SaaSのAPI連携は有効活用すべき?連携するメリットや事例を解説
企業や業務内容などによっては、SaaSサービスを複数導入するケースもあるでしょう。分散して利用することでデータの一括管理が難しくなり、不便に感じている方は多いのではないでしょうか。本記事では、SaaSのAPI連携を活用するメリットや事例を解説します。
目次
SaaS(Software as a Service)とは?
SaaS(Software as a Service)とは、インターネットを経由してソフトウェアを利用するサービスです。
従来のオンプレミス型とは異なり、クラウドサーバにアクセスするだけでソフトウェアを利用できる導入の素早さと、事業レベルに応じてプランを柔軟に変更できるメリットがあります。
SaaSにはグループウェア、オフィスソフト、ビジネスチャット、ERPパッケージ、SFA、CRMなど、多種多様なサービスが存在しており、SaaSを組み合わせてより高度な業務を遂行するケースも増えています。
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API(Application Programming Interface)とは?
API(Application Programming Interface)とは、アプリケーションとプログラムをつなぐためのインターフェースです。
API利用者の要求(リクエスト)に対して、API提供者が応答(レスポンス)するという仕組みで、ソフトウェアの一部機能を共有します。
代表的な例としては、Google MapsのAPIで地図情報を読み込む、TwitterのAPIでWebサイト上に投稿内容を反映するなどの活用方法があります。
APIの連携が必要な理由
API連携が必要な背景には、企業でのSaaS利用数の増加があります。近年は営業活動をはじめ、人事・労務や経理・会計など、幅広い部門でSaaSが利用されることでデジタルシフトが進行しました。
そして、複数のSaaSを利用する企業が増えた結果として生まれたのが、システムのサイロ化によるデータの散在です。
部門ごとに異なるSaaSを利用することでシステムが孤立してしまい、多くの企業でデータの収集・分析に支障をきたすという課題に直面しているのです。
さらにVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる変化の激しい現代では、市場のニーズに対して柔軟に対応するためのスピード感が求められます。
このような状況下で、データの二重入力に時間を取られていると、競争力に大きな影響が出てしまうでしょう。
この課題を解決するために生まれたのが、API連携です。APIによって複数のSaaSをつなぎ合わせることで、散在するデータをリアルタイムで連携し、事業活動に役立てることができるようになりました。
SaaSとAPIの連携によるメリット
ここではSaaSでAPI連携を活用するメリットについて、次の5点を解説します。
- 導入しやすい
- データを再利用できる
- 開発を効率よく進められる
- セキュリティ面を高められる
- ユーザーが使いやすい
導入しやすい
1つ目は、導入の簡便さです。APIの多くはインターネット上に公開されており、契約手続きなどもなく利用できます。現在では多種多様なAPIが利用できるため、気軽にSaaSを拡張し、利便性を向上させることが可能です。
データを再利用できる
2つ目は、データを再利用できる点です。API提供者によってはデータの二次利用を認めているケースがあります。他のソフトウェアのデータを活用できると、情報収集の手間が省けるだけでなく、顧客の特徴や購買行動を今まで以上に分析しやすくなるでしょう。
開発を効率よく進められる
3つ目は、開発効率をアップさせられる点です。APIを活用すれば、自社で機能を実装する工数が減るため、必要な機能だけに開発リソースを割くことができます。API連携によって開発スピードが上がり、品質の向上とコスト削減の両立にも役立てられるでしょう。
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セキュリティ面を高められる
4つ目は、セキュリティ面の向上です。現在はGAFAをはじめとする世界トップクラスのテック企業がAPIを公開しています。そのため、自社で新たに機能を実装するよりも、セキュリティレベルの高い大手企業のAPIを活用したほうが、工数をかけずに強固なセキュリティを実現できるのです。
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ユーザーが使いやすい
5つ目は、ユーザーの利便性に関する点です。例えば、会員登録機能でマーケティング活動を強化したい場合、登録フォームを実装することもできますが、ユーザーにとっては入力の手間が発生します。
このような場合、API連携でソーシャルログイン(GoogleやSNSなどの外部プラットフォームのアカウント情報でログインできる機能)を活用することで、ユーザーは入力の手間をかけることなく会員登録を完了できます。
さらにパスワード管理がシンプルである分、ログインできなくなってサービスから離れるリスクを予防できるでしょう。
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SaaSとAPIの連携によるデメリット
気軽に導入でき、サービスの開発効率や利便性を高められるAPIですが、デメリットがないわけではありません。特にAPIは提供者のソフトウェアに依存する都合上、提供元となるサービス自体が停止した場合は連携ができなくなります。
また、API提供元で障害が発生する、あるいはAPIの仕様が変更されると、連携が失敗する可能性もあります。APIの停止は自社SaaSの可用性にも影響を及ぼすため、APIを頼りすぎることには注意が必要です。
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APIを連携する方法
ここではSaaSにAPIを連携するための具体的な方法をご紹介します。一般的には、次の3つの手順で進めます。
- サービスに登録する
- APIキーとシークレットキーを取得する
- 実装する
サービスに登録する
まずは利用したいAPIを選定し、サービス提供元にアカウントやAPIを利用するSaaSの登録を行います。APIのアカウント登録には審査が必要な場合もあるため、事前の確認が重要です。
APIキーとシークレットキーを取得する
APIの登録完了後、アプリやユーザーの識別・認証を行うためのAPIキーを受け取りましょう。APIの提供元によっては、このタイミングでシークレットキーが発行されます。
APIキーはSaaS単位で割り当てられることが一般的で、権限を持たないアカウントからの接続を防ぐことを目的としています。APIキーを紛失するとユーザーとしての識別・認証ができなくなるため、適切に保管しましょう。
実装する
APIキーとシークレットキーを入手した後は、SaaSに対して機能を実装します。仕様書に沿って実装を進めていき、完了後はテストを行って、APIが正常に動作するかを確かめましょう。
SaaSとAPIの連携で注意するポイント
SaaSとAPIの連携で注意すべきポイントは、データの結合です。APIには連携先のデータを活用できるメリットがある反面、連携先とデータのフォーマットが異なる場合、上手く結合できない可能性があります。
そのため、API連携でデータの再利用を検討している場合は、事前に基準やルールを定め、データを適切な状態に編集・補正していくことが重要です。
SaaSとAPIを連携した事例
ここでは実際にSaaSとAPIを連携した事例を3つご紹介します。
会計ソフトの事例
クラウド会計ソフト「freee」では、freee APIという独自のAPIを通じて、会計機能の一部を共有しています。
具体的には売上情報を記録するPOSレジシステム、仕訳日計表を作成する表計算ソフト(Excel、Googleスプレッドシート)、顧客情報を管理するCRMシステム、帳票の設計や出力を支援する帳票作成システムなどとの連携が可能です。
freee APIでは、前述したシステムのデータをリアルタイムに同期することで、転記ミスの予防や工数の削減に貢献しています。
人事関連の基本情報ソフトの事例
クラウド人事労務ソフト「SmartHR」では、バックオフィスの効率化を目的に、APIを公開しています。具体的には給与計算ソフト、勤怠管理システム、採用管理システム、人事評価システムなどとの連携が可能です。
SmartHRは、APIを通じて勤怠・給与・採用・評価など、人材に関するあらゆるシステムと同期できることにより、従来のCSVを使ったデータのエクスポート/インポート作業の手間を削減しています。
人事領域では従業員の入退社や異動、評価による給与変動が定期的に発生するため、API連携によるデータ同期で、散在するデータをより効率的に管理できるようになるでしょう。
採用管理ソフトの事例
採用管理ソフト「sonar ATS」では、人事担当者の採用業務の効率化に向けて、API連携の強化に取り組んでいます。
具体的には求人メディア(新卒・中途・リファラル)、適性診断ツール、Web面接ツール、コミュニケーションツール、人事・労務管理システムなどとの連携が可能です。
API連携によって、複数のシステムで扱うデータにsonar ATSからアクセスできるようになり、採用担当者の業務効率化だけでなく、求職者へのスムーズな案内も実現しています。
SaaSのAPI連携は更なる業務効率化につながる
本記事では、複数のSaaSを効率的に扱うためのAPI連携について解説しました。SaaSの台頭以降、あらゆる業務がインターネット上で処理できるようになった反面、複数のシステムにアクセスする手間や、データの転記による工数負担やヒューマンエラーの発生に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介したAPI連携は、複数のSaaSをつなぎ合わせ、データの同期を行うことで、業務をより効率的に進めることができます。
SaaSによって公開されているAPIや、連携できるシステムが異なるため、まずは自社で利用しているSaaSでどのようなAPI連携ができるのかを確認してみてください。
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