組織開発のフレームワーク7選|活用すべき理由や注意点

最終更新日時:2023/11/08

組織・マネジメント

ピープルマネジメントとは

組織の継続的発展に不可欠な「組織開発」。組織運営におけるさまざまな環境の変化に対応するために用いられますが、効率的かつ効果的にすすめるためにはどうすればよいのでしょうか。本記事では、組織開発のフレームワーク7選を、活用すべき理由や注意点などとあわせて紹介します。

組織開発とは

組織開発(Organization Development)とは、組織に属する人の関係性や組織構造に着目し、健全性や効果性などの観点で組織の改善に取り組むことです。

明示できるハード領域(理念・構造・制度など)と明示できないソフト領域(組織風土、コミュニケーションなど)の両方を改善することで、組織の持続的な成長を促すことが主な目的です。

昨今はグローバル化や女性活躍の推進により、組織内の価値観が多様化しています。さらに予測不能な変化が連続的に起きており、変化への対応力がビジネスの明暗を分けることも珍しくありません。

変化に柔軟に対応できる機動的な運営を実現するために、組織開発を通じて従来の画一的な組織からの変革が求められているのです。

組織開発にフレームワークを活用すべき理由とは?

組織開発は人の関係性や組織構造にフォーカスする性質上、定量的な効果分析が難しい側面があります。

定量的な分析ができないと自社の現状を把握できず、効果的な施策を打ち出せない企業も少なくありません。

だからこそ、組織開発のプロセスを体系化したフレームワークが有効です。実績のあるフレームワークを活用することで、組織の課題を網羅的に可視化し、優先順位をつけたうえで改善策を実行できます。

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組織開発のフレームワーク7選

組織開発では経営レベルや部署レベルなど、階層ごとに豊富なフレームワークを活用できます。なかでも特におすすめなのが、以下の7つです。

  • OKR
  • アプリシエイティブ・インクワイアリー
  • ミッション・ビジョン・バリュー
  • タックマンモデル
  • Will・Can・Must
  • マッキンゼーの「7S」
  • 認知/行動ループ

OKR

OKR(Objectives and Key Results)は、目標管理のフレームワークです。定性的な目標(Objectives)を階層別に設定し、達成度を定量的な成果指標(Key Results)で測る仕組みで、企業と個人の目標を結びつける特徴があります。

OKRを組織開発に活用することで、組織の目標を共通認識化しやすく、社員たちが同じ目標に向かって連帯感をもって働くことができます。

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アプリシエイティブ・インクワイアリー

アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)は、価値を見出す(Appreciative)ための問いかけ(Inquiry)を通じて、組織課題をポジティブに解決するアプローチです。

アプリシエイティブ・インクワイアリーでは4Dサイクルと呼ばれる4つの工程を経て、社員たちが協働して組織の強みを特定し、自信や熱意というポジティブな感情を引き出します。

  • 発見(Discover):過去の成功体験から強みを見出す
  • 夢(Dream):強みを活かした組織の状態を思い描く
  • 設計(Design):理想の組織を実現するための行動を設定する
  • 実行(Destiny):設計に基づいた持続的な実践をおこなう

アプリシエイティブ・インクワイアリーを取り入れることで、社員は組織や個人のポジティブな一面に目を向け、自発的な変化を起こしていくようになります。

ミッション・ビジョン・バリュー

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)は、企業がステークホルダーに対して自社の存在価値を客観的に示すための経営方針です。

  • ミッション(Mission):なぜ企業として成り立ち、サービスを提供するのか
  • ビジョン(Vision):企業として目指すべき理想の姿は何なのか
  • バリュー(Value):企業の理想像をどのような価値観や行動指針で実現するのか

これらを策定することで企業の存在意義を言語化でき、経営陣と社員の一体感を高めながら、組織としてのパフォーマンスを向上させることができます。

タックマンモデル

タックマンモデルは、チームの状態を5つの段階に分け、最適なチームビルディングをおこなうためのフレームワークです。

  • ステージ1(形成期):チーム発足直後で、メンバーの相互理解が深まっていない段階
  • ステージ2(混乱期):意見の衝突や目標の食い違いが起きている段階
  • ステージ3(統一期):異なる意見や価値観を受け入れて共通の目標をもつ段階
  • ステージ4(機能期):チームの結束力が強まって成功体験が生まれている段階
  • ステージ5(散会期):目標の達成や期間の到達によって次のステップに飛躍する段階

チームの段階を理解し、それぞれの課題を解決するためのアクションを起こすことで、組織を効率的に改善できる点がタックマンモデルを活用するメリットです。

Will・Can・Must

Will・Can・Mustは、モチベーションを維持した状態で成果を出すためのフレームワークです。

具体的には目標設定において、やりたいこと(Will)、できること(Can)、やるべきこと(Must)を書き出して個人や組織の置かれている状況を可視化し、それぞれの関係性や重なる領域を特定します。

Will・Can・Mustは3つの輪の重なる領域が広いほど、仕事に対する満足感が高くなる特徴があります。

このフレームワークを組織開発に当てはめることで、社員のモチベーションを維持したまま、目標達成や相互理解の促進につなげられるでしょう。

マッキンゼーの「7S」

マッキンゼーの7Sは、7つの経営資源をハード面とソフト面に分け、課題の把握と優先順位の明確化に役立てるフレームワークです。

ハードの3Sソフトの4S
  • Strategy(戦略)
  • Structure(組織構造)
  • System(システム)
  • Style(経営スタイル)
  • Staff(人材)
  • Skill(スキル)
  • Shared value(共通の価値観)

特に組織開発では着手しやすいハードの3Sを優先し、ソフトの4Sに関する改善が蔑ろになりがちです。だからこそ、マッキンゼーの7Sを活用して組織の全体像を把握することで、バランスの取れた改善策が立てやすくなるでしょう。

認知/行動ループ

認知/行動ループは、相互理解に求められる要素を認知と行動に分け、相手とのコミュニケーションにおける因果関係を整理するフレームワークです。

組織のメンバーの1人が自分自身の仕事に対する認識を変えた場合、行動にも変化が生まれます。さらにメンバー1人の変化は周囲のメンバーの認知や行動にも影響を与えます。このようにして、認知/行動ループは組織内の文化を醸成していくのです。

組織開発に認知/行動ループを取り入れると、自分自身や他者の認知や行動を意識的に観察・評価するようになり、組織全体の効果性や満足度にも影響を与えます。これがコミュニケーションや協働の基点となり、組織内での相互理解が深まるのです。

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組織開発にフレームワークを活用する際の注意点

フレームワークはあくまで手段であり、目的ではありません。フレームワークにこだわりすぎると形式に囚われてしまい、本質的な問題を見失ってしまう恐れがあります。

また、フレームワークは万能ではなく、組織の状況やニーズに応じて調整が必要です。だからこそ、組織の現状を踏まえて組織開発の目的を明確化することが求められます。

目的が明確でなければ、フレームワークを効果的に活用できず、結果を評価することもできません。そのため、組織開発の目的をしっかりと定めたうえで、必要なフレームワークを選定しましょう。

組織開発に活用できるフレームワーク以外の6つの手法

組織開発には、フレームワーク以外にも有効な手法が複数あります。ここでは、組織開発に役立つ6つの手法をご紹介します。

1on1ミーティング

1on1ミーティングは上司と部下が1対1で面談を実施し、フィードバックやコーチングをおこなうことです。1on1ミーティングを通じて部下の成長やパフォーマンスを支援し、上司のリーダーシップを高めるのが目的です。

1on1ミーティングでは信頼関係を築くことが重要であることから、ワールド・カフェというフレームワークを取り入れることもできます。ワールド・カフェとは、カフェのようなリラックスした雰囲気のなかで意見を交換し、アイデアや気づきを得るための対話手法です。

特に上司と部下はフラットな会話が難しい傾向にあるため、上司が積極的に雰囲気づくりをおこなうことで、部下が自己開示しやすくなるでしょう。

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コーチング

コーチングは、部下などの指導対象者が目標を達成できるように支援することです。具体的には、現状の明確化と目標とのギャップを把握できるように質問やフィードバックを積み重ねて、現状の課題要因を見つけていきます。

コーチングは相手が見落としている内容に気づく機会を提供する手法であるため、担当業務の知識・経験があり、モチベーションの高い人材に対して効力を発揮します。

知識・経験が少ない場合はティーチングをおこなうなど、状況に応じてコーチングとティーチングを使い分けることで、個人のパフォーマンスや満足度を向上させられるでしょう。

アシミレーション

アシミレーションは、上司と部下の相互理解を深めるための対話手法です。具体的には中立の立場の人材がファシリテーションをおこない、上司の退席後に部下から上司に対する本音を引き出します。

アシミレーションを取り入れることで、部下は上司に対する意見や要望を匿名で伝えることができます。そのため、上司と部下の間に発生している溝が埋まりやすく、職場の風通しが良くなるでしょう。

ジョブローテーション

ジョブローテーションは、職務や部署を定期的に変更する制度です。異なる業務や役割に携わるため、社員はビジネスを多角的な視点で捉えられるようになり、柔軟性や創造性を高められます。

加えて、部署を渡り歩くことで部署間連携のハードルが下がり、組織内でのコラボレーションが生まれやすくなります。これにより、組織として一体感をもって行動を起こせるようになるでしょう。

人材開発

人材開発とは、組織のメンバーの能力やパフォーマンスを高めることです。具体的には個人のニーズやキャリアプランに応じて、社内研修や外部セミナーなどの成長機会を提供します。

組織開発にはコーチングやアシミレーションなど、複数の手法を取り入れながら効率的に進めることもあるため、これらの理解を深めるうえでも人材開発は有効です。

また、人材開発は組織内でのコミュニケーションや協働を促進するきっかけとしても機能します。そのため、新しいアイデアやイノベーションが生まれやすくなるでしょう。

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フューチャーサーチ

フューチャーサーチは組織のステークホルダーが集まり、理想の未来に向けたアクションを話し合う手法です。

フューチャーサーチでは組織に属する社員だけではなく、顧客や取引先などのあらゆる利害関係者がそれぞれの立場から利害関係を超えて意見を出し合います。

大規模な会議になるため、通常の会議では得られない新たな発見・気づきが生まれる可能性が高くなることが特徴です。一方で、すべての参加者が合意できるような共通の価値を探す必要があり、時間をかけた話し合いが求められます。

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フレームワークや手法を活用し組織開発を成功させよう

組織開発は、組織における複雑性が増す現代において、機動的な運営を実現するための重要な変革手段です。一方で、組織開発は向き合うべき課題が多いため、客観性と計画性が抜け落ちると期待した成果が得られないこともあるでしょう。

組織開発をスムーズに進めるためには、フレームワークや手法を活用することが有効です。本記事を参考に、組織開発の目的に合ったフレームワークや手法を探してみてください。

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