法によって異なるため注意が必要です。

再編によって新会社が設立される場合は会社の登記日、新会社を設立しない場合は契約によって定めた日がそれぞれ効力発生日となります。

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組織再編で生じる課題と解決策

組織再編で生じやすい課題とその解決策を3つ紹介します。課題の発生を想定しておけば、問題が起こっても対処がしやすくなるはずです。

社内規定や風土の統一

組織再編では、事業の歩み・背景が違う会社が交わることになるため、従来の社内規定や風土の統一が課題になるケースが多々あります。

各社が運用してきた福利厚生・人事制度などを統合する場合や、同じ空間で業務を行う場合など、互いの常識を変えていくにはそれなりのストレスがかかるものです。

そのようなストレスによってパフォーマンスが低下しないよう、綿密な計画を立てるとともに、時間をかけてじっくり取り組むことが重要です。専門家の力を借りながら、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)に沿って実行する方法も挙げられます。

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再編や人材増加に伴うコストの上昇

再編にともなうコストはもとより、合併や吸収による人材増加で、人件費の上昇も懸念されます。各コストの上昇は、組織再編で生じやすい課題の1つです。

再編だけでも各種税金、コンサルティング費用、士業報酬など多大なコストが発生します。業務上の外注費用やシステム統合の費用のほか、想定外のコストが発生することも珍しくありません。

解決策として、外注業務の見直しと一元化が挙げられます。複数の専門家やサービスに外注するのではなく、依頼先を一本化できるように工夫しましょう。人件費の増加に関しては、雇用調整を含めた慎重な対策が必要です。切り詰められる経費がないかを検討し尽くすのが先決でしょう。

いずれも組織再編の内容や結果に応じて行い、コストの削減を図ってください。

必要となる人材やスキルの変化

組織再編にともなう経営方針や事業の方向性の転換により、必要な人材やスキルが変化する場合も少なくありません。

このような場合は、タレントマネジメントなどを活用して既存社員のスキルや特性を棚卸しし、適材適所に配置転換を検討すると良いでしょう。あわせて、既存社員のスキルやキャリア開発を目的とした研修・制度を導入するのも有効な方法です。

それでも足りない場合や、まったく新しいタイプの人材が必要な場合は、新規で人材を採用することも検討すべきでしょう。

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組織再編を実際に行った企業の事例

実際に組織再編を行った3つの企業の事例を紹介します。自社の状況と照らし合わせて、参考になる事例を組織再編へ役立てましょう。

U-NEXTによる合併事例

U-NEXTは、お互いの強みを共有し合ってシナジー効果を生み出すべく、USENを吸収合併して経営統合を行いました。

U-NEXTは映像配信事業において一定の実績を作ったものの、さらなる発展のためには安定した事業規模を目指す必要性がありました。対して事業の安定化には成功していたUSENですが、成長市場への参入が行われていないという課題を抱えていたのです。双方の課題を補い発展することを目的に、吸収合併による組織再編が実施されました。

合併直後は各利益において数字が落ち込んだものの、徐々に業績を回復しています。さらにその後はU-NEXTの契約者数が2.9倍になるなど、目論見通り事業の成長・拡大を実現したのです。

オウチーノとみんなのウェディングによる株式移転事例

不動産関連ポータルサイトなどを運営するオウチーノは、株式移転を用いて組織再編に踏み切りました。同社は結婚式関連ポータルサイトなどを手がけるみんなのウェディングと共同持株会社「くふうカンパニー」を設立し、経営統合を行っています。

不動産と結婚式の会社として業種は異なるものの、互いの強みを活かし組織再編を図りました。両者ともに、ポータルサイトやメディア運営に関する優れた技術を持っているため、その共有によってさらなる発展を狙っています。

GMOインターネットとOMAKASEによる株式交付事例

GMOインターネットが実施した組織再編は、比較的新しい手法である株式交付を活用した事例として知られています。

買収対象は、予約困難店に特化した飲食店予約管理サービスを提供する「OMAKASE」です。GMOインターネットは同社の株式比率61.5%を取得し、子会社化しました。

GMOインターネットが持つEC支援・決済などのノウハウやブランド力と、OMAKASEの顧客基盤・予約管理サイトの運営スキルによる相乗効果を狙った再編です。各社の強みを融合させることで、ユーザー・飲食店双方のメリット向上を実現するとしています。

組織再編について理解を深めて事業に良い効果をもたらそう

企業の経営課題を解説するための手段として、組織再編は広く活用されています。複数の手法があり、それぞれメリット・デメリットが異なるので、会社ごとの状況に合った選択が重要です。

組織再編を実施する際は、それぞれの違いを十分に理解し、事例なども参考にするのが良いでしょう。優れたシナジーや効果を得るために、最善となる組織再編の手法を選択してください。

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